最終更新:2026年10月19日
免税事業者とは、消費税を納める義務が免除されている事業者のことで、原則として基準期間(個人事業主は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者が当てはまります。ただし、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録を受けていると、売上がいくらでも免税事業者にはなりません。取引先の側から見ると、免税事業者からの仕入れは2026年10月1日から2028年9月30日までが仕入税額相当額の70%控除で、その後は50%、30%と段階的に下がり、2031年10月1日からは控除できなくなります。この記事は最終更新日時点の制度で、国税庁・財務省・e-Gov法令検索のページで確認できた内容だけを書いています。
免税事業者とは?結論から
免税事業者かどうかは、今年の売上ではなく、2年前の売上とインボイス登録の有無で決まります。判定の要点と、取引先に起きることを表にまとめます。
| 項目 | 内容 | 確認した公式ページ |
|---|---|---|
| 原則の判定 | 基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除される | 国税庁 No.6501/消費税法 第9条 |
| 基準期間 | 個人事業主はその年の前々年、事業年度が1年の法人はその事業年度の前々事業年度 | No.6501 |
| 免税にならない主な場合 | インボイス登録を受けている/特定期間の課税売上高が1,000万円を超える/課税事業者選択届出書を出している/設立1・2期目で期首の資本金が1,000万円以上 など | No.6501・No.6503 |
| 取引先の仕入税額控除 | インボイスがないので原則は控除できないが、経過措置で一定割合を控除できる(2026年10月1日〜2028年9月30日は70%) | インボイスQ&A 問113 |
| 経過措置の終わり | 2031年10月1日以後の仕入れからは控除できない | 国税庁 令和8年度税制改正特集 |
「売上1,000万円以下なら免税」と覚えていると、判定の年を取り違えます。見るのは基準期間の数字で、そこに特定期間・登録・資本金の条件が重なります。
免税事業者の判定基準──基準期間と特定期間を法人・個人で分ける
判定の物差しは「基準期間」と「特定期間」の2つで、どちらも個人事業主と法人で期間の取り方が違います。国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)のNo.6501・No.6531と、e-Gov法令検索の消費税法(2026年10月1日施行の版)で確認した内容を並べます。
| 論点 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 課税期間 | 1月1日〜12月31日の暦年 | 事業年度 |
| 基準期間 | その年の前々年 | 原則としてその事業年度の前々事業年度(前々事業年度が1年未満なら別の計算) |
| 特定期間 | その年の前年の1月1日〜6月30日 | 原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6か月(前事業年度が1年未満なら異なる場合がある) |
| 特定期間の判定 | 課税売上高が1,000万円を超えると免税にならない。課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で判定してもよく、どちらで判定するかは納税者の任意(消費税法 第9条の2) | |
| 始めたばかりの時期 | 開業した年と翌年は基準期間の課税売上高がないので、原則として免税 | 設立1期目・2期目は基準期間がないので、原則として免税(次の表の例外あり) |
法人の設立1・2期目は、期首の資本金で扱いが分かれます。No.6503によると、基準期間がない事業年度の開始の日に資本金(出資金)が1,000万円以上の法人は「新設法人」として、その期の納税義務が免除されません。
| 設立1期目・2期目の状況 | 扱い |
|---|---|
| 期首の資本金が1,000万円以上 | その期は課税事業者(新設法人の特例・消費税法第12条の2) |
| 期首の資本金が1,000万円未満 | 原則として免税。ただし、インボイス登録をしている、2期目に特定期間の課税売上高等が1,000万円を超える、課税事業者選択届出書を出している、特定新規設立法人に当たる、などの場合は課税事業者 |
| 1期目の途中で1,000万円以上に増資した | 1期目は期首の判定のまま。2期目が課税事業者になる |
資本金をいくらにするかと1,000万円の線の関係は、資本金はいくらにするかで詳しく書きました。この記事では「1,000万円未満で作っても、それだけで免税が決まるわけではない」点だけ押さえておけば足ります。
もう1つ、法人成りの人が気にする点があります。No.6531には、個人事業者が法人成りで新しく法人を設立した場合、個人事業者だった期間の課税売上高はその法人の基準期間の課税売上高に含まれないと書かれています。個人のときの売上は、会社の判定には持ち込まれません。
インボイス未登録だと取引先はどうなるか──経過措置の割合と期間
免税事業者はインボイスを交付できないので、取引先は原則として仕入税額控除ができません。ただし経過措置があり、令和8年度税制改正で割合と期間が見直されました。インボイスQ&Aの問113(令和8年4月改訂)に書かれた現行の内容です。
| 課税仕入れを行った期間 | 控除できる割合(仕入税額相当額に対して) |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以後 | 控除できない |
改正前は2026年10月から50%、2029年10月から控除できない予定でした(国税庁令和8年度税制改正特集の資料の改正前・改正後の図)。財務省の令和8年度税制改正の大綱の概要には、最終的な適用期限を2年延ばしたうえで、引下げのペースと幅を緩める改正だと書かれています。古い解説記事の「80%の次は50%」は、もう現行の数字ではありません。
あわせて、1つの免税事業者等からの仕入れに使える上限も下がりました。経過措置の対象になる課税仕入れの合計額(税込み)が、その年または事業年度で上限を超えると、超えた部分には経過措置が使えません。上限は、2024年10月1日から2026年9月30日までの間に開始する課税期間が10億円、2026年10月1日以後に開始する課税期間が1億円です(問113)。
取引先がこの経過措置を使うには、帳簿に「80%控除対象」「免」などと経過措置の対象である旨を書き、区分記載請求書等と同様の事項が書かれた請求書等を保存する必要があります(問113)。免税事業者の側も、日付・取引内容・税率ごとの合計額・相手の名称が分かる請求書を出しておくと、取引先の手間が減ります。
取引先の控除額がどれだけ変わるかを、架空の例で計算します。
| 例(架空):免税事業者のデザイナーに税込110万円を支払った | 控除できる額 | 控除できない額 |
|---|---|---|
| 相手がインボイス発行事業者なら | 10万円 | 0円 |
| 2026年9月30日までの仕入れ(80%) | 8万円 | 2万円 |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日の仕入れ(70%) | 7万円 | 3万円 |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日の仕入れ(50%) | 5万円 | 5万円 |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日の仕入れ(30%) | 3万円 | 7万円 |
| 2031年10月1日以後の仕入れ | 0円 | 10万円 |
検算します。税込110万円に含まれる消費税相当額は110万円×10/110=10万円で、各行の「控除できる額+控除できない額」はどれも10万円になります。ここでは国税と地方消費税を合わせた概算で示しています。実際の計算は国税部分(税込額の7.8/110)で行い、端数処理もあるので、数字は仕組みをつかむための目安です。
一人法人・個人事業主の判断ポイント
一人で事業をしている人が見るべきなのは「いま免税事業者か」より「いつまで免税事業者でいられて、登録したら何が変わるか」です。法人と個人事業主では、免税でいられる期間の数え方が違います。
| 論点 | 一人法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 最初に免税になりやすい期間 | 設立1期目・2期目(期首の資本金1,000万円未満などの条件つき) | 開業した年と翌年 |
| 2期目(翌年)の落とし穴 | 1期目の前半6か月の課税売上高(または給与等支払額)による判定 | 前年1〜6月の課税売上高(または給与等支払額)による判定 |
| 登録したときの扱い | 登録を受けると、基準期間の課税売上高にかかわらず納税義務は免除されない(No.6501) | |
| 途中から登録する場合 | 2029年9月30日までの日を含む課税期間中は、登録申請書に登録希望日(提出日から15日以降の日)を書けば、その日から課税事業者になれる。登録日の属する課税期間が2023年10月1日を含まない場合は、翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間まで免税事業者に戻れない(インボイスQ&A 問7) | |
ぼくは2019年の秋に、資本金50万円でtiny合同会社を一人で作りました。そのことは一人法人の作り方に書いています。50万円は1,000万円の線より下なので、新設法人の特例には当たりません。ただ、この線の下にいることと免税事業者でいることは同じではありません。登録をするか、特定期間の数字がどうなるかで、2期目の扱いは変わります。
独立する前のぼくは、確定申告くらいExcelでできると思っていました。freeeとマネーフォワードの比較記事にも書いたとおり、実際には帳簿付けや減価償却、消費税の処理に想定より手間がかかりました。免税事業者の判定も同じで、年が変わるたびに基準期間と特定期間の数字を見直す作業が発生します。会計ソフトで課税売上高をすぐ出せる状態にしておくと、判定に迷う時間が減ります。
登録するかどうかは、売上の規模よりも取引先の顔ぶれで考えるほうが筋が通ります。取引先が課税事業者の会社なら、未登録のままだと相手の控除額が上の表のように減ります。一般の消費者や免税事業者が中心なら、相手に控除の問題は起きません。どちらに寄っているかを先に見てから判断してください。
よくある間違いと注意点
いちばん多い間違いは、今年の売上が1,000万円以下だから今年は免税だと考えることです。判定に使うのは基準期間の課税売上高で、今年の売上は2年後の判定材料になります。ほかの注意点も並べます。
- 特定期間を見落とす:基準期間が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると免税になりません。給与等支払額で判定することもでき、どちらで判定するかは任意です(No.6501)。
- インボイスの登録番号を取ったまま免税だと思う:登録を受けている間は、納税義務は免除されません(消費税法第9条第1項のかっこ書き)。
- 経過措置を古い割合で覚えている:2026年10月1日以後の仕入れは70%です。50%になるのは2028年10月1日以後の仕入れからです(問113)。
- 経過措置の上限を10億円のままだと思う:2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、1つの免税事業者等あたり年1億円(税込み)です。
- 法人成りで個人の登録番号を使い続ける:法人の登録番号は「T+法人番号」なので、個人事業主のときの番号は使えません。番号の違いは法人番号とはで整理しました。
- 課税事業者選択届出書を出したことを忘れる:届出書を出した課税期間は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも免税になりません。選択をやめるには不適用届出書が必要で、原則として課税事業者になった日から2年間は免税事業者に戻れません(No.6501)。
この記事は、最終更新日時点の制度で書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。税理士の選び方はいい税理士とは何かにまとめています。
免税事業者に関するよくある質問
免税事業者について、一緒に検索されている「経過措置」「インボイス」「消費税」「免税事業者からの仕入れ」の疑問に答えます。回答は、最終更新日時点で国税庁と法令のページで確認できた内容です。
免税事業者からの仕入れの経過措置はいつまでですか?
2031年9月30日までの仕入れが対象です。割合は、2026年9月30日までが80%、2026年10月1日〜2028年9月30日が70%、2028年10月1日〜2030年9月30日が50%、2030年10月1日〜2031年9月30日が30%です。2031年10月1日以後の仕入れは控除できません。
免税事業者はインボイスを発行できますか?
発行できません。インボイスを交付できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者だけです。登録を受けると、基準期間の課税売上高にかかわらず消費税の納税義務は免除されなくなります。
会社を作ると最初の2年間は必ず免税事業者ですか?
必ずではありません。設立1・2期目は基準期間がないので原則として免税ですが、期首の資本金が1,000万円以上の場合や、インボイス登録をしている場合、2期目に特定期間の課税売上高等が1,000万円を超える場合などは課税事業者になります。
免税事業者かどうかは今年の売上で決まりますか?
決まりません。個人事業主はその年の前々年、法人は原則として前々事業年度の課税売上高で判定します。そのうえで、特定期間の課税売上高や登録の有無などの条件を確認します。
おわりに──免税事業者は、なる資格ではなく、外れていない状態
免税事業者は、売上が小さい人に与えられる資格のように見えます。実際には、2年前の売上が1,000万円以下で、特定期間の線も越えず、登録も選択届出もしていない人が、たまたま外れずにいる状態です。条件が1つ変われば外れますし、取引先の控除の割合も期間とともに下がっていきます。決めることは「免税でいるか」ではなく、「いつ外れるかを、自分で選ぶか」です。