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適格請求書の記載事項とは?6項目の記載例と不足しがちな3つの点

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最終更新:2026年10月19日

適格請求書(インボイス)の記載事項は、①発行する事業者の名称と登録番号、②取引年月日、③取引内容、④税率ごとに区分した合計額と適用税率、⑤税率ごとに区分した消費税額等、⑥受け取る事業者の名称の6つです。これまでの区分記載請求書に、登録番号・適用税率・税率ごとの消費税額が加わった形で、どれか1つでも欠けると、受け取った取引先は原則としてその請求書で仕入税額控除を受けられません。この記事では、国税庁のタックスアンサーとインボイスQ&Aで確認できた範囲で、6項目の書き方を架空の記載例で示し、不足しがちな点、簡易インボイスが使える業種、返還インボイスまで整理します。制度は最終更新日時点の国税庁の公式ページに沿って書いています。

適格請求書の記載事項とは?結論から

適格請求書の記載事項は、売手が買手に「この取引の税率と消費税額はこれです」と伝えるための6項目です。国税庁は適格請求書を、売手が買手に正確な適用税率や消費税額等を伝える手段と説明しています(No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度))。6項目と、実際に抜けやすいところを先に並べます。

記載事項 書き方の例 不足しやすい点
①適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号 合同会社みほん企画 登録番号 T+13桁の数字 登録番号の書き漏れ・桁の誤り。登録前の古い請求書の型をそのまま使う
②取引年月日 2026年10月分(10月1日〜10月31日) 請求日だけで取引日がない。月まとめなら期間を書く
③取引内容(軽減税率の対象品目ならその旨) マーケティング支援業務(10月分) 「一式」だけで中身が分からない
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)と適用税率 10%対象 287,035円(税抜) 合計額はあるのに「10%対象」の区分と税率がない
⑤税率ごとに区分した消費税額等 消費税額等(10%)28,703円 品目ごとに端数処理して足し上げている
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 株式会社ためし商事 御中 宛名なしのレシート型で出している(簡易インボイスが使える業種以外は不可)

出典は国税庁のNo.6625 適格請求書等の記載事項(令和8年4月1日現在法令等)と、条文の消費税法第57条の4第1項(e-Gov法令検索)です。上の表の会社名と金額は説明のための架空の例で、登録番号は実在の番号を出さないよう「T+13桁の数字」とだけ書いています。

適格請求書の制度・要件(国税庁で確認した中身)

適格請求書を交付できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者だけです。登録を受けた事業者は、取引の相手方(課税事業者に限る)から求められたら適格請求書を交付し、その写しを保存する義務を負います(No.6498)。請求書のほかに、条件によって使える書類が3つあるので、違いを表にしました。

書類 使える場面 記載事項の違い 出典
適格請求書 登録を受けた事業者が課税事業者に売るとき(原則) 6項目すべて No.6625
適格簡易請求書(簡易インボイス) 小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業(不特定多数向け)、これらに準ずる不特定多数向けの事業 ⑥宛名が不要。④の適用税率と⑤の消費税額等は、どちらか一方でよい インボイスQ&A問24・問58
適格返還請求書(返還インボイス) 返品・値引き・割戻しなど、売上げの対価を返したり減額したりするとき 名称と登録番号、返還等の年月日と元の取引の年月日、元の取引の内容、返還等の金額を税率ごとに合計した額、その消費税額等または適用税率 問60
修正した適格請求書 交付した適格請求書の記載事項に誤りがあったとき 全項目を書き直したものか、元の請求書との関連と修正箇所を明示したもの 問33

返還インボイスは、返還等の税込金額が1万円未満なら交付義務が免除されます。国税庁は、50万円の請求に対して買手が振込手数料相当額の440円を差し引いて払い、売手がそれを値引きとして処理する例を挙げ、1万円未満なので返還インボイスは不要としています(問28)。

記載のしかたには幅も認められています。課税期間の範囲内で一定期間の取引をまとめて1枚にする方法、商品名を包括的に書く方法、記号や番号で書いて記号表で明らかにする方法です(No.6625)。名称は、電話番号を書くなどして発行者を特定できれば、屋号や省略した名称でも差し支えないとされています(問55)。保存期間は、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です(No.6625)。

記載例と書き方の手順(架空の会社で例)

記載例は、6項目を上から順に埋め、最後に消費税額を税率ごとに1回だけ計算すると崩れません。ここでは、一人法人の「合同会社みほん企画」が取引先の「株式会社ためし商事」に10月分の業務を請求する、という架空の例で書きます。会社名・金額はすべて例です。

請求書の欄 記載内容(例) 対応する記載事項
宛名 株式会社ためし商事 御中 ⑥
発行者 合同会社みほん企画 登録番号 T+13桁の数字 ①
取引期間 2026年10月1日〜10月31日分 ②
明細1 マーケティング支援業務(10月分)250,000円 ③
明細2〜4 記事制作A 12,345円/記事制作B 12,345円/記事制作C 12,345円 ③
税率ごとの合計 10%対象 287,035円(税抜) ④
消費税額等 28,703円(287,035円×10%=28,703.5円、1円未満切捨て) ⑤
請求金額 315,738円(税込) 任意(記載事項ではないが通常は書く)

検算すると、250,000円+12,345円×3=287,035円で、消費税額等は28,703円、請求金額は287,035円+28,703円=315,738円です。

手順にすると次のとおりです。

  1. 自社の名称と登録番号を、請求書の型に固定で入れておく(登録番号は公表サイトの表示と一字ずつ照合する)
  2. 取引年月日を書く。月まとめなら「10月1日〜10月31日分」のように期間で書く
  3. 取引内容を、何の役務かが分かる言葉で書く。軽減税率の対象品目があれば「※」などで印を付け、印の意味を書いておく
  4. 明細を税率ごとに分けて合計し、「10%対象」と適用税率を書く
  5. 税率ごとの合計額から消費税額等を計算し、1円未満の端数は請求書1枚につき税率ごとに1回だけ処理する
  6. 相手の名称を書く。正式名称でなくても、相手が特定できる名称であればよい

5の端数処理がいちばん間違えやすいところです。国税庁は、端数処理は一の適格請求書につき税率ごとに1回で、切上げ・切捨て・四捨五入のどれを選ぶかは任意、個々の商品ごとに端数処理して合計することは認められないとしています(問57)。上の例で明細ごとに計算すると、25,000円+1,234円×3=28,702円になり、正しい28,703円と1円ずれます。金額が小さいので見落としがちですが、記載事項の要件そのものに関わる違いです。

一人法人・個人事業主の判断ポイント

一人法人でも個人事業主でも、適格請求書の6項目は同じです。違いが出るのは、登録番号の形、名称の書き方、そして登録していない場合の請求書の扱いです。

論点 一人法人 個人事業主
登録番号の形 T+法人番号(13桁) T+13桁の数字(マイナンバーとは別の番号)
①の名称 会社の名称(特定できれば省略した名称も可) 氏名または屋号(屋号は発行者を特定できる記載があれば可)
登録していない場合 適格請求書は出せないが、適格請求書に当たらない請求書や領収書は出せる。登録番号に似た英数字や他人の番号を書くことは禁止で、罰則(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の対象
受け取る側の少額特例 基準期間の課税売上高1億円以下または特定期間の課税売上高5,000万円以下なら、2023年10月1日〜2029年9月30日の税込1万円未満の課税仕入れは帳簿の保存だけで仕入税額控除ができる

登録番号の形はNo.6498、未登録の事業者の請求書と罰則は問26-2、少額特例は問111で確認しました。3つの番号の違いは法人番号とは?13桁の調べ方とインボイスの登録番号との違いに整理しています。

登録していない事業者から請求書を受け取った側は、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置を使えます。割合は、2023年10月1日〜2026年9月30日が80%、2026年10月1日〜2028年9月30日が70%、2028年10月1日〜2030年9月30日が50%、2030年10月1日〜2031年9月30日が30%です。2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、1つの免税事業者等からの経過措置の対象となる仕入れが年または事業年度で税込1億円を超えると、超えた部分には使えません(問113)。この記事を書いている2026年10月は、ちょうど80%から70%に下がったところです。取引先から見ると、登録していない相手への支払いは、去年より控除できる消費税が少なくなっています。

ぼくはtiny合同会社を作るとき、会社名を、見積書にも請求書にも入り何年も名乗り続ける名前として決めました(一人で合同会社を設立したら、驚くほど簡単だった)。請求書は、その名前がいちばん多く相手の手元に残る書類です。バックオフィスが苦手なので、設立後の会計はfreee会計に頼りました。freeeもマネーフォワードも、プランによっては登録番号入りの適格請求書を発行でき、請求書を出すと売上として帳簿に反映されます(freeeとマネーフォワードの比較記事)。6項目を毎回手で確かめるより、型に入れて固定してしまうほうが漏れは減ると思います。ぼくの場合、請求書を出してから入金は翌月末で、案件によってはそれより後でした。記載の不備で出し直しになれば、その分だけ入金の予定も読みにくくなります。フリーランスとして源泉徴収がある報酬の請求書の書き方は、フリーランスの請求書の書き方にまとめました。

よくある間違いと注意点(不足しがちな項目)

不足でいちばん多いのは、合計額は書いてあるのに「税率ごとの区分」と「税率ごとの消費税額」が抜けているケースです。10%の取引しかない請求書でも、「10%対象」の合計と消費税額を書く必要があります。

  • 登録番号が抜けている・違う:登録前の請求書の型を使い続けると起きます。法人なら、公表サイトで調べた法人番号と登録番号の数字部分が一致するかを見ると、取り違えに気づけます
  • 品目ごとに端数処理している:端数処理は請求書1枚につき税率ごとに1回です(問57)
  • 宛名のないレシート型で出している:宛名を省けるのは簡易インボイスを交付できる業種だけです。取引先ごとに個別に契約するマーケティング支援やコンサルティング、制作の請求書は、通常は原則どおり相手の名称を書きます
  • 受け取った請求書を自分で直してしまう:買手は原則として自ら追記や修正はできず、売手に修正した適格請求書を求めます。買手が修正した仕入明細書を作り、売手の確認を受ける方法もあります(問92)
  • 誤りに気づいても放置する:交付した側は、誤りがあれば修正した適格請求書を交付しなければなりません(問32)。修正後は、当初の写しと修正後の写しの両方を保存します
  • 振込手数料の差引きごとに返還インボイスを作る:値引きとして処理する場合でも、1万円未満なら返還インボイスの交付義務は免除されます(問29)

海外のサービスやサブスクの請求書は、相手が国外事業者だと扱いが変わります。その点はサブスクの勘定科目と海外サービスの消費税の記事に整理しています。この記事は、最終更新日時点の国税庁のタックスアンサー、インボイスQ&A、e-Gov法令検索で確認できた制度で書いています。経過措置は時期によって割合が変わります。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。

適格請求書の記載事項に関するよくある質問

適格請求書の記載例は国税庁のどこで見られますか?

国税庁のタックスアンサーNo.6625に記載事項の一覧があり、インボイスQ&Aの問54に区分記載請求書から追加が必要な項目の記載例、問57に端数処理の記載例が載っています。記載例の登録番号は形を示すためのもので、自社の請求書には自社の番号を書きます。

簡易インボイスはどんな業種で使えますか?

小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、不特定多数向けの駐車場業、これらに準ずる不特定多数向けの事業です。宛名が不要になり、適用税率と消費税額等はどちらか一方の記載で足ります。取引先ごとに個別に契約して請求する事業は、原則として通常の適格請求書になります。

登録番号のない請求書を受け取ったらどうなりますか?

適格請求書ではないので、原則として仕入税額控除はできません。ただし経過措置で、2026年10月1日〜2028年9月30日の仕入れは仕入税額相当額の70%を控除できます。経過措置を使うには、帳簿に経過措置の対象である旨を書き、区分記載請求書と同様の記載事項がある請求書を保存します。

記載事項に不足や誤りがあったら、どう直せばいいですか?

交付した側が、修正した適格請求書を交付します。全項目を書き直す方法と、元の請求書との関連と修正箇所を示す方法のどちらでもかまいません。受け取った側が自分で書き足すことは原則できず、修正を求めるか、修正した仕入明細書を作って相手の確認を受けます。

おわりに──適格請求書は、自分の売上の記録ではなく、相手の控除の証拠

請求書は長いあいだ、「いくら払ってください」を伝える書類でした。インボイス制度のもとでは、それに加えて「あなたが控除できる消費税はこれです」を相手に渡す書類になっています。6項目のどれかが欠けたとき、困るのは書いた自分より受け取った相手です。

だから記載事項は、覚えるものではなく、型に固定するものだと思います。登録番号、税率ごとの合計、税率ごとの消費税額。この3つが毎回自動で入る型さえ作れば、適格請求書はもう怖い書類ではありません。

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