最終更新:2026年10月20日
青色申告の65万円控除の条件は、青色申告の承認を受けたうえで、事業所得などの取引を複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して、確定申告期限までに、e-Taxで送信する(または優良な電子帳簿を保存する)ことです。これは令和8年分(2026年分)までの形で、令和9年分(2027年分)からは65万円にe-Taxでの送信が必須になり、さらに優良な電子帳簿の保存かデジタルシームレス保存を足すと最高75万円になります。書面で申告した場合の上限は10万円に下がります。
確定申告の全体の流れはフリーランスの確定申告ガイドに書いたので、この記事は青色申告特別控除の条件と、令和9年分からの変更点に絞りました。2026年10月20日時点の制度で書いています。
青色申告65万円控除の条件とは?結論から
65万円控除は、複式簿記で記帳した人が、期限内に電子で出したときに受けられる控除です。55万円の要件に「電子で出す(または電子で保存する)」を1つ足したもの、と整理すると迷いません。
| 条件 | 中身 | 確認したページ |
|---|---|---|
| 青色申告の承認 | 青色申告承認申請書を期限までに出し、承認を受けている | No.2070 |
| 対象の所得 | 事業所得または不動産所得を生ずべき事業を営んでいる | No.2072 |
| 記帳 | 正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳している | No.2072 |
| 添付 | その記帳から作った貸借対照表・損益計算書などを確定申告書に添付する | No.2072 |
| 期限 | 確定申告期限(翌年3月15日)までに出す。還付申告でも同じ | No.2072 |
| 電子化(令和8年分まで) | e-Taxで送信する、または仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿で保存し届出書を出す、のどちらか | No.2072 |
| 電子化(令和9年分から) | e-Taxで確定申告書と青色申告決算書(貸借対照表を含む)のデータを送信することが必須 | 75万円のパンフレット |
控除額には上限の考え方もあります。No.2072 は、不動産所得と事業所得の金額の合計が控除額より少ない場合は、その合計額が限度になるとしています。所得が40万円なら、控除も40万円までです。
制度・要件・控除額(令和8年分まで/令和9年分から)
令和8年度の税制改正で、控除の段は「65万・55万・10万円」から「75万・65万・10万円」に変わり、55万円の段がなくなります。国税庁のタックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」(令和8年4月1日現在法令等)と、パンフレット「75万円の青色申告特別控除を適用しましょう」(令和8年8月)・「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ」(R8.4)で確認した内容を表にしました。
| 控除額 | 令和8年分(2026年分)まで | 令和9年分(2027年分)から |
|---|---|---|
| 75万円 | この段はない | 65万円の要件+優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存(届出書が必要) |
| 65万円 | 55万円の要件+e-Taxでの送信か、優良な電子帳簿の保存(届出書が必要) | 複式簿記・貸借対照表と損益計算書の添付・期限内・e-Taxでの送信をすべて満たす |
| 55万円 | 複式簿記・貸借対照表と損益計算書の添付・期限内(書面の申告でもよい) | この段はなくなる。書面で申告すると上限10万円 |
| 10万円 | 上の要件に当たらない青色申告者(簡易な記帳でもよい) | 同じ。ただし簡易な記帳で、前々年分の事業所得または不動産所得(事業的規模)の収入金額が1,000万円を超える人は対象外 |
表の補足です。
- 75万円の2つの道:優良な電子帳簿は、仕訳帳と総勘定元帳を年の最初から、訂正・削除・追加の履歴が残る、帳簿間の相互関連性がある、日付・金額・相手方で検索できる、の3要件を満たして電子で保存するものです。デジタルシームレス保存は、国税庁長官が定める基準に合うシステムで、デジタルインボイスか預貯金口座の決済データを要件どおりに保存するものです
- 届出の期限:どちらの道も、適用を受ける年分の確定申告期限までに所轄の税務署へ届出書を出します。すでに優良な電子帳簿の保存で65万円控除を受けている人は、出し直す必要はないとされています。届出書の名称は令和9年3月ごろに「65万」から「75万」に変わる予定です
- 1,000万円の判定:使うのは前々年分の収入金額です。令和9年分なら令和7年分(2025年分)の売上で決まるので、判定に使う年はもう終わっています。不動産所得が事業的規模でない人は、改正前と同じく最大10万円を受けられます
- 現金主義の特例:現金主義による所得計算の特例を使っている人は、55万円・65万円・75万円の控除を受けられず、10万円は受けられます
複式簿記と簡易な簿記の違いそのものは複式簿記と単式簿記の違いに、現金主義の特例の要件は現金主義と発生主義の違いに書きました。
65万円・75万円を受けるまでの手順と控除額の比べ方
手順は「承認申請→年の最初から記帳→決算書→(75万円なら届出)→e-Taxで期限内に送信」の5段です。いちばん取りこぼしやすいのは、最初と最後の期限です。
- 青色申告承認申請書を出す:青色申告をしようとする年の3月15日まで。その年の1月16日以後に開業した人は、業務を始めた日から2か月以内です(No.2070)。期限が土日祝日なら翌日が期限で、e-Taxソフト(WEB版)でも書面でも出せます。その年の12月31日までに通知がなければ承認されたものとみなされます(所得税の青色申告承認申請手続)。白色申告の人が令和9年分から青色にするなら、2027年3月15日(月)までです
- 年の最初から複式簿記で記帳する:会計ソフトを使うと仕訳が他の帳簿へ自動で転記・集計されると、10万円控除のパンフレットも説明しています。75万円を狙うなら、仕訳帳と総勘定元帳を年の最初から優良な電子帳簿の要件で保存します
- 決算書を作る:記帳にもとづいて、貸借対照表と損益計算書(青色申告決算書)を作ります
- 75万円なら届出書を出す:優良な電子帳簿かデジタルシームレス保存の届出書を、確定申告期限までに出します
- e-Taxで期限内に送信する:確定申告書と青色申告決算書のデータを、確定申告期限までに送ります。No.2072 は、確定申告書や貸借対照表・損益計算書をイメージデータで送信することはできないとしています
控除額の差が手取りにどれくらい効くかは、所得の大きさと税率で変わります。下は架空の個人事業主の「例」で、令和9年分に事業所得の控除前の金額が500万円(売上800万円−経費300万円)、所得控除の合計を仮に100万円とし、所得税を国税庁のNo.2260 所得税の速算表で計算しました。
| 控除額(例) | 事業所得 | 課税される所得金額 | 所得税(速算表) | 10万円控除との差 |
|---|---|---|---|---|
| 75万円 | 425万円 | 325万円 | 325万円×10%−97,500円=227,500円 | 125,000円少ない |
| 65万円 | 435万円 | 335万円 | 335万円×20%−427,500円=242,500円 | 110,000円少ない |
| 10万円 | 490万円 | 390万円 | 390万円×20%−427,500円=352,500円 | ― |
| 控除なし | 500万円 | 400万円 | 400万円×20%−427,500円=372,500円 | 20,000円多い |
この例では、65万円と75万円の差は控除額で10万円ですが、所得税では15,000円です(335万円と325万円の間に税率が10%から20%に変わる330万円の線があるため)。逆に、書面で出して10万円になると、65万円より110,000円多く払う計算です。復興特別所得税や住民税は含めていないので、実際の差はこれより大きくなる場合があります。
個人事業主・副業の人の判断ポイント
判断の起点は「いまどの段で、令和9年分にどこへ落ちるか」です。同じ65万円控除の人でも、書面で出していた人と電子で出していた人では、令和9年分に起きることがまったく違います。
| 令和8年分までの状況 | 令和9年分に起きること | 考えること |
|---|---|---|
| 複式簿記+e-Taxで65万円 | 65万円のまま | 75万円を狙うなら、会計ソフトが優良な電子帳簿の要件に合うかと届出 |
| 複式簿記+優良な電子帳簿+書面で65万円 | 書面のままなら上限10万円 | e-Taxに切り替えれば75万円の要件に届く |
| 複式簿記+書面で55万円 | 書面のままなら上限10万円 | e-Taxに切り替えれば65万円 |
| 簡易な記帳で10万円(前々年の収入1,000万円以下) | 10万円のまま | 複式簿記とe-Taxで65万円を狙う余地 |
| 簡易な記帳で10万円(前々年の収入1,000万円超) | 控除なし | 複式簿記とe-Taxへ移るかどうか |
| 白色申告 | 控除なしのまま | 承認申請の期限(青色にしたい年の3月15日) |
副業の人は、まず自分の所得が事業所得かどうかを確かめてください。青色申告ができるのは事業所得・不動産所得・山林所得のある人で(No.2070)、55万円以上の控除は事業所得か不動産所得を生ずべき事業を営む人が対象です。副業の所得が雑所得なら、青色申告承認申請書を出しても特別控除は受けられません。
ぼく自身の話をすると、確定申告ガイドに書いたとおり、独立1年目は青色申告の申請期限を軽く見ていて準備が間に合いませんでした。控除の差は簿記の知識ではなく、期限を知っていたかどうかで生まれます。いまは提出をe-Taxにしていて、会計ソフトの比較記事にも書いたとおり、freeeのガイドどおりに操作して65万円控除を問題なく申請できました。令和9年分からは、この「電子で出す」が65万円の前提そのものになります。
法人成りを考えている人は、青色申告特別控除が所得税(租税特別措置法25条の2)の制度で、法人の申告にはない点も押さえておくと、個人のうちに取れる控除を取り切る判断がしやすくなります。
よくある間違いと注意点
いちばん多い誤解は「会計ソフトを使えば自動で65万円になる」です。ソフトが整えるのは記帳までで、承認申請・期限・提出方法は自分で守る条件です。
- 承認申請を出していない:開業届だけでは青色申告になりません。青色申告承認申請書が別に要ります
- 期限を1日過ぎる:55万円以上(令和9年分からは65万円以上)の控除は、確定申告期限までの提出が条件です。還付申告でも同じです
- e-Taxで送ったつもりが要件外:確定申告書や決算書をイメージデータで送ることはできません。決算書のデータごと送ります
- 貸借対照表を付けていない:65万円・75万円は損益計算書だけでは足りません。10万円は損益計算書の提出が必要です
- 収入と所得を取り違える:10万円控除の1,000万円の線は、所得ではなく前々年分の収入金額で見ます
- 現金主義の特例と併用する:現金主義の特例を使うと、55万円以上の控除は受けられません
- 75万円の届出を忘れる:優良な電子帳簿でもデジタルシームレス保存でも、確定申告期限までに届出書が要ります
この記事は最終更新日時点の制度で書いています。控除額や要件は改正で変わることがあるので、申告の前に国税庁のページで確かめてください。個別の判断(自分の場合どうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。税理士の探し方は税理士の選び方に書きました。
青色申告65万円控除に関するよくある質問
青色申告65万円控除の条件は何ですか?
令和8年分までは、青色申告の承認を受け、事業所得などの取引を複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に申告し、さらにe-Taxで送信するか優良な電子帳簿を保存することです。令和9年分からは、e-Taxでの送信が必須になります。
75万円の青色申告特別控除はいつから、何が必要ですか?
令和9年分(2027年分)の所得から、つまり2028年に出す確定申告からです。65万円の要件(e-Taxでの送信を含む)に加えて、優良な電子帳簿の保存かデジタルシームレス保存をして、確定申告期限までに届出書を出す必要があります。
e-Taxを使わず書面で出すと控除はいくらになりますか?
令和8年分までは、複式簿記などの要件を満たせば書面でも55万円です。令和9年分からは、書面で申告すると控除の上限は10万円になります。2027年に出す令和8年分の申告までは、書面でも55万円を受けられます。
10万円控除は令和9年分から誰が使えなくなりますか?
簡易な記帳で、事業所得または事業的規模の不動産所得があり、どちらかの前々年分の収入金額が1,000万円を超える人です。令和9年分は令和7年分の収入金額で判定します。複式簿記とe-Taxに移れば65万円の対象になります。
おわりに──65万円は「帳簿を付けた人」ではなく「期限内に電子で出した人」が受ける控除
青色申告特別控除は、簿記の腕前を測る制度に見えて、実際に段を分けているのは承認申請の期限、申告の期限、出し方の3つです。令和9年分からは出し方の比重がさらに上がり、書面と電子で控除額が55万円も違うことになります。65万円は「帳簿を付けた人」ではなく「期限内に電子で出した人」が受ける控除です。
今日やることは、去年の確定申告書の控えを開いて、提出が書面だったかe-Taxだったかを確かめることです。書面だった人は、令和9年分の申告までにe-Taxで出せる準備をしておけば、控除の段を落とさずに済みます。