最終更新:2026年10月19日
勘定科目一覧とは、帳簿で取引を分類するときに使う「科目」の名前を、資産・負債・純資産・収益・費用の5区分に並べた表です。勘定科目の名前は法令で決まっておらず、会社ごとに選んでかまいません。大事なのは、どの科目に入れたかを説明できることと、一度決めた科目を毎期同じように使い続けることです。この記事では、一人法人でよく使われる科目を5区分で30あまりに絞って一覧にしました。
ぼくは40歳でtiny合同会社を一人で設立したマーケターです。科目一覧に加えて、会社計算規則と国税庁の様式で決まっている範囲と決まっていない範囲を、e-Govと国税庁で確認できた範囲で整理しました。2026年10月19日時点の制度で書いています。
勘定科目一覧とは?結論から
勘定科目は、まず5つの区分のどこに入るかで決まります。資産・負債・純資産は貸借対照表に、収益・費用は損益計算書に並びます。
| 区分 | 意味(一般的な説明) | 載る決算書 | 一人法人での例 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 会社が持っている財産や、お金を受け取る権利 | 貸借対照表の左側 | 普通預金、売掛金、パソコン |
| 負債 | これから払う義務、返す義務 | 貸借対照表の右側 | 未払金、預り金、役員借入金 |
| 純資産 | 資産から負債を引いた残り。元手と利益の積み上げ | 貸借対照表の右側 | 資本金、利益剰余金 |
| 収益 | 売上など、純資産を増やす取引 | 損益計算書 | 売上高、雑収入 |
| 費用 | 経費など、純資産を減らす取引 | 損益計算書 | 役員報酬、外注費、広告宣伝費 |
区分の意味は公的な一文がないので、一般的な説明で書いています。区分を先に決めておくと、聞き慣れない科目が出てきても「これは払う義務だから負債」と置き場所が分かります。
科目名は法令で決まっていない(制度の確認)
法令が決めているのは、決算書の区分と、どの区分に何が属するかまでです。販売費及び一般管理費の内訳をどんな名前で分けるかは、会社が「適当な名称」を付けて決めます。
| 論点 | 確認できた内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 会社の貸借対照表 | 資産・負債・純資産の部に区分し、各項目には資産や負債を示す適当な名称を付ける。売掛金・前払費用・未払費用などがどの区分に属するかは定めている | 会社計算規則73〜76条(e-Gov) |
| 会社の損益計算書 | 売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失に区分し、適当な場合は細分できる。各項目には適当な名称を付ける | 会社計算規則88条 |
| 合同会社の純資産 | 社員資本は資本金・出資金申込証拠金・資本剰余金・利益剰余金に区分する | 会社計算規則76条3項 |
| 表示を変えたとき | 合同会社を含む会社は、表示方法を変えたら内容と理由を注記する(重要性の乏しいものを除く) | 会社計算規則98条・102条の3 |
| 法人の申告 | 確定申告書に貸借対照表・損益計算書と、勘定科目内訳明細書を添付する | 法人税法施行規則35条(e-Gov) |
| 勘定科目内訳明細書 | 預貯金等、売掛金(未収入金)、仮払金(前渡金)・貸付金、買掛金(未払金・未払費用)、仮受金(前受金・預り金)、借入金、役員報酬手当等、地代家賃等、雑益・雑損失等などの内訳書がある | e-Tax 勘定科目内訳明細書の標準フォーム |
| 個人の青色申告決算書 | 経費欄に租税公課・旅費交通費・通信費・広告宣伝費・接待交際費・消耗品費・減価償却費・福利厚生費・外注工賃・地代家賃・雑費などが印字され、科目名を書き込む空欄が6行ある | 国税庁 青色申告決算書(一般用)様式 |
| 個人の帳簿 | 「その他の経費」の空欄に、取引の実態に応じて経費項目を設けて記載できる。別表に一般的な必要経費の一覧がある | 国税庁「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」 |
国税庁の様式にある科目名は、申告書や内訳書に載せるときの見出しです。帳簿の科目名をそれに合わせる義務はありませんが、合わせておくと申告書への転記で迷いません。毎期同じ科目を使い続けることは、一般的には「継続性」と呼ばれ、年ごとの決算書を比べられるようにするための考え方です。
検定試験は事情が違います。日本商工会議所は、簿記検定で使う勘定科目を示した「商業簿記標準・許容勘定科目表(2〜3級)」を公表していて、2026年度の試験には2022年度版、2027年度の試験から新しい版が適用されます(日本商工会議所 出題区分表)。試験の科目表は学習と出題のための基準で、会社の帳簿を縛るものではありません。
一人法人がよく使う勘定科目一覧表
一人法人のサービス業なら、次の30あまりの科目を用意しておけば、日常の取引の多くを分けられます。科目名はよく使われる例で、各論は別の記事に任せます。
| 区分 | 科目(例) | 一人法人での主な中身 |
|---|---|---|
| 資産 | 現金/普通預金 | 手元の現金、法人口座の残高 |
| 資産 | 売掛金 | 請求済みで入金待ちの報酬 |
| 資産 | 前払費用 | 年払いのサービス料のうち翌期分 |
| 資産 | 立替金/仮払金 | 一時的な立て替え、精算前の支払い |
| 資産 | 工具器具備品/ソフトウエア | パソコン、購入したソフト(減価償却の記事) |
| 資産 | 敷金 | 事務所を借りたときの保証金 |
| 資産 | 役員貸付金 | 会社から社長に貸したお金(役員貸付金の記事) |
| 負債 | 未払金 | カード払いの経費など、まだ払っていない代金 |
| 負債 | 未払費用 | 継続して受けているサービスの未払い分 |
| 負債 | 預り金 | 役員報酬から差し引いた源泉所得税・社会保険料 |
| 負債 | 前受金 | 仕事の前に受け取った着手金 |
| 負債 | 未払法人税等 | 決算で計算した、まだ納めていない法人税など |
| 負債 | 役員借入金 | 社長が会社に貸したお金(役員借入金の記事) |
| 純資産 | 資本金/利益剰余金 | 出資した元手と、利益の積み上げ |
| 収益 | 売上高 | 本業の報酬 |
| 収益 | 受取利息/雑収入 | 預金利息、本業以外の少額の収入 |
| 費用 | 役員報酬 | 社長の給与(定期同額給与の記事) |
| 費用 | 法定福利費 | 社会保険料の会社負担分(社会保険料の記事) |
| 費用 | 外注費 | デザイナー・ライターなどへの発注 |
| 費用 | 広告宣伝費 | 自社の広告、展示会の出展料 |
| 費用 | 会議費/交際費 | 打ち合わせの飲食、取引先の接待(会議費と交際費の違い) |
| 費用 | 旅費交通費 | 電車・タクシー・出張の宿泊(出張旅費の記事) |
| 費用 | 通信費 | スマホ・回線・サーバー(通信費の記事) |
| 費用 | 支払手数料 | 振込手数料、サブスク・各種サービス料(サブスクの科目の記事) |
| 費用 | 支払報酬料 | 税理士・司法書士への報酬 |
| 費用 | 新聞図書費 | 本・雑誌・有料記事(書籍代の科目の記事) |
| 費用 | 消耗品費 | 文房具、10万円未満の備品 |
| 費用 | 地代家賃 | 事務所の家賃、社宅の家賃 |
| 費用 | 福利厚生費 | 健康診断など(一人社長の福利厚生費) |
| 費用 | 車両費 | ガソリン代・車検(車を法人の経費にする記事) |
| 費用 | 減価償却費 | パソコンなどを使う年数に分けた経費 |
| 費用 | 租税公課/雑費 | 印紙代など/どの科目にも当てはまらない少額の経費 |
| 費用 | 法人税、住民税及び事業税 | その期の利益にかかる税金(法人税の計算の記事) |
売掛金、未払金と未払費用の違い、棚卸資産は、それぞれ別の記事で扱います。
これらの科目で決算書を作ると、次のような形になります。例:合同会社サンプル企画(架空・社長1人・消費税は考えない)。金額は説明用の架空の数字で、法人税等は計算せず仮に置いた額です。
| 損益計算書(例) | 金額 | 貸借対照表(例・期末) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 840万円 | 普通預金 | 199.5万円 |
| 役員報酬・法定福利費 | 412万円 | 売掛金 | 77万円 |
| 外注費・広告宣伝費 | 138万円 | 前払費用・工具器具備品 | 45万円 |
| 地代家賃・減価償却費 | 80万円 | 資産合計 | 321.5万円 |
| その他の販管費(通信費・旅費交通費ほか) | 86万円 | 未払金・預り金 | 27.5万円 |
| 営業利益 | 124万円 | 未払法人税等 | 34万円 |
| 法人税、住民税及び事業税(仮置き) | 34万円 | 資本金 | 100万円 |
| 当期純利益 | 90万円 | 利益剰余金(期首70万円+当期純利益90万円) | 160万円 |
検算します。販管費は412+138+80+86で716万円、売上高840万円から引くと営業利益124万円です。貸借対照表は、資産が199.5+77+45で321.5万円、負債と純資産が27.5+34+100+160で321.5万円となり、左右が一致します。当期純利益90万円が利益剰余金に積み上がることで、損益計算書と貸借対照表がつながります。
一人法人・マーケターの読みどころ
勘定科目は「後で何を知りたいか」で切り方を決めます。一人法人の社長にとっても、取引先の決算書を読むマーケターにとっても、科目の切り方が数字の読み方を決めるからです。
マーケターが最初に困るのは、広告の総額がどの科目に散らばっているかです。媒体に払う広告費は広告宣伝費、運用を代行する会社への手数料は支払手数料、バナー制作は外注費、と分けると、科目ごとの数字はきれいでも「広告に結局いくら使ったか」は足し算しないと出てきません。顧客1人の獲得費用を分母にするユニットエコノミクスを計算するなら、どの科目を足すかを先に決めておく必要があります。
もう1つの落とし穴は、勘定科目が変動費か固定費かを教えてくれないことです。外注費は売上に連動して増える月もあれば、毎月定額の契約もあります。貢献利益と限界利益や損益分岐点を出すときは、科目をいったん「売上に連動するか」で読み替える作業が要ります。取引先の決算書を比べるときも、科目名は会社ごとに違うので、名前ではなく販売費及び一般管理費の合計や区分で比べるほうが確実です。
ぼく自身は、請求書や経費、仕訳、決算といった作業がかなり苦手です。だから会計入力はfreee会計に頼り、判断が必要な部分は税理士ドットコムで探した税理士に聞く、と役割を分けました(一人で合同会社を設立した体験記)。また、登記後すぐに取引が始まって入金先がしばらく個人口座になり、帳簿が複雑になりました(一人法人の設立記事)。科目の使い方は、帳簿をつけ始める最初の月に税理士と決めておくのがいちばん手戻りが少ないと思います。
よくある間違いと注意点
いちばん多い間違いは、科目名で経費になるかどうかが決まると思うことです。科目は分類の名前で、経費や損金になるかは取引の中身で決まります。
- 迷ったものを雑費に入れ続ける:国税庁の一覧でも雑費は「他の経費に当てはまらない経費」です。雑費が大きくなったら、科目を1つ立てるほうが説明しやすくなります
- 年ごとに科目を変える:前の年と比べられなくなります。変えるなら期首に変え、理由を記録しておきます
- 個人事業主の科目を法人で使う:事業主貸・事業主借・元入金は個人の青色申告決算書の科目です。法人では、社長とのお金のやりとりは役員借入金や役員貸付金、元手は資本金で表します
- 会計ソフトの科目を増やしすぎる:一人法人で細かく科目を使い分けても、記帳のたびに迷う場面が増えるだけです。使わない科目は非表示にして、選択肢そのものを減らします
この記事は最終更新日時点の制度で書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。税理士の探し方は税理士ドットコムの使い方にまとめています。
勘定科目一覧に関するよくある質問
勘定科目は国税庁の一覧に合わせる必要がありますか?
必要はありません。勘定科目の名前は法令で決まっておらず、国税庁の青色申告決算書や勘定科目内訳明細書の科目名は、申告書に載せるときの見出しです。帳簿の科目名をそろえておくと、申告書への転記が楽になります。
簿記3級で覚えた科目名と実務の科目名は違いますか?
違うことがあります。簿記検定には日本商工会議所が公表する標準・許容勘定科目表があり、試験はそれを基準に出題されます。実務の帳簿は法令で科目名が決まっていないので、会社が選んだ名前を毎期続けて使えば問題ありません。
経費の勘定科目に迷ったら、何に入れればいいですか?
まず、その支出が何のためかを一文で書き、近い科目を選びます。どれにも当てはまらない少額の経費は雑費に入れ、同じ種類の支出が何度も出てくるなら新しい科目を立てます。迷った支出は、記帳した日にメモを残しておくと決算で説明しやすくなります。
途中で勘定科目を変えてもいいですか?
変えること自体はできますが、毎期同じ科目を使い続けるのが基本です。変えると前の年と比べにくくなり、会社計算規則では表示方法を変えたときに内容と理由を注記する決まりもあります(重要性の乏しいものを除く)。変えるなら期首に変え、理由を記録しておきます。
おわりに──科目名は自由、続け方は自由ではない
勘定科目の名前に正解はありません。法令は区分と「適当な名称」を求めるだけで、通信費と呼ぶか回線費と呼ぶかは会社が決めます。そのかわり、決めた名前を毎期守るのは、決めた自分しかいません。科目名は自由、続け方は自由ではない。一人法人の帳簿は、この一行で回ります。
今日やることは1つです。会計ソフトの勘定科目の設定を開いて、使っていない科目を非表示にしてください。残った科目が、あなたの会社の勘定科目一覧になります。