最終更新:2026年10月19日
社会保険の新規適用届は、会社を健康保険・厚生年金保険の適用事業所にするために、日本年金機構へ出す届出です。法人は社長一人でも加入が義務で、役員報酬を払うなら、新規適用届と社長本人の被保険者資格取得届を事実発生から5日以内に出します。会社設立後の届出全体は会社設立後の届出一覧にまとめていて、この記事は社会保険の届出だけに絞り、一人法人の社長が自分で出すときの添付書類・記入のポイント・電子申請をまとめました。
ぼくは40歳でtiny合同会社を一人で設立しました。代表社員はぼく一人で、従業員はいません。法人化して大変だったと感じたのは、設立そのものより社会保険の手続きと毎月の支払いでした。会社員のころは会社が全部やってくれていたことを、自分でやることになるからです(設立全体の話は一人で法人を作るということに書きました)。2026年10月19日時点の制度で書いています。
社会保険の新規適用届とは?結論から
新規適用届は、会社として社会保険に入るための届出で、一人法人では社長本人の資格取得届とセットで出すのが基本です。要点は次の表のとおりで、どれも日本年金機構の新規適用の手続きのページで確認したものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 |
| 出す人 | 事業主(一人法人なら社長本人。社会保険労務士に委託することもできる) |
| 期限 | 事実発生から5日以内 |
| 提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所(登記上の所在地と実際に事業を行う所在地が違う場合は、実際の所在地の管轄) |
| 出し方 | 電子申請・郵送・窓口持参 |
| 同時に出すもの | 被保険者資格取得届(社長本人の分)。扶養する家族がいれば被扶養者(異動)届 |
| 主な添付書類 | 法人(商業)登記簿謄本の原本(提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの) |
| 出せない場合 | 無報酬の役員しかいない法人は、適用事業所の要件を満たさないため適用を受けられない |
加入義務の根拠と、提出物・期限(制度・要件)
一人法人に加入義務があるのは、日本年金機構が「常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用する法人事業所」を加入が法律で義務づけられた事業所としているからです。従業員が5人以上かどうかは、個人事業所の基準で、法人には関係ありません。
日本年金機構の年金Q&A「個人で経営している小売販売店を法人化することにしました」でも、事業主が役員報酬を受け取り従業員を雇わないケースについて、法人事業所は常時雇用される者が事業主を含めて1人以上いれば加入が必要で、新規適用届と事業主の資格取得届を出すと答えています。
反対に、役員報酬が0円の間は出せません。新規加入に必要な書類一覧に、被保険者となる者がいない法人(無報酬の役員しかいない場合等)は適用を受けられないと書かれています。厚生年金保険で保険料の対象になる報酬は、労働の対償として受けるものなどとされていて(厚生年金保険の保険料)、報酬がなければ保険料を計算する元がないからです。
一人法人が出すものと期限を、届出ごとに並べると次のようになります。
| 届出 | 誰の分か | 期限 | 一人法人で要るか |
|---|---|---|---|
| 新規適用届 | 会社 | 事実発生から5日以内 | 役員報酬を払うなら要る |
| 被保険者資格取得届 | 社長本人 | 事実発生から5日以内(新規適用届と同時に) | 要る |
| 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届) | 扶養する家族 | 事実発生から5日以内 | 扶養する家族がいれば要る |
| 保険料口座振替納付(変更)申出書 | 会社 | 口座振替にしたいときに出す | 任意 |
| 算定基礎届 | 社長本人 | 毎年7月10日まで | 加入後は毎年(6月1日以降に資格取得した年は不要) |
保険料は、日本年金機構から毎月20日ごろ届く納入告知書の額を、納付対象月の翌月末日までに納めます(厚生年金保険料等の納付)。一人法人では、会社負担分も本人負担分も自分の会社の口座から出ていきます。
国民年金の切り替えは、別の届出が要りません。日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」では、就職して厚生年金保険に加入した場合の届出先は「お勤め先が年金事務所に届出」です。一人法人では、社長本人の資格取得届がその役割を果たします。一方、国民健康保険は市区町村の制度なので、やめる手続きを別に出します。
新規適用届の書き方と出し方(手順)
手順は、役員報酬を決める、登記簿謄本をとる、3つの届出を書く、出す、の順です。書き方は日本年金機構の新規適用届の様式ページに記入例があるので、それを横に置いて書くのが確実です。
- 役員報酬の額と支払い開始を決める:資格取得届に書く報酬月額が、最初の標準報酬月額の元になります
- 登記簿謄本をとる:提出日からさかのぼって90日以内に発行された原本が必要で、コピーは不可です。法務局のオンライン請求でも取得できます(証明書の種類と取り方は履歴事項全部証明書と登記簿謄本の違いに書きました)。法人番号を選んで記入する場合は、法人番号指定通知書のコピー(なければ国税庁法人番号公表サイトの画面を印刷したもの)も添えます
- 新規適用届を書く:事業所の所在地・名称、事業主の氏名と住所、業態区分、法人番号、給与の締切日と支払日、賞与支払予定月、給与形態、現物給与の種類、従業員数(役員を含む)、社会保険に加入する役員の報酬の有無などを書きます
- 社長本人の資格取得届を書く:報酬月額を書きます。家族を扶養するなら被扶養者(異動)届も用意します
- 提出する:郵送なら管轄の事務センター、窓口なら年金事務所、オンラインなら電子申請です
- 通知を受け取る:処理が終わると適用通知書で事業所整理記号と事業所番号が届きます。以後の届出はこの番号で出します
迷いやすいのは業態区分です。新規適用届の業態区分は、日本年金機構の「事業所業態分類票」の番号で書きます。分類票では、広告業・デザイン業・経営コンサルタント業は「27 専門・技術サービス業」(法人の番号)、ソフトウェア業やインターネット附随サービス業は「16 情報通信業」に入っています。分類票には、事業所の名称にとらわれず主として行う事業で選ぶよう注意書きがあります。
電子申請は、方法によって準備が違います。日本年金機構の電子申請(e-Gov)のページにある「電子申請対象申請書等一覧表(令和7年12月16日時点)」では、新規適用届は電子証明書なら申請できる一方、GビズIDの欄は「×」です。資格取得届と被扶養者(異動)届は、どちらの認証方法でも申請できます。GビズIDだけでe-Govを使う場合は、新規適用届を郵送か窓口で出し、資格取得届などを電子申請する組み合わせになります。
新規適用届を出したあと、事業所整理記号が届く前に資格取得届を電子申請することもできます。日本年金機構の新規適用時の諸届の入力方法では、e-Govの直接入力の場合、都道府県コード(東京都なら21)、郡市区符号「00」、事業所記号「Z」、事業所番号「99999」と入れるよう案内しています。
税務署や都道府県の届出とまとめて出したいなら、国税庁が案内している法人設立ワンストップサービスもあります。マイナポータルから、年金事務所への届出を含む設立後の手続きを出せます。法人代表者のマイナンバーカードが必要です。
一人社長の判断ポイント
一人社長が最初に決めるのは、役員報酬をいつから払うかです。新規適用届の期限は「事実発生から5日以内」で、報酬を払い始める時期によって、その起点が変わります。自分の会社でどの日が起点になるかは、出す前に管轄の年金事務所に確認しておくと安心です。
報酬の額をどう決めるかは一人法人の役員報酬の決め方に書きました。社会保険料は報酬で決まるので、新規適用届より先に、報酬の額が決まっている必要があります。
次に、自分で出すか、社会保険労務士に任せるかです。新規適用届には社会保険労務士の記載欄があり、届出を委託できます。一人法人の場合、最初の3枚を出してしまえば、あとは毎年の算定基礎届と、報酬を変えたときの届出が中心になります。最初だけ任せて、2年目から自分で出す分け方もあります。
会社員のまま副業で法人を作り、そこから役員報酬を受け取る人は、もう1つ届出が増えます。日本年金機構の年金Q&A「A法人事業所で社会保険に加入している事業主が新たにB法人事業所を設立し」では、新しい法人でも新規適用届と資格取得届が必要で、複数の事業所で加入する本人は「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を出すと答えています。
ぼくが独立準備でいちばん焦ったのは、保険証まわりでした。会社に保険証を返してから次の保険証が届くまでの間に病院にかかったらどうなるのか、当時は分かりませんでした。国民健康保険から法人の社会保険に移る人は、国保をやめる手続きも忘れずに出してください。退職から法人設立までの保険の選び方は独立したら保険証はどうなるのかにまとめています。
よくある間違いと注意点
いちばん多い勘違いは、従業員がいないから社会保険はまだ先だと思い込むことです。法人は社長一人でも、役員報酬を払った時点で加入の対象になります。
- 「5人未満なら任意」を法人に当てはめる:常時5人以上の基準は個人事業所のものです。法人事業所は事業主のみでも適用事業所になります
- 役員報酬0円の期間に出そうとする:無報酬の役員しかいない法人は適用を受けられません。報酬を払い始めるときに出します
- 古い謄本やコピーを添付する:登記簿謄本は提出日からさかのぼって90日以内に発行された原本が必要です
- GビズIDで新規適用届まで電子申請できると思う:対象申請書等一覧表では、新規適用届のGビズIDの欄は「×」です
- 国民健康保険をやめる届出を忘れる:たとえば東京都杉並区の国民健康保険をやめる手続きでは、勤め先などの健康保険に加入したら14日以内に届け出るよう案内しています。出さないと国保の保険料が引き続き請求されます。期限や必要書類は住んでいる市区町村の案内で確認してください
- 業態区分を社名の印象で選ぶ:分類票の注意書きどおり、主として行う事業で選びます
この記事は最終更新日時点の制度で書いています。様式や認証方法は改正で変わることがあるので、出す前に日本年金機構のページで確かめてください。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。
社会保険の新規適用届に関するよくある質問
社会保険の新規適用届の添付書類は何ですか?
法人の場合は、法人(商業)登記簿謄本の原本です。提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものが必要で、コピーは使えません。新規適用届で法人番号を選んで記入する場合は、法人番号指定通知書のコピーも添付します。通知書がなければ、国税庁法人番号公表サイトで確認した法人情報の画面を印刷したものでも差し支えないとされています。
新規適用届は電子申請できますか?
できます。日本年金機構の電子申請対象申請書等一覧表(令和7年12月16日時点)では、新規適用届は電子証明書を使えば申請でき、GビズIDでは申請できない扱いです。資格取得届と被扶養者(異動)届は、GビズIDでも電子証明書でも申請できます。
新規適用届の業態区分はどう選べばいいですか?
日本年金機構の事業所業態分類票から、主として行う事業の番号を選びます。たとえば広告業・デザイン業・経営コンサルタント業は「27 専門・技術サービス業」、ソフトウェア業は「16 情報通信業」です(いずれも法人の番号)。事業所の名称ではなく、実際の事業の中身で判断します。
役員報酬が0円の一人社長も新規適用届を出しますか?
出せません。日本年金機構は、無報酬の役員しかいない法人事業所は適用事業所の要件を満たさないため、適用を受けられないとしています。役員報酬を払い始めたら、その時点で新規適用届と資格取得届を出します。それまでの間は国民健康保険と国民年金に加入します。
おわりに──社会保険は、会社の規模ではなく報酬で始まる
社会保険の新規適用は、従業員を雇ったときに考えるもの、と思われがちです。一人法人の場合、起点は社員の数ではなく、自分に報酬を払うと決めた日です。その日から5日の間に、新規適用届・資格取得届・必要なら被扶養者(異動)届の3枚がそろっていれば足ります。
今日やることは、役員報酬を払い始める日を決めて、その日付の横に「登記簿謄本をとる」と「新規適用届を出す」をカレンダーに入れることです。