最終更新:2026年10月20日
国民年金と厚生年金の違いは、国民年金が20歳以上60歳未満の全員が入る1階部分で、厚生年金は会社員や法人の役員がその上に重ねて入る2階部分だという点です。独立して個人事業主になると第2号被保険者から第1号被保険者に変わり、保険料は令和8年度で月17,920円の定額、将来の年金と障害・遺族の保障は1階だけになります。一人法人を作って役員報酬を受け取ると、ふたたび厚生年金に入る第2号に戻ります。
ぼくは40歳で独立し、tiny合同会社を一人で設立したマーケターです。国民年金の免除は退職後の国民年金の免除の記事に、役員報酬にかかる社会保険料の計算は役員報酬と社会保険料の計算の記事に任せ、この記事は第1号と第2号の違いと、独立・法人化での区分の変わり方を、日本年金機構と厚生労働省で確認できた範囲で整理します。2026年10月20日時点の制度で書いています。
国民年金と厚生年金の違いとは?結論から
いちばん大きな違いは、保険料が定額か報酬に比例するかと、年金と保障に2階部分があるかどうかです。個人事業主は国民年金だけ、会社員と役員報酬を受け取る法人役員は両方に入ります。
| 比べる点 | 国民年金だけ(第1号被保険者) | 厚生年金にも入る(第2号被保険者) |
|---|---|---|
| 主に入る人 | 20歳以上60歳未満の自営業者・学生・無職の人など | 70歳未満の会社員・公務員、役員報酬を受け取る法人の役員 |
| 保険料 | 定額で月17,920円(令和8年度)。本人が納める | 標準報酬月額×18.3%。会社と本人で半分ずつ負担し、給料から天引き |
| 将来の老齢年金 | 老齢基礎年金だけ(満額で年847,300円・令和8年度) | 老齢基礎年金+老齢厚生年金(報酬と加入月数で決まる) |
| 障害の保障 | 障害基礎年金(1級・2級) | 障害基礎年金+障害厚生年金(1〜3級)・障害手当金 |
| 遺族の保障 | 遺族基礎年金(子のある配偶者か子が対象) | 遺族基礎年金+遺族厚生年金(子のない配偶者や父母なども対象になり得る) |
| 配偶者の扶養 | なし。20歳以上60歳未満の配偶者も第1号として自分で納める | 扶養されている配偶者は第3号被保険者になり、個別の保険料はかからない |
種別の定義は日本年金機構の年金用語集「第1号被保険者」・「第2号被保険者」・「第3号被保険者」、令和8年度の保険料は日本年金機構「国民年金保険料」(2026年4月1日更新)、厚生年金の料率は日本年金機構「厚生年金保険の保険料」で確認しました。第2号は国民年金にも同時に入っていて、国民年金の保険料を別に払う必要はありません。
保険料・将来の年金・障害と遺族・扶養の違い(制度・要件・費用)
第2号の保険料が高く見えるのは、1階の国民年金の分と2階の厚生年金の分をまとめて払っているからです。その分、老齢・障害・遺族のどれにも厚生年金からの上乗せが付き、扶養している配偶者の分の保険料もかかりません。
| 項目 | 第1号(国民年金だけ) | 第2号(厚生年金にも入る) |
|---|---|---|
| 保険料の決まり方 | 所得に関係なく一律。令和8年度は月17,920円 | 標準報酬月額と標準賞与額×18.3%(平成29年9月から固定)。標準報酬月額は8万8千円〜65万円の32等級 |
| 加入する年齢 | 20歳以上60歳未満(希望すれば65歳まで任意加入できる場合がある) | 70歳未満 |
| 老齢基礎年金 | 受給資格期間10年以上で原則65歳から。20歳から60歳までの40年間すべて納めると満額で年847,300円(令和8年度・昭和31年4月2日以後生まれ) | 同じ。20歳から60歳までの第2号の期間も保険料納付済期間に入る |
| 老齢厚生年金 | なし | 報酬比例部分。平成15年4月以降の期間は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」が基本の式 |
老齢基礎年金の受給資格と満額の考え方は日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(2026年9月4日更新)、報酬比例部分の式は日本年金機構「報酬比例部分」で確認しました(実際は過去の報酬に再評価率をかけます)。標準報酬月額の上限65万円は、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に引き上げられます(厚生労働省「厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて」)。
厚生労働省の「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(2026年1月23日)にある経歴別の概算(令和8年度の月額)では、厚生年金期間が中心(20年以上)の男性が176,793円、国民年金の第1号期間が中心(20年以上)の男性が63,513円です。2階の有無で、ここまで差が開きます。
| 保障 | 第1号(国民年金だけ) | 第2号(厚生年金にも入る) |
|---|---|---|
| 障害の年金(令和8年4月分から) | 障害基礎年金。1級は年1,059,125円、2級は年847,300円(昭和31年4月2日以後生まれ)+子の加算。3級はない | 障害基礎年金(1級・2級)+障害厚生年金。1級は報酬比例の年金額×1.25、2級は報酬比例の年金額、3級も対象(最低保障額は年635,500円)。加入期間が300月未満なら300月とみなす |
| 遺族の年金 | 遺族基礎年金。対象は子のある配偶者か子だけ。子のある配偶者は年847,300円+子の加算(2人目までは各243,800円、3人目以降は各81,300円) | 遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金。額は報酬比例部分の4分の3で、子のない配偶者・父母・孫・祖父母も順位に応じて対象。子のない夫は55歳以上に限られ、子のない30歳未満の妻は5年間の有期 |
| 第1号だけの給付 | 寡婦年金、死亡一時金(第1号として納めた月数が36月以上で、年金を受けないまま亡くなったとき12万〜32万円) | なし(第1号として納めた期間があれば、その期間の分は対象になり得る) |
出典は日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」・「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」(いずれも2026年4月1日更新)、「遺族基礎年金」・「遺族厚生年金」(いずれも2026年6月22日更新)、「死亡一時金」(2026年4月1日更新)、障害手当金は日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和8年4月現在)です。
見落としやすいのは、使える保障を決めるのが「いまの区分」ではない点です。障害厚生年金は、厚生年金に入っている間に初診日があることが要件です。個人事業主の期間に初診日がある病気やけがは、あとで法人役員になっても障害基礎年金だけの対象になります。どちらも、初診日や死亡日の前日に保険料の納付要件(納付済期間と免除期間が3分の2以上、または令和18年3月末日までの特例として65歳未満なら直近1年間に未納がないこと)を満たしている必要があります。
会社員→個人事業主→一人法人で区分はこう変わる(切り替えの手続き)
区分は厚生年金に入っているかどうかで決まり、変わったら14日以内に届け出ます。第2号から第1号へは本人が市区町村役場で、第1号から第2号へは勤め先(一人法人なら自分の会社)が年金事務所で手続きします。
| 場面 | 本人の区分 | 配偶者(20歳以上60歳未満で扶養している場合) | 届出先・期限 |
|---|---|---|---|
| 会社員のとき | 第2号 | 年収130万円未満などの要件を満たせば第3号 | 会社が手続き |
| 退職して個人事業主になった | 第1号に変わる | 第3号の資格を失い、第1号に変わる | 本人と配偶者がそれぞれ市区町村役場。退職日の翌日から14日以内 |
| 一人法人を作り、役員報酬を受け取りはじめた | 第2号に戻る | 要件を満たせば第3号に戻れる | 自分の会社が年金事務所へ新規適用届と資格取得届(資格取得届は5日以内)。第3号も会社経由 |
| 法人はあるが役員報酬が0円 | 第1号のまま | 第1号のまま | 無報酬の役員しかいない法人は厚生年金の適用を受けられない |
根拠は日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」(2025年9月11日更新)、「会社を退職したときの国民年金の手続き」、上の被保険者のしおり、「就職したときの手続き」、年金Q&A「個人で経営している小売販売店を法人化することにしました」、「新規加入に必要な書類一覧」です。法人を作ったときの届出の中身は社会保険の新規適用届の記事にまとめています。
独立して第1号になるときの手続きは、次の順番です。
- 退職日を確認する。厚生年金の資格を失うのは退職日の翌日で、その日から第1号になる
- 国民年金被保険者関係届書(申出書)と、基礎年金番号通知書かマイナンバーカードを用意する。退職直後は離職票など資格喪失日がわかる書類が要る場合がある
- 住所地の市区町村役場に出す。退職日の翌日から14日以内。電子申請もできる
- 扶養していた配偶者がいれば、配偶者の第1号の手続きも同じ時期に出す
- 月17,920円(令和8年度)を翌月末日までに納める。難しければ免除や納付猶予を検討する
月の途中で区分が変わったときは、原則としてその月の末日に入っている制度の保険料を払います。日本年金機構の例では、3月末に退職すると4月1日に第1号になり、3月分までが厚生年金です。ただ、同じ月のうちに厚生年金に入って抜けた場合などは両方の保険料がかかることがあるので、月の途中で動くときは年金事務所で確かめてください。
個人事業主・一人法人の判断ポイント
個人事業主と一人法人の役員を分けるのは、役員報酬を受け取って厚生年金に入るかどうかです。一人法人では会社負担分の保険料も自分の会社が出すお金なので、保険料が上がる分と、2階の年金・保障・配偶者の第3号を受け取る分を並べて考えることになります。
| 比べる点 | 個人事業主 | 一人法人の役員(役員報酬あり) |
|---|---|---|
| 年金の区分 | 第1号(国民年金だけ) | 第2号(国民年金+厚生年金) |
| 保険料を払う人 | 本人。配偶者が20歳以上60歳未満なら配偶者の分も別に | 会社と本人で半分ずつ。どちらも自分の会社と自分の財布から出る |
| 保険料の額 | 所得が増えても月17,920円(令和8年度) | 役員報酬で決まる。報酬を上げると保険料も年金額も上がる |
| 加入をやめられるか | 60歳までは加入義務 | 役員報酬がある限り加入義務。法人は従業員がいなくても対象 |
| 上乗せの手段 | 付加年金・国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済 | iDeCo・小規模企業共済(国民年金基金と付加年金は使えない) |
上乗せの手段は、それぞれ付加年金の記事・国民年金基金の記事・独立したときのiDeCoの記事・法人役員のiDeCoの記事に、健康保険の違いは独立したときの保険証の記事に任せます。
以下は説明用の架空の例です。夫婦とも40歳で、配偶者は収入がなく第3号の要件を満たすものとし、10年間(120月)同じ状態が続いたとします。法人役員の役員報酬は月30万円(標準報酬月額30万円)、賞与なし、再評価率は考えません。健康保険料はどちらにも含めていません。
| 例 | 毎月の年金の保険料(夫婦分) | 10年間の保険料の合計 | 本人の老齢年金のうち、この10年分(年額) |
|---|---|---|---|
| 例A:個人事業主 | 本人17,920円+配偶者17,920円=35,840円 | 4,300,800円 | 老齢基礎年金211,825円 |
| 例B:一人法人の役員 | 厚生年金54,900円(会社27,450円+本人27,450円)、配偶者は0円 | 6,588,000円 | 老齢基礎年金211,825円+老齢厚生年金197,316円=409,141円 |
検算します。例Aは17,920円×2人=35,840円、35,840円×120月=4,300,800円です。例Bは30万円×18.3%=54,900円で、半分の27,450円ずつを会社と本人が負担し、54,900円×120月=6,588,000円です。老齢基礎年金は満額847,300円×120月÷480月=211,825円で、例Aも例Bも同じです。例Bの老齢厚生年金は30万円×5.481÷1000×120月=197,316円です。配偶者の老齢基礎年金には、例Aは第1号の納付、例Bは第3号の期間として、どちらも10年分が反映されます。
例Bは保険料が多い代わりに、毎年197,316円の2階が付き、障害厚生年金と遺族厚生年金の対象になります。損得は役員報酬の額・配偶者の働き方・続ける年数・法人の税金で入れ替わるので、この表から答えは出しません。法人化そのものの判断は法人成りのタイミングの記事に、役員報酬を低く抑えて社会保険に入る考え方の注意点はマイクロ法人の記事に書いています。
ぼく自身は、40歳で独立したとき、会社の企業型DCをiDeCoに移す手続きには時間をかけました。でも国民年金のほうは、切り替えの手続きだけで済ませています。失業等による特例免除も見ていません。そのあと一人で法人を作ったときの記事に書いたとおり、法人の代表者として社会保険に入り、国民健康保険や国民年金より保障は厚くなった一方で、手続きと毎月の支払いはかなり大変でした。切り替えた時点では、第1号と第2号の保障の差を並べていませんでした。手続きの紙は、保障が1階だけになったことまでは教えてくれません。
よくある間違いと注意点
いちばん多いのは、独立した本人の切り替えだけ済ませて、扶養していた配偶者の手続きを忘れることです。会社員の扶養に入っていた配偶者は、本人が退職した時点で第3号ではなくなるので、配偶者も第1号の届出と保険料の納付が要ります。
- 法人を作れば自動で厚生年金に入れると思う:役員報酬が0円の間は適用を受けられません。報酬を出しはじめたら新規適用届と資格取得届を出します
- 保障は、いまの区分で決まると思う:障害厚生年金は初診日に厚生年金に入っていたかで決まります
- 第1号でも配偶者を扶養に入れられると思う:第3号になれるのは第2号に扶養されている配偶者だけです
- 未納と免除を同じに考える:免除は障害・遺族の納付要件に数えられますが、未納は数えられません
この記事は最終更新日時点の制度で書いています。自分の加入記録や見込額は、ねんきんネットか年金事務所で確認できます。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。独立直後の手続きの全体は独立・開業前にやることリストに一覧で置いています。
国民年金と厚生年金に関するよくある質問
国民年金と厚生年金の違いを簡単に言うと?
国民年金は全員が入る1階、厚生年金は会社員や役員報酬を受け取る法人役員が重ねて入る2階です。第1号は保険料が定額(令和8年度は月17,920円)、第2号は報酬の18.3%を会社と本人で折半し、老齢・障害・遺族のどれにも2階の上乗せがあります。
独立したら国民年金への切り替えはいつまでにしますか?
退職日の翌日から14日以内に、住所地の市区町村役場へ国民年金被保険者関係届書(申出書)を出します。電子申請もできます。扶養していた配偶者の第1号の手続きも必要です。
一人社長も厚生年金に入らないといけませんか?
役員報酬を受け取っていれば、従業員がいなくても加入が必要です。法人は事業主を含めて1人以上いれば社会保険の対象です。役員報酬が0円の間は適用を受けられず、国民年金の第1号のままです。
月の途中で切り替えたら、保険料はどちらを払いますか?
原則として、その月の末日に入っている制度の保険料を払います。日本年金機構の例では、4月15日に退職して4月16日から第1号になった人は、4月分から国民年金を納めます。月末に厚生年金に入っていれば、その月の国民年金の保険料は要りません。
おわりに──年金の切り替えは、手続きより先に「保障の階数」を確かめる作業
国民年金と厚生年金の違いは、突き詰めると保障が何階建てかの違いです。独立すると1階に下り、一人法人で役員報酬を受け取ると2階に戻ります。届出の紙は14日以内に出せば終わりますが、そこで変わった保障の厚さは、だれも教えてくれません。
今日やることは1つです。ねんきんネットか年金事務所で、自分と配偶者がいま第何号被保険者かを確かめてください。区分がわかれば、払う保険料と使える保障が一緒に見えます。