最終更新:2026年10月19日
減価償却とは、長く使う物の代金を、使う年数に分けて経費にする手続きです。パソコンや車のように何年も使う物は、買った年に全額を経費にせず、法律で決められた年数(法定耐用年数)に分けて少しずつ経費にします。分け方には毎年同じ額を経費にする定額法と、最初に多く経費にする定率法があり、届出をしないときの方法は法人が定率法、個人事業主が定額法です(パソコンなど器具・備品の場合)。この記事では、国税庁のタックスアンサーと法令で確認できた内容だけを使って、定額法と定率法の違い、パソコン(耐用年数4年)の計算例、耐用年数表の引き方を整理します。内容は最終更新日時点の制度にもとづいています。
減価償却とは?結論から
減価償却は「何年も使う物は、使う年数で割って経費にする」というルールです。買った年に全額を経費にすると、その年だけ利益が小さく見え、翌年以降は物を使っているのに経費がゼロになるので、使う期間に費用を割り振ります。要点を表にします。
| 項目 | 内容 | 確認した公式ページ |
|---|---|---|
| 対象になる物 | 建物・建物附属設備・機械装置・器具備品・車両運搬具など、時の経過で価値が減る資産。土地や骨とう品は対象外 | 国税庁 No.2100 減価償却のあらまし |
| 何年に分けるか | 財務省令(耐用年数省令)の別表に決められた法定耐用年数。パソコン(サーバー用を除く)は4年 | 国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表(PDF) |
| 分け方 | 定額法(毎年ほぼ同額)と定率法(初めの年ほど多い)が代表的 | 国税庁 No.2106 定額法と定率法による減価償却 |
| どこまで経費にするか | 平成19年4月1日以後に取得した有形の資産は、帳簿上の価額が1円になるまで | 国税庁 No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法 |
| 減価償却しなくてよい物 | 使用可能期間が1年未満のもの、取得価額が10万円未満のもの(使い始めた年に全額を経費にする) | 国税庁 No.5403/No.2100 |
取得価額が10万円以上でも、20万円未満なら3年で均等に経費にする一括償却資産、青色申告の中小企業者等なら40万円未満(令和8年4月1日以後の取得分)を一度に経費にできる特例があります(国税庁 No.5408)。この記事では、こうした少額の扱いを使わずに、ふつうに減価償却する場合の考え方を説明します。
定額法と定率法の違い──法人と個人事業主の法定償却方法
定額法は毎年同じ額を、定率法は残っている額に一定の率を掛けた額を経費にする方法で、合計額はどちらも同じです。違うのは「いつ多く経費にするか」だけです。国税庁のNo.2106とNo.5410に書かれている計算式を並べます。
| 項目 | 定額法 | 定率法 |
|---|---|---|
| 特徴 | 償却費が原則として毎年同額 | 初めの年ほど多く、年とともに減る。償却保証額に満たなくなった年からは毎年同額 |
| 計算式 | 取得価額×定額法の償却率 | 未償却残高×定率法の償却率(償却保証額に満たない年からは、改定取得価額×改定償却率) |
| 耐用年数4年の率 | 償却率0.250 | 償却率0.500、改定償却率1.000、保証率0.12499(平成24年4月1日以後に取得した資産・200%定率法) |
| 向いている見方 | 毎年の利益を平らに見たい | 買った直後の経費を厚くしたい |
償却率・改定償却率・保証率は、国税庁の減価償却資産の償却率等表(PDF)で確認しました。どちらの方法を使えるかは資産の種類で決まり、届出をしなかったときの方法(法定償却方法)は法人と個人事業主で違います。ここがいちばん混同されやすいところなので、表で分けます。
| 資産の種類(平成19年4月1日以後の取得) | 法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| パソコン・机・カメラなどの器具備品、車両、機械装置 | 定額法か定率法を選べる。届出がなければ定率法(法人税法施行令48条の2・53条) | 定額法か定率法を選べる。届出がなければ定額法(所得税法施行令120条の2・125条) |
| 建物(平成10年4月1日以後の取得)、建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後の取得) | 定額法のみ(No.2100・各施行令) | |
| ソフトウエアなどの無形固定資産 | 定額法のみ。自社で使うソフトウエアの耐用年数は5年(国税庁 No.5461) | |
| 償却方法の届出の期限 | 確定申告書の提出期限まで(国税庁 No.5409) | 新たに業務を始めた場合は、その翌年の3月15日まで(No.2100) |
| 経費になる額 | 償却費として損金経理した額のうち、償却限度額までの額(法人税法31条) | 計算した償却費をその年の必要経費にする(所得税法49条) |
法人を作った年に出す届出の全体は会社設立後の届出一覧にまとめていて、そこにも減価償却資産の償却方法の届出書が入っています。何も出さなければ、法人のパソコンは定率法、個人事業主のパソコンは定額法で計算する、と覚えておけば十分です。
減価償却の計算例(パソコン・耐用年数4年)と耐用年数表の引き方
計算は「耐用年数を調べる→償却率を調べる→式に入れる」の3段階です。ここでは取得価額48万円のパソコン(数字は架空の例)を、事業年度の初めから1年を通して使った場合で計算します。40万円以上なので、少額の特例を使わずに減価償却する例になります。
- 耐用年数を引く:耐用年数表で「器具・備品」→「事務機器、通信機器」→「電子計算機」→「パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く。)」とたどると4年です。
- 償却率を引く:償却率等表の耐用年数4年の行を見ると、定額法は0.250、200%定率法は償却率0.500・改定償却率1.000・保証率0.12499です。
- 式に入れる:定額法は48万円×0.250=12万円が毎年の償却費です。定率法は1年目が48万円×0.500=24万円で、2年目からは残っている額に0.500を掛けます。
| 年 | 定額法の償却費 | 定額法の年末の帳簿価額 | 定率法の償却費 | 定率法の年末の帳簿価額 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 120,000円 | 360,000円 | 240,000円 | 240,000円 |
| 2年目 | 120,000円 | 240,000円 | 120,000円 | 120,000円 |
| 3年目 | 120,000円 | 120,000円 | 60,000円 | 60,000円 |
| 4年目 | 119,999円 | 1円 | 59,999円 | 1円 |
| 合計 | 479,999円 | ― | 479,999円 | ― |
検算します。定率法の償却保証額は48万円×0.12499=59,995.2円です。3年目は12万円×0.500=6万円で償却保証額以上なので、そのまま6万円です。4年目は6万円×0.500=3万円で償却保証額を下回るので、4年目の期首の残高6万円を改定取得価額にして、6万円×1.000=6万円になります。どちらの方法も最後の年は帳簿価額を1円残すので、4年目はそれぞれ1円少ない119,999円と59,999円です。合計はどちらも479,999円で、違うのは1年目に24万円を経費にするか12万円にするかだけです。
年の途中で使い始めた場合は、月数で割ります。国税庁のNo.2106は、年の中途で取得した資産の償却費を「12で除し、その年分において業務に使用していた月数を乗じて計算した金額」としています。個人事業主が同じパソコンを10月に使い始めたなら、1年目の定額法の償却費は12万円×3÷12=3万円です(例)。この場合、2〜4年目は12万円ずつで、5年目に残りの9万円から1円を引いた89,999円を経費にして終わります。法人も事業年度の途中で使い始めた資産は月数で按分します(法人税法施行令59条)。
耐用年数表は、国税庁の主な減価償却資産の耐用年数表で「種類→構造または用途→細目」の順に引きます。一人で仕事をする人がよく買う物を、表から抜き出しました。
| 物 | 種類/構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
|---|---|---|---|
| ノートパソコン・デスクトップ | 器具・備品/事務機器、通信機器 | パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く。) | 4年 |
| サーバーなど | 器具・備品/事務機器、通信機器 | 電子計算機のうち、その他のもの | 5年 |
| 複合機・コピー機 | 器具・備品/事務機器、通信機器 | 複写機、計算機など | 5年 |
| カメラ | 器具・備品/光学機器、写真製作機器 | カメラ、映画撮影機など | 5年 |
| 事務机・いす・キャビネット | 器具・備品/家具、電気機器など | 主として金属製のもの/その他のもの | 15年/8年 |
| 買ったソフトウエア(自社利用) | 無形固定資産 | その他のもの | 5年 |
表にない物は、財務省令の別表(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)で探します。
一人法人・個人事業主の判断ポイント
一人で仕事をする人にとって減価償却は、「高い物を買った年の利益と、その後の年の利益を、どう見せたいか」を決める手続きです。経費の合計は変わらないので、選ぶのはタイミングだけです。
ぼくは40歳でtiny合同会社を一人で設立しました。freeeとマネーフォワードの比較記事にも書きましたが、独立前のぼくは「確定申告くらい、Excelでできるだろう」と思っていて、実際にやってみると青色申告の帳簿付け、減価償却の計算、消費税の処理など、想定より手間がかかりました。減価償却は、1回買った物の計算が何年も続くところが手間の正体です。だから仕組みだけは自分で分かっておき、毎年の計算は会計ソフトに任せる、という分け方が合っていると思います。
法人と個人事業主で、判断の目安を分けて書きます。
| 判断の場面 | 一人法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 何も届け出ないと | 器具備品は定率法になり、買った年の経費が厚くなる | 器具備品は定額法になり、毎年同じ額になる |
| 定率法・定額法を変えたいとき | 償却方法の届出書を確定申告書の提出期限までに出す(変更は国税庁 No.5407の承認申請) | 届出書を期限までに出す(変更は、変更しようとする年の3月15日までに申請) |
| 考えておきたいこと | 役員報酬は期首に決めて1年変えられないので、大きな買い物をする年の利益の見込みと合わせて考える | 所得が年ごとに大きく変わるなら、どの年の所得を下げたいかで考える |
| 台帳 | 固定資産台帳(法人税申告書の別表16も使う) | 青色申告決算書の減価償却費の計算欄 |
役員報酬を期首に決める仕組みは一人で法人を作るということでも触れました。利益の見込みが変わるのは売上だけでなく、こうした大きな買い物の経費計上の仕方でも起きます。
よくある間違いと注意点
減価償却でいちばん多い間違いは、10万円以上の物を買った年に全額経費にしてしまうことです。10万円以上の物は、一括償却資産や少額減価償却資産の特例の要件に当てはまらない限り、耐用年数で分けて経費にします。ほかの注意点も並べます。
- 1組で判定しない:10万円未満かどうかは、通常1単位として取引される単位ごとに判定します。国税庁No.5403は、応接セットならテーブルといすの1組で判定する例を挙げています。
- 消費税の扱いを混ぜる:取得価額に消費税を含めるかは経理方式で決まり、税込経理なら税込、税抜経理なら税抜の金額です。免税事業者は税込経理になります(No.2100・国税庁 No.5403の質疑)。
- 送料や設定費を別にする:購入した資産の取得価額は、購入代金に引取運賃や購入手数料などと、業務に使うための費用を足した額です(No.2106)。
- 使い始める前に計上する:減価償却は、買った日ではなく事業や業務に使い始めた時点から始まります。年末に買って箱のまま年を越した物は、その年の償却費になりません。
- 耐用年数を自分で決める:「3年くらいで買い替えるから3年」とはできません。分ける年数は財務省令の別表に定められた法定耐用年数です(No.2100)。
この記事は、最終更新日時点の制度で、国税庁と法令のページで確認できた内容だけを書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。相談先の選び方はいい税理士とは何かに書きました。
減価償却に関するよくある質問
減価償却について、検索で一緒に調べられている「簡単に」「わかりやすく」「定額法」「定率法」の疑問に答えます。内容は、最終更新日時点で国税庁と法令のページで確認できたものだけです。
減価償却を簡単に言うと何ですか?
長く使う物の代金を、使う年数に分けて経費にする手続きです。年数は法律で決まっていて、パソコン(サーバー用を除く)なら4年です。買った年に全額を経費にするのではなく、4年かけて少しずつ経費にします。
定額法と定率法はどちらが得ですか?
最終的に経費になる合計額は同じで、違うのは経費にするタイミングです。定率法は買った直後の年に多く経費にでき、定額法は毎年同じ額になります。届出をしないと、器具備品は法人が定率法、個人事業主が定額法になります。
パソコンの減価償却はいくらからですか?
取得価額が10万円以上なら、原則として減価償却します。10万円未満なら使い始めた年に全額を経費にし、20万円未満なら3年で均等に経費にする一括償却を選べます。青色申告の中小企業者等には、40万円未満(令和8年4月1日以後の取得分)を一度に経費にできる特例もあります。
個人事業主の減価償却は届出が必要ですか?
定額法で計算するなら届出は要りません。個人事業主の法定償却方法は定額法なので、届出がなければ定額法で計算します。定率法を使いたい場合は、新たに業務を始めたなら翌年の3月15日までに税務署へ届出書を出します。
おわりに──減価償却は経費を減らす計算ではなく、経費を並べ替える計算
減価償却は、高い物を買ったときの経費を何年かに並べる手続きです。定額法でも定率法でも、最後に経費になる合計は変わりません。決めるのは、どの年に多く並べるかだけです。だから大きな物を買う前に、その年と翌年以降の利益の見込みを一度だけ並べてみてください。それができていれば、方法の選び方で迷うことはほとんどありません。