独立・フリーランス

お中元の作法|独立して初めてわかった、贈る前に決めておくこと

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結論から書きます。お中元でいちばん大事なのは、何を贈るかではなく、来年も贈るかどうかを先に決めることです。お中元は単発の贈り物ではなく、続けることが前提の習慣だからです。一度贈ると、翌年贈らなかったこと自体がひとつの意思表示になります。

ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働き、40歳でtiny合同会社を設立しました。会社員のあいだ、お中元は総務がやることで、自分の問題ではありませんでした。独立して初めて、贈る側になりました。そのとき調べたことと、実際に迷ったことを整理します。

お中元とは何か

お中元とは、日ごろ世話になっている相手へ、夏に感謝を伝えるために贈り物をする習慣です。もともとは中国の道教にある中元(旧暦七月十五日)が、日本のお盆の風習と結びついたものとされています。現在は宗教的な意味はほとんど薄れ、ビジネス上の関係を保つための挨拶として残っています。

時期は地域で違います。関東はおおむね七月初旬から七月十五日まで、関西は七月中旬から八月十五日までが目安です。相手の所在地に合わせるのが基本で、迷ったら早いほうに寄せておくと外しません。

独立して初めて、これが自分の問題になった

会社員のころ、お中元は会社の名前で届き、会社の名前で贈られていました。誰に何を贈るかを決めていたのは自分ではありません。だから独立した最初の夏、ぼくは何も贈りませんでした。判断したのではなく、単純に発想がなかったのです。

その夏、取引先から届きました。個人でやっている方からも届きました。受け取って初めて、これは会社がやる事務ではなく、人が人に対してやることだったと分かりました。会社の看板があるうちは、看板が代わりに関係を維持してくれていたわけです。

独立して人脈が資産になるという話は独立してわかった「人脈が全て」の現実にも書きましたが、その資産を維持する具体的な作業のひとつが、これでした。

贈る前に決めるべきは、続けるかどうか

ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。お中元は、始めた時点で毎年の約束になります。翌年から急にやめると、関係が変わったという合図として読まれかねません。相手にそう伝えたいなら別ですが、たいていはそんなつもりはないはずです。

だから贈る前に、この相手と何年つき合うつもりかを考えます。独立直後は取引先が増えたり減ったりします。勢いで十件に贈ると、翌年その半分は関係が薄くなっていて、続けるのも不自然、やめるのも気まずいという状態になります。

マーケティングでいえば、これは新規獲得ではなく継続の設計です。続けられる範囲まで数を絞るほうが、広く配って途切れさせるより、ずっと効きます。ぼくは三件から始めました。少ないと思われるかもしれませんが、確実に続けられる数から始めるほうが、結果的に長く残ります。

一度きりの感謝を伝えたいだけなら、お中元にしないという選択もあります。のしの表書きを「御礼」にすれば、継続の含みが消えます。あの案件を助けてもらった、という単発の御礼はこちらのほうが正確です。表書きひとつで意味が変わるのは、覚えておいて損がありません。

時期を逃したときは、名前が変わる

間に合わなかった場合でも、贈れなくなるわけではありません。時期に応じて、のしの表書きが変わっていきます。

  • お中元:関東は七月十五日まで、関西は八月十五日まで
  • 暑中御見舞:お中元の時期を過ぎてから、立秋の前日まで。2026年の立秋は8月7日なので、8月6日までです
  • 残暑御見舞:立秋以降。2026年は8月7日から。処暑(8月23日)までが目安で、遅くとも八月中に届くようにします

相手が目上の場合、見舞うという言葉を避けて「暑中御伺」「残暑御伺」とするのが丁寧です。取引先の役員クラスなど、格を意識する相手にはこちらを使います。

つまり、七月下旬にこの記事を読んでいるなら、関東の相手にはもうお中元では届きません。暑中御見舞に切り替えます。時期を過ぎたことに気づかず、お中元の表書きのまま八月に届くほうが、印象としてはよくありません。遅れたこと自体より、暦を見ていないことのほうが伝わってしまいます。

贈ってはいけない相手がいる

感謝を伝えるつもりが、相手を困らせることがあります。

公務員には贈れません。国家公務員倫理法により、利害関係者からの贈与は禁じられています。地方公務員も各自治体の条例で同様の制限があります。相手が受け取れないだけでなく、報告義務が発生することもあります。官公庁が取引先にある場合は、この点をまず確認してください。

民間企業でも、コンプライアンス規定で贈答品の受け取りを禁止している会社は増えています。金融や医療関係では珍しくありません。返送の手間をかけさせることになるので、初めての相手には、事前に確認するか、そもそも贈らないほうが親切です。

もうひとつ、相場から外れた高額なものも避けます。相手に返礼の負担を感じさせると、感謝ではなく貸しになってしまいます。

何を贈るか

相場は三千円から五千円が中心で、特に世話になった相手で一万円程度というのが一般的なところです。取引先へのビジネス上の贈答なら、三千円から五千円で十分に成立します。

定番が消え物と呼ばれる、食べたら残らないものである理由は明快です。相手の好みや家の事情を知らなくても、外れにくいからです。置き場所を取らず、処分にも困りません。ビール、コーヒー、素麺、果物、菓子折りといったところが選ばれ続けているのは、理屈が通っているからです。

逆に、相手の趣味を前提にしたものや、飾る場所が要るものは、関係が深い相手にだけ有効です。贈り物で相手を試さないほうがいい。ぼくはそう考えています。

親しい相手や、独立の恩人にあたる人へ、形に残らない体験を贈るという選択肢もあります。ソウ・エクスペリエンスのような体験ギフトのカタログは、相手が自分で選べるので好みを外しません。ただし、これは定番ではありません。初めて贈る取引先には消え物のほうが無難です。相手との距離が近い場合の選択肢として考えてください。

お中元は経費になるのか

なります。取引先へのお中元・お歳暮は、原則として接待交際費として計上できます。ここは独立した人にとって実務的に効く話なので、少し丁寧に書きます。

まず、個人事業主と法人で扱いが違います。

  • 個人事業主:接待交際費に上限はなく、事業に関係するものであれば全額を経費にできます
  • 法人:資本金一億円以下の中小企業なら、年間八百万円までが損金に算入できます

勘定科目が変わる場合もあります。特定の取引先への贈答は接待交際費ですが、社名やロゴを入れた品を不特定多数へ配る場合は広告宣伝費です。宣伝が目的か、個別の関係維持が目的かで分かれる、と理解しておけば判断できます。従業員へ贈るなら福利厚生費になります。

注意点がひとつあります。私的な贈り物と混ざると、経費性を疑われます。親族や友人へのお中元は当然ながら経費になりません。誰に何をいくらで贈ったかの送り先リストを残しておくと、後から説明できます。ぼくは購入時の明細に相手先を書き添えて保存しています。手間ではありません。年に一度のことです。

この手の判断が積み重なるのが独立後の面倒なところで、会計ソフトを入れておくと処理そのものは軽くなります。選び方はfreeeとマネーフォワードの比較記事に書きました。金額が大きくなってきたり、判断に自信が持てないなら、税理士に相談するのが早いです。税理士ドットコムは無料で相談先を探せます。見分け方についてはいい税理士とは何かに整理しています。

確定申告そのものの流れはフリーランスの確定申告 完全ガイドにまとめました。

よくある質問

お中元はいつまでに贈ればいいですか

関東はおおむね七月初旬から七月十五日まで、関西は七月中旬から八月十五日までが目安です。相手の所在地に合わせます。判断に迷う場合は早めに贈っておくと、どちらの地域でも問題になりません。

お中元の時期を過ぎてしまいました

のしの表書きを変えれば贈れます。立秋の前日までは暑中御見舞、立秋以降は残暑御見舞です。2026年の立秋は8月7日なので、8月6日までが暑中御見舞、8月7日から八月中が残暑御見舞にあたります。目上の相手には御伺とすると丁寧です。

お中元の相場はいくらですか

三千円から五千円が中心です。特に世話になった相手で一万円程度が上限の目安になります。高額すぎると相手に返礼の負担を感じさせるため、相場の範囲に収めるほうが意図が伝わります。

お中元は経費にできますか

取引先へのものであれば、原則として接待交際費として計上できます。個人事業主は上限なく全額、資本金一億円以下の法人は年間八百万円までが損金算入の範囲です。社名入りの品を不特定多数に配る場合は広告宣伝費、従業員へ贈る場合は福利厚生費になります。

一度贈ったら、毎年贈らないといけませんか

形式上の義務はありませんが、お中元は継続を前提とした習慣なので、途中でやめると関係の変化として受け取られることがあります。単発の感謝を伝えたいだけなら、表書きを御礼にすると継続の含みが出ません。

お中元を贈ってはいけない相手はいますか

公務員には贈れません。国家公務員倫理法により利害関係者からの贈与が禁じられており、地方公務員も条例で同様に制限されています。民間企業でも社内規定で受け取りを禁止している場合があるため、初めての相手には事前確認が安全です。

お中元をいただいたら、お返しは必要ですか

本来、お中元は感謝を伝えるものなので、返礼の義務はありません。まずは受け取ったことを伝えるお礼状か、電話やメールでの連絡を優先します。同格の関係を保ちたい場合は、同程度の品を暑中御見舞などの形で贈ります。

まとめ

お中元は、感謝の表明であると同時に、来年も関係を続けますという合図です。だから最初に決めるべきなのは品物ではなく、続ける相手を誰にするかでした。

会社員のあいだは、会社の看板が関係の維持をやってくれています。独立すると、それが全部自分の作業になります。面倒だと感じるかもしれませんが、誰との関係を続けたいのかを毎年ひとつずつ選んでいく作業だと思うと、意味が変わってきます。

数を絞って、続けられる範囲でやる。時期を逃したら表書きを変えて出す。経費の扱いは先に知っておく。この三つを押さえておけば、あとは気持ちの問題です。

独立まわりで先に知っておくべきことはマーケターが独立・開業前にやることリストにまとめてあります。

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