最終更新:2026年10月19日
決算公告とは、株式会社が毎年の定時株主総会のあとに、貸借対照表(大会社は損益計算書も)を世の中に公開する手続きで、会社法440条で義務になっています。合同会社には、この決算公告の義務がありません。公告の方法は官報・日刊新聞・電子公告の3つで、定款に定めがなければ官報です。官報に載せる場合の掲載料は、国立印刷局の掲載例で2枠81,765円(税込・令和7年4月1日現在)。公告を怠ると、取締役などが100万円以下の過料の対象になります。この記事は、e-Gov法令検索の会社法と国立印刷局の公式資料で確認できた内容だけを使い、一人で会社を作る人が「自分の会社に決算公告が要るか、要るならどう出すか」を判断できるように整理したものです。内容は最終更新日時点の制度にもとづいています。
決算公告とは?結論から
決算公告は株式会社だけの義務で、合同会社・特例有限会社・有価証券報告書を出している会社にはかかりません。根拠はすべて会社法(e-Gov法令検索)と会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律で確認しました。会社の種類ごとの扱いを表にします。
| 会社の種類 | 決算公告の義務 | 公告する内容 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 株式会社(大会社以外) | あり。定時株主総会の終結後遅滞なく | 貸借対照表(官報・日刊新聞なら要旨でよい) | 会社法440条1項・2項 |
| 株式会社(大会社=資本金5億円以上など) | あり | 貸借対照表と損益計算書 | 会社法440条1項・2条6号 |
| 有価証券報告書を提出している株式会社 | なし(440条の適用がない) | ― | 会社法440条4項 |
| 特例有限会社 | なし | ― | 整備法28条 |
| 合同会社 | なし(会社法に決算公告の定めがない) | 債権者は5年以内の計算書類の閲覧を請求できる | 会社法617条・625条 |
一人で会社を作る人に当てはめると、株式会社を選べば毎年の決算公告がついてきて、合同会社を選べばつかない、という一行に集約されます。合同会社にも計算書類を作って10年間保存する義務(会社法617条)はありますが、それを世の中に公告する義務はありません。
制度・要件・費用──公告の方法と官報の掲載料
決算公告の出し方は、定款で決めた公告方法に従います。会社法939条は公告方法を官報・時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙・電子公告の3つとし、定款に定めがない会社は官報になります(939条4項)。公告方法は登記事項で、定款に定めがなければ「官報に掲載する方法」と登記されます(株式会社は911条3項27号〜29号、合同会社は914条9号〜11号)。方法ごとの違いを表にします。
| 方法 | 載せる内容 | 掲載する期間 | 費用の確認先 |
|---|---|---|---|
| 官報に掲載 | 貸借対照表の要旨でよい(440条2項) | 掲載1回 | 国立印刷局の掲載料(下の表) |
| 日刊新聞紙に掲載 | 貸借対照表の要旨でよい(440条2項) | 掲載1回 | 各新聞社。この記事では金額を書きません |
| 電子公告(自社サイトなど) | 貸借対照表の全文 | 定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで(940条1項2号) | 決算公告は電子公告調査の対象外(941条) |
| 官報・新聞を公告方法にしたまま、貸借対照表をWebで開示 | 貸借対照表の全文 | 定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで(440条3項) | 開示先のURLなどを登記する(911条3項26号)。この措置をとれば官報・新聞への公告は不要 |
官報の掲載料は、国立印刷局の官報の書面・公告のお申込みのページに置かれたパンフレット「会社法 法定公告について」で確認しました。パンフレットには「掲載料金は、令和七年四月一日現在のもの」と書かれています。
| 項目 | 国立印刷局の記載 |
|---|---|
| 枠組公告の大きさ | 1ページ(A4判)を24枠(3段×8枠)。1枠は横2.9cm×縦6.1cm |
| 枠組公告の料金 | 1枠37,166円×掲載枠数+税(ページ指定は1枠49,981円×掲載枠数+税) |
| 決算公告の掲載例(大会社以外の会社) | 2枠で81,765円(本体74,332円)。科目を多く載せた例では3枠で122,647円(本体111,498円) |
| 行で組む公告の料金 | 1行(22字)3,589円×掲載行数+税 |
| 申込み先 | 各都道府県の官報サービスセンター等 |
2023年8月の国立印刷局のお知らせ「中小企業の皆様への「官報」に関するお知らせ」は、官報に掲載した決算公告はインターネットでも閲覧でき、決算情報が国の法人情報データベース(gBizINFO)にも反映されると案内しています。なお、官報は令和7年4月から内閣府の官報発行サイトに載る電子データが正本になりました(国立印刷局 官報に関するよくあるご質問)。
比べ方──3つの出し方を費用と手間で選ぶ
株式会社の決算公告は、毎年お金を払って官報に載せ続けるか、一度だけ登記をして自社サイトに5年間置くかの選択になります。架空の数字で比べます。以下はすべて例で、実際の枠数は貸借対照表の科目の数で変わります。
| 例 | 出し方 | 初年度にかかる費用 | 5期分の費用 |
|---|---|---|---|
| 例1 | 毎期、官報に2枠で掲載 | 81,765円 | 408,825円 |
| 例2 | 公告方法を電子公告に変える(定款変更+変更登記) | 登録免許税3万円+サイトの管理 | 3万円+サイトの管理 |
| 例3 | 官報を公告方法にしたまま、貸借対照表をWebで開示する措置をとる(URLを登記) | 登録免許税3万円+サイトの管理 | 3万円+サイトの管理 |
検算します。例1は1枠37,166円×2枠=74,332円で、消費税10%を足すと81,765.2円、パンフレットの81,765円と一致します。5期分は81,765円×5=408,825円です。例2・例3の3万円は、国税庁のNo.7191 登録免許税の税額表にある「登記事項の変更、消滅または廃止の登記」の1件3万円です。サイトの管理にかかる手間や費用は会社ごとに違うので、ここでは数字にしていません。
手順は次の順番で考えると迷いません。
- 自社の公告方法を確かめる:定款と登記事項証明書の「公告をする方法」を見ます。何も定めていなければ官報です(939条4項)
- 定時株主総会の日を決める:決算公告は定時株主総会の終結後遅滞なく出します。決算月から逆算した年間の段取りは、決算月の決め方にまとめています
- 官報なら官報サービスセンターへ申し込む:原稿は貸借対照表の要旨でよく、パンフレットに記載例があります
- Webで出すなら先に登記する:電子公告に変えるなら株主総会の決議で定款を変え(466条)、変更の登記をします。440条3項の開示なら、開示するURLなどを登記します
- Webに置いたら5年間消さない:電子公告も440条3項の開示も、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで継続します
一人法人の判断ポイント
一人で会社を作る人にとって、決算公告は「会社の種類を選ぶ段階で決まる毎年の手続き」です。設立したあとに悩む話ではなく、合同会社か株式会社かを選ぶときの比較項目の一つとして見ておくのが現実的です。一人法人の場合を表にします。
| 論点 | 一人の合同会社 | 一人の株式会社 |
|---|---|---|
| 決算公告 | 義務なし | 毎年必要(自分一人が株主でも同じ) |
| 定款の公告方法 | 定める(定めなければ官報)。資本金の減少や合併などで公告が要る場面に使う | 定める(定めなければ官報)。毎年の決算公告に使う |
| 計算書類 | 作成し10年保存(617条) | 作成し10年保存(435条)、本店に備え置く(442条) |
| 公告を怠ったとき | 決算公告については該当しない | 取締役などが100万円以下の過料(976条2号) |
ぼくは40歳で独立したとき、tiny合同会社を一人で作りました。合同会社を選んだ理由は、設立コストが安く、機動力があるからです。そのとき比べた項目の一つが決算公告で、株式会社は義務、合同会社は不要という違いは一人で法人を作るということにも書きました。設立の手続きそのものはfreee会社設立の画面に沿って進め、判断が必要な税務は税理士に任せています。その流れは一人で合同会社を設立したときにやったことリストにまとめています。
決算公告だけで会社の種類を決める必要はありません。取引先の目線や将来の出資の予定のほうが、選ぶ理由としては大きいはずです。ただ、株式会社を選ぶなら、毎年の決算公告の費用か、Webで開示する仕組みのどちらかを最初から予定に入れておくほうが安心です。合同会社と株式会社の違いの全体は合同会社と株式会社の違いで比べています。
よくある間違いと注意点
決算公告でいちばん多い間違いは、「周りもやっていないから出さなくても問題ない」と考えることです。2023年8月の国立印刷局のお知らせは、東京商工リサーチのレポートとして、2022年に決算公告を官報に掲載した株式会社は4万214社で、決算公告の方法を官報としている株式会社の1.8%にとどまると紹介しています。出していない会社が多いことと、義務がないことは別の話です。ほかの注意点も並べます。
- 過料の対象は会社ではなく取締役など:会社法976条は、公告を怠ったときや不正の公告をしたとき、取締役などを100万円以下の過料に処すると定めています。一人の株式会社なら、自分自身が対象です。国立印刷局のパンフレットは、不正な公告で第三者に損害を与えた場合、会社や役員等が損害賠償責任を負う場合があるとも書いています。
- 電子公告で要旨だけ載せる:要旨でよいのは官報と日刊新聞の場合だけです(440条2項)。自社サイトで出すなら貸借対照表の全文が要ります。
- Webに置いた貸借対照表を翌年に差し替える:各期の貸借対照表は、それぞれ5年間置き続けます(440条3項・940条1項2号)。最新の期だけを残す運用では足りません。
- 登記をしないままWebに載せる:電子公告に変えるなら定款変更と変更登記、440条3項の開示ならURLなどの登記が先です。登記を怠ること自体も976条1号の過料の対象になります。
- 合同会社も公告方法を決めなくてよいと思う:合同会社に決算公告はありませんが、公告方法は登記事項で、定款に定めがなければ官報になります(914条9号〜11号・939条4項)。
この記事は、最終更新日時点の制度で、e-Gov法令検索の会社法・国税庁・国立印刷局の公式資料で確認できた内容だけを書いています。官報の掲載料は令和7年4月1日現在の金額なので、申し込む前に官報サービスセンターで確認してください。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。相談先を探すなら、いい税理士とは何かに探し方を書いています。
決算公告に関するよくある質問
決算公告について、検索で一緒に調べられている「義務」「合同会社」「官報」「しないと」の疑問に答えます。金額と条文は、最終更新日時点で公式ページとe-Gov法令検索で確認できたものだけです。
決算公告は義務ですか?
株式会社には義務です。会社法440条により、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社は損益計算書も)を公告します。有価証券報告書を提出している会社と特例有限会社は対象外です。
合同会社に決算公告は必要ですか?
必要ありません。会社法には合同会社の決算公告の定めがなく、計算書類を作って10年間保存し、債権者の閲覧請求に応じる仕組みです。ただし、資本金の減少や合併などで公告が必要になる場面はあり、公告方法は定款で定めて登記します。
官報で決算公告をするといくらかかりますか?
国立印刷局のパンフレット(令和7年4月1日現在)では、枠組公告は1枠37,166円×枠数+税で、大会社以外の会社の掲載例は2枠で81,765円(税込)です。科目が多ければ枠数が増えるので、申込み前に官報サービスセンターで確認してください。
決算公告をしないとどうなりますか?
会社法976条2号により、公告を怠った取締役などは100万円以下の過料の対象になります。一人の株式会社なら代表者自身が対象です。費用を抑えたいなら、自社サイトでの電子公告や、貸借対照表をWebで開示する440条3項の措置という合法的な選択肢があります。
おわりに──決算公告は、会社を作った日に「毎年の予定」になる
決算公告は、決算のたびに思い出す手続きではなく、会社の種類と公告方法を決めた日に毎年の予定として確定しています。合同会社なら予定に入らず、株式会社なら官報に毎年払うか、Webに5年ずつ置き続けるかを選ぶだけです。一人で会社を作るなら、定款に公告方法を書くその一行が、これから毎年の決算公告の手間と費用を決めています。