最終更新:2026年10月19日
売掛金(うりかけきん)とは、商品やサービスを売って売上を計上したのに、代金をまだ受け取っていない状態の債権です。会社計算規則は売掛金を「通常の取引に基づいて発生した事業上の未収金」と定め、貸借対照表の流動資産に置きます。仕訳は、納品して請求した日に「売掛金/売上高」、入金された日に「普通預金/売掛金」の2回です。売上は請求した月に立っても、お金は回収サイト(請求から入金までの期間)の分だけ遅れて入ります。この記事は最終更新日時点の法令と公式資料で書いており、会計の用語で公的な一文が見つからないものは「一般的には」と断っています。
売掛金とは?結論から
売掛金は「売上としてはもう自分のものだが、現金としてはまだ手元にないお金」です。帳簿の上では資産として数えますが、使えるお金ではありません。要点を表にします。
| 項目 | 内容 | 確認した資料 |
|---|---|---|
| 読み方 | うりかけきん | ― |
| 定義 | 通常の取引(会社の事業目的のための営業活動で、経常的に、または短期間に循環して発生する取引)に基づいて発生した事業上の未収金 | 会社計算規則 第74条 |
| 貸借対照表の区分 | 流動資産(1年内に回収できないことが明らかな破産更生債権等は除く) | 会社計算規則 第74条 |
| 売上を計上する時期 | サービスの提供などを行い、その対価として現金・預金や売掛金を取得した時(一般に実現主義) | 中小企業庁「中小企業の会計に関する基本要領」 |
| 計上する金額 | 原則として取得価額(請求した金額) | 同上(金銭債権及び金銭債務) |
| 回収できないとき | 回収不能額は貸倒損失、回収不能のおそれがある分は貸倒引当金を検討する | 同上(貸倒損失、貸倒引当金) |
| 反対側の科目 | 買った側の帳簿では買掛金(通常の取引に基づいて発生した事業上の未払金) | 会社計算規則 第75条 |
大事なのは、売掛金が増えても手元の現金は1円も増えないことです。黒字なのにお金が足りなくなる状態は、売掛金がたまって入金が追いつかないところから生まれます。
売掛金の勘定科目と定義──会社計算規則・中小会計要領で確認できたこと
売掛金は、本業の取引から生まれた未収金だけに使う勘定科目です。会社計算規則74条は、流動資産に属するものとして「売掛金(通常の取引に基づいて発生した事業上の未収金…)」を挙げています。ここでいう通常の取引とは、会社の事業目的のための営業活動で、経常的に、または短期間に循環して発生する取引のことです。
この定義から、本業以外の取引で生まれた未収のお金は売掛金に入れない、という使い分けが出てきます。たとえば使わなくなった備品を売って代金が後で入る場合は、一般的には「未収入金(未収金)」という科目を使います。勘定科目の名前そのものは会社ごとに選べますが、毎期同じ基準で使い分けることが大切です。
いつ売掛金を立てるかは、売上を計上する時期で決まります。中小企業庁の「中小企業の会計に関する基本要領」(中小会計要領)は、収益は原則として、製品・商品の販売またはサービスの提供を行い、その対価として現金・預金や売掛金などを取得した時に計上するとし、これを一般に「実現主義」と呼ぶと説明しています。法人税法22条の2第1項も、役務の提供に係る収益の額は、原則としてその役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入すると定めています(法人税法)。入金の日ではなく、仕事を終えた日の側で売上を数えるのが原則です。
売掛金と混同しやすい科目を並べます。
| 科目 | どんなお金か | 区分 |
|---|---|---|
| 売掛金 | 本業の売上の代金で、まだ受け取っていないもの | 資産(流動資産) |
| 未収入金 | 本業以外の取引(備品の売却など)の代金で、まだ受け取っていないもの(一般的な使い分け) | 資産 |
| 前受金 | まだ仕事をしていないのに先に受け取った代金(受注品等に対する前受金) | 負債(流動負債) |
| 買掛金 | 本業の仕入れ・外注の代金で、まだ払っていないもの | 負債(流動負債) |
個人事業主の場合も考え方は同じです。国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」は、掛け売りのようにまだ代金を受け取っていない売上げでも、本年中に売り上げたものは全て本年分の収入金額になると書いています。年末に売掛金として残っている分も、その年の売上です。なお、一定の小規模な個人事業主には現金主義で青色申告をする特例があり、その場合の扱いは別になります(現金主義と発生主義の違いは別の記事で扱います)。
売掛金の仕訳──計上から入金までの例
売掛金の仕訳は「請求したら売掛金を増やし、入金されたら減らす」の2段階です。架空の一人法人で、決算をまたぐ取引を追います。
| 前提(例) | 内容 |
|---|---|
| 会社 | マーケティング支援をする架空の一人法人「合同会社モデルケース」。3月決算 |
| 取引1 | 3月20日、A社に3月分の広告運用支援を納品し、55万円を請求。支払条件は月末締め翌月末払い |
| 取引2 | 3月25日、B社にLPの制作を納品し、22万円を請求。支払条件は月末締め翌々月末払い |
| 入金 | A社は4月30日に、振込手数料660円を差し引いた54万9,340円を入金。B社は5月31日に22万円を入金 |
| 省略したこと | 説明を簡単にするため、消費税の区分は省いて金額は一本で書く |
| 日付(例) | 借方 | 貸方 | 売掛金の残高 |
|---|---|---|---|
| 3月20日 A社に請求 | 売掛金 550,000円 | 売上高 550,000円 | 550,000円 |
| 3月25日 B社に請求 | 売掛金 220,000円 | 売上高 220,000円 | 770,000円 |
| 3月31日 決算日 | 仕訳なし(貸借対照表に売掛金770,000円が載る) | 770,000円 | |
| 4月30日 A社から入金 | 普通預金 549,340円 支払手数料 660円 |
売掛金 550,000円 | 220,000円 |
| 5月31日 B社から入金 | 普通預金 220,000円 | 売掛金 220,000円 | 0円 |
検算します。3月の売上高は55万円+22万円=77万円で、決算日の売掛金の残高77万円と一致します。4月30日の行は、借方が54万9,340円+660円=55万円で、貸方の55万円と合います。最後に残高が0円になれば、請求した分は全額回収できたことになります。振込手数料を相手が差し引いて入金してきた場合、その差額を売掛金に残したままにしないことが、残高を合わせるコツです。
この例では、3月の売上77万円は全額が当期の売上になりますが、現金が入るのは新しい期の4月末と5月末です。納品日から入金日までを数えると、A社は41日、B社は72日です。同じ月に納品しても、支払条件の書き方ひとつで入金が1か月ずれます。
| 支払条件(例) | 3月20日に納品・請求した場合の入金日 | 納品から入金までの日数 |
|---|---|---|
| 月末締め翌月末払い | 4月30日 | 41日 |
| 月末締め翌々月末払い | 5月31日 | 72日 |
発注側が従業員を使う事業者など(特定業務委託事業者)で、受ける側が従業員を使わないフリーランス(他に役員がいない一人法人を含む)の場合は、報酬の支払期日を給付を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内で定めるルールが、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律4条にあります(e-Gov法令検索)。このルールの中身は、別の記事でくわしく扱う予定です。
一人法人・マーケターの読みどころ
一人法人にとって売掛金は、「いつ現金になるか」を見るための数字です。売上は請求書を出した月に立ちますが、生活費も会社の固定費も現金でしか払えません。
ぼくが独立前後の準備を書いた一人で合同会社を設立した記事にも、請求書を出して入金は翌月末、案件によってはそれより後になることもある、と書きました。そのころから、売上の見込みより手元に残っている現金を見るようになりました。独立2年目には、納品も請求も済んでいる取引先の入金が、振込予定日を過ぎても3週間届かなかったことがあります。原因は先方の社内承認の遅れで、悪意はなかったと思います。それでも固定費は待ってくれず、別の案件の請求書を期日前に現金化してしのぎました。手数料として請求額の1割を払っています。そのときの経緯はクライアントが払ってくれないときのファクタリングの記事に書きました。最初の契約書に支払いが遅れた場合の条項を入れていなかったことも反省点で、今は全ての契約書に入れています。
ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に売って、支払期日より前に現金化する方法です。どんな会社があり、どう選ぶかはこの記事では扱いません。少額の請求書なら上の記事、法人の大きめの売掛金なら法人向けファクタリングの記事を読んでください。売掛金の記事として言えるのは、使うかどうか以前に、売掛金の残高と入金予定日を一覧にしておかないと、足りなくなる日が事前に見えないことです。
マーケターが取引先や転職先の決算書を読むときも、売掛金は役に立ちます。一般的によく使われる見方に「売上債権回転日数」があり、売掛金の残高を1日あたりの売上高で割って、売ってから回収するまでに平均何日かかっているかを見ます。例で計算すると、年商1,095万円の会社の1日あたり売上は1,095万円÷365日=3万円で、期末の売掛金が150万円なら150万円÷3万円=50日です。決算日1点の残高で計算するため、決算月の売上が大きい会社は長めに出る点に注意が要ります。取引先の決算公告で貸借対照表を見るときの見どころは、決算公告とはにもまとめています。
マーケの指標とつなげると、売掛金は「LTVとキャッシュのずれ」を教えてくれる科目です。LTVやユニットエコノミクスは売上や粗利が立った時点で数えますが、獲得にかけた広告費は先に出ていき、売上の代金は回収サイトの分だけ後から入ります。獲得費を何か月で取り戻すかを見るときは、売上を計上した月ではなく入金された月で並べ直しておくと、計算上は回収できていても手元のお金が先に尽きる、という事態に気づけます。
よくある間違いと注意点
いちばん多い間違いは、入金された日に初めて売上を入れてしまうことです。法人は原則として役務を提供した日の期の売上になるので、決算日をまたぐ請求を入金ベースで記帳すると、売上が翌期にずれます。ほかの注意点も並べます。
- 決算日に売掛金の残高を確かめない:取引先ごとの残高が請求書の控えと合っているかを、決算の前に一度照合します。
- 振込手数料の差額を放置する:差し引かれた分を支払手数料などで処理しないと、売掛金に小さな残高が残り続けます(扱いは契約の取り決めによりますが、フリーランス法・取適法の対象となる取引では、合意があっても発注側が振込手数料を差し引くと報酬の減額にあたります。フリーランス新法とは)。
- 本業以外の未収金を売掛金に混ぜる:会社計算規則の売掛金は通常の取引に基づく未収金です。備品の売却代金などは分けておくと、決算書の読み手に誤解を与えません。
- 回収できない売掛金を残し続ける:中小会計要領は、回収不能な債権は貸倒損失、回収不能のおそれがある債権は貸倒引当金として扱うとしています。法人税では、継続的な取引をしていた相手との取引を停止してから1年以上たっても弁済がない場合などに、備忘価額を残して貸倒れとして損金経理することを認める取扱いがあります(法人税基本通達 9-6-3)。
- 請求書を出していない売上を忘れる:月末に納品したのに請求書の発行が翌月になる場合でも、売上の時期は原則として提供した日で判断します。
帳簿付けを会計ソフトに任せている場合も、売掛金の残高だけは自分の目で見ておくと安心です。ぼくはfreeeとマネーフォワードの比較記事に書いたとおり、月次の損益を見ながら翌月の受注を判断しています。そこに売掛金の入金予定を足すと、損益と資金繰りが一枚で見えるようになります。
この記事は、最終更新日時点の制度で書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。税理士の探し方はいい税理士とは何かにまとめています。
売掛金に関するよくある質問
売掛金について、一緒に検索されている「わかりやすく」「勘定科目」「仕訳 どっち」「回収不能」の疑問に答えます。回答は最終更新日時点で公式の資料で確認できた内容と、一般的な会計の考え方です。
売掛金とはわかりやすく言うと何ですか?
仕事はもう終わって売上になっているのに、代金をまだもらっていない「つけ」の状態のお金です。帳簿では資産として数えますが、入金されるまでは使えません。請求した日に増え、入金された日に減ります。
売掛金は資産ですか?勘定科目の区分は?
資産です。会社計算規則74条は、通常の取引に基づいて発生した事業上の未収金を売掛金とし、流動資産に区分しています。1年内に回収できないことが明らかな破産更生債権等は、流動資産から除かれます。
売掛金の仕訳は借方と貸方のどっちですか?
増えるときは借方、減るときは貸方です。請求した日は「借方 売掛金/貸方 売上高」、入金された日は「借方 普通預金/貸方 売掛金」と書きます。資産は借方で増える、と覚えておくと迷いません。
売掛金が回収できないときはどうなりますか?
中小会計要領では、回収不能な債権は貸倒損失として費用にし、回収不能のおそれがある債権は貸倒引当金を計上するとしています。法人税で損金にできるかは、相手の倒産手続きや取引停止後の期間など、国税庁の通達の要件で判断します。判断が分かれやすいので、処理の前に税理士に確認してください。
おわりに──売掛金は、売上がお金になるまでの待ち時間
売上は請求書を出した日に立ちますが、会社を動かすのは入金された日のお金です。売掛金の残高と入金予定日を並べておけば、足りなくなる月が先に見えます。一人法人が決めることは「いくら売るか」だけではなく、「いつ回収するか」まで含めて決めることです。