最終更新:2026年10月19日
一人法人の決算は、自分でやることができます。法人税法は会社自身に確定申告書の提出を求めていて、税理士への依頼を条件にしていないからです。ただし、やることは帳簿の締めだけではありません。決算書(計算書類)を作り、法人税・地方法人税・防衛特別法人税の申告書の別表と添付書類をそろえ、地方税、課税事業者なら消費税まで、決算日の翌日から2か月以内に出し切る必要があります。この記事では、決算でやることの一覧と、自分でやる場合と税理士に頼む場合の比べ方を整理します。最終更新日時点の制度で、国税庁・e-Gov法令検索・地方税共同機構のページで確認できた内容だけを書いています。
一人法人の決算を自分でやるとは?結論から
一人法人の決算を自分でやるとは、帳簿を締めて決算書を作り、国税と地方税の申告書を自分で作って期限内に提出・納付するまでを一人で終えることです。やることを一覧にします。
| やること | 中身 | 根拠・確認した公式ページ |
|---|---|---|
| 決算整理 | 期中の帳簿を締め、未払・前払、減価償却などを反映させる | 計算書類は会計帳簿に基づき作成する(会社計算規則 第71条3項) |
| 決算書(計算書類) | 合同会社は貸借対照表・損益計算書・社員資本等変動計算書・個別注記表 | 会社法 第617条・会社計算規則 第71条1項 |
| 法人税等の申告書 | 法人税・地方法人税・防衛特別法人税の申告書(別表一・別表四・別表五関係など) | 国税庁 C1-1 |
| 申告書の添付書類 | 貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書または社員資本等変動計算書・勘定科目内訳明細書・事業等の概況に関する書類(法人事業概況説明書)など | 法人税法施行規則 第35条 |
| 地方税の申告 | 法人住民税・法人事業税・特別法人事業税(東京23区は都税事務所にまとめて申告) | 東京都主税局 |
| 消費税の申告 | 課税事業者の場合だけ | 国税庁 No.6610 |
| 保存 | 帳簿と書類を確定申告書の提出期限の翌日から7年間(欠損金が生じた事業年度などは10年間) | 国税庁 No.5930 |
「決算」と聞くと決算書づくりを思い浮かべますが、決算書は会計の書類、別表は税務の書類で、作る作業は別々です。会計の利益をそのまま書き写すだけでは、申告書は完成しません。
決算を自分でやるときの制度・要件・費用
自分でやること自体に資格は要りませんが(e-Taxを初めて使うなら開始届出で利用者識別番号を取る必要があります)、使える公式ツールと、他人に頼むときの線引きは決まっています。確認できた範囲を表にします。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 申告の義務を負う人 | 内国法人自身。各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に「確定した決算に基づき」申告書を出す(法人税法 第74条1項) |
| 税理士にしかできないこと | 他人の求めに応じて税務代理・税務書類の作成・税務相談を業として行うこと(税理士法 第2条・第52条)。資格のない知人に申告書づくりを業として頼むことはできない |
| 国税の申告ソフト | 国税庁のダウンロード型「e-Taxソフト」。WEB型の確定申告書等作成コーナーは所得税・消費税・贈与税向けで、法人税の申告には使えない(e-Tax 各ソフト・コーナー) |
| 地方税の申告ソフト | 地方税共同機構のPCdesk(無料のeLTAX対応ソフト)(eLTAX PCdeskのご案内) |
| 書面での提出 | 法人税の申告書は書面で作成し、持参または送付で出すこともできる(C1-1) |
| 作り方の手引 | 国税庁「令和7年版 法人税のあらましと申告の手引」と「申告書作成上の留意点」 |
| 税理士に頼む費用 | 事務所により異なる。記帳・決算・申告・相談のどこまでを頼むかで変わる |
法人向けに、画面の質問に答えるだけで別表まで作れる国税庁のWEBコーナーは、確認した範囲では見当たりませんでした。個人の確定申告と同じ感覚で始めると、最初にここでつまずきます。
2026年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税の申告も加わり、税額が0円でも申告が必要です(e-Tax 防衛特別法人税の創設に関するご案内)。国税庁の手引のページにも同じ注意が載っていて、自分でやる人は様式の年度に注意が要ります。
自分でやる・税理士に頼むの比べ方と、自分でやるときの手順
比べるべきなのは料金の安さではなく、「誰が判断し、誰が書類を作り、誰が説明するか」です。
| 項目 | 自分でやる | 税理士に頼む |
|---|---|---|
| お金 | 会計ソフトなどの利用料と、自分の作業時間 | 報酬がかかる(事務所により異なる) |
| 申告書の作成 | 別表・勘定科目内訳明細書・地方税の申告書を自分で作る | 税務書類の作成を任せられる |
| 判断(役員報酬・経費・消費税の届出など) | 自分で調べて決める | 相談しながら決められる |
| 期限の管理 | 自分で全部追う | 先回りして知らせてくれる事務所もある |
| 税務署とのやりとり | 自分で対応する | 税務代理として対応を任せられる |
| 向いている状況 | 取引が少なく、簿記と申告書を読める | 判断が多い、本業の時間を削りたくない |
頼むと決めた場合の見方は、いい税理士の選び方で4つに絞りました。質問に「場合による」で終わらせない、業種と規模を理解している、聞かなくても期限を教えてくれる、連絡が返ってくる、の4つです。月額とは別に決算・申告の料金がかかるかどうかも事務所により異なるので、面談では年間の合計で確かめるのが確実です。
自分でやると決めた場合の流れです。
- 期中から会計ソフトに記帳し、法人口座と個人の支出を混ぜない
- 決算日が来たら決算整理をする(減価償却の考え方は減価償却とは)
- 決算書(計算書類)を作り、株式会社なら定時株主総会の承認を受ける(会社法 第438条2項)
- 会計上の利益から税務上の所得へ調整し、法人税等の申告書の別表を作る
- 勘定科目内訳明細書と法人事業概況説明書を作る
- 地方税の申告書を作り、課税事業者なら消費税の申告書も作る
- 決算日の翌日から2か月以内に、e-Tax・eLTAXまたは書面で提出し、納付する
期限の数え方と決算月の関係は決算月の決め方に、設立時に出す届出は会社設立後の届出一覧にまとめました。
一人法人の判断ポイント
一人法人で迷うのは「できるか」より「どこまで自分で抱えるか」です。個人事業主の確定申告と比べると、作業の量と種類がはっきり違います。
| 論点 | 個人事業主 | 一人法人 |
|---|---|---|
| 国の申告 | 所得税(課税事業者なら消費税) | 法人税・地方法人税・防衛特別法人税(課税事業者なら消費税) |
| 国税庁の作成ツール | WEBの確定申告書等作成コーナーが使える | ダウンロード型のe-Taxソフトか書面 |
| 決算書 | 青色申告決算書など | 会社法の計算書類と、申告書の添付書類 |
| 期限 | 所得税は翌年3月15日まで | 決算日の翌日から2か月以内 |
ぼくは40歳でtiny合同会社を一人で作りましたが、決算を自分でやったわけではありません。税理士ドットコムの記事に書いたとおり、最初の期の途中までは自分で帳簿をつけ、決算の直前に慌てて税理士を探しました。そのとき言われたのが「もう少し早く来ていれば、選べた選択肢がありました」です。一人で法人を作るということでも、法人の決算申告は法人税・消費税・地方税を別々に出す必要があり、税理士は「ほぼ必須」と書きました。
この体験から言えるのは、決算でいちばん重いのは書類づくりではなく、期の初めに決めておくべき判断です。役員報酬の額(定期同額給与とは)、消費税をどう扱うか(免税事業者とは)は、決算のときにはもう動かせません。自分でやるか迷ったら、「申告書を作れるか」ではなく「期首の判断を自分で決め切れるか」で考えると線が引きやすくなります。書類は自分、判断は相談という分け方もありますが、依頼できる範囲と費用は事務所により異なります。
よくある間違いと注意点
自分でやるときの失敗は、計算の誤りより「出すべき書類が足りない」「期限を個人の感覚で数える」の2つに集まります。
- 赤字でも申告は必要:法人税法第74条1項は「所得の金額又は欠損金額」を書いた申告書を求めている。法人住民税の均等割もかかる(資本金はいくらにするか)
- 間に合わないから延長、はできない:申告期限の延長の特例は、定款等の定めなどで定時総会が2か月以内に招集されない常況にある法人が、事業年度終了の日までに申請して使う制度で、延長した期間には利子税がかかる(国税庁 C1-17)。作業が遅れたときの救済ではない
- 添付書類の出し忘れ:勘定科目内訳明細書や事業等の概況に関する書類も添付書類に入っている(施行規則第35条)
- 様式の年度違い:別表は事業年度ごとに様式が改正される。2026年4月1日以後終了事業年度分の新様式は、e-Taxで2026年9月24日から受付が始まっている(e-Tax 申告手続(法人税確定申告等))
- あとで誤りに気づいたとき:税額が少なかった場合は修正申告をする。調査の通知がある前に自主的に修正申告すれば過少申告加算税はかからないが、延滞税はかかり得る(国税通則法 第65条)
- 保存期間:帳簿と書類は7年間、青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年間(No.5930)。電子取引のデータの保存は電子帳簿保存法の記事で
この記事は最終更新日時点の法令・公式ページで書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。
一人法人の決算に関するよくある質問
一人法人の決算は自分でできますか?
できます。法人税法は会社自身に確定申告書の提出を求めていて、税理士への依頼を条件にしていません。ただし決算書に加えて、法人税・地方法人税・防衛特別法人税の申告書の別表、勘定科目内訳明細書などの添付書類、地方税、課税事業者なら消費税の申告まで、決算日の翌日から2か月以内に自分でそろえる必要があります。
法人の決算を自分でやるにはどのソフトを使いますか?
帳簿と決算書は会計ソフトで作り、国税の申告は国税庁のe-Taxソフト、地方税の申告は地方税共同機構のPCdeskで作成・送信できます。個人向けの確定申告書等作成コーナーは法人税の申告に使えません。書面で作って税務署に出すこともできます。
決算と申告だけを税理士に頼むことはできますか?
記帳は自分でして、決算と申告書の作成だけを頼む形を受けている事務所もあります。ただ、どこまでを引き受けるか、費用がいくらかは事務所により異なります。面談のときに、頼みたい範囲と年間の合計額を確かめてください。
自分で決算をして間違えたらどうなりますか?
税額が少なかったと分かったら、修正申告をします。税務署の調査の通知がある前に自主的に修正申告すれば過少申告加算税はかかりませんが、延滞税はかかる場合があります。調査を受けた後だと、原則として増えた税額の10%の過少申告加算税がかかります。
おわりに──自分でやれるかは、書類の量ではなく期首の判断で決まる
一人法人の決算は、制度の上では自分でできます。書類を作る手順も、国税庁とeLTAXのソフトでたどれます。それでも決算で取り返せないのは、期の初めに決めておくべきだった役員報酬や消費税の選択のほうです。決算を自分でやるかどうかは、決算のときではなく、期首に一人で決め切れるかどうかで選ぶものです。