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報酬の源泉徴収10.21%とは|対象・計算例・法人への支払いの扱い

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最終更新:2026年10月20日

報酬の源泉徴収とは、個人に原稿料・デザイン料・講演料などの報酬を払う会社が、支払いのたびに所得税と復興特別所得税を差し引いて国に納める仕組みです。税率は支払金額の10.21%で、同じ人に1回で払う金額が100万円を超えると、超えた部分だけ20.42%になります。受け取る側から見ると、引かれた分は税金の前払いで、確定申告で1年分の税額と精算します。そして、報酬を受け取るのが法人なら、原則として源泉徴収はありません。

ぼくは40歳でtiny合同会社を一人で設立したマーケターです。フリーランスや一人法人は、報酬を受け取る側にも、外注先に払う側にもなります。この記事は、その両方の立場で、源泉徴収の対象になる報酬の範囲、法人への支払いの扱い、計算例、消費税を分けて書いたときの扱い、確定申告での精算を、国税庁とe-Gov法令検索で確認できた範囲で整理しました。適格請求書の記載事項は適格請求書の記載事項の記事、確定申告の全体の流れはフリーランスの確定申告ガイドに任せます。2026年10月20日時点の制度で書いています。

報酬の源泉徴収(10.21%)とは?結論から

源泉徴収をするのは報酬を払う側で、受け取る側は差し引かれた後の金額を受け取ります。誰が、何から、いくら引くのかを先に表で押さえてください。

論点 確認できた内容 出典
源泉徴収をする人 報酬を払う会社など(源泉徴収義務者)。給与を払っていない個人が払う報酬は源泉徴収不要 国税庁 No.2502
対象になる報酬 個人に払う原稿料・講演料・デザイン料、弁護士や税理士などへの報酬、モデルの報酬、広告宣伝のための賞金など(所得税法204条1項各号) 国税庁 No.2792
税率 支払金額×10.21%。同じ人に1回で払う金額が100万円を超えるときは(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円。1円未満は切り捨て 国税庁 No.2795
法人に払う報酬 内国法人に払う報酬で源泉徴収の対象になるのは、馬主である法人に払う競馬の賞金だけ 国税庁 No.2792
消費税 原則は消費税込みの金額が対象。請求書等で報酬と消費税の額が明確に分かれていれば、報酬の額だけを対象にしてよい(インボイス制度の開始後も変更なし) 国税庁 No.2792・No.2795
納める期限 支払った月の翌月10日まで。原稿料や講演料は納期の特例の対象にならない 国税庁 No.2795

根拠の条文は所得税法(e-Gov法令検索)の204条です。1項で、居住者に報酬を払う者は支払いの際に所得税を徴収し、翌月10日までに納付すると定め、2項2号で、給与の源泉徴収義務がない個人から支払われる報酬(ホステス等の報酬を除く)を対象から外しています。

制度・要件・税率(国税庁で確認した範囲)

源泉徴収の対象になるのは、法律に列挙された種類の報酬だけです。業務委託のお金なら何でも引かれるわけではなく、「何の対価か」と「受け取るのが個人か法人か」で決まります。

まず、マーケティングや制作の仕事で出てきやすい報酬を、国税庁の令和8年版 源泉徴収のあらまし 第5 報酬・料金等の源泉徴収事務から拾いました。

区分(所得税法204条1項) 該当するものの例 該当しないとされている例
1号 原稿・写真・デザインなど 原稿料、書籍の編さん料や監修料、挿絵料、雑誌や広告などの印刷物に載せる写真の報酬、広告やポスター・包装紙などのグラフィックデザイン、パッケージデザイン、翻訳料、通訳料、校正料、書籍の装丁料 試験問題の出題料、看板の書き料、手話通訳の報酬
1号 講演・教授 講演の謝金、技芸や知識の教授・指導料(各種資格取得講座の講師謝金など) モニターに対する報酬
2号 士業・企業診断員 弁護士・税理士・社会保険労務士などの報酬、中小企業診断士の報酬、企業の求めに応じて企業の状況の調査・診断や経営改善の指導を行う人(経営コンサルタントなどと称されているもの)の報酬 —
4号 モデル ファッションモデルの報酬、雑誌や広告などの印刷物に容姿を載せる報酬 —
8号 広告宣伝のための賞金 事業の広告宣伝のために賞として払う金品(1回に払う額から50万円を控除した残りに10.21%) 金品との選択ができない旅行などの役務の提供

コピーライター・イラストレーターへの報酬については、国税庁の質疑応答事例が、ポスターのコピーは原稿の報酬、イラストはデザインの報酬にあたり、源泉徴収を要すると回答しています(コピーライター、イラストレーター及びレタリングライターへの報酬)。謝礼・取材費・車代などの名目でも、実態が報酬なら対象です。一方、払う側が交通機関やホテルに直接払った通常必要な範囲の交通費・宿泊費は、報酬に含めなくてよいとされています(No.2792)。

次に、税率です。国税庁No.2795の計算式をそのまま表にします。

1回の支払金額(A) 源泉徴収する税額
100万円以下 A×10.21%
100万円超 (A-100万円)×20.42%+102,100円

10.21%は、所得税10%に復興特別所得税(所得税の2.1%)を足した率です。令和8年度の税制改正で防衛特別所得税(所得税の1%)が創設され、復興特別所得税は1.1%に下がりますが、合計は2.1%のままなので、令和9年1月1日以後に生じる所得も源泉徴収税額の計算方法は変わりません(国税庁 防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし)。

消費税の扱いは、国税庁のインボイス制度開始後の報酬・料金等に対する源泉徴収が明確です。報酬と消費税の額を分けて書く「請求書等」は、受け取る側が発行する請求書や納品書であればよく、適格請求書である必要はありません。インボイスに登録していない免税事業者の請求書でも、報酬の額と消費税等の額が明確に分かれていれば、報酬の額だけを源泉徴収の対象にしてよいとされています。

計算の手順と計算例

計算は、対象の報酬かどうかを決めてから、対象にする金額を決め、1回の支払金額で税率を当てる順番です。最後に、振込額と納める税額を別々に記録します。

  1. 払う相手が個人か法人かを確認する(法人なら原則として源泉徴収はない)
  2. 支払う内容が所得税法204条1項の報酬にあたるかを、源泉徴収のあらましの表で確認する
  3. 請求書で報酬と消費税の額が分かれているかを見る。分かれていれば報酬の額、分かれていなければ税込の額が対象
  4. 1回の支払金額が100万円以下なら10.21%、超えるなら二段階の式で計算し、1円未満を切り捨てる
  5. 請求額から源泉徴収税額を引いた額を振り込み、源泉徴収税額は翌月10日までに納める

以下はすべて架空の数字の例です。消費税は10%とします。

例 請求の内容 源泉徴収の対象額 源泉徴収税額 振込額
例1 デザイン料20万円+消費税2万円(分けて記載) 200,000円 200,000×10.21%=20,420円 220,000-20,420=199,580円
例2 デザイン料22万円(税込の総額だけ記載) 220,000円 220,000×10.21%=22,462円 220,000-22,462=197,538円
例3 原稿料120万円+消費税12万円(分けて記載)を1回で支払う 1,200,000円 (1,200,000-1,000,000)×20.42%+102,100=142,940円 1,320,000-142,940=1,177,060円

例1と例2は同じ仕事で、源泉徴収税額に2,042円の差が出ます。差の正体は消費税2万円に10.21%をかけた分です。例3は、100万円までの102,100円(1,000,000×10.21%)に、超えた20万円の20.42%にあたる40,840円を足しています。国税庁No.2795にも、150万円の原稿料なら204,200円という具体例が載っています。

税引き後の手取額で契約している場合は、手取額÷0.8979で支払金額に戻します。国税庁の例では、手取10万円の原稿料なら支払金額111,370円、源泉徴収税額11,370円です(国税庁 手取契約の場合の源泉徴収税額の計算方法)。

受け取る側の精算も、架空の数字で確かめます。例として、1年間に源泉徴収された税額の合計が30万円の個人事業主がいるとします。確定申告で計算した1年分の所得税と復興特別所得税が20万円なら、差の10万円が還付されます。計算した税額が45万円なら、差の15万円を納めます(予定納税がない前提)。国税庁も、源泉徴収された所得税額が年間の所得から計算した所得税額より多いときは、確定申告で還付を受けられると説明しています(国税庁 No.2030 還付申告)。確定申告書等作成コーナーでは、支払調書などの源泉徴収税額欄に金額があれば、その源泉徴収税額を入力することになっています(確定申告書等作成コーナー よくある質問)。

フリーランス・一人法人の判断ポイント

同じ仕事でも、個人で受けるか法人で受けるかで、源泉徴収の有無が変わります。立場ごとに確認することを表にしました。

立場 確認すること
受け取る側(個人のフリーランス) 自分の仕事が204条1項の報酬にあたるか(原稿・デザイン・講演・写真などは対象)。消費税を分けて書けば、税抜の額を源泉徴収の対象にしてよいとされる。引かれた税額は確定申告で差し引く
受け取る側(一人法人) 法人への報酬は原則として源泉徴収されない。取引先が個人と誤解しないよう、請求書の名義・振込口座・法人番号を会社でそろえて伝える
払う側(一人法人) 個人の外注先に対象の報酬を払うなら、法人として源泉徴収し、翌月10日までに納める。外注先が法人なら原則として不要
払う側(給与を払っていない個人事業主) 給与の源泉徴収義務がない個人が払う報酬は、源泉徴収をしなくてよい(所得税法204条2項2号)

マーケティング支援の仕事は、中身によって区分が変わります。記事の執筆やコピーは原稿の報酬、バナーや広告のデザインはデザインの報酬、セミナー登壇は講演の報酬にあたります。企業の状況を調べて経営の改善を指導する仕事は、経営コンサルタントなどの企業診断員の報酬に入り得ます。一方で、204条1項の各号のどれにもあたらない業務の委託料は、源泉徴収の対象になりません。1つの契約に複数の業務が混ざっているときは、どこまでが対象かを契約書や請求書の内訳で分けておくと、払う側も受け取る側も迷いません。区分の判断に迷ったら、所轄の税務署か税理士に確認してください。

一人法人の側でいちばん効くのは、会社として受け取っていることを取引先に正しく伝えることです。ぼくは登記が終わってすぐに取引が始まり、入金先がしばらく個人の口座になってしまい、帳簿が複雑になりました(一人で会社を作るときの手順の記事に書いた失敗です)。請求書の名義と振込口座が会社と個人で混ざると、取引先も個人への支払いなのか法人への支払いなのかを判断しにくくなります。会社の法人番号の調べ方は法人番号の記事にまとめました。

払う側に回ると、源泉徴収した税額を納める作業が毎月増えます。会社が給与を払い始めるときの届出は会社設立後の届出一覧にまとめました。源泉徴収した税額は、原稿料や講演料なら納期の特例の対象にならず、払った月の翌月10日が期限です。税理士・弁護士・司法書士などの一定の報酬は、給与の支給人員が常時10人未満で承認を受けていれば、半年分をまとめて納める特例の対象になります(国税庁 No.2505)。

よくある間違いと注意点

いちばん多い間違いは、業務委託の報酬なら相手が誰でも10.21%を引くと思い込むことです。対象は法律に列挙された報酬で、受け取るのが法人なら原則として対象外です。

  • 法人への支払いから引いてしまう:内国法人への報酬で源泉徴収の対象になるのは、馬主である法人への競馬の賞金だけです(No.2792)。法人の取引先から誤って引かれていたら、請求書の名義と支払先の区分を取引先と確認します
  • 100万円を年間の合計で考える:20.42%になる線は、同じ人に1回で払う金額が100万円を超えるかどうかです(源泉徴収のあらまし)
  • 交通費をまとめて払う:報酬と一緒に受け取る人へ渡した交通費は、原則として報酬に含まれます。払う側が交通機関やホテルに直接払った通常必要な範囲の費用は、含めなくてよいとされています
  • 消費税の書き方を気にしない:税込の総額だけを書くと、消費税分にも10.21%がかかります。報酬と消費税の額を分けて書けば、インボイスに登録していなくても、税抜の額を対象にしてよいとされています
  • 引かれた税額を申告で差し引き忘れる:源泉徴収された税額は前払いです。確定申告で入力しないと、二重に納める計算になります。副業の人の20万円の線との関係は副業の確定申告の20万円ルール、所得の区分は事業所得と雑所得の違いにまとめました
  • 納付を忘れる:源泉徴収した税額を法定納期限までに納めないと、不納付加算税の対象になり得ます(国税庁 源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて)

この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言・税務助言ではありません。最終更新日時点の制度で書いています。個別の契約の判断は弁護士・税理士に、自分の報酬が源泉徴収の対象になるかなど個別の税務は税理士か所轄の税務署に確認してください。税理士の探し方はいい税理士の見分け方と探し方にまとめています。

報酬の源泉徴収に関するよくある質問

源泉徴収の対象になる報酬は、どうやって見分けますか?

所得税法204条1項に列挙された報酬かどうかで見分けます。原稿料、デザイン料、講演料、翻訳料、写真の報酬、士業の報酬、モデルの報酬などが代表例です。国税庁の源泉徴収のあらましに、該当するものと該当しないものの表があります。受け取るのが法人なら、原則として対象外です。

100万円を超えると、全額に20.42%がかかりますか?

いいえ、かかりません。同じ人に1回で払う金額が100万円を超えたとき、超えた部分だけが20.42%で、100万円までは10.21%です。式にすると(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円です。年間の合計ではなく、1回の支払金額で判定します。

インボイスに登録していないと、消費税込みの金額で計算されますか?

登録の有無では決まりません。国税庁は、報酬と消費税等の額を明確に分けて書いた請求書等であれば、適格請求書である必要はないとしています。免税事業者の請求書でも、分けて書いてあれば報酬の額だけを源泉徴収の対象にしてよいとされています。

源泉徴収された税金は戻ってきますか?

確定申告で精算します。1年分の所得から計算した所得税等より、源泉徴収された税額のほうが多ければ差額が還付され、少なければ差額を納めます。源泉徴収は税金の前払いで、引かれた分がそのまま最終的な税額になるわけではありません。

おわりに──源泉徴収は「引かれる税金」ではなく「前払いの税金」

源泉徴収で決めることは3つだけです。相手が個人か法人か、払う内容が列挙された報酬か、消費税を分けて書いたか。この3つが決まれば、10.21%の計算は機械的に終わります。受け取る側にとって、引かれた額は失ったお金ではなく、確定申告で精算される前払いです。

今日やることは1つです。いま出している請求書の書式を開いて、報酬の額と消費税の額が分けて書かれているかを確かめてください。分かれていなければ、次の請求書から2行に分けるだけで、取引先は税抜の額で源泉徴収を計算できるようになります。

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