最終更新:2026年10月20日
付加年金とは、国民年金の第1号被保険者が月400円の付加保険料を上乗せして納めると、老齢基礎年金に「200円×納付した月数」の年金が終身で上乗せされる制度です。受け取りはじめて2年で納めた額以上を受け取れる計算になり、申し込みは市区町村役場か年金事務所に申し出るだけです。ただし国民年金基金とは同時に入れず、iDeCoとは併用できても掛金の上限が付加保険料の分だけ下がります。
ぼくは40歳でtiny合同会社を一人で設立したマーケターです。独立したときのiDeCoの手続きは独立するとき、iDeCoはどうすればいいのかの記事に、国民年金の免除は退職後の国民年金の免除の記事に任せ、この記事は付加年金がいくらもらえるか、どう申し込むか、何年で元が取れるかを日本年金機構とiDeCo公式で確認できた範囲で整理します。2026年10月20日時点の制度で書いています。
付加年金とは?結論から
付加年金は、月400円を払うと、将来の年金が1か月あたり年200円ずつ増える制度です。払う額と増える額の比が2対1で固定されているので、元が取れる年数も納付期間に関係なく2年になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 付加保険料 | 月400円(国民年金保険料の月17,920円とは別に納める・令和8年度) |
| 付加年金の額(年額) | 200円×付加保険料を納めた月数 |
| 納められる人 | 国民年金の第1号被保険者、65歳未満の任意加入被保険者 |
| 納められない人 | 保険料の免除(法定免除・全額免除・一部免除)、納付猶予、学生納付特例を受けている人。国民年金基金の加入員 |
| 受け取り方 | 老齢基礎年金と合わせて受け取る終身年金。定額なので物価スライドはない |
| 申し込み | 市区町村役場・年金事務所・電子申請。申し出た月の分から納められる |
| 元が取れる年数 | 受け取りはじめて2年 |
出典は日本年金機構「付加保険料の納付」(2026年7月23日更新)と日本年金機構「付加年金」、令和8年度の国民年金保険料は日本年金機構「国民年金保険料」です。産前産後免除の期間は、免除中でも付加保険料を納められます。
付加年金はいくらもらえるか(制度・要件・費用)
もらえる額は「200円×納付月数」で、それ以外の要素は入りません。法律でも、付加保険料は国民年金法第87条の2で400円、付加年金の額は第44条で200円に納付月数をかけた額と決まっています(国民年金法(e-Gov法令検索))。
日本年金機構の例では、20歳から60歳までの40年間(480月)納めると、付加年金は200円×480月=96,000円(年額)です。令和8年度の老齢基礎年金の満額847,300円(昭和31年4月2日以後生まれの人)に足すと、943,300円になります。
| 手続き・ルール | 内容 |
|---|---|
| 申し込みの書類 | 国民年金被保険者関係届書(申出書)。提出先は市区町村役場か年金事務所で、電子申請もできる |
| 納付の開始 | 申し出た日の属する月の分から。郵送なら受付した日の属する月の分から。さかのぼっては納められない |
| 納付期限 | 納付対象月の翌月末日。期限を過ぎても、期限から2年間は納められる |
| 前納 | 前納すると期間に応じた割引がある(金額は日本年金機構「国民年金保険料の前納」で確認) |
| やめるとき | 同じ申出書で申し出る。申し出た月の前月分から付加保険料を納める人でなくなる |
| 税金 | 付加保険料は国民年金の保険料なので、社会保険料控除の対象(全額) |
| 受け取りを遅らせたとき | 老齢基礎年金の繰下げを申し出ると、付加年金も同じく繰り下げられ、増額の規定が準用される(国民年金法第46条) |
社会保険料控除の範囲は国税庁 No.1130 社会保険料控除で確認しました。付加年金は定額で物価スライドがないので、物価が上がると受け取る200円の重みは相対的に小さくなります。物価に合わせて改定される老齢基礎年金本体とは、ここが違います。
元が取れる年数を計算する(例)
元が取れる年数は、納付期間が長くても短くても2年です。400円で年200円の年金を買う仕組みなので、納付月数がいくつでも「納めた総額÷1年に受け取る額」は2になります。
以下は説明用の架空の例です。受け取りは65歳から、税金と物価の変動は考えません。
| 例 | 付加保険料を納めた期間 | 納めた総額 | 付加年金(年額) | 元が取れる時期 | 85歳まで20年受け取った場合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 例1:35歳で独立し60歳まで個人事業主 | 25年(300月) | 120,000円 | 60,000円 | 67歳 | 1,200,000円 |
| 例2:30歳で独立し、5年後に法人成りして厚生年金へ | 5年(60月) | 24,000円 | 12,000円 | 67歳 | 240,000円 |
| 例3:日本年金機構の例(20〜60歳) | 40年(480月) | 192,000円 | 96,000円 | 67歳 | 1,920,000円 |
検算します。例1は400円×300月=120,000円を納め、200円×300月=60,000円を毎年受け取ります。120,000円÷60,000円=2年なので、65歳から受け取ると67歳で納めた額に追いつきます。例2は400円×60月=24,000円、200円×60月=12,000円、例3は400円×480月=192,000円、200円×480月=96,000円で、どれも割ると2です。20年受け取った場合の額は、年額に20をかけています。
逆に言うと、損になるのは受け取る期間が2年に届かなかった場合です。付加年金は老齢基礎年金に付いてくる年金なので、老齢基礎年金を受け取れる状態になることが前提です(国民年金法第43条)。老齢基礎年金が全額支給停止されている間は、付加年金も止まります(同第47条)。
個人事業主・一人法人の判断ポイント
付加年金を使えるのは、国民年金だけに入っている第1号被保険者です。一人法人の役員でも、役員報酬を受け取って厚生年金に入っていれば第2号被保険者なので、付加保険料は納められません。
| 立場 | 国民年金の種別 | 付加年金 | 国民年金基金 | iDeCoの上限(月額) |
|---|---|---|---|---|
| 個人事業主(国民年金を納めている) | 第1号(国保・国民年金) | 納められる | 入れる。ただし付加年金とどちらか一方 | 現行68,000円→2026年12月分から75,000円(付加保険料・国民年金基金の掛金と合算) |
| 個人事業主(免除・納付猶予を受けている) | 第1号 | 納められない | 免除などを受けると加入員の資格を失う(国民年金法第127条第3項) | 国民年金保険料を納めていない月は0円 |
| 一人法人の役員(役員報酬あり) | 第2号(協会けんぽ・厚生年金) | 納められない | 入れない(加入員は第1号被保険者に限られる・同第127条) | 企業年金なしで現行23,000円→2026年12月分から62,000円 |
| 一人法人の役員(役員報酬0円) | 厚生年金に入れず、国民年金の第1号になる | 納められる | 個人事業主と同じ | 個人事業主と同じ |
iDeCoの上限は国民年金基金連合会「個人型年金規約」(2026.10)第75条とiDeCo公式「拠出限度額の引き上げ(2026年12月施行)による加入者掛金額変更の特例のご案内」で確認しました。法人役員のiDeCoは法人役員のiDeCoの記事、役員報酬0円の扱いは独立したときの保険証の記事にまとめています。
見落としやすいのはiDeCoとの組み合わせです。iDeCoの掛金は1,000円単位なので、付加保険料400円を納めると、第1号の上限は現行で67,000円、2026年12月分からは74,000円になります。iDeCo公式の特例の案内でも、付加保険料を納めている人の増額の範囲は68,000円以上74,000円以下と示されています。iDeCoを上限いっぱいまで使っている人にとっては、400円の付加保険料がiDeCoの枠を1,000円分押し下げる計算です。どちらも掛金や保険料の全額が所得控除になる点は同じなので、比べる軸は「物価スライドのない終身の定額年金」と「60歳まで引き出せない自分で運用する資金」のどちらに置くかになります。
法人成りを考えている人は、第1号でいる期間だけ付加年金を使う形になります。例2のように5年だけでも、元が取れる年数は2年のままです。ぼくは独立したとき、国民年金は切り替えの手続きだけで済ませていました(退職後の国民年金の免除の記事に書いた話です)。付加年金も免除と同じく、窓口で自分から申し出ないと始まらない制度です。切り替えの手続きで年金の窓口に行く日に、付加保険料の申出も同じ紙で出せるかを聞いておくと、検討の機会を逃しません。
よくある間違いと注意点
いちばん多いのは、あとからさかのぼって申し込めると思うことです。付加保険料は申し出た月の分からしか納められないので、検討するなら第1号になった月に申し出るのがいちばん月数を稼げます。
- 国民年金基金と両方に入る:同時には入れません。付加保険料を納めている人が国民年金基金の加入員になると、その日に付加保険料をやめる申出をしたものとみなされます(国民年金法第87条の2第4項)
- 免除を申請したあとも付加保険料が続くと思う:免除・納付猶予・学生納付特例を受けている間は納められません
- 付加保険料を始めたのにiDeCoに届け出ない:付加保険料を納め始めた・やめたときは、14日以内にiDeCo側にも届け出ます。上限を超える場合は掛金の変更も一緒に出します(個人型年金規約第55条)
- 法人成りしたあとも納められると思う:厚生年金に入って第2号になると、付加保険料を納める立場ではなくなります
- 物価に合わせて増えると思う:付加年金は定額で、物価スライドはありません
- 納め忘れたらもう払えないと思う:納付期限から2年間は納められます
この記事は最終更新日時点の制度で書いています。自分の加入記録や見込額は、ねんきんネットか年金事務所で確認できます。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。独立直後の手続きの全体は独立・開業前にやることリストに一覧で置いています。
付加年金に関するよくある質問
付加年金はいくらもらえますか?
年額で200円×付加保険料を納めた月数です。たとえば20歳から60歳までの40年間(480月)納めると、年96,000円が老齢基礎年金に上乗せされます。定額なので物価スライドはありません。
付加年金の申し込み方法は?
国民年金被保険者関係届書(申出書)を、住んでいる市区町村役場か年金事務所に出します。電子申請もできます。納付は申し出た月の分からで、さかのぼって納めることはできません。
付加年金は元が取れますか?
受け取りはじめて2年で、納めた付加保険料と同じ額になります。月400円で年200円の年金が増える仕組みなので、納付期間の長さに関係なく2年です。受け取る期間が2年より短い場合や、物価が大きく上がった場合は、実質的な損得が変わります。
iDeCoと付加年金は併用できますか?
併用できます。ただし第1号被保険者のiDeCoの上限は付加保険料と合算なので、付加保険料を納めている人のiDeCoの上限は現行で月67,000円、2026年12月分からは月74,000円です。国民年金基金とは同時に入れません。
おわりに──付加年金の損益分岐は2年で、決めるのは申し出るかどうかだけ
付加年金は、計算で迷うところがほとんどない制度です。400円で年200円の年金を買い、2年受け取れば元が取れます。比べる相手になるのはiDeCoの1,000円分の枠と物価の動きくらいで、残るのは「申し出るかどうか」と「いつ申し出るか」だけです。
今日やることは1つです。ねんきんネットか年金事務所で、自分がいま第1号被保険者かどうかと、付加保険料を納めているかを確かめてください。第1号なのに納めていなければ、申出書1枚で次の月から変えられます。