最終更新:2026年10月19日
交際費の上限は、中小企業(期末の資本金が1億円以下などの法人)なら年800万円までです。正確には、交際費等のうち年800万円(定額控除限度額)までを損金にする方法と、接待飲食費の50%を損金にする方法のどちらかを、事業年度ごとに選べます。この特例は2027年(令和9年)3月31日までに開始する事業年度が対象です。一方、個人事業主には交際費の上限の定めがありません。ただし業務との関連を説明できることが前提です。この記事では、国税庁と法令のページで確認できた範囲だけを使って、法人と個人事業主の違い、旧基準の5,000円と現行の1万円の違い、計算例を整理します。内容は最終更新日時点の制度にもとづいています。
交際費の上限(中小企業)とは?結論から
中小法人の交際費の上限は「年800万円まで損金にできる」か「接待飲食費の50%を損金にできる」かの選択制で、どちらか有利なほうを毎期選べます。上限があるのは法人だけで、個人事業主の所得税には同じ規定がありません。要点を表にします。
| 項目 | 内容 | 確認した公式ページ |
|---|---|---|
| 対象になる中小法人 | 期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人(資本金5億円以上の法人の100%子法人などは除く) | 国税庁 No.5265 |
| 選べる2つの方法 | ①定額控除限度額(800万円×事業年度の月数÷12)を超える部分を損金不算入 ②接待飲食費の50%を超える部分を損金不算入 | 租税特別措置法 第61条の4第1項・第2項 |
| 適用期限 | 2014年4月1日から2027年3月31日までの間に開始する事業年度 | 同 第61条の4第1項(e-Gov・2026年10月16日施行時点) |
| 選択の手続き | 事業年度ごとに選び、申告書に別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)を添付する | 国税庁 接待飲食費に関するFAQ(Q8) |
| 交際費等から除かれる飲食費 | 1人当たり1万円以下(2024年4月1日以後の支出。それ以前は5,000円以下) | 国税庁 No.5265 |
| 個人事業主 | 交際費等の損金不算入の規定はない。業務の遂行上必要な費用が必要経費になる | 所得税法 第37条/国税庁 No.2210 |
ここでいう「上限」は、使ってよい金額の上限ではありません。法人税の計算で損金に入れられる額の上限で、超えた分も支出としては有効です。超えた分は利益から引けないので、そのぶん法人税の対象になります。
交際費の上限の制度・要件──800万円と50%を国税庁で確認
交際費等の損金不算入は法人の規模で3段階に分かれ、中小法人だけが800万円の定額控除を選べます。国税庁のタックスアンサーNo.5265(令和8年4月1日現在法令等)と、令和6年度 法人税関係法令の改正の概要の図をもとに整理します。
| 法人の区分(期末の資本金等) | 損金不算入になる額 |
|---|---|
| 1億円以下の中小法人 | 次のどちらかを選択。①交際費等のうち800万円×月数÷12を超える部分 ②交際費等のうち接待飲食費の50%を超える部分 |
| 1億円超100億円以下 | 交際費等のうち接待飲食費の50%を超える部分 |
| 100億円超 | 交際費等の全額 |
接待飲食費は、交際費等のうち飲食その他これに類する行為のための費用で、社内飲食費(専ら自社の役員・従業員またはその親族のための飲食)を除き、帳簿書類に所定の事項を書いて明らかにしたものです(同法第61条の4第6項)。
適用期限は、e-Gov法令検索の租税特別措置法(2026年10月16日施行の版)で「平成二十六年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に開始する各事業年度」と確認しました。e-Govに登録されている2030年施行分までの改正後の条文でも、この期限は同じでした。2027年4月1日以後に開始する事業年度の扱いは、今後の税制改正で決まります。最終更新日時点で決まっていないことは、この記事では書きません。
副キーワードの「5000円」は、交際費等から外せる飲食費の旧基準です。上限の800万円とは別の話なので、表で分けます。
| 飲食費を支出した日 | 交際費等から除かれる基準 | 出典 |
|---|---|---|
| 2024年3月31日以前 | 1人当たり5,000円以下 | No.5265の注 |
| 2024年4月1日以後 | 1人当たり10,000円以下 | 租税特別措置法施行令 第37条の5第1項/改正の概要(改正措令附則16) |
1万円以下の飲食費は、そもそも交際費等に入りません。800万円の枠を数えるときも、50%を計算するときも、最初から外して考えます。ただし、日時・参加者・人数・金額・店名などを書いた書類を保存していることが条件です(租税特別措置法施行規則 第21条の18の4)。
800万円と50%の比べ方──計算例
中小法人の場合、交際費等の合計が800万円以下なら定額控除を選べば損金不算入はゼロで、50%のほうが有利になるのは接待飲食費が年1,600万円を超えるときだけです。数字はすべて架空の例で、事業年度は12か月、1万円以下の飲食費はすでに除いた後の金額です。
| 例(架空) | ①定額控除(800万円)を選ぶ | ②接待飲食費の50%を選ぶ | 有利なほう |
|---|---|---|---|
| 交際費等300万円(うち接待飲食費180万円) | 300万円は800万円以下なので損金不算入0円 | 300万円−90万円=210万円が損金不算入 | ① |
| 交際費等1,000万円(うち接待飲食費600万円) | 1,000万円−800万円=200万円 | 1,000万円−300万円=700万円 | ① |
| 交際費等2,400万円(うち接待飲食費2,000万円) | 2,400万円−800万円=1,600万円 | 2,400万円−1,000万円=1,400万円 | ② |
検算します。①で損金にできるのは「交際費等の額と800万円の小さいほう」、②で損金にできるのは「接待飲食費×50%」です。②が①を上回るには、接待飲食費の50%が800万円を超える、つまり接待飲食費が1,600万円を超える必要があります。3つ目の例は2,000万円×50%=1,000万円で800万円を超えるので②が有利、という結果と合っています。
事業年度が12か月より短いときは、800万円が月数で按分されます。月数は暦に従って数え、1か月に満たない端数は1か月とします(同法第61条の4第4項)。
- 例(架空):2026年6月10日に設立し、決算月を12月にした会社の第1期(6月10日〜12月31日)
- 月数:6か月と22日なので、端数を1か月として7か月
- 定額控除限度額:800万円×7÷12=約466万7千円
設立1期目は限度額が小さくなるので、決算月の決め方とも関係します。決算月の考え方は決算月の決め方にまとめました。
一人法人・個人事業主の判断ポイント
交際費の上限が問題になるのは法人だけで、個人事業主には「年いくらまで」という線がありません。その代わり、個人事業主は1件ずつ業務との関連を説明できるかが問われます。違いを表で分けます。
| 論点 | 一人法人(中小法人) | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 上限 | 年800万円(月数按分)か接待飲食費の50%を選択 | 上限の定めはない |
| 根拠 | 租税特別措置法61条の4(法人税法の特例の章) | 所得税法37条(必要経費)・45条(家事関連費) |
| 1万円基準 | 使える(記載事項の保存が条件) | この基準の規定はない |
| 経費になる条件 | 事業に関係のある者への接待等であること | 業務の遂行上直接必要であったことを明らかに区分できること(No.2210) |
| 申告で必要なもの | 別表十五の添付(定額控除の適用は添付が条件・同法第61条の4第7項) | 帳簿と、支出の目的を説明できる記録 |
| 適用期限 | 2027年3月31日までに開始する事業年度 | 期限のある特例ではない |
一人で作る会社は、ほとんどが資本金1億円以下です。資本金の決め方は資本金はいくらにするかに書きましたが、交際費の面では1億円以下の中小法人に入るかどうかが線になります。交際費等が年800万円以内に収まっている一人法人なら、見るべきなのは「800万円の枠に入っているか」と「1万円以下の飲食費を記録で外せているか」の2つです。
個人事業主の「上限がない」は、「何でも経費になる」という意味ではありません。フリーランスの確定申告ガイドで、ぼくは「領収書があれば経費になる」は誤解で、何のために使ったかを説明できることが大事だと書きました。上限という数字の線がないぶん、説明の線は自分で引くことになります。
一人で合同会社を作った話にも書いたとおり、会計ソフトを入れても、これは経費にできるのかという税務の判断まで自動になるわけではありません。法人成りした年は、個人事業主のときの感覚のまま交際費を使うと、会社の側では上限と別表の手続きが加わります。切り替わる年こそ、記録の付け方を見直しておくと安心です。
よくある間違いと注意点
いちばん多い間違いは、800万円を「使い切ってよい予算」と考えることです。800万円は損金にできる額の上限で、支出すればそのぶん会社のお金は減ります。損金になっても税金が減るのは支出の一部だけなので、節税のために交際費を増やす発想は成り立ちません。ほかの注意点も並べます。
- 5,000円の情報のまま判断する:2024年4月1日以後の支出は1人当たり1万円以下が基準です。古い解説記事の5,000円を使うと、交際費等を多く数えてしまいます。
- 1万円を超えた分だけを交際費にする:基準を超えた飲食費は、超えた部分ではなく全額が交際費等です(国税庁交際費等(飲食費)に関するQ&AのQ9。5,000円基準の時代の資料ですが仕組みは同じです)。
- 選び方を一度決めたら変えられないと思う:定額控除と50%は事業年度ごとに選べます(接待飲食費に関するFAQのQ8)。
- 別表十五を付け忘れる:定額控除限度額の規定は、明細書の添付がある場合に限り適用されます(同法第61条の4第7項)。
- 期限を気にしない:特例は2027年3月31日までに開始する事業年度が対象です。それ以後は、その時点の改正内容を国税庁で確認してください。
- 否認されたときの扱い:交際費等の額や接待飲食費の額が誤っていて損金不算入額が増えると、修正申告をするか更正を受けることになり、過少申告加算税や延滞税がかかることがあります(国税通則法 第19条・第60条・第65条)。
この記事は、最終更新日時点の制度で、国税庁と法令のページで確認できた内容だけを書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。相談先の選び方はいい税理士とは何かにまとめています。
交際費の上限に関するよくある質問
交際費の上限について、一緒に検索されている「法人」「個人事業主」「800万円」「5000円」の疑問に答えます。内容は、最終更新日時点で国税庁と法令のページで確認できたものだけです。
中小企業の交際費の上限はいくらですか?
期末の資本金が1億円以下などの中小法人は、交際費等のうち年800万円までを損金にできます。事業年度が12か月に満たないときは月数で按分します。800万円の方法と接待飲食費の50%を損金にする方法のどちらかを、事業年度ごとに選べます。
個人事業主に交際費の上限はありますか?
ありません。交際費等の損金不算入は租税特別措置法の法人税の特例で、個人事業主の所得税には同じ規定がないためです。ただし、業務の遂行上必要な支出であることを説明できなければ必要経費になりません。
交際費の5000円基準はもう使えませんか?
2024年4月1日以後に支出した飲食費は、1人当たり1万円以下が交際費等から除く基準です。5,000円以下の基準は、2024年3月31日以前に支出した飲食費に適用されていたものです。過去の事業年度を見直すときだけ、5,000円で判定します。
800万円の特例はいつまでですか?
2027年(令和9年)3月31日までに開始する事業年度が対象です。e-Gov法令検索の租税特別措置法61条の4で、2026年10月16日施行の版を確認しました。それ以後に開始する事業年度の扱いは、今後の税制改正で決まります。
おわりに──交際費の上限は、使える額ではなく引ける額
800万円という数字は、交際費の予算に見えて、実際には利益から引ける額の線にすぎません。上限があるのは法人だけで、個人事業主には線がない代わりに、1件ずつの説明が求められます。どちらの立場でも、上限より先に考えるのは、その1回の飲食が誰との何のためだったかです。