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簡易課税とは?事業区分とみなし仕入率・届出書と5000万円の線

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最終更新:2026年10月19日

簡易課税とは、売上にかかる消費税額に「みなし仕入率」を掛けた額を、仕入れにかかる消費税額とみなして納付税額を計算する制度です。使えるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を出した課税事業者です。みなし仕入率は事業区分ごとに90%から40%までの6段階で、マーケティング支援・コンサル・デザイン・ライターのようなサービス業は、国税庁の区分では原則として第5種(50%)に入ります。この記事では、国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)と令和8年度税制改正の資料、e-Gov法令検索で確認できた範囲だけを使って、事業区分の表、届出書の期限と2年の縛り、2割特例・3割特例との比べ方を整理します。内容は最終更新日時点の制度にもとづいています。

簡易課税とは?結論から

簡易課税は「仕入れの消費税を1件ずつ集計しない代わりに、売上の消費税から決まった割合を引く」計算方法で、経費の少ないサービス業ほど一般課税より納付税額が少なくなりやすい制度です。要点を表にします。

項目 内容 確認した公式ページ
使える人 「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者 国税庁 No.6505
規模の条件 基準期間(個人事業者は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の課税期間 同上/消費税法 第37条第1項
計算の考え方 売上にかかる消費税額×みなし仕入率=仕入れにかかる消費税額とみなし、売上の消費税額から引く 国税庁 No.6505
みなし仕入率 第1種90%・第2種80%・第3種70%・第4種60%・第5種50%・第6種40% 国税庁 No.6509
届出の期限 原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで 国税庁 消費税簡易課税制度選択届出手続
やめるとき 届出の効力が生じた課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でないと、不適用届出書を出せない(事業を廃止した場合を除く) 国税庁 No.6505

簡易課税は、仕入れのインボイスを集めて計算する方法ではありません。国税庁の令和8年度税制改正特集でも、簡易課税の納付税額は売上税額が分かれば計算でき、インボイスの保存は不要と図で説明されています。その代わり、実際の経費が多い年でも、引けるのはみなし仕入率の分だけです。

簡易課税の制度・要件──事業区分とみなし仕入率

みなし仕入率は売上の種類ごとに決まり、判定は原則として取引ごとに行います。国税庁のタックスアンサーNo.6509(令和8年4月1日現在法令等)の区分をそのまま表にします。

事業区分 みなし仕入率 該当する事業(国税庁 No.6509)
第1種事業 90% 卸売業(他から購入した商品を、性質・形状を変えずに他の事業者に販売する事業)
第2種事業 80% 小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)
第3種事業 70% 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業
第4種事業 60% 第1・2・3・5・6種以外の事業(飲食店業など)。第3種から除かれる加工賃などを対価とする役務の提供や、自分で使っていた固定資産の売却も第4種
第5種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く)
第6種事業 40% 不動産業

第3種と第5種は、おおむね日本標準産業分類の大分類を基礎に判定します。マーケターや一人で独立した人に関係しそうな業種を、国税庁の質疑応答事例「日本標準産業分類からみた事業区分」で確かめた結果が次の表です。

仕事の例 日本標準産業分類の小分類 事業区分 出典
広告の企画・出稿の取りまとめ 広告業〔731〕 第5種 質疑応答事例(大分類L)
経営・マーケティングのコンサルティング 経営コンサルタント業〔728〕 第5種
デザイン、文章の執筆 デザイン業〔726〕、著述・芸術家業〔727〕 第5種
ソフトウェア開発、Webサービスの運営 ソフトウェア業〔391〕、インターネット附随サービス業〔401〕 第5種 質疑応答事例(大分類G)
広告物の制作、書籍の出版 広告制作業〔415〕、出版業〔414〕 第3種(原材料の支給を受けて行う加工は第4種)

見落としやすいのは最後の行です。国税庁の表では、日本標準産業分類で「広告業」に当たれば第5種ですが、「広告制作業」に当たれば第3種とされています。印刷を自分で行わない出版も第3種です。同じ「広告の仕事」でも、取引の中身によって率が20ポイント変わることがあるので、自分の売上がどちらに当たるかは取引ごとに確かめます。なお国税庁は、この表は目安で、例示のない取引は個別に判定する必要があると注記しています。

2種類以上の事業をしている場合は、事業ごとに売上を区分して計算します。区分していない売上には、その中で一番低いみなし仕入率が使われます。1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上を占めるときは、その事業のみなし仕入率を全体に使える特例もあります(国税庁 No.6505)。

届出書の出し方と、一般課税・2割特例との比べ方

簡易課税を使うかどうかは、届出の期限と、一般課税・2割特例・3割特例と比べたときの納付税額の差で決めます。まず届出の手順を並べます。

  1. 基準期間の課税売上高を確かめる:5,000万円以下の課税期間でなければ、届出をしていても簡易課税は使えません。
  2. どの課税期間から使うかを決める:原則は、その課税期間の初日の前日までに提出します。事業を開始した日の属する課税期間なら、その課税期間中に出せば、その期から使えます(消費税法 第37条第1項)。
  3. 例外の期限を確かめる:免税事業者が2029年(令和11年)9月30日までの日の属する課税期間にインボイスの登録を受けた場合は、登録日の属する課税期間中に出せば、その期から使えます。2割特例・3割特例を使った課税期間の翌課税期間から使う場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに出せば足ります(翌課税期間が2026年9月30日以前に終了する場合は、その期の末日まで)。
  4. 様式を選んで出す:国税庁の手続ページには、2026年(令和8年)9月30日以前提出用と10月1日以後提出用の2つの様式があります。e-Taxソフト(WEB版)か、書面の持参・送付で、納税地の所轄税務署長に出します。
  5. 2年は続ける前提で決める:やめるには不適用届出書が要り、届出の効力が生じた課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ出せません。

次に計算を比べます。数字はすべて架空の例で、消費税と地方消費税を合わせた10%で概算し、端数処理と地方消費税の内訳は省きます。例は、マーケティング支援だけを行う一人法人で、1年間の課税売上高が税抜1,200万円(売上の消費税額120万円)、課税仕入れが税抜200万円(仕入れの消費税額20万円)の場合です。

計算方法(例) 計算 納付税額 使える条件
一般課税 120万円-20万円 100万円 課税事業者なら誰でも
簡易課税(第5種) 120万円-120万円×50% 60万円 基準期間の課税売上高5,000万円以下・事前の届出
2割特例 120万円×20% 24万円 インボイス登録で免税事業者から課税事業者になった人で、2026年9月30日を含む課税期間まで(基準期間の課税売上高1,000万円以下など)
3割特例 120万円×30% 36万円 個人事業者だけ。2027年分・2028年分(法人は使えない)

検算します。簡易課税で引ける額は120万円×50%=60万円なので、納付は120万円-60万円=60万円です。一般課税が簡易課税(第5種)より有利になるのは、仕入れの消費税額が売上の消費税額の50%を超えるとき、つまりこの例なら課税仕入れが税抜600万円を超えるときです。役員報酬や給与は課税仕入れに含まれないので(消費税法 第2条第1項第12号)、外注や仕入れが少なく人件費が中心の一人法人なら、この線は超えにくい構造です。逆に、外注費や仕入れが大きい年は一般課税のほうが有利になり得ます。

2割特例と3割特例は、簡易課税と違って事前の届出も継続の縛りもなく、確定申告書に適用を受ける旨を付記して使います(国税庁 令和8年度税制改正特集)。第5種の事業なら、使える期間はそちらのほうが納付税額は少なくなります。簡易課税が効いてくるのは、それらの特例が終わった後です。

一人法人・個人事業主の判断ポイント

簡易課税の仕組みは法人も個人事業主も同じですが、その手前にある2割特例・3割特例と、基準期間の数え方が違います。いつ簡易課税への切り替えを考えるかは、立場によってずれるので表で分けます。

論点 一人法人 個人事業主 出典
基準期間 原則として前々事業年度 前々年 No.6505
特定期間 原則として前事業年度開始の日以後6か月 前年1月1日〜6月30日 No.6501
設立・開業直後 設立1期目・2期目は基準期間がなく原則免税(期首の資本金1,000万円以上などは除く) 開業した年と翌年は基準期間の課税売上高がなく、原則免税(特定期間の判定などは別) No.6503/No.6531
2割特例 2026年9月30日を含む事業年度まで(例:3月決算なら2027年3月期まで) 2026年分まで 令和8年度税制改正特集
3割特例 使えない 2027年分・2028年分(基準期間の課税売上高1,000万円以下など) 同上
簡易課税へ移るタイミングの例 3月決算なら2028年3月期から。届出は同期の申告期限(2028年5月31日)まで 2029年分から。届出は同年分の申告期限(2030年4月1日)まで 同上

一人法人にとっての論点は、2割特例が終わった次の期に、一般課税と簡易課税のどちらで申告するかです。3割特例がない分、法人は個人事業主より2年早くこの判断が来ます。資本金を1,000万円以上で作った会社は1期目から課税事業者になるので、そもそも2割特例の対象外です。資本金の線については資本金はいくらにするかにまとめました。

ぼくは40歳でtiny合同会社を一人で作りました。一人法人を作った話に書いたとおり、法人の決算申告は法人税・消費税・地方税を別々に申告する必要があり、個人事業主の確定申告とは別物です。消費税の計算方法を選ぶのも、その中の一つの判断になります。

簡易課税の判断が難しいのは、選んだ年ではなく2年後に効いてくるからです。会計ソフトの比較記事では、確定申告くらいExcelでできると思っていたら、帳簿付けや減価償却、消費税の処理に想定より手間がかかったと書きました。会計ソフトに数字が入っていれば、一般課税と簡易課税の試算は並べられます。ただ、来期以降の外注費や設備投資の見込みまで含めた判断は、ソフトでは決まりません。

よくある間違いと注意点

いちばん多い間違いは、簡易課税を「得な制度」だと決めつけて、事業区分と2年の縛りを確かめずに届出を出すことです。届出の期限を過ぎると、その期は一般課税で計算するしかありません。ほかの注意点も並べます。

  • 広告の仕事はすべて第5種だと思う:国税庁の表では、広告業は第5種、広告制作業は第3種です。売上が混ざるなら事業ごとに区分しないと、低いほうの率で計算されます。
  • 5,000万円を超えたら届出が消えると思う:基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた期は使えませんが、不適用届出書を出さない限り届出の効力は残り、再び5,000万円以下になった期から簡易課税に戻ります(国税庁 No.6505 Q&A)。
  • 大きな設備を買った年に届出を出そうとする:課税事業者を選択してから2年以内や、資本金1,000万円以上の新設法人の設立1・2期目に、一般課税で税抜100万円以上の調整対象固定資産を買った場合などは、一定期間、簡易課税の届出を出せません(No.6501・No.6503)。
  • 古い様式で出す:2026年10月1日以後に提出する分は、手続ページの「令和8年10月1日以後提出用」の様式を使います。
  • 2割特例と同じ感覚で使う:2割特例・3割特例は申告書への付記だけで使えますが、簡易課税は届出が要り、2年は続けることになります。
  • 飲食料品を売る事業者の特例を見落とす:2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の譲渡の税率が引き下げられ、簡易課税の計算方法にも特例が設けられます(国税庁 No.6505)。飲食料品を扱う人は、国税庁の消費税率引下げ特設サイトを確認してください。

この記事は、最終更新日時点の制度で、国税庁とe-Gov法令検索のページで確認できた内容だけを書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。相談先の探し方はいい税理士とは何かにまとめています。

簡易課税に関するよくある質問

簡易課税について、一緒に検索されている「届出書」「事業区分」「5000万円」と、2割特例との比べ方の疑問に答えます。内容は、最終更新日時点で国税庁のページで確認できたものだけです。

簡易課税の届出書はいつまでに出せばいいですか?

原則として、簡易課税を使いたい課税期間の初日の前日までです。事業を開始した日の属する課税期間なら、その期間中に出せば、その期から使えます。2割特例・3割特例を使った課税期間の翌課税期間から使う場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに出せば間に合います。

マーケティング支援やコンサルは簡易課税の第何種ですか?

国税庁の質疑応答事例では、広告業・経営コンサルタント業・デザイン業・著述業は第5種(みなし仕入率50%)とされています。ただし広告制作業と出版業は第3種(70%)とされているので、広告物を作って納品する取引は区分を確かめてください。判定は取引ごとに行います。

簡易課税と2割特例はどちらが得ですか?

第5種の事業なら、2割特例(納付は売上税額の20%)のほうが簡易課税(同50%)より納付税額は少なくなります。ただし2割特例は2026年9月30日を含む課税期間までで、法人には後継の3割特例がありません。特例が終わった後の期に、一般課税と簡易課税のどちらにするかを比べることになります。

簡易課税は5000万円を超えたらどうなりますか?

基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた課税期間は、届出をしていても簡易課税を使えず、一般課税で計算します。届出の効力は不適用届出書を出さない限り残るので、その後の基準期間が5,000万円以下に戻れば、また簡易課税が適用されます。

おわりに──簡易課税は、計算の手間ではなく2年先の経費で選ぶ

簡易課税は、仕入れの消費税を集計しなくてよい制度に見えて、実際には「これからの2年、経費の消費税が売上の何割に収まるか」を先に賭ける制度です。サービス業なら第5種の50%が基準になり、2割特例や3割特例が終わる時期は法人と個人で違います。決めるのは、どちらの計算が楽かではなく、2年後の外注費と設備投資がどれくらいになりそうかです。

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