独立したら、固定費は通信から見直すのがいちばん効きます。一度手続きすれば効果が毎月ずっと続き、手間は1時間ほどで済むからです。そのあとに保険、サブスク、口座や会計まわりの順で見ていきます。
固定費がなかなか下がらない理由は、金額の大きさではありません。放っておいても困らないからです。毎月同じ額が引き落とされ、何も起きない。だから見直すきっかけが来ないまま、何年も払い続けてしまいます。
ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働き、40歳で独立して一人法人をやっています。先日、15年使っていたソフトバンクから楽天モバイルに乗り換えて、同じ無制限の使い方で年間約5万円の差があると分かりました(楽天モバイルに乗り換えたときの差額計算)。この記事は、その続きとして、独立した人が固定費を見直す順番と判断基準を整理したものです(2026年10月時点の情報です)。
独立後の固定費は「効果が続く×手間が少ない」順に見直す
固定費を見直す順番は、1回の手続きで効果が毎月続くものから、手間の少ないものへと並べるのが基本です。金額の大きいものから手をつけると、手続きが重くて途中で止まります。
この基準で並べると、順番はこうなります。
| 順番 | 項目 | 独立で何が変わるか | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 1 | スマホ・通信 | 家族割・会社の法人割引が使えなくなることがある | いまの月額と、割引の適用条件 |
| 2 | 保険 | 会社の団体保険が退職で終わる/傷病手当金がなくなる | 何に入っていて、何がなくなったか |
| 3 | サブスク | 会社が払っていたツールを自分で払う/個人と法人で二重契約になる | クレジットカードの明細3か月分 |
| 4 | 口座・会計・バックオフィス | 振込手数料や会計ソフトの費用が自分の負担になる | 月の振込回数と、使っている機能 |
家賃や事務所の契約も大きな固定費ですが、引っ越しや移転を伴うので別の判断になります。この記事では、手続きだけで変えられる4つに絞ります。
1番目に見直すのは通信。1時間で年間数万円が変わる
通信費は、独立した人がいちばん先に見直すべき固定費です。手続きはオンラインで1時間ほどで終わり、差額は毎月そのまま残ります。
大手3社の無制限プランは、定価で月7,425円から8,448円です。楽天モバイルの無制限は条件なしで月3,278円なので、差額は月4,000円以上、1年で約5万円になります(2026年10月時点の各社公式サイトより)。大手の割引後の最安料金は、家族3回線以上・光回線とのセット・指定カードでの支払いをそろえた人の値段で、一人で独立している人にはそもそも届きにくい価格です。
ぼくも15年間、なんとなく定価に近い金額を払い続けていました。乗り換えにかかった時間は、MNPの予約番号を取ってからeSIMが開通するまで、手を動かした時間で1時間もかかっていません。15年先延ばしにしていた作業の正体は、1時間でした。
テザリングで仕事をする人は、無制限と書いてあってもテザリングに上限があるプランがあるので、そこも確認しておきます。比較の詳細は楽天モバイルと大手3社の無制限プランの比較にまとめました。
2番目は保険。「削る」より「入り直す」が必要なことがある
保険は、独立したら削るものではなく、中身を入れ替えるものです。会社員のときに会社が用意してくれていた保障が、退職と同時に消えるからです。
生命保険文化センターの調査では、2人以上世帯が払っている生命保険の年間払込保険料は、平均で35.3万円でした(出典:生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」)。月にすると3万円近い固定費です。
ただ、独立した人が見るべきなのは金額より、保障の穴のほうです。会社員の健康保険には、病気やけがで働けなくなったときの傷病手当金がありますが、国民健康保険には原則としてありません。会社の団体保険に入っていた人は、退職と同時にその保障もなくなります。
つまり、会社員のころと同じ保険にそのまま入り続けていると、いらない保障に払い続けながら、本当に必要な「働けなくなったときの収入」が空いている、ということが起こります。見直すときは、いま何に入っていて、独立で何がなくなったかを書き出すところから始めます。
独立後の健康保険の選び方は独立したら保険証はどうなるのかに、保険の全体像を誰かと一緒に整理したい場合はFPの無料オンライン相談の使いどころに書いています。
3番目はサブスク。明細3か月分を見れば終わる
サブスクは、クレジットカードの明細を3か月分並べれば、見直しがほぼ終わります。毎月引かれているものと、年に1回だけ引かれているものを両方拾えるからです。
独立した人のサブスクには、会社員のときにはなかった2つの罠があります。ひとつは、会社が払っていたツールを、そのまま個人で契約し直していること。もうひとつは、同じサービスを個人のカードと法人のカードの両方で契約していることです。
特に二重契約は、独立した直後に起きやすいと思います。とりあえず個人のカードで始めて、法人口座ができてから法人でも契約し、個人のほうを解約し忘れる。金額は小さくても、気づかなければ何年でも続きます。
見直すときは、ひとつずつ「先月これを使ったか」だけで判断します。「いつか使うかもしれない」は、ほぼ使いません。
4番目は口座と会計。手数料は回数で効いてくる
口座や会計まわりの固定費は、1回あたりは小さく、回数で効いてきます。振込が月に何回あるかで、選ぶべき銀行が変わります。
一人法人でも、外注先への支払いや経費の精算で、振込は意外と発生します。振込手数料が1回数百円の銀行と、100円前後の銀行では、振込が多い月ほど差が開きます。法人口座の手数料と開設の手間はGMOあおぞらネット銀行の法人口座で実際の日数とあわせて書きました。
会計ソフトも、使っている機能に対して高いプランを払っていないかを確認します。freeeとマネーフォワードの比較では、一人法人で必要な機能の範囲を整理しています。
「放っておいても困らない契約」が最後まで残る
固定費の見直しでいちばん大事なのは、困っていない契約こそ疑うことです。困っている契約は、放っておいても自分で見直します。
独立したとき、ぼくは会社の企業型確定拠出年金をiDeCoに移しました。選ばないと手続きが進まないので、調べて、比べて、決めました。一方で、国民年金は切り替えの手続きだけで済ませていて、ほかの選択肢を調べることはしませんでした。何もしなくても手続きが完了してしまうものは、比べる機会そのものが来ないからです。
固定費も同じ構造をしています。スマホの契約は、何もしなくても毎月つながる。保険も、何もしなくても毎年更新される。困らないから、見直すきっかけが来ない。15年変えなかったスマホの契約は、まさにこれでした。
だから、固定費の見直しは「困ったときにやること」ではなく、独立したタイミングで一度だけやる棚卸しだと考えています。独立は、会社が決めてくれていた契約を、全部自分の判断に戻すタイミングだからです。
よくある質問
独立したら、まず何の固定費から見直すべきですか?
スマホなどの通信費からがおすすめです。手続きはオンラインで1時間ほどで終わり、差額が毎月ずっと残ります。大手3社の無制限と楽天モバイルでは、条件によって年間で約5万円の差が出ます。
独立したら、生命保険は解約したほうがいいですか?
解約より、中身の入れ替えを考えたほうがいいと思います。会社員の健康保険にあった傷病手当金は、国民健康保険には原則としてありません。働けなくなったときの収入を補う保障が空いていないかを先に確認してください。
個人と法人でサブスクを二重に契約していないか、どう確認すればいいですか?
個人と法人のクレジットカードの明細を、それぞれ3か月分並べるのが確実です。同じサービス名が両方に出ていたら、どちらか一方を解約します。年払いのサービスは月の明細に出ないので、1年分の明細も一度見ておくと安心です。
固定費の見直しは、どのくらいの頻度でやればいいですか?
独立したタイミングで一度まとめてやり、そのあとは年に1回、確定申告や決算の時期に明細を見返すくらいで十分です。毎月見直そうとすると続かないので、年に1回の行事にしてしまうほうが現実的です。
まとめ:固定費は、独立したときに一度だけ棚卸しする
独立後の固定費は、通信、保険、サブスク、口座と会計の順に見直します。効果が毎月続き、手間が少ないものから手をつけると、途中で止まりません。
今日やることは1つだけです。スマホの料金明細を開いて、いまの月額と、割引の条件に自分が当てはまっているかを確認する。それだけで、乗り換えるべきかどうかが分かります。
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放っておいても困らない契約ほど、長く払い続けてしまいます。困っていないうちに見直すのが、独立した人のいちばん簡単な節約だと思います。
(この記事の情報は2026年10月時点のものです。料金・保障内容は各社の公式サイトでご確認ください)