最終更新:2026年10月19日
契約書に印紙税がかかるかどうかは、契約書の名前ではなく中身で決まります。成果物の完成に報酬を払う請負の契約書は第2号文書で、契約金額に応じて200円から。営業者どうしで続く請負の取引条件を定めた基本契約は、契約金額の記載がなければ第7号文書で4,000円です。作業や助言そのものに報酬を払う準委任だけの業務委託契約書と、PDFや電子契約で結んだ契約は、印紙税の課税対象になりません。この記事では、国税庁のタックスアンサーと質疑応答事例で確認できた税額と判定の基準だけを使って、一人法人と個人事業主が業務委託契約書を作るときの判断をまとめます。内容は最終更新日時点(国税庁のタックスアンサーは令和8年4月1日現在の法令等)の制度にもとづいています。
印紙税と契約書とは?結論から
印紙税は、印紙税法の別表第一に掲げられた20種類の文書だけにかかる税金で、契約書なら「どの号の文書にあたるか」と「記載された契約金額」で税額が決まります。国税庁のNo.7100 課税文書に該当するかどうかの判断は、判断は文書の名称や形式的な文言ではなく、記載内容の実質的な意味で行うと説明しています。フリーランスや一人法人がよく交わす契約に当てはめると、次の表になります。
| 契約書の中身 | 印紙税法上の扱い | 印紙税額 | 確認した公式ページ |
|---|---|---|---|
| 制作・執筆・広告など、仕事の完成に報酬を払う契約(請負) | 第2号文書(請負に関する契約書) | 契約金額に応じて200円〜60万円。1万円未満は非課税、金額の記載がなければ200円 | 国税庁 No.7102 |
| 営業者どうしで、続けて行う複数の請負の取引条件(単価・支払方法など)を定める基本契約 | 契約金額の記載がなければ第7号文書、記載があれば第2号文書 | 第7号なら1通4,000円 | 国税庁 No.7104/質疑応答事例 |
| 相手の指示のもとで作業や助言をするだけの契約(準委任) | 課税文書に該当しない | 0円 | 国税庁 質疑応答事例 |
| PDFや電子契約サービスで結んだ契約(電磁的記録) | 電磁的記録は文書に含まれず、課税されない | 0円 | 国税庁 質疑応答事例 |
業務委託契約書という名前は、請負にも準委任にも使われます。国税庁のNo.7141 印紙税額の一覧表(その2)には第7号文書の例として「業務委託契約書」が挙がっていますが、名前が同じでも中身が準委任だけなら課税文書になりません。まず中身を読む、が出発点です。
制度・税額──第2号文書・第7号文書の一覧
契約書の印紙税で押さえるのは、第2号文書の税額表と、第7号文書の4,000円、それに消費税額の書き方で記載金額が変わるルールの3つです。いずれも国税庁のタックスアンサーで、令和8年4月1日現在の法令等として掲載されています。
第2号文書(請負に関する契約書)の税額は、No.7140 印紙税額の一覧表(その1)とNo.7102で次のとおりです。
| 記載された契約金額 | 印紙税額(1通につき) |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 400円 |
| 200万円を超え300万円以下 | 1,000円 |
| 300万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 |
| 1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
| 1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
| 5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
| 10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
| 50億円を超えるもの | 60万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
No.7102によると、請負とは「ある仕事の完成を約し、相手方がこれに報酬を支払う」契約で、建設工事のような有形のものだけでなく、警備や清掃のような無形の結果を目的とするものも含みます。国税庁の質疑応答事例「請負の意義」は、シナリオの作成や講演も請負の目的物に挙げ、「広告契約書」の事例では、広告契約は請負にあたり第2号文書になると答えています。マーケティングの仕事で交わす制作や広告の契約は、まず第2号を疑ってよい領域です。なお、建設工事の請負契約書には令和9年3月31日までの軽減措置がありますが、制作や広告の契約には関係しません。
第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)は1通4,000円です。No.7104によると、営業者の間で、売買・売買の委託・運送・運送取扱い・請負に関する複数の取引を続けて行うために、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法、再販売価格のうち1つ以上を定める契約書が該当します。ただし、契約期間が3か月以内で、更新の定めがないものは除かれます。
もう一つのルールが消費税額の書き方です。国税庁のNo.7124 消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額によると、第1号・第2号・第17号の文書で、消費税額等が区分して書かれているか、税込価格と税抜価格の両方が書かれていれば、消費税額等は記載金額に含めません。「消費税額等10パーセントを含む」や「(税込)」だけの書き方では、税込の金額が記載金額になります。また、消費税の免税事業者が区分記載しても、その金額は記載金額に含めるとされています。
判定の手順と計算例
業務委託契約書の印紙税は、「請負か準委任か」「基本契約か個別の契約か」「契約金額がどう書かれているか」の順に見れば判定できます。手順を番号で並べます。
- 報酬の対象を読む:成果物の完成に報酬を払うなら請負、作業や助言そのものに払うなら準委任です(民法632条・656条)。国税庁の質疑応答事例「プログラムの設計・開発契約書」は、プログラムの作成という仕事の完成に報酬を払う契約を第2号文書、相手の指揮監督のもとで労務を供給するだけの支援業務等を委任とし、支援業務等のみを定めた契約書は課税文書に該当しないと答えています
- 請負の事項が混ざっていないか確かめる:「請負の意義」の事例によると、請負の事項が一部でも併記された契約書は、民法上は委任に近い混合契約でも、印紙税法上は請負の契約書になるものがあります
- 基本契約かどうかを見る:営業者どうしで続く取引の単価や支払方法を定め、契約期間が3か月を超えるか更新の定めがあれば、第7号の候補です
- 契約金額を計算する:金額が書いてあれば第2号、単価だけで期間がなく金額を計算できなければ第7号です。質疑応答事例「第7号文書と他の号に該当する文書の所属の決定」は、月額単価と契約期間から「月額×月数」で金額を計算できる契約書を第2号文書としています
- 消費税額の書き方を確認する:区分記載なら税抜で、そうでなければ税込で表に当てはめます
架空の会社で計算例を出します。以下はすべて例で、社名・金額は実在しません。受注側は合同会社こもれび(架空・消費税の課税事業者)、発注側は株式会社あおば商事(架空)です。
| 例 | 契約書の書き方 | 判定 | 印紙税額 |
|---|---|---|---|
| 例1 LP制作 | 「請負金額220万円 うち消費税額等20万円」 | 第2号・記載金額200万円 | 400円 |
| 例2 例1の書き方違い | 「請負金額220万円(税込)」 | 第2号・記載金額220万円 | 1,000円 |
| 例3 記事制作の年間契約 | 「月額20万円(消費税額等は別に記載)、契約期間12か月」 | 第2号・記載金額240万円 | 1,000円 |
| 例4 制作の基本契約 | 記事1本あたりの単価と支払方法だけを定め、期間1年・自動更新、契約金額の記載なし | 第7号 | 4,000円 |
| 例5 SNS運用の助言 | 月1回の打ち合わせで助言し、成果物の完成は約さない | 準委任・課税文書に該当しない | 0円 |
検算します。例1は200万円で「100万円を超え200万円以下」に入るので400円、例2は220万円で「200万円を超え300万円以下」に入るので1,000円です。同じ契約でも、消費税額の書き方だけで600円変わります。例3は20万円×12か月=240万円で1,000円です。例1の契約書を2通作り、2通とも双方が記名押印すれば、400円×2通で800円になります。
一人法人・個人事業主の判断ポイント
印紙税は、法人か個人事業主かで税額が変わる税金ではありません。違いが出るのは、印紙を貼り忘れたときの過怠税の扱いと、契約書を保存しておく期間です。両方を表に分けます。
| 論点 | 一人法人 | 個人事業主 | 確認した公式ページ |
|---|---|---|---|
| 印紙税を納める人 | 課税文書の作成者。2者以上で共同して作成した文書は、連帯して納める義務がある(印紙税法3条) | e-Gov 印紙税法 | |
| 税額 | 同じ(号と記載金額で決まる) | 国税庁 No.7140・No.7141 | |
| 過怠税 | 全額が法人税の損金に算入されない(法人税法55条4項1号) | 全額が所得税の必要経費に算入されない(所得税法45条1項3号) | 国税庁 No.7131 |
| 契約書の保存期間 | 7年(確定申告書の提出期限の翌日から。青色申告で欠損金が生じた事業年度などは10年) | 青色申告者は5年(作成または受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日から) | 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問17 |
受注側の一人法人・個人事業主にとって大事なのは、自分の仕事が請負か準委任かを、契約書の文言で言えるようにしておくことです。マーケティングの仕事は、LPや記事を納める仕事と、運用の相談に乗る仕事が一つの契約に混ざりやすい領域です。混ざっていれば請負の事項として第2号の判定に入るので、印紙税の有無を左右するのは「何に対して報酬を払う契約か」という一文になります。
もう一つは、消費税の扱いとのつながりです。No.7124のとおり、免税事業者が受注する契約では、消費税額を区分して書いても税込の金額が記載金額になります。インボイスの登録をしていない免税事業者と課税事業者とで、同じ請負金額でも印紙税額が変わることがある、という点は覚えておいて損がありません。
ぼくは経理や書類整理のようなバックオフィス作業がかなり苦手で、会社を作るときも、定款と登記の書類はfreee会社設立の画面に沿って作りました。独立すると、見積書を送り、取引先と契約を交わす場面が増えますし、契約書や請求書に住所を書く場面も思っていたより多くなります。その経緯は一人で合同会社を設立したときにやったことリストに書きました。書類が苦手な人ほど、契約書の印紙は「税額表を覚える」より「請負か準委任か、紙か電子かを最初に決める」ほうが楽になると思います。設立時の定款にかかる印紙税4万円(第6号文書)が電子定款なら不要になる話は、合同会社の設立費用の記事にまとめています。
よくある間違いと注意点
契約書の印紙税でいちばん多い間違いは、「副本」や「写し」と書けば印紙はいらない、と思い込むことです。国税庁のNo.7120 契約書の写し、副本、謄本等によると、写しや副本と表示されていても、契約当事者の双方の署名・押印があるなど、契約の成立を証明する目的で作られたものは課税対象です。ほかにも間違えやすい点を並べます。
- 2通とも印紙が必要になる場合を見落とす:一つの契約で2通作っても、2通とも契約の成立を証明する目的で作られていれば、すべてが課税対象です(No.7120・質疑応答事例「写、副本、謄本等と表示された契約書の取扱い」)。一方、正本をコピーしただけで署名・押印や証明のないものは単なる写しで、課税対象になりません。
- PDFを印刷したものに印紙を貼る:No.7120は、ファックスや電子メールで送った場合、送付先で出力された文書は写しと同様で課税対象にならないとしています。ただし、印刷した紙に双方があらためて署名・押印すれば、その紙は契約の成立を証明する文書になり得ます。
- 電子契約のあとに紙で変更契約書を交わす:質疑応答事例「変更契約書に電磁的記録(電子契約)を引用する旨の記載がある場合」によると、電子契約の内容は変更契約書に記載されたものとして扱われず、紙の変更契約書に書かれた内容だけで判断されます。紙で交わした変更契約書は、それ自体で課税文書かどうかを判定します。
- 印紙を貼り忘れる・消印を忘れる:No.7131によると、納付しなかった印紙税は、その額と2倍の合計=3倍の過怠税になります。調査を受ける前に自分から申し出れば1.1倍に軽減されます。例として1,000円の印紙を貼り忘れると、過怠税は3,000円、自主的に申し出た場合は1,100円です。貼った印紙を消印しなかった場合も、その額面と同額の過怠税がかかります。
- 名前で判定する:「業務委託契約書」「覚書」「注文請書」などの名前では決まりません。No.7100のとおり、記載内容の実質で判断されます。
この記事は、最終更新日時点の制度で、国税庁とe-Govで確認できた税額と判定基準だけを書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。契約書が何号にあたるか迷うときは、国税庁の税についての相談窓口で確認する方法もあります。相談できる税理士を探すなら、税理士ドットコムをすすめる理由に探し方を書いています。
印紙税と契約書に関するよくある質問
印紙税と契約書について、検索で一緒に調べられている「業務委託契約書」「2通」「電子契約」「貼り忘れ」の疑問に答えます。税額は、最終更新日時点で国税庁のページで確認できたものだけです。
業務委託契約書に収入印紙は必要ですか?
中身によります。成果物の完成に報酬を払う請負なら第2号文書で契約金額に応じて200円から、営業者どうしで続く請負の取引条件を定めた基本契約で金額の記載がなければ第7号文書で4,000円です。相手の指揮監督のもとで作業や助言をするだけの準委任の契約書は、課税文書に該当しません。
契約書を2通作るとき、印紙は2通とも必要ですか?
2通とも双方が署名・押印するなど、どちらも契約の成立を証明する目的で作られていれば、2通とも必要です。写しや副本と表示しても扱いは変わりません。正本をコピーしただけで署名・押印のないものは単なる写しで、印紙は不要です。
電子契約やPDFの契約書に収入印紙はいりますか?
いりません。国税庁の質疑応答事例は、課税対象は課税物件表に掲げられた文書で、電磁的記録は文書に含まれないと答えています。ただし、電子契約のあとに紙で変更契約書を交わす場合や、印刷した紙に双方が署名・押印する場合は、その紙について判定が必要です。
契約書に印紙を貼り忘れたらどうなりますか?
納めるべき印紙税の3倍の過怠税がかかります。税務調査の前に自分から印紙税不納付事実申出書を出せば1.1倍に軽減されます。過怠税は、法人なら損金に、個人事業主なら必要経費に算入できません。
おわりに──契約書の印紙は、税額表ではなく「報酬を何に払うか」で決まる
契約書の印紙税は、税額表を見る前に勝負がついています。成果物に報酬を払うなら第2号、続く取引の条件だけなら第7号、作業や助言そのものなら0円、電子で結べば0円です。迷ったら、契約書の中から「報酬は何に対して払うのか」の一文を探してください。その一文が、印紙の金額をほとんど決めています。