FPの無料オンライン相談は、使っていいと思います。ぼくも独立してから、もっと早く誰かに家計を見せておけばよかったと思っています。
ただし、ひとつだけ先に知っておいたほうがいいことがあります。相談料が無料なのは、その1時間の対価を、あなたではない誰かが払っているからです。
日本FP協会が示している有料相談の目安は、1時間あたり5,000円から10,000円程度。無料相談は、そこがゼロになっています。ゼロになった分のお金がどこから出ているかを知らないまま座ると、家計の相談が、いつのまにか保険の相談にすり替わります。
なぜ、無料で相談できるのか
無料FP相談の多くは、提携している保険会社や金融機関から支払われる販売手数料で成り立っています。
相談者が保険や金融商品を契約すると、その保険会社からFP、あるいはFPが所属する代理店に手数料が入る。だから相談者からは1円も取らなくても事業として回ります。転職エージェントが求職者から料金を取らず、採用した企業から成功報酬を受け取るのと同じ構造です。
ここで大事なのは、この仕組みが悪ではないということです。
ぼくは博報堂とアクセンチュアで、採用する側として転職エージェントに成功報酬を払う立場にいました。手数料が発生する仕組みだからこそ、相手も真剣に時間を使ってくれます。無料であることに後ろめたさを感じる必要はありません。
ただ、構造として避けられないバイアスがひとつあります。FPの売上は、あなたが何かを契約したときに初めて立ちます。あなたが「今のままで大丈夫そうです」と帰った瞬間、その面談はゼロ円で終わる。悪意ではなく、力学の問題です。
これを知っているかどうかで、同じ1時間の使い方が変わります。
無料と有料、どちらを選ぶか
判断は単純で、「商品の提案がほしいか」「判断の材料だけがほしいか」で分かれます。
| 無料相談 | 有料相談 | |
|---|---|---|
| 費用 | 0円 | 1時間5,000〜10,000円程度 |
| 収益源 | 保険会社からの販売手数料 | 相談者からの相談料 |
| 提案の範囲 | 提携先の商品に寄りやすい | 商品提案が前提にない |
| 向いている人 | 保険や資産形成を実際に見直したい | 現状の整理と方針だけ知りたい |
最初の1回は無料でいい、というのがぼくの考えです。自分の家計の穴がどこにあるかも分からない段階で、有料相談に何を聞けばいいかを組み立てるのは難しい。無料で全体像を見てもらって、判断に迷う論点が残ったら、そこだけ有料で第二の意見を取る。この順番が現実的だと思います。
独立した人ほど、この相談の必要度が上がる
会社員のうちは、お金まわりの面倒な部分を会社が代行してくれています。
年末調整で税金の計算は終わり、健康保険は給与から引かれ、厚生年金にも自動で入っている。団体保険が用意されている会社もあります。自分で決めた覚えがないのに、だいたい整っている状態です。
独立すると、これが全部こちらに来ます。ぼくは40歳で会社を作ったとき、健康保険証をどうするか、iDeCoの上限額が変わるのをどう処理するか、ひとつずつ調べました。調べれば分かることばかりですが、調べる順番を教えてくれる人はいませんでした。
ここがFP相談の本来の使いどころだと思っています。個別の制度の答えは検索で出ます。出ないのは、自分の場合はどれから手をつけるべきかという順番のほうです。
相談の前に用意する3つの数字
用意せずに座ると、一般論で終わります。逆に、この3つを持っていくだけで、話の解像度がまるで変わります。
1. 手取りの月額と、年間の変動幅
独立していると月ごとの入金が揺れます。平均ではなく、いちばん少なかった月の数字を持っていく。守るべき下限が決まります。
2. 毎月出ていく固定費の合計
家賃、通信、保険料、サブスク。合計額を1行で言えるようにしておく。ほとんどの見直しは、ここから始まります。
3. 今入っている保険の証券
保障内容を覚えている人はまずいません。証券を出せば、重複しているところをその場で指摘してもらえます。オンラインなら画面共有か、事前にPDFで渡せます。
もうひとつ。相談を受ける人が何の資格を持っているかは、最初に聞いていいことです。FP技能士は国家資格で1〜3級、CFPとAFPは日本FP協会の民間資格で、CFPが上位にあたります。誰が担当かは、たいてい割り当てで決まります。聞くのは失礼ではありません。
オンラインである意味
オンラインを勧める理由は、移動時間が消えることではありません。断りやすいからです。
店舗に出向いて、資料を広げられて、担当者が目の前にいる状態で「持ち帰って考えます」と言うのは、けっこうな精神力を使います。オンラインなら、画面を閉じれば終わります。この差は思っているより大きい。
それに、家にいれば保険証券も通帳も手元にあります。「あとで確認して連絡します」が減って、1回の面談で終わる確率が上がります。
その場で結論を出さないことだけ、先に決めておく。提案書を受け取って、一度画面を閉じて、翌日読み返す。それで消える契約なら、もともと必要のない契約です。
こういう人は、使わなくていい
向かない人もいます。
保険にまったく入っておらず、これからも入るつもりがない人。すでに顧問のFPや、家計まで見てくれる税理士がついている人。そして、勧められると断れない自覚がある人です。
最後のひとつは冗談ではなく、けっこう大事だと思っています。断れない人が無料相談を受けると、要らない契約が1本増えて終わることがあります。その自覚がある場合は、有料相談で商品提案のない場を最初から選んだほうが、結果的に安く済みます。
税理士は入れたのに、家計だけ誰も見ていなかった
独立してすぐ、ぼくは税理士を探しました。法人の決算は自分では無理だと分かっていたからです。会計ソフトも入れて、経費の線引きも調べて、会社側のお金はそれなりに整いました。
でも、しばらく経ってから気づきました。会社のお金は専門家に見てもらっているのに、自分の家計は誰にも見せていない。
会社員のときは、家計を見せる必要がありませんでした。毎月同じ額が入って、税金と社会保険は引かれた状態で振り込まれる。考える余地がないから、考えていなかった。それが独立して、入金額が月ごとに変わり、社会保険料の請求が別で来るようになって、初めて自分が何も設計していなかったことに気づきました。
いちばん効いたのは、金額の判断ではありません。確定申告のたびに、通帳を見ながら「これで合っているのだろうか」と一人で考えていた時間が、ずっと無駄だった。判断が間違っていたわけではなく、確認する相手がいないことのコストのほうが大きかったと思っています。
だから、家計を他人に見せることそのものに価値があると考えるようになりました。無料であれ有料であれ、一度きちんと言語化して人に説明すると、それだけで抜けが見えます。ぼくが提案書を人に見せた瞬間に穴に気づくのと、たぶん同じことです。
よくある質問
Q. 無料相談で、しつこく勧誘されませんか?
その場で契約しないと決めておけば、たいていは提案書を受け取って終わります。オンラインなら画面を閉じれば面談は終了するので、対面より断りやすいのは確かです。担当者が合わないと感じたら、変更を申し出ることもできます。
Q. 保険に入る気がなくても相談していいですか?
問題ありません。ただ、無料相談の収益源が保険の販売手数料である以上、提案は保険や資産形成の商品が中心になります。純粋に家計の整理だけを求めるなら、有料の独立系FPのほうが噛み合います。
Q. 相談は何分くらいかかりますか?
初回は60分前後が一般的です。手取り・固定費・保険証券の3つを事前に用意しておくと、1回で具体的な話まで進みます。
Q. 独立して収入が不安定でも相談できますか?
できます。むしろ収入が変動する人のほうが、固定費と保障の設計を見直す効果が大きくなります。相談時は年収の平均ではなく、いちばん少なかった月の手取りを基準に伝えると、現実的な設計になります。
Q. 相談する人の資格は選べますか?
多くのサービスでは担当が割り当てで決まりますが、資格や得意分野を事前に確認することはできます。FP技能士は国家資格(1〜3級)、CFPとAFPは日本FP協会の民間資格で、CFPが上位資格にあたります。
(この記事の情報は2026年8月3日時点のものです。相談料の目安は日本FP協会の公表資料によります)