最終更新:2026年10月19日
役員報酬と社会保険料の計算の結論は、「役員報酬を保険料額表に当てはめて標準報酬月額を出し、それに健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金の料率を掛けて、会社と本人で半分ずつ」です。協会けんぽ東京支部の令和8年度(2026年4月分から)の料率で計算すると、本人と会社の負担を合わせた額は、40歳未満で報酬のおよそ28.7%、40〜64歳でおよそ30.4%になります。一人法人では、その本人負担分も会社負担分も、結局は自分と自分の会社が払います。金額そのものの決め方は「一人法人の役員報酬の決め方」に書いたので、この記事では社会保険料の計算の仕組みと、月20万円・30万円・50万円の例でのシミュレーションだけを扱います。内容は最終更新日(2026年10月19日)時点の制度で書いています。
役員報酬と社会保険料の計算とは?結論から
役員報酬と社会保険料の計算とは、毎月の報酬額そのものではなく、報酬を区切りのよい等級に当てはめた「標準報酬月額」に料率を掛けて保険料を出すことです。計算の流れは次の4段です。
| 段 | やること | 使う資料 |
|---|---|---|
| 1 | 役員報酬の月額(報酬月額)を、保険料額表の「報酬月額」の範囲に当てはめる | 保険料額表(都道府県別・年度ごと) |
| 2 | その行の標準報酬月額(健康保険は50等級、厚生年金は32等級)を読む | 同上 |
| 3 | 標準報酬月額×料率で、健康保険料(40〜64歳は介護保険料を含む)・子ども・子育て支援金・厚生年金保険料を出す | 同上 |
| 4 | それぞれを会社と本人で折半し、会社だけが払う子ども・子育て拠出金を足す | 同上 |
報酬月額が29万円でも30万円でも、東京支部の表では同じ標準報酬月額30万円の行に入ります。保険料は1円単位で報酬に比例するのではなく、等級ごとに階段状に上がります。
社会保険料の仕組みと料率(令和8年度・東京都)
役員報酬にかかる社会保険料の料率は、協会けんぽの健康保険料率が都道府県ごと・年度ごとに決まり、厚生年金保険料率は全国一律の18.3%です。以下は、2026年10月19日に公式ページを開いて確認した、協会けんぽ東京支部の令和8年度の内容です。
| 項目 | 料率・内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 健康保険料率(東京都) | 9.85%。令和8年3月分(4月納付分)から適用。令和7年度は9.91% | 協会けんぽ 令和8年度保険料率 |
| 介護保険料率 | 1.62%(全国一律)。40歳から64歳までの人(介護保険第2号被保険者)が対象 | 同上 |
| 子ども・子育て支援金率 | 0.23%。一般の被保険者は令和8年4月分(5月納付分)から | 協会けんぽ 子ども・子育て支援金率 |
| 厚生年金保険料率 | 18.3%(平成29年9月に引上げが終了し固定)。事業主と被保険者が半分ずつ負担 | 日本年金機構 厚生年金保険の保険料 |
| 子ども・子育て拠出金率 | 0.36%。厚生年金の標準報酬月額にかけ、事業主だけが負担(被保険者の負担なし) | 令和8年3月分からの保険料額表(東京支部) |
| 標準報酬月額の範囲 | 健康保険は1等級5万8千円〜50等級139万円。厚生年金は1等級8万8千円〜32等級65万円 | 同上 |
| 標準報酬月額の見直し | 毎年4〜6月の報酬で定時決定し、9月から翌年8月まで適用。固定的賃金の変動で3か月平均が2等級以上変わると、4か月目から随時改定 | 日本年金機構 定時決定・随時改定 |
| 納付 | 納付対象月の翌月末日まで。事業主が本人負担分を報酬から差し引き、会社負担分と合わせて納める | 日本年金機構 厚生年金保険料等の納付 |
40〜64歳の人は、健康保険料率9.85%と子ども・子育て支援金率0.23%に、介護保険料率1.62%が加わります。合計すると、40歳未満は28.38%(9.85+0.23+18.3)、40〜64歳は30.0%(9.85+1.62+0.23+18.3)を会社と本人で折半し、会社は別に拠出金の0.36%を払います。
そもそも一人法人が加入するのは、株式会社などの法人の事業所が、事業主だけの場合も含めて厚生年金保険の適用事業所になるためです(日本年金機構「適用事業所と被保険者」)。被保険者は「労務の対償として給与や賃金を受ける」人とされていて、役員についても、法人から労務の対償として報酬を受けている人は被保険者とする通知が示されています(日本年金機構 疑義照会回答)。
社会保険料のシミュレーション──月20万・30万・50万の例
社会保険料のシミュレーションは、報酬月額を保険料額表の行に当てはめれば、あとは表の数字を足すだけでできます。下の2つの表は、役員報酬が毎月同額の架空の例を、協会けんぽ東京支部の令和8年度の保険料額表(子ども・子育て支援金を含む令和8年4月分以降)で計算したものです。
| 40歳未満の例 | 月20万円 | 月30万円 | 月50万円 |
|---|---|---|---|
| 標準報酬月額(健保・厚年) | 20万円(17等級・14等級) | 30万円(22等級・19等級) | 50万円(30等級・27等級) |
| 健康保険料(本人) | 9,850円 | 14,775円 | 24,625円 |
| 子ども・子育て支援金(本人) | 230円 | 345円 | 575円 |
| 厚生年金保険料(本人) | 18,300円 | 27,450円 | 45,750円 |
| 本人負担の合計 | 28,380円 | 42,570円 | 70,950円 |
| 会社負担(折半分+拠出金) | 29,100円 | 43,650円 | 72,750円 |
| 会社と本人の合計(月) | 57,480円 | 86,220円 | 143,700円 |
| 会社と本人の合計(12か月) | 689,760円 | 1,034,640円 | 1,724,400円 |
| 40〜64歳の例 | 月20万円 | 月30万円 | 月50万円 |
|---|---|---|---|
| 健康保険料+介護保険料(本人) | 11,470円 | 17,205円 | 28,675円 |
| 子ども・子育て支援金(本人) | 230円 | 345円 | 575円 |
| 厚生年金保険料(本人) | 18,300円 | 27,450円 | 45,750円 |
| 本人負担の合計 | 30,000円 | 45,000円 | 75,000円 |
| 会社負担(折半分+拠出金) | 30,720円 | 46,080円 | 76,800円 |
| 会社と本人の合計(月) | 60,720円 | 91,080円 | 151,800円 |
| 会社と本人の合計(12か月) | 728,640円 | 1,092,960円 | 1,821,600円 |
検算の例として、月30万円・40歳未満の本人負担を式で出します。健康保険料は30万円×9.85%÷2=14,775円、支援金は30万円×0.23%÷2=345円、厚生年金保険料は30万円×18.3%÷2=27,450円で、合計42,570円です。会社は同じ42,570円に、拠出金の30万円×0.36%=1,080円を足した43,650円を払います。どの数字も保険料額表の折半額の欄と一致します。
階段の境目も見ておきます。同じ40歳未満で報酬月額を31万円にすると、東京支部の表では標準報酬月額が32万円の行に移り、本人負担は45,408円になります。報酬を1万円上げると、本人負担だけで月2,838円増える計算です。報酬を決めるときは、候補の金額が表のどの行に入るかを先に確かめると、無駄な境目をまたがずに済みます。
一人社長の判断ポイント
一人社長の判断ポイントは、社会保険料を「本人負担」だけで見ず、会社負担と合わせた総額で、自分の会社から毎月出ていくお金として見ることです。社員がいない会社では、折半の両側にいるのはどちらも自分です。
ぼくは40歳でtiny合同会社を作り、社員はぼく一人です。「役員報酬の決め方」にも書いたとおり、法人化して大変だったと感じたのは、社会保険の手続きと毎月の支払いでした。会社員のころは、会社が保険料の半分を出していることを意識していませんでした。一人法人になると、その半分も自分の会社の口座から出ていきます。
- 報酬は「総額」の表で比べる:上の例で月30万円・40〜64歳なら、本人の手取りから引かれるのは45,000円でも、会社と合わせると月91,080円、12か月で約109万円です。報酬の候補を比べるときは、本人負担と会社負担の合計の行で比べます
- 年齢の節目を予定に入れる:40歳になると介護保険料が加わり、同じ報酬でも負担が増えます。報酬を据え置いても保険料が変わる年があることを、先に知っておきます
- 報酬を変えたら、4か月目を見る:役員報酬を変えると、変更後の報酬を初めて受けた月から4か月目に保険料が変わります(2等級以上の差がある場合)。報酬を決める日と、保険料が変わる月は別の日です
- 負担と保障をセットで考える:社会保険料は重い一方で、厚生年金は将来の年金額に反映され、健康保険には病気やケガで働けないときの傷病手当金があります。保険の選び方の全体像は「独立したら保険証はどうなるのか」にまとめました
本人負担分の健康保険料と厚生年金保険料は、所得税の社会保険料控除の対象になります(国税庁 No.1130)。手取りの試算まで詰めるなら、税金と合わせて税理士に見てもらうほうが確実です。相談先の探し方は「いい税理士とは何か」に書いています。
役員報酬の社会保険料でよくある間違いと注意点
役員報酬の社会保険料でいちばん多い間違いは、ネットで見つけた料率や保険料額表を、年度や都道府県を確かめずに使うことです。協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに違い、毎年度改定されます。
- 報酬月額にそのまま料率を掛ける:保険料は標準報酬月額に料率を掛けて出します。報酬月額が31万円なら、東京支部では32万円の行で計算します
- 子ども・子育て支援金を入れ忘れる:令和8年4月分(5月納付分)から、健康保険料とは別に0.23%が加わりました。前年度までの表や計算例をそのまま使うと、この分が抜け落ちます
- 会社だけの負担を見落とす:子ども・子育て拠出金(0.36%)は会社だけが払います。会社負担は本人負担と同額ではなく、少し多くなります
- 厚生年金の上限を今の額で固定して考える:厚生年金の標準報酬月額の上限は現在65万円ですが、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に引き上げられます(厚生労働省)。報酬が65万円を超える人は、引上げのたびに保険料が変わります
- 端数の扱いを決めていない:本人負担分に円未満の端数がある場合、報酬から差し引くときは50銭以下を切り捨て、50銭を超えると1円に切り上げます(特約があれば特約が優先)。この記事の例は端数が出ない金額を選んでいます
この記事は最終更新日時点の制度で書いています。保険料率と保険料額表は年度ごとに改定されるので、計算の前に加入している支部の最新の表で確認してください。健康保険組合に入っている場合は、その組合の料率を使います。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。
役員報酬と社会保険料に関するよくある質問
役員報酬と社会保険料について、計算方法・シミュレーション・一人社長の検索で一緒に調べられている疑問に、公式の資料で確認できた範囲で答えます。
役員報酬の社会保険料はどうやって計算しますか?
役員報酬の月額を、加入している支部の保険料額表に当てはめて標準報酬月額を出し、健康保険料率(40〜64歳は介護保険料率を加える)・子ども・子育て支援金率・厚生年金保険料率を掛けます。それぞれを会社と本人で折半し、会社は別に子ども・子育て拠出金を払います。協会けんぽ東京支部の令和8年度なら、健康保険9.85%・介護1.62%・支援金0.23%・厚生年金18.3%・拠出金0.36%です。
役員報酬30万円の社会保険料はいくらですか?
協会けんぽ東京支部の令和8年度(4月分以降)で計算した例では、40歳未満の本人負担は月42,570円、会社負担は月43,650円、合計86,220円です。40〜64歳では介護保険料が加わり、本人負担が月45,000円、会社負担が月46,080円、合計91,080円になります。支部や年度が違えば金額も変わります。
一人社長の社会保険料は、会社負担分も自分で払うのですか?
払うのは会社ですが、一人法人ではその会社の持ち主も自分なので、実質的には両方を自分が負担しています。本人負担分は報酬から差し引かれ、会社負担分と合わせて、会社が翌月末日までに納めます。報酬を決めるときは、本人負担と会社負担を合わせた総額で考えます。
役員報酬を変えたら、社会保険料はいつから変わりますか?
固定的な報酬が変わり、変更後3か月の平均で標準報酬月額が2等級以上変わる場合は、変更後の報酬を初めて受けた月から4か月目に随時改定されます。例えば7月支給分から報酬を変えたなら、10月分の保険料から変わります。2等級に届かない変更は、毎年4〜6月の報酬で行う定時決定(9月から適用)で反映されます。
おわりに──社会保険料は報酬の付属品ではなく、もう1つの報酬
一人法人の社会保険料は、報酬から引かれる付属品ではありません。会社から自分へ渡しているもう1つの報酬だと考えると、判断がぶれなくなります。
月30万円の報酬を払う会社は、実際には毎月30万円に加えて、8万〜9万円ほどの保険料を自分のために出しています(東京支部・令和8年度の例)。そのうちの一部は将来の年金と、働けなくなったときの保障に変わります。今日やることは1つだけです。加入している支部の今年度の保険料額表を開いて、いまの報酬がどの行に入っているかを確かめ、本人負担と会社負担を足した月額を書き出してください。それが、あなたの会社が本当に払っている役員報酬の額です。