最終更新:2026年10月19日
車を法人の経費にするとは、会社が車を買って事業に使い、その代金を減価償却で何年かに分けて損金にし、ガソリン代や保険料などの維持費もその期の費用にすることです。新車の耐用年数は普通自動車が6年、軽自動車(総排気量0.66リットル以下)が4年で、中古車は簡便法で短くでき、4年落ちの普通車なら2年になります。ただし、役員が私的に使った分は、役員への給与と同じ扱いになることがあります。この記事では、国税庁と法令のページで確認できた耐用年数・計算式・要件だけを使い、計算例はすべて架空の数字で示します。内容は最終更新日時点の制度にもとづいています。
車を法人の経費にするとは?結論から
法人の車の経費は「車両本体を減価償却する部分」と「維持費をその期の費用にする部分」の2つに分かれます。どちらも、会社が持っていて、会社の事業に使っている車であることが前提です。要点を表にします。
| 項目 | 内容 | 確認した公式ページ |
|---|---|---|
| 経費にできる前提 | 法人が事業年度の終わりに持っていて、事業の用に供している車(事業に使っていないものは減価償却資産から除かれる) | 法人税法 第31条/法人税法施行令 第13条 |
| 新車の耐用年数 | 普通自動車(「その他のもの」)6年、小型車(総排気量0.66リットル以下)4年 | 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一 |
| 中古車の耐用年数 | 残りの使用可能期間を見積もる。見積もりが難しければ簡便法で計算できる | 国税庁 No.5404 中古資産の耐用年数 |
| 償却方法(届出がない場合) | 法人は定率法。届け出れば定額法も選べる | 法人税法施行令 第53条/国税庁 No.5409 |
| 期の途中で買った場合 | 使い始めた月から期末までの月数で月割り(1か月未満の端数は1か月) | 法人税法施行令 第59条 |
| 役員の私的使用 | 会社が役員に無償で便宜を提供したものとして、役員給与(経済的な利益)に当たり得る | 法人税基本通達 9-2-9 |
車の取得価額は、購入代価に、事業に使うために直接かかった費用を足した額が原則です。国税庁のNo.5400は、登録のために要する費用などの租税公課等は、取得価額に含めないことができるとしています。
維持費(ガソリン代・駐車場代・保険料・車検代・自動車税など)は、事業に使った分をその期の費用にします。こうした費用の勘定科目名(車両費・旅費交通費・保険料・租税公課など)は法令で決まっているわけではなく、会社ごとに選べます。大事なのは、毎期同じ科目を使い続けることです。
耐用年数と中古車の簡便法──公式ページで確認した中身
新車の耐用年数は耐用年数省令の別表第一で決まっていて、中古車は「残りの使用可能期間」を見積もるか、見積もりが難しければ簡便法で計算します。まず新車の年数を、一人法人で使う可能性があるものに絞って並べます(運送事業用・貸自動車業用などは別の区分です)。
| 車の種類(別表第一「前掲のもの以外のもの」) | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 自動車のうち小型車(総排気量0.66リットル以下=いわゆる軽自動車) | 4年 |
| 貨物自動車(ダンプ式のもの) | 4年 |
| 貨物自動車(その他のもの) | 5年 |
| 報道通信用のもの | 5年 |
| その他のもの(一般的な普通乗用車) | 6年 |
| 二輪または三輪自動車 | 3年 |
中古車の簡便法は、No.5404と耐用年数省令 第3条で次のように決まっています。第3条は個人にも法人にも同じように使われる規定です。
- 法定耐用年数をすべて過ぎた車:法定耐用年数×20%
- 法定耐用年数の一部を過ぎた車:(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%
- 計算結果の1年未満の端数は切り捨て、2年に満たなければ2年とする
この式で、経過年数ごとの耐用年数を出すと次のとおりです。経過年数は、その車が新車として使われ始めてからの年数で、ここでは「ちょうど◯年たった車」として計算しています。
| 経過年数 | 普通自動車(法定6年) | 軽自動車(法定4年) |
|---|---|---|
| 1年落ち | 5+0.2=5.2→5年 | 3+0.2=3.2→3年 |
| 2年落ち | 4+0.4=4.4→4年 | 2+0.4=2.4→2年 |
| 3年落ち | 3+0.6=3.6→3年 | 1+0.6=1.6→2年 |
| 4年落ち | 2+0.8=2.8→2年 | 4×20%=0.8→2年 |
| 5年落ち | 1+1.0=2.0→2年 | 4×20%=0.8→2年 |
| 6年落ち以上 | 6×20%=1.2→2年 | 4×20%=0.8→2年 |
耐用年数が決まると、償却率は耐用年数省令の別表第八(定額法)と別表第十(2012年4月1日以後に取得した資産の定率法)で決まります。この記事で使う年数だけ抜き出します。
| 耐用年数 | 定額法の償却率 | 定率法の償却率 |
|---|---|---|
| 2年 | 0.500 | 1.000 |
| 4年 | 0.250 | 0.500 |
| 6年 | 0.167 | 0.333 |
No.5404には、簡便法の条件が2つ書かれています。1つは、事業に使うために支出した改造費などの資本的支出が、その中古車の取得価額の50%を超えると簡便法は使えないこと。もう1つは、耐用年数の算定は事業に使い始めた事業年度にしかできず、その年に算定しなかったら後の年にはできないことです。
4年落ちの中古車の計算例と比べ方
4年落ちの普通自動車は耐用年数2年、定率法の償却率は1.000なので、期首に買えば1期目でほぼ全額(帳簿に1円を残して)を償却限度額にできる計算になります。ただし、期の途中で買えば月割りになり、2期に分かれます。数字はすべて架空の例で、3月決算の法人が取得価額300万円の車を買い、償却限度額いっぱいまで償却する前提です。
| ケース(例) | 1期目の償却額 | 2期目の償却額 |
|---|---|---|
| 新車の普通自動車(6年・定率法0.333)を4月1日に取得 | 300万円×0.333=99万9,000円 | (300万円−99万9,000円)×0.333=66万6,333円 |
| 4年落ちの普通自動車(2年・定率法1.000)を4月1日に取得 | 300万円×1.000=300万円→1円を残して299万9,999円 | 0円(帳簿価額1円のまま) |
| 4年落ちの普通自動車(2年・定率法1.000)を10月1日に取得 | 300万円×1.000×6/12=150万円 | (300万円−150万円)×1.000=150万円→1円を残して149万9,999円 |
| 4年落ちの普通自動車(2年・定額法0.500)を4月1日に取得 | 300万円×0.500=150万円 | 150万円→1円を残して149万9,999円 |
計算の考え方を順番に書きます。
- 定率法は「残高×償却率」:国税庁 No.5410のとおり、定率法の償却限度額は(取得価額−既償却額)×償却率です。償却率が1.000なら、1期目の計算上の額は取得価額と同じになります。
- 最後は1円を残す:2007年4月1日以後に取得した資産は、耐用年数が終わるときに帳簿価額1円まで償却できます(No.5410)。そのため4月1日取得の例は、1期目が299万9,999円になります。
- 期の途中なら月割り:法人税法施行令59条により、10月1日から3月31日までの6か月分だけが1期目の償却限度額になります。残りは2期目です。
検算すると、4月1日取得の定率法は300万円−1円=299万9,999円、10月1日取得は150万円+149万9,999円=299万9,999円、定額法は150万円+149万9,999円=299万9,999円で、どれも合計は同じです。変わるのは「どの期に経費になるか」だけで、車の代金として出ていくお金の総額は変わりません。
法人の場合、償却費として損金になるのは、会社が償却費として損金経理した金額のうち償却限度額までです(法人税法 第31条)。限度額いっぱいまで計上するかどうかは会社が決める形になっています。なお、のちにその車を売ったときは、売った金額と帳簿価額との差が、その期の益金または損金になります。早く償却した車ほど帳簿価額が小さいので、売却したときに益が出やすくなります。
一人法人・個人事業主の判断ポイント
同じ車でも、法人と個人事業主では「私用分をどう扱うか」と「届出がないときの償却方法」が違います。法人の車は会社のものなので、私用分は役員への給与の問題になります。個人事業主の車は自分のものなので、私用分は必要経費から外す按分の問題になります。
| 論点 | 一人法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 私用分の扱い | 役員が私用で使うと、会社から役員への経済的な利益(役員給与)に当たり得る。私用のガソリン代など個人的な費用の負担も同じ(法人税基本通達 9-2-9) | 業務に使った部分だけを必要経費にする。業務部分が50%を超えるか、業務部分を明らかに区分できることが目安(所得税法施行令 第96条/所得税基本通達 45-2) |
| 私用分が給与とみなされたとき | 毎月おおむね一定の額なら定期同額給与として損金になり得るが、そうでなければ損金不算入(法人税法 第34条/法人税基本通達 9-2-11) | 給与という考え方はない(本人は給与を受け取る立場ではない) |
| 届出がないときの償却方法 | 定率法 | 定額法(国税庁 No.2100) |
| 償却費の計上 | 損金経理した金額のうち償却限度額まで(法人税法 第31条) | 計算した金額を必要経費に入れる(所得税法 第49条) |
| 年や期の途中で買った場合 | 月割り(法人税法施行令 第59条) | 月割り(国税庁 No.2106) |
| 耐用年数・中古の簡便法 | どちらも同じ耐用年数省令(別表第一・第3条)を使う | |
個人事業主の例も架空の数字で1つだけ挙げます。4年落ちの普通自動車を1月に300万円で買い、届出をせず定額法(2年・0.500)で償却し、業務に使う割合が70%だとすると、1年目の償却費150万円のうち必要経費になるのは105万円です(150万円×70%)。残りの45万円は私用分として必要経費に入りません。
独立してから、経費になるかどうかの判断は全部自分の仕事になりました。一人法人の旅費の線引きの記事では、迷ったら「税務署の人に、この出張の目的を30秒で説明できるか」と自問していること、出張のたびに3行のメモを残していることを書きました。車も同じ構造で、説明の材料になるのは領収書より、何のために使ったかの記録だと思います。一人社長が判断するときの目安を挙げます。
- 会社のお金で買い、会社の資産として計上する:減価償却できるのは、会社が持っていて事業に使っている車です。支払いと帳簿をそろえ、車検証の名義も会社にしておくと、会社の車だと説明しやすくなります。
- 私用が混ざるなら、先に線を引く:休日の家族の外出など私用が定期的にあるなら、その分は役員給与の問題になり得ます。日付・行き先・目的・距離を残す運行の記録が、業務の車だと説明する材料になります。
- 通勤は「業務の移動」とは別の枠で考える:自分の車で通勤する役員に通勤手当を払う場合は、片道の通勤距離に応じた非課税限度額があります(国税庁 No.2585。例えば片道10km以上15km未満なら月7,300円)。令和8年度税制改正で、一定の駐車場等の料金相当額(上限月5,000円)を足せるようになり、2026年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から適用されています(国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」)。会社の車で通勤する場合を直接扱った国税庁のページは、最終更新日時点で見つけられませんでした。
- 4年落ちを選ぶ理由を「経費」にしない:フリーランスの確定申告の記事で書いたように、経費を増やせば得をするのは誤解です。1期目に多く償却しても、出ていくお金は同じで、翌期以降の経費が減るだけです。車種や年式は、仕事に必要な車かどうかで決めるのが順番です。
役員の私的使用が給与とみなされると、毎月の役員報酬と同じ「定期同額給与」のルールで判定されます。定期同額給与の要件は定期同額給与とはにまとめています。
よくある間違いと注意点
いちばん多い間違いは「会社名義にすれば、車の費用は全部経費になる」と考えることです。名義が会社でも、役員が私用で使った分は役員への経済的な利益に当たり得て、給与として扱われれば損金にならないことがあります。ほかの注意点も並べます。
- 私用分を混ぜたまま全額を損金にする:あとで否認されると、修正申告や更正で法人税を納め直し、原則として納付すべき税額の10%の過少申告加算税がかかります(国税通則法 第65条)。給与とされた部分の源泉所得税を納めていなければ、不納付加算税(原則10%・同法第67条)の対象にもなります。
- 4年落ちなら必ず1年で全額と思い込む:期の途中で買えば月割りになり、2期に分かれます(法人税法施行令 第59条)。
- 簡便法をあとから使おうとする:中古車の耐用年数の算定は、事業に使い始めた事業年度にしかできません(No.5404)。
- 大きな改造をしたのに簡便法を使う:事業に使うための資本的支出が取得価額の50%を超えると、簡便法は使えません(No.5404)。
- 個人事業主のときの感覚で定額法だと思う:届出がないとき、法人は定率法、個人事業主は定額法です。法人成りした人ほど取り違えやすいところです。
この記事は、最終更新日時点の制度で、国税庁と法令のページで確認できた内容だけを書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。相談先の選び方はいい税理士とは何かにまとめています。
車を法人の経費にするときのよくある質問
車を法人の経費にするときに、検索で一緒に調べられている「4年落ち」「中古」「減価償却」「通勤」の疑問に答えます。内容は、最終更新日時点で国税庁と法令のページで確認できたものだけです。
4年落ちの中古車は、法人だと1年で減価償却できますか?
普通自動車の4年落ちは簡便法で耐用年数2年になり、法人の法定償却方法である定率法の償却率は1.000です。期首に買って事業に使い始めれば、1期目で帳簿に1円を残した額まで償却限度額になります。期の途中で買った場合は月割りになり、2期に分かれます。
新車の普通自動車と軽自動車の耐用年数は何年ですか?
耐用年数省令の別表第一で、一般的な普通乗用車(「その他のもの」)は6年、総排気量0.66リットル以下の小型車(軽自動車)は4年です。貨物自動車は5年(ダンプ式は4年)、二輪・三輪自動車は3年です。運送事業用などは別の区分になります。
社用車を休日や通勤に使ってもいいですか?
役員が会社の車を私用で使うと、会社から役員への経済的な利益として役員給与に当たる場合があります(法人税基本通達9-2-9)。給与とされると、毎月おおむね一定でなければ損金になりません。会社の車での通勤を直接扱った国税庁のページは見つけられなかったので、使い方を決める前に税理士に確認してください。
個人事業主が車を経費にするときは、何が違いますか?
個人事業主は、業務に使った割合で按分した部分だけを必要経費にします(所得税法施行令96条・所得税基本通達45-2)。届出がないときの償却方法は定額法で、法人の定率法とは違います。耐用年数と中古の簡便法は法人と同じです。
おわりに──車の経費は、買った日より「使った日」で決まる
4年落ちの計算は、式に当てはめれば誰でも同じ答えになります。差がつくのは、その車が会社の仕事のために走ったことを、あとから説明できるかどうかです。車の経費は買った日に決まるのではなく、使った日ごとの記録で決まります。車を買う前に、どの用途で何回使うかを先に書き出してください。