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事業所得と雑所得の違い|副業の判定と300万円・帳簿の国税庁基準

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最終更新:2026年10月20日

事業所得と雑所得の違いは、その所得を得る活動が「社会通念上、事業と称するに至る程度」かどうかです。国税庁は令和4年(2022年)10月に所得税基本通達35-2を改正し、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、原則として業務に係る雑所得になるという目安を示しました。例外は、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合です。事業所得なら赤字を給与などと損益通算でき、青色申告をすれば青色申告特別控除と純損失の繰越しも使えます。雑所得ではどれも使えません。

確定申告の流れ全体はフリーランスの確定申告ガイドに、副業の始め方はマーケターが副業を始めるためのステップに書いたので、この記事は所得区分の判定に絞りました。2026年10月20日時点の制度で書いています。

事業所得と雑所得の違いとは?結論から

計算式は同じ「総収入金額−必要経費」でも、どちらの所得に入るかで使える特典が大きく変わります。副業でよく問題になるのは、雑所得のうち「業務に係る雑所得」との区分です。

比べる点 事業所得 業務に係る雑所得
定義 農業・製造業・小売業・サービス業その他の事業を営む人の、その事業から生ずる所得(No.1350) 他の9種類の所得のどれにも当たらない雑所得のうち、副業に係る収入で営利を目的とした継続的なもの(No.1500)
分かれ目 活動が事業的規模である 活動が事業的規模でない
計算 総収入金額−必要経費 総収入金額−必要経費
青色申告 できる できない
赤字のとき 給与所得など他の所得と損益通算できる 損益通算できない
帳簿・書類 記帳と帳簿書類の保存が必要(白色申告でも) 前々年の収入金額が300万円を超えると、請求書・領収書など(現金預金取引等関係書類)の保存が必要

通達35-2は、原稿・さし絵・デザインの報酬、講演料、著作権の使用料などを「事業所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する」所得の例に挙げています。ライターやデザイナーの報酬が最初から雑所得と決まっているわけではなく、事業と認められれば事業所得です。

判定の要件(所得税基本通達35-2と国税庁の解説)

判定の原則は社会通念で、帳簿書類の保存はその判定を左右する大きな材料です。根拠は国税庁の所得税基本通達35-2と、令和4年10月7日の改正通達に付いた「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説」です。

通達35-2の(注)は2段になっています。前段は「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」。後段は、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除いて、業務に係る雑所得に当たることに留意する、としています。

解説は、社会通念で判定するときの材料として判例を引いています。最高裁の昭和56年4月24日判決は、事業所得を、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性・有償性を持ち、反復継続して遂行する意思と社会的地位が客観的に認められる業務から生ずる所得としました。東京地裁の昭和48年7月18日判決は、営利性・有償性、継続性・反復性、企画遂行性、かけた労力の程度、人的・物的設備、取引の目的、職歴・社会的地位・生活状況などを検討するとしています。解説はこれらを総合して判定するとしています。

そのうえで解説は、帳簿書類の有無と収入金額で分けたイメージを示しています。

収入金額 記帳・帳簿書類の保存あり 記帳・帳簿書類の保存なし
300万円超 概ね事業所得(下の2つの場合は個別に判断) 概ね業務に係る雑所得(事業所得と認められる事実があれば事業所得)
300万円以下 概ね事業所得(下の2つの場合は個別に判断) 業務に係る雑所得

帳簿書類を保存していても、事業と認められるかを個別に判断するとされているのが次の2つです。

  • 収入金額が僅少と認められる場合:例えば、収入金額が例年300万円以下で、主たる収入に対する割合が10%未満の場合。「例年」は概ね3年程度の期間です
  • 活動に営利性が認められない場合:その所得が例年赤字で、かつ赤字を解消するための取組(収入を増やす・黒字にするための営業活動など)をしていない場合

「300万円」の数字は、令和2年度の税制改正で、業務に係る雑所得の前々年の収入金額が300万円を超える人に取引書類の保存が義務づけられたことを踏まえたもの、と解説は説明しています。300万円は事業所得になるための売上の基準ではなく、帳簿がない場合の例外を考える線です。

比べ方(事業所得だと使えるものと計算例)

区分の違いがお金に出るのは、黒字なら青色申告特別控除、赤字なら損益通算の場面です。事業所得で青色申告をしている場合と、業務に係る雑所得の場合を並べました。

使えるもの 事業所得(青色申告) 業務に係る雑所得
青色申告特別控除 10万円・55万円・65万円(令和9年分からは75万円の段が加わり、55万円の段はなくなる)(No.2072) なし
損益通算 できる(白色申告でも事業所得ならできる)(No.2250) できない
純損失の繰越し 損益通算しきれない赤字を翌年以後3年間繰り越せる(No.2070) なし(損益通算の対象外のため)
青色事業専従者給与・貸倒引当金 使える(専従者給与は届出が必要)(No.2070) なし
現金主義の特例 前々年の事業所得と不動産所得の合計が300万円以下で、届出をした青色申告者(55万円以上の控除は受けられない) 前々年の業務に係る雑所得の収入金額が300万円以下で、確定申告書に記載した人
添付する書類 青色申告決算書 前々年の収入金額が1,000万円を超えると収支内訳書などの添付が必要

下は架空の会社員の「例」です。給与所得(給与所得控除を引いた後の金額)を400万円とし、副業の結果だけを変えて総所得金額を比べました。

例 副業の収入と経費 事業所得の場合の総所得金額 業務に係る雑所得の場合の総所得金額
A:副業が赤字 収入120万円−経費170万円=−50万円 400万円−50万円=350万円 400万円(赤字は通算できない)
B:副業が黒字 収入200万円−経費80万円=120万円 青色で65万円控除の要件を満たすと、400万円+(120万円−65万円)=455万円 400万円+120万円=520万円

例Bでは、所得の差が65万円です。例Aの差は50万円ですが、ここには注意があります。赤字が例年続き、赤字を解消する取組もしていなければ、解説のいう「営利性が認められない場合」に当たり、帳簿を付けていても事業と認められるかは個別の判断になります。赤字を給与と通算したいから事業所得として申告する、という順番の考え方は、解説の判定とかみ合いません。

帳簿の付け方の基本は仕訳とは何かに、青色申告の控除の段は複式簿記と単式簿記の違いにまとめました。

個人事業主・副業の人の判断ポイント

判断は「事業と名乗るか」ではなく「事業として記録しているか」から始まります。通達と解説を自分に当てはめるなら、次の4つを順に確かめるのが近道です。

  1. 営利を目的に、継続して行っているか:営利を目的とした継続的なものでなければ、業務に係る雑所得にも当たらず、その他の雑所得などの扱いになります(No.1500)
  2. 取引を帳簿に記録し、保存しているか:記録していても保存していなければ、解説は「一般的に、営利性、継続性、企画遂行性を有しているとは認め難く」としています
  3. 収入が例年300万円以下で、本業の収入の10%未満か:当てはまると、帳簿があっても個別の判断になります
  4. 例年赤字で、手を打っていないか:当てはまると、営利性が認められない場合に当たり得ます

開業届を出したかどうかは、解説が挙げた判定材料には入っていません。開業届は事業を始めたときの届出で、出せば事業所得、出さなければ雑所得と決まる仕組みではありません。独立して本業として営んでいる個人事業主は、判例が挙げる「自己の計算と危険において独立して営まれ」などの要素に当てはまりやすい一方、副業は本業との比率や継続性で判断が分かれやすくなります。

ぼくは独立したとき、事業用の口座とクレジットカードを作って、事業の支払いをすべてそこに通すことにしました。確定申告ガイドに書いたとおり、口座とカードを会計ソフトに連携して、月に一度30分だけ帳簿を確認する形です。所得区分の話を読み直すと、この地味な仕組みがそのまま「帳簿書類の保存あり」の土台になっていると分かります。区分は年末に決めるものではなく、日々の記録の積み重ねで決まっていきます。

会社員の副業なら、税の区分とは別に、勤め先の就業規則の副業規定を先に確認しておくことも欠かせません。

よくある間違いと注意点

いちばん多い誤解は「副業の収入が300万円以下なら雑所得」です。改正後の通達とその解説では、300万円以下でも帳簿書類を保存していれば概ね事業所得とされています。

  • 300万円を超えれば事業所得と思う:帳簿書類の保存がない場合に事業所得になるのは、300万円超で、かつ事業所得と認められる事実がある場合です
  • 帳簿は付けるだけでよいと思う:判定で見られるのは記録と保存の両方です。事業所得のある人の保存期間は、帳簿が7年、書類は種類によって5年または7年です(No.2070・No.2080)
  • 雑所得のまま青色申告の申請を出す:青色申告ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得のある人です(No.2070)
  • 雑所得の赤字を給与と相殺する:雑所得の損失は他の所得と損益通算できません(No.1500)
  • 帳簿の保存をおろそかにする:No.2080 は、帳簿の保存が必要な人について、令和5年分の確定申告に対する修正申告等から、売上に関する帳簿を保存していなかった場合などに、過少申告加算税・無申告加算税の割合が5%または10%加重されるとしています
  • 20万円の線を収入で見る:給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象になる会社員が確定申告をしなければならないのは、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える場合です(No.1900)。事業所得でも雑所得でも、収入ではなく所得で見ます

この記事は最終更新日時点の制度と通達で書いています。取扱いは改正で変わることがあるので、申告の前に国税庁のページで確かめてください。個別の判断(自分の場合どうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。税理士の探し方は税理士の選び方に書きました。

事業所得と雑所得に関するよくある質問

副業の所得は事業所得と雑所得のどちらになりますか?

活動が社会通念上、事業と称するに至る程度かどうかで決まります。国税庁の解説では、取引を帳簿に記録して保存していれば概ね事業所得、保存がなければ原則として業務に係る雑所得とされています。収入が少額で本業の10%未満の場合や、例年赤字で手を打っていない場合は個別の判断です。

収入300万円以下の副業は必ず雑所得になりますか?

なりません。所得税基本通達35-2と国税庁の解説では、300万円以下でも帳簿書類を保存していれば概ね事業所得とされています。300万円の線は、帳簿書類の保存がない場合に事業所得となる例外を考えるためのものです。

帳簿を付けていれば国税庁は事業所得と認めますか?

帳簿の記録と保存があれば、一般的に事業所得に区分される場合が多いと国税庁の解説は説明しています。ただし、収入金額が例年300万円以下で主たる収入の10%未満の場合や、例年赤字で赤字を解消する取組をしていない場合は、事業と認められるかを個別に判断するとしています。

雑所得でも青色申告や65万円控除は使えますか?

使えません。青色申告ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得のある人で、青色申告特別控除の55万円以上の段は事業所得か不動産所得を生ずべき事業を営む人が対象です。雑所得の赤字は損益通算もできません。

おわりに──事業所得は名乗るものではなく、帳簿で示すもの

令和4年の通達改正で分かりやすくなったのは、事業かどうかを本人の気持ちや肩書きではなく、記録の有無で見る姿勢です。開業届を出しても、帳簿がなければ事業らしさは伝わりません。逆に、小さな副業でも、取引を記録して保存し、赤字なら手を打っている人は、事業と判定される材料を自分で揃えています。事業所得は名乗るものではなく、帳簿で示すものです。

今日やることは、副業の入金と支払いを1つの口座にまとめ、今年の取引を会計ソフトか帳簿に記録し始めることです。区分に迷ったときも、その記録があれば税理士との相談が具体的に進みます。

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