独立・フリーランス

法人役員のiDeCo上限は月2.3万円|2026年12月改正と法人成りの手続き

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最終更新:2026年10月19日

法人役員のiDeCoは、役員報酬を受け取って厚生年金に入っているなら、会社員と同じ第2号加入者として扱われます。会社に企業年金がない一人法人の社長なら、掛金の上限は今は月2.3万円で、2026年12月分(2027年1月引き落とし分)から月6.2万円に上がります。個人事業主の上限として知られる月6.8万円は国民年金の第1号被保険者の枠で、厚生年金に入る法人役員には当てはまりません。

ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働き、40歳でtiny合同会社を一人で設立しました。独立したときにいちばん分からなかったのが、確定拠出年金の扱いでした。独立したらiDeCoをどうするか(企業型DCの移換や自動移換など)の全体は独立するとき、iDeCoはどうすればいいのかにまとめています。この記事は、そのうち法人を作って役員になる人に絞った話です。2026年10月19日時点の制度で書いています。

法人役員のiDeCoとは?結論から

iDeCoの上限を決めるのは、独立したかどうかではなく、国民年金のどの被保険者にあたるかです。法人役員は、役員報酬を受け取って厚生年金に入れば第2号、報酬が0円で厚生年金に入らなければ第1号になり、枠がまったく変わります。

立場 iDeCoの区分 上限(月額・現行) 上限(2026年12月分から)
個人事業主・フリーランス 第1号 68,000円(国民年金基金・付加保険料と合算) 75,000円(国民年金基金などと合算)
法人役員(報酬あり・厚生年金に加入・会社に企業年金なし) 第2号 23,000円 62,000円
法人役員(会社に企業型DCやDBがある) 第2号 20,000円(企業型DCの事業主掛金などと合わせて55,000円まで) 企業年金等と合わせて62,000円
法人役員(報酬0円で厚生年金に入っていない・20歳以上60歳未満) 第1号(配偶者の扶養に入る第3号の人を除く) 68,000円(国民年金基金などと合算) 75,000円(国民年金基金などと合算)

出典は、現行の上限がiDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCoをはじめるまでの4つのポイント」、2026年12月からの上限がiDeCo公式サイト「制度改正について」と厚生労働省「2025年の制度改正」です。iDeCoの第2号加入者は「会社員や公務員等の厚生年金の被保険者」と定義されていて(iDeCo公式「加入資格・掛金・受取方法等」)、肩書きが社長かどうかは関係ありません。

法人役員が厚生年金に入るかどうかは、役員報酬で決まります。日本年金機構は、法人の事業所は事業主のみの場合も含めて厚生年金の適用事業所になるとしています(日本年金機構「適用事業所と被保険者」)。一方で、無報酬の役員しかいない法人事業所は適用事業所の要件を満たさず、適用を受けられません(日本年金機構「新規加入に必要な書類一覧」)。

拠出限度額と2026年12月の改正(制度・要件)

2026年12月1日に、iDeCoの拠出限度額を引き上げる改正が施行されます。法人役員にいちばん関係があるのは、第2号加入者の上限が企業年金の有無による差をなくして共通の枠に一本化され、月6.2万円になる点です。

項目 内容 出典
施行日 2026年12月1日 iDeCo公式「制度改正について」
新しい上限が使える掛金 2026年12月分(2027年1月引き落とし分)から 国民年金基金連合会の案内(2026年8月)
増額は自動か 自動では変わらない。掛金額を変えたい人は運営管理機関で手続きが必要 同上
年1回の変更制限の例外 2026年12月1日から2027年11月30日まで(運営管理機関の受付日基準)に、改正前の上限を超える額へ初めて増額する場合は、年1回の変更回数に数えない 国民年金基金連合会の案内(2026年8月)
加入できる年齢 65歳未満から70歳未満へ(iDeCo加入者・運用指図者などで、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない人など。2029年11月末までは経過措置あり) iDeCo公式「制度改正について」
掛金の単位 月5,000円以上、1,000円単位 iDeCo公式「iDeCoをはじめるまでの4つのポイント」
税金 掛金は小規模企業共済等掛金控除として、支払った全額が所得控除の対象 国税庁 No.1135

厚生労働省のチラシにも「企業年金がないサラリーマンの方の毎月の拠出限度額は23,000円から62,000円にアップ」と書かれています(厚生労働省「iDeCoがパワーアップします!」)。会社に企業年金がない一人法人の社長は、この「企業年金がない会社員」と同じ区分です。

年額に直すと差がはっきりします。月23,000円なら年276,000円、月62,000円なら年744,000円です。個人事業主の第1号は、月68,000円で年816,000円、月75,000円で年900,000円になります。いずれも上限の話で、掛金は上限の範囲で自分で決めます。掛金額の変更は通常、12月分から翌年11月分までの1年に1回です(iDeCo公式「各種変更届について」)。

法人成りしたときの手続き

個人事業主でiDeCoに入っていた人が法人を作って役員報酬を受け取り始めると、区分が第1号から第2号に変わるので、運営管理機関への届出が要ります。iDeCo公式は、厚生年金の適用事業所に就職して第2号になったときの届書を「加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)(K-032)」としています。

  1. 会社の社会保険の手続きを済ませる:役員報酬を払うなら、年金事務所に新規適用届と資格取得届を出します。手続きの一覧は会社設立後の届出一覧にまとめました
  2. 運営管理機関にK-032を出す:区分の変更と、新しい区分の上限に合わせた掛金額をこの届書で伝えます。手続きをしないと、掛金の口座振替が一時停止することがあるとiDeCo公式は案内しています
  3. 掛金の払い方を選ぶ:個人の口座から払う「個人払込」か、会社が給与から天引きして払う「事業主払込」かを選びます。事業主払込にするなら、事業主の確認・証明として「事業主払込(登録・納付方法変更等)に関する証明書(K-109A)」が要り、会社として初めてなら事業所登録もします(iDeCo公式「事業主の方へ」)
  4. 国民年金基金と付加保険料を確かめる:国民年金基金は第1号被保険者のための制度で、第1号でなくなると加入資格を失います(国民年金基金)。それまでに納めた掛金は、将来年金として受け取ります
  5. 年末調整で掛金を控除する:個人払込でも、自分の会社の年末調整で小規模企業共済等掛金控除の対象になります(iDeCo公式「事業主の方へ」)
  6. 2026年12月分から増やすなら、掛金額の変更を出す:上限が上がっても掛金は自動では増えません

例で流れを追います(数字はすべて架空の例です)。個人事業主の時代に、国民年金基金に入らず月68,000円をiDeCoに入れていた人が、法人を作って役員報酬と厚生年金が始まったとします。会社に企業年金がなければ、K-032で掛金を月23,000円以内に下げます。年額は816,000円から276,000円に減ります。2026年12月分からは月62,000円まで戻せますが、そのためには改めて掛金額の変更の手続きが要ります。

会社員だった人が退職してすぐ自分の会社の役員になる場合は、第2号のままです。iDeCo公式は、第2号加入者が転職して勤務先での企業年金の加入状況が変わった場合にK-032を出すよう案内しています。前の会社に企業型DCがあって今の会社にないなら、ここに当たります。前の会社の企業型DCの資産をどうするかは、移換の手続きの話なのでiDeCo公式「転職・退職された方へ」と既存記事を見てください。役員報酬を0円で始めた人は第1号になり、報酬を払い始めた時点で第2号への届出が要ります。

一人社長の判断ポイント

一人社長が迷うのは、会社のお金でiDeCoを上乗せできるか、という点です。仕組みとしてはiDeCo+(イデコプラス、正式名は中小事業主掛金納付制度)がありますが、社長一人の会社で使えるかどうかは、公式ページで確認できた範囲でははっきりしませんでした。

iDeCo+の要件(iDeCo公式) 一人法人で引っかかるところ
企業型DC・確定給付企業年金・厚生年金基金を実施していない 企業年金を実施していなければ満たす
厚生年金の被保険者である従業員が300人以下 満たす
対象はiDeCoに加入する厚生年金被保険者の従業員で、事業主が掛金を上乗せする 社長が「従業員」として対象になるかの明記は見当たらない
厚生年金の被保険者の過半数を代表する者と協議し、同意を得る。過半数代表者は管理・監督の地位にない人で、事業主の意向で選ばれていないこと 社長しかいない会社で、この協議と同意をどう扱うかの明記は見当たらない
事業主掛金は全額損金。加入者掛金との合計は今は月5,000円以上23,000円以下 2026年12月からは、企業年金なしの第2号はiDeCoとiDeCo+の合計で月6.2万円(厚生労働省資料)

要件の出典はiDeCo公式「iDeCo+とは」と「iDeCo+導入時の留意事項」、2026年12月からの合計枠は厚生労働省「iDeCo拠出限度額の引き上げ」です。一人法人でiDeCo+を考えるなら、導入の前に国民年金基金連合会か社労士に、自分の会社で実施できるかを確かめてください。

もう1つ混同しやすいのが「事業主払込」です。これは会社が掛金を負担する制度ではなく、本人の給与から天引きして会社がまとめて払う払い方です。本人が払うべき掛金を会社が肩代わりすると、国税庁が役員への経済的な利益として挙げる「役員等の個人的費用の負担額」に当たり得ます(国税庁 No.5202)。会社のお金で老後資金を上乗せしたいなら、iDeCo+のような制度の枠の中で考えます。

経営者の退職金を自分で積み立てる制度としては、小規模企業共済もあります。中小機構は「小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度」と説明していて、掛金は月1,000円から70,000円の範囲で全額が所得控除になります(中小機構「小規模企業共済」)。iDeCoは年金、小規模企業共済は退職金という位置づけの違いがあり、詳しくは別の記事で扱う予定です。

上限まで入れるかは、また別の問題です。iDeCoの資産は原則として60歳になるまで引き出せません(iDeCo公式「iDeCoの特徴」)。独立して最初に痛感したのは、売上より先に、手元の現金がどれだけ残るかが生命線になることでした。一人法人では、役員報酬を払ったあとの会社の現金と、社会保険料を払ったあとの自分の現金の両方を見てから、掛金を決めます。報酬の決め方は一人法人の役員報酬の決め方に書きました。

よくある間違いと注意点

いちばん多い取り違えは、「独立すればiDeCoの上限は月6.8万円になる」という理解を、法人を作った人にもそのまま当てはめることです。月6.8万円は第1号の枠で、役員報酬を受け取って厚生年金に入る法人役員は第2号です。

  • 法人成り後も第1号の掛金のまま払い続ける:区分が変わったら、K-032で区分と掛金額を届け出ます。届出がないと、口座振替が一時停止することがあります
  • 2026年12月に掛金が自動で増えると思う:上限が上がるだけで、掛金額は手続きをしないと変わりません。例外の特例期間は2026年12月1日から2027年11月30日までです
  • 「2027年1月分から」と覚える:新しい上限が使えるのは2026年12月分の掛金からで、引き落としが2027年1月になります。分と引き落とし月を分けて覚えます
  • 事業主払込を会社負担だと思う:事業主払込は給与からの天引きです。会社が掛金を肩代わりすると、役員への経済的な利益の論点が出ます
  • 国民年金基金を続けられると思う:第2号になると国民年金基金の加入資格を失います。付加保険料も、第1号の国民年金の制度です
  • iDeCo+を一人法人で当然に使えると思う:労使協議と過半数代表者の同意が要件にあり、社長一人の会社での扱いは確認した公式ページに明記がありません

この記事は最終更新日時点の制度で書いています。拠出限度額や手続きの様式は改正で変わることがあるので、届出の前にiDeCo公式サイトと加入している運営管理機関で確かめてください。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。

法人役員のiDeCoに関するよくある質問

法人役員でもiDeCoに加入できますか?会社として加入するのですか?

iDeCoは個人が加入する制度で、会社として加入するものではありません。役員報酬を受け取って厚生年金に入っている役員は、会社員と同じ第2号加入者として加入できます。会社が関わるのは、給与から天引きして払う事業主払込や、iDeCo+で掛金を上乗せする場面です。

一人法人の社長のiDeCoの上限はいくらですか?

役員報酬を受け取って厚生年金に入り、会社に企業年金がなければ、今は月23,000円です。2026年12月分(2027年1月引き落とし分)からは月62,000円に上がります。役員報酬が0円で厚生年金に入っていない場合は第1号になり、月68,000円(2026年12月分から75,000円)が国民年金基金などとの合算の上限です。

法人成りしたら、iDeCoの手続きは何が必要ですか?

個人事業主から法人の役員になって厚生年金に入ったら、運営管理機関に加入者登録情報変更届(第2号被保険者用・K-032)を出し、区分と掛金額を届け出ます。給与天引きにするなら事業主払込の証明書(K-109A)も出します。国民年金基金に入っていた人は、加入資格を失う点も確認します。

一人法人でもiDeCo+は使えますか?

iDeCo+は企業年金のない従業員300人以下の会社で実施でき、事業主掛金は全額損金になります。ただ、厚生年金の被保険者の過半数を代表する者との協議と同意が要件で、社長一人の会社での扱いは、確認した公式ページには明記がありませんでした。導入前に国民年金基金連合会か社労士に確かめてください。

おわりに──iDeCoの上限は、独立したかではなく、厚生年金に入っているかで決まる

法人役員のiDeCoで覚えることは1つです。上限を決めるのは独立したかどうかではなく、厚生年金に入っているかどうか。役員報酬を受け取る一人社長は会社員と同じ第2号で、2026年12月分から月6.2万円までの枠を使えるようになります。

今日やることは、自分のiDeCoの区分を運営管理機関の画面か通知書で確かめることです。第1号のままになっていたら、それが最初に直すところです。

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