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取適法(旧下請法)とは?2026年1月の改正点とフリーランス新法の違い

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最終更新:2026年10月20日

取適法とは、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が改正されて2026年1月1日に施行された「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」の通称で、一定規模以上の発注者が中小の受注者に仕事を委託するときの支払期日や禁止行為を定めた法律です。改正で、資本金に加えて従業員数でも対象が決まるようになり、手形払いと、協議に応じない一方的な代金決定が禁止されました。この記事では、公正取引委員会と中小企業庁の資料、e-Gov法令検索で確認できた範囲で、旧下請法からの改正点、フリーランス新法との適用関係、一人法人が受注側・発注側になる場面を整理します。最終更新日時点の制度で書いています。

取適法(旧下請法)とは?結論から

取適法は、発注者と受注者の「会社の大きさの差」で対象を決め、大きい側に支払いと取引条件のルールを課す法律で、旧下請法の骨格を引き継ぎながら対象と禁止行為を広げたものです。要点を表にまとめます。

項目 内容
正式名称 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号)
略称・通称 中小受託取引適正化法(略称)、取適法(通称・とりてきほう)
改正法の成立・公布 2025年(令和7年)5月16日成立、5月23日公布
施行日 2026年(令和8年)1月1日。同日以降に発注する取引に適用
対象 ①取引の内容(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託)と②規模要件(資本金または従業員数)の両方にあたる取引
発注者の義務 4つの義務(発注内容の明示・記録の作成と2年保存・60日以内の支払期日・遅延利息)と11の禁止行為
執行 公正取引委員会による勧告、公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁による指導・助言

施行日と成立日は公正取引委員会の取適法関係ページ、法律の全文はe-Gov法令検索で確認しました。公正取引委員会は「令和8年1月1日以降に発注する取引について、取適法の規定(禁止行為等)が適用されます」と案内しています(取適法施行に当たり事業者の皆様に御留意いただきたい事項)。

2026年1月施行の改正点(旧下請法からの変更)

旧下請法からの変更は、名前と用語の見直し、従業員基準と特定運送委託の追加による対象の拡大、手形払いと一方的な代金決定の禁止、執行する役所の拡大の4つに分けられます。施行日はすべて2026年1月1日です。

項目 旧下請法(2025年12月まで) 取適法(2026年1月1日から)
法律の名前 下請代金支払遅延等防止法 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
用語 親事業者/下請事業者/下請代金 委託事業者/中小受託事業者/製造委託等代金
規模要件 資本金の基準だけ 資本金の基準に、従業員数の基準(300人・100人)を追加。従業員基準は資本金基準が適用されない場合に使う
対象取引 製造・修理・情報成果物作成・役務提供の委託 発荷主が運送事業者に物品の運送を委託する「特定運送委託」を追加
支払手段 手形払いは使えた 手形払いを禁止。電子記録債権やファクタリングなども、支払期日までに代金満額の現金を得ることが難しいものは禁止(支払遅延にあたる)
代金の決め方 (規定なし) 受注者が価格の協議を求めたのに応じない、必要な説明をしないなど、一方的に代金を決めることを禁止
振込手数料(運用基準) 受注者が負担する旨の書面の合意があれば、実費の範囲で差し引けた 合意の有無にかかわらず、振込手数料を受注者に負担させて代金から差し引くと減額にあたる
発注内容の示し方 3条書面。電磁的方法は受注者の承諾が必要 4条明示。承諾の有無にかかわらず電子メールなどの電磁的方法で示せる。記録は7条記録
執行 公正取引委員会・中小企業庁 事業所管省庁にも指導・助言の権限。報復措置の禁止にかかる情報提供先にも追加

改正点は公正取引委員会の取適法リーフレットと、公正取引委員会・中小企業庁の中小受託取引適正化法テキスト(令和7年11月)で確認しました。製造委託では、金型に加えて木型や治具なども対象の型に加わっています。

対象になるかどうかは、取引の内容ごとに次の規模要件で決まります。マーケ支援に多い広告物・デザイン・映像・レポートの作成は「情報成果物作成委託」、広告会社が請け負った販売促進の業務の一部を外に出すようなサービスの委託は「役務提供委託」にあたり得るので、下の段の表を使います。

取引の内容 委託事業者(発注側) 中小受託事業者(受注側)
製造委託・修理委託・特定運送委託、情報成果物作成委託のうちプログラム、役務提供委託のうち運送・倉庫保管・情報処理 資本金3億円超 資本金3億円以下(個人を含む)
資本金1千万円超3億円以下 資本金1千万円以下(個人を含む)
常時使用する従業員300人超 常時使用する従業員300人以下(個人を含む)
上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託(デザイン・映像・広告物・レポートの作成、販売促進の業務の一部など) 資本金5千万円超 資本金5千万円以下(個人を含む)
資本金1千万円超5千万円以下 資本金1千万円以下(個人を含む)
常時使用する従業員100人超 常時使用する従業員100人以下(個人を含む)

「常時使用する従業員」は賃金台帳に載っている従業員の数で数え、正社員・契約社員・パート・アルバイトなどを含み、派遣社員は含みません。判断するのは委託をした時点の人数で、発注者に相手の従業員数を確認する義務はありません(公正取引委員会 留意事項のページ)。

委託事業者が負う4つの義務は、発注内容の明示、取引の記録の作成と2年間の保存、受け取った日から起算して60日以内のできる限り短い支払期日、そして支払いが遅れたり減額したりしたときの遅延利息(年率14.6%)です。禁止行為は、受領拒否・支払遅延・減額・返品・買いたたき・購入利用強制・報復措置・有償支給原材料等の対価の早期決済・不当な経済上の利益の提供要請・不当な給付内容の変更とやり直し・協議に応じない一方的な代金決定の11です(リーフレット)。明示義務と記録義務に違反すると、違反した委託事業者の代表者や従業者は50万円以下の罰金の対象になります(14条)。

取適法とフリーランス新法の違い(比べ方)

取適法とフリーランス新法の違いは、取適法が「発注者の大きさ」で線を引き、フリーランス新法が「受注者が一人かどうか」で線を引く点にあり、同じ取引に両方がかかることもあります。主な違いを表にまとめます。

比べる点 取適法 フリーランス新法
施行日 2026年1月1日(改正法) 2024年11月1日
守られる側 中小受託事業者=個人、または資本金・従業員数が一定以下の法人。従業員がいてもよい 特定受託事業者=従業員を使わない個人、または代表者1人のほかに役員がなく従業員もいない法人
義務を負う側 資本金や従業員数が受注側より大きい委託事業者 規模を問わず業務委託事業者(明示義務)。従業員を使う・役員が2人以上なら追加の義務
対象の取引 5つの類型に限る。発注者が自ら用いる役務の委託は対象外 業種の限定なし。自ら用いる役務の委託も対象
支払期日 受け取った日から60日以内 受け取った日から60日以内(再委託は元の支払期日から30日以内の例外あり)
遅延利息 年率14.6% 規定なし
手形 禁止 直ちに違反ではないが、手形以外で払うことが望ましいとされる
禁止行為 11 7(1か月以上の委託)
就業環境のルール なし 募集情報・育児介護との両立・ハラスメント対策・解除の予告

手形の扱いと自ら用いる役務の扱いは公正取引委員会のフリーランス法Q&Aで確認しました。両方にあたる取引について、公正取引委員会は「本法と取適法のいずれにも違反する行為については、原則として本法を優先して適用」するとしています(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び取適法との適用関係等の考え方)。ここでの「本法」はフリーランス新法です。ただし、同じ事業者が取適法だけに違反する行為もしている場合は、全体に取適法を適用して勧告することがあります。発注のときの明示は、1つの書面やメールで両方の法律の事項をまとめて示せます(フリーランス法Q&A)。

両方にあたるのは、たとえば次のような取引です。架空の例です。

  • 資本金1億円の広告会社が、広告主から請け負ったCM制作の一部を、従業員のいない個人の映像クリエイターに委託する
  • 取適法では、広告会社が請け負った情報成果物の作成を委託する形(テキストの類型2)で、資本金5千万円超の発注者から個人への委託にあたる
  • フリーランス新法では、受注者が特定受託事業者にあたる

フリーランス新法の義務や禁止行為の中身は、フリーランス新法の別記事で詳しく書いています。

フリーランス・一人法人の判断ポイント

一人法人にとって取適法は、受注側では守ってくれることがある法律で、発注側では資本金1千万円以下・従業員100人以下である限り義務を負わない法律です。立場ごとに表にします。

立場 取適法との関係 確かめること
受注側(広告会社・制作会社から再委託を受ける) 相手が委託事業者の規模なら、中小受託事業者として守られ得る 相手の資本金・従業員数、4条明示が届いているか、60日以内か、振込手数料を引かれていないか
受注側(事業会社から直接受ける) 自社の広告宣伝物の作成を社内の部門で業として行っていない会社からの委託や、社内研修の講師など自ら用いる役務の委託は、取適法の対象にならないことがある 取適法にあたらなくても、フリーランス新法にはあたり得る
発注側(外注先に頼む) 資本金1千万円以下・従業員100人以下なら、情報成果物作成委託・役務提供委託の委託事業者にならない 外注先がフリーランスなら、フリーランス新法の取引条件の明示は必要

事業会社から直接受ける仕事の扱いは、公正取引委員会・中小企業庁のテキストにある説明によります。テキストは、広告会社が広告主から請け負ったテレビCMの制作を広告制作業者に委託することを情報成果物作成委託の例に挙げる一方、自らの事業のために用いる広告宣伝物は、社内に部門を設けて作成を行っている場合などに対象になるとしています。役務提供委託でも、社内研修を外部講師に委託するような自ら用いる役務は対象外です。マーケ支援を事業会社から直接受ける働き方では、取適法より先に、フリーランス新法と契約書の中身で自分を守る場面が多くなります。

ぼくのtiny合同会社は資本金50万円で、仕事は中小企業やスタートアップとのプロジェクトが中心です(tiny合同会社を設立してわかったこと)。資本金の基準で見ると、受注側としては中小受託事業者にあたり得る規模で、発注側に回っても委託事業者にはあたりません。請求書を出して、入金は翌月末になるのが基本の流れで、案件によってはそれより後になることもあります(一人で合同会社を設立したら、驚くほど簡単だった)。取適法の60日は、相手が委託事業者の規模で、取引が対象の類型にあたるときに初めて効くルールです。自分の取引がどれにあたるかは、公正取引委員会の取適法簡易診断ツールで、資本金・従業員数・委託内容を選んで確かめられます。

一人法人が値上げを相談したい場面では、取適法の「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」が受注側の権利として働きます。ただし、取適法の対象取引であることが前提です。単価の決め方そのものはバリューベースプライシングとはにまとめています。

取適法のよくある間違いと注意点

取適法でいちばん多い間違いは「旧下請法と同じ」と考えて、2026年1月以降の発注でも手形払いや振込手数料の差し引きを続けてしまうことです。公正取引委員会は、改正前の運用を続けると法令違反になるおそれがある事項があると注意を促しています。

  • 手形をでんさいに替えれば大丈夫:支払期日までに代金満額の現金を得ることが難しい電子記録債権や一括決済方式は、支払遅延にあたります
  • 振込手数料は合意すれば引ける:取適法の対象取引では、合意の有無にかかわらず減額にあたります
  • 資本金が小さい相手なら関係ない:資本金基準にあたらなくても、従業員数の基準で対象になることがあります
  • 口頭発注は業界の慣習:公正取引委員会と中小企業庁は2026年6月29日、広告業の集中調査で広告業者に71件の指導を行ったと公表しました。発注内容を明示していない事例、無償で何度も修正させた事例、知的財産権を無償で譲渡・許諾させた事例、振込手数料を負担させた事例などが挙がっています(公正取引委員会 2026年6月29日公表)
  • 2025年中の発注にも新ルール:取適法の規定が適用されるのは2026年1月1日以降に発注した取引です
  • 一人法人の発注にも取適法がかかる:資本金1千万円以下・従業員100人以下の一人法人は、情報成果物作成委託・役務提供委託の委託事業者になりません。かかるのはフリーランス新法の明示義務です

この記事は一般的な情報の整理であり、個別の契約の判断は弁護士・税理士に確認してください。最終更新日時点の法令と、公正取引委員会・中小企業庁の資料で確認できた範囲で書いています。インボイスの記載事項は適格請求書の記載事項、入金が遅れたときの帳簿の扱いは売掛金とはにまとめています。

取適法に関するよくある質問

取適法はいつから施行されましたか?

2026年(令和8年)1月1日です。改正法は2025年5月16日に成立し、5月23日に公布されました。取適法の禁止行為などは、2026年1月1日以降に発注した取引に適用されます。手形払いの禁止も同日以降の発注からです。

取適法とフリーランス新法の違いは何ですか?

取適法は発注者と受注者の資本金や従業員数の差で対象を決め、フリーランス新法は受注者が従業員を使わない一人の事業者かどうかで決めます。両方にあたる行為には、原則としてフリーランス新法が優先して適用されます。遅延利息年14.6%や手形払いの禁止は取適法にだけあるルールです。

取適法の従業員基準とは何ですか?

資本金の基準に加えて新設された、常時使用する従業員の数による基準です。製造委託などは300人、デザインや広告物の作成などの情報成果物作成委託と役務提供委託は100人が境目で、資本金の基準が適用されない場合に使います。人数は委託をした時点で判断します。

一人法人は取適法の対象になりますか?

受注側なら、相手が委託事業者の規模で取引が対象の類型にあたれば、中小受託事業者として守られ得ます。発注側では、資本金1千万円以下で従業員100人以下なら、情報成果物作成委託や役務提供委託の委託事業者にはあたりません。外注先がフリーランスなら、フリーランス新法の明示義務はかかります。

おわりに──取適法は発注者の大きさで、フリーランス新法は受注者の小ささで線を引く

取適法の改正で、手形も、口頭の発注も、協議のない値決めも、大きな発注者には使えなくなりました。ただ、取適法が守るのは「大きな相手」との取引だけです。一人法人が先に決めておくべきなのは、目の前の取引がどちらの法律の線の内側にあるかであり、どちらの内側にもなければ、契約書で自分の線を引くことです。

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