最終更新:2026年10月20日
支払調書とは、報酬を払った会社などが、誰にいくら払い、いくら源泉徴収したかを書いて税務署に出す書類です。正式には「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」といい、提出期限は支払が確定した年の翌年1月31日です。税務署に出す義務はありますが、報酬を受け取った本人に渡す義務はありません。だから、支払調書が届かなくても、受け取る側は自分の帳簿で確定申告をします。
ぼくは40歳でtiny合同会社を一人で設立したマーケターです。フリーランスや一人法人は、支払調書を受け取る側にも、外注先の分を出す側にもなります。この記事は、その両方の立場で、提出義務と提出基準額、受け取る側への交付の扱い、届かないときの確定申告、マイナンバーの提供を求められる理由を、国税庁とe-Gov法令検索で確認できた範囲で整理しました。確定申告の全体の流れはフリーランスの確定申告ガイドに任せ、ここでは支払調書に絞ります。2026年10月20日時点の制度で書いています。
支払調書とは?結論から
支払調書は、支払う側が税務署に出すための書類で、受け取る側の確定申告の材料として作られるものではありません。まず要点を表で押さえてください。
| 論点 | 確認できた内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 出す人 | 所得税法204条1項各号などに定める報酬・料金・契約金・賞金を払う人 | 国税庁 No.7431 |
| 出す先と期限 | 支払者の所轄税務署へ、支払の確定した日の属する年の翌年1月31日まで。令和8年分は令和9年2月1日(月)まで | No.7431、令和8年分 法定調書の作成と提出の手引 第1章 |
| 原稿料・デザイン料・講演料・士業の報酬など | 同じ人への1年間の支払金額の合計が5万円を超えると提出 | No.7431 |
| 本人への交付 | 所得税法上、本人に交付する義務はない。写しを渡す場合はマイナンバーを書けない | 国税庁 法定調書に関するFAQ Q3-1 |
| 番号の記載 | 税務署に出す支払調書には、受け取る人のマイナンバーまたは法人番号を書く | No.7431 |
| 法人への支払い | 源泉徴収の対象にならない法人への支払いでも、提出範囲に入れば支払調書は必要 | No.7431、国税庁 質疑応答事例 法人に対して支払った報酬等 |
根拠の条文は所得税法(e-Gov法令検索)の225条1項3号です。居住者または内国法人に対し、国内で204条1項各号の報酬・料金・契約金・賞金を払う者は、その支払に関する調書を翌年1月31日までに税務署長に出すと定めています。令和8年分は1月31日が日曜日にあたるため、手引では令和9年2月1日(月)が期限とされています。
制度・要件・提出基準額
提出するかどうかは、報酬の種類ごとに決まった金額を、同じ人へのその年中の支払の合計が超えるかで判定します。いちばん多くの人に関係するのは「5万円超」の線です。
国税庁の令和8年分 法定調書の作成と提出の手引 第4章とNo.7431で確認した提出範囲です。
| 区分 | 提出範囲 |
|---|---|
| 外交員・集金人・電力量計の検針人・プロボクサーの報酬、ホステス・コンパニオン等の報酬、広告宣伝のための賞金 | 同じ人への1年間の支払金額の合計が50万円を超えるもの |
| 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構が支払う診療報酬 | 同じ人への1年間の支払金額の合計が50万円を超えるもの(国立病院・公立病院などへの支払いは不要) |
| 馬主が受ける競馬の賞金 | 1回の支払賞金額が75万円を超える支払を受けた人の、その年中のすべての支払金額 |
| プロ野球の選手などの報酬・契約金 | 同じ人への1年間の支払金額の合計が5万円を超えるもの |
| 上記以外(弁護士・税理士などの報酬、原稿料、画料、講演料など) | 同じ人への1年間の支払金額の合計が5万円を超えるもの |
提出範囲の金額は、原則として消費税等を含めて判断します。ただし、消費税等の額が明確に区分されている場合は、含めずに判断しても差し支えないとされています(No.7431)。また、支払金額の欄には、その年中に支払の確定したものを書き、源泉徴収をしなかった報酬や未払の報酬も記載漏れのないように、と手引にあります。
提出の方法も変わりました。法定調書の種類ごとに、前々年に出すべきだった枚数が30枚以上なら、e-Tax・光ディスク等・認定クラウド等で出す必要があります。令和8年12月31日以前に出す法定調書までは「100枚以上」で、令和9年1月以降に出す分から30枚以上に引き下げられています(国税庁 No.7455)。一人法人が外注先に払う程度なら30枚に届かないことが多いと思いますが、判定は自分の前々年の枚数で行います。支払調書は「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」と一緒に出します。
法人への支払いの扱いは、源泉徴収と支払調書で線が違います。国税庁の質疑応答事例では、法人に測量費を払って源泉徴収をしなかった場合でも、204条1項2号の報酬にあたるので支払調書の提出が必要と回答しています。内国法人への支払いで源泉徴収の対象になるものは限られていますが、支払調書は源泉徴収の要否に関係なく、204条1項各号の報酬なら提出範囲で判定します。
手順(支払う側の年間の流れと、受け取る側の申告)
支払う側は1年分の支払いを相手ごとに集計して翌年1月に出し、受け取る側は支払調書を待たずに自分の帳簿で申告します。両方の手順を並べます。
支払う側(報酬を払う会社など)
- 報酬を払うたびに、相手・報酬の種類・支払金額・源泉徴収税額を記録する
- 年が明けたら、相手ごとに1年分の支払金額を合計し、提出範囲(多くは5万円超)に入るかを判定する
- 提出範囲に入る相手のマイナンバーまたは法人番号を確認する(個人のマイナンバーは本人確認とあわせて受け取る)
- 支払調書と法定調書合計表を作り、翌年1月31日(令和8年分は令和9年2月1日)までに所轄税務署へ出す
- 相手に写しを渡すかは任意。渡すならマイナンバーは書かない
受け取る側(報酬を受け取るフリーランス)
- 請求書と入金の記録から、取引先ごとに1年分の報酬と源泉徴収税額を集計する
- 支払調書が届いた取引先は、自分の集計と金額を突き合わせる。届かない取引先は自分の集計を使う
- 確定申告で、報酬の収入金額と源泉徴収税額を入力する
架空の数字の例で、支払調書の有無と申告の関係を確かめます。個人のフリーランスが、1年間に3社から報酬を受け取ったとします(金額は税抜で、消費税は分けて請求している前提)。
| 例 | 報酬の内容と年間の合計 | 源泉徴収税額 | 支払調書の提出 | 確定申告での扱い |
|---|---|---|---|---|
| A社 | 原稿料 6万円×3回=18万円 | 6,126円×3回=18,378円 | 5万円超なので必要 | 18万円を収入、18,378円を源泉徴収税額に入れる |
| B社 | デザイン料 4万円×1回 | 4,084円 | 5万円以下なので提出範囲外 | 支払調書がなくても、4万円を収入、4,084円を源泉徴収税額に入れる |
| C社 | 204条1項の報酬にあたらない業務委託料 60万円 | なし | 報酬・料金等の支払調書の対象外 | 60万円を収入に入れる |
収入の合計は18万円+4万円+60万円=78万円、源泉徴収税額の合計は18,378円+4,084円=22,462円です(60,000円×10.21%=6,126円、40,000円×10.21%=4,084円)。3社のうち支払調書が出るのはA社だけで、その写しが手元に届くかどうかもA社の判断です。それでも申告する金額は3社分すべてです。支払調書の有無と、申告するかどうかは関係がありません。確定申告書等作成コーナーでも、支払調書の源泉徴収税額欄に金額があれば源泉徴収税額を入力するよう案内されています(確定申告書等作成コーナー よくある質問)。
フリーランス・一人法人の判断ポイント
受け取る側で判断が要るのは、マイナンバーの提供と、支払調書の金額が自分の帳簿と合わないときの扱いです。払う側に回った一人法人は、1月の提出作業が増えます。立場ごとに整理します。
| 立場 | 確認すること |
|---|---|
| 受け取る側(個人のフリーランス) | 支払調書の提出範囲に入る相手からマイナンバーの提供を求められたら、本人確認書類とあわせて提供する。求めているのが本当に契約先か(収集を委託された業者か)を確かめる |
| 受け取る側(一人法人) | 法人は源泉徴収されなくても、204条1項各号の報酬なら支払調書に名前が載ることがある。記載されるのは法人番号 |
| 払う側(一人法人) | 個人・法人を問わず、相手ごとに1年分の報酬を集計し、提出範囲に入れば翌年1月に出す。集めたマイナンバーは安全に管理する |
マイナンバーの提供を求められる理由は、契約先が支払調書にマイナンバーを書くことを法律で義務づけられているからです。国税庁・内閣府などのリーフレット「契約先から報酬などを受け取る方は契約先へマイナンバーの提供が必要です」は、支払金額が支払調書の提出範囲に入る場合は契約先への提供が必要だと説明しています。契約先は提供を受けるときに本人確認(番号確認と身元確認)を行い、集めた番号の安全管理措置が義務づけられ、法令で定めた目的以外の利用は禁じられています。収集を外部の業者に委託することは法令で認められているので、求めてきた相手が契約先かその委託先かを確かめてから出します。
提供を受けられなかった場合について、国税庁の法定調書に関するFAQ(Q1-2)は、支払者に対し、提供を求めた経過を記録・保存して義務違反でないことを明確にし、引き続き提供を求めるよう案内しています。提供しないと報酬が受け取れなくなる、と定めた記述は確認できませんでした。ただ、相手の事務が止まるのは事実なので、受け取る側としては、契約のときに提供方法まで決めておくのがいちばん揉めません。
支払調書の金額が自分の帳簿と合わないことは珍しくありません。支払調書の支払金額は「その年中に支払の確定したもの」で、未払のものも含めて書かれます。ぼくの場合、請求書を出してから入金されるのは翌月末で(一人で合同会社を設立した体験の記事に書いたとおりです)、このずれがあると、年末に請求した分は年が明けてから入金されることになります。入金の通帳だけを見ていると、支払調書の金額と合わないように見えます。売上をいつ計上するかの考え方は現金主義と発生主義の違い、未入金の売上の扱いは売掛金の記事にまとめました。申告の数字は、取引先の書類ではなく自分の帳簿で決めます。差がどこから来たのかを説明できれば十分です。
一人法人として受け取る場合は、支払調書に会社の法人番号が書かれます。法人番号の調べ方と、インボイスの登録番号との違いは法人番号の記事にまとめています。払う側に回ったときは、1月は給与の源泉徴収票などの法定調書もまとめて出す時期です。ぼくは判断が要る税務を、税理士ドットコムで見つけた税理士に任せています(税理士ドットコムをすすめる理由の記事)。外注先が増えてきたら、支払調書の作成を顧問の範囲に入れてもらえるかを先に確認しておくと安心です。
よくある間違いと注意点
いちばん多い誤解は、支払調書が届かないと確定申告ができない、または支払調書が届いた分だけ申告すればいいと思うことです。支払調書は支払う側の義務で、受け取る側の申告は自分の帳簿で行います。
- 届かないことを取引先の違反だと思う:所得税法上、本人に交付する義務はありません(国税庁 法定調書に関するFAQ Q3-1)。必要なら写しをお願いすることはできますが、送るかどうかは相手の判断です
- 確定申告書に添付が必要だと思う:国税庁の確定申告の手引で、申告書に添付・提示する書類として挙げられているのは本人確認書類や控除の証明書などで、報酬の支払調書は挙がっていません(令和7年分 確定申告の手引き 申告書に添付・提示する書類)
- 支払調書が出ない少額の報酬を申告から外す:5万円以下で提出範囲外でも、収入は収入です。源泉徴収されていれば、その税額も申告で差し引きます
- 法人への支払いは出さなくていいと思う:源泉徴収をしていない法人への報酬でも、204条1項各号の報酬で提出範囲に入れば必要です(No.7431)
- 写しにマイナンバーを書いて渡す:本人に写しを渡すときは、本人と支払者のマイナンバーを書けません。法人番号は任意で書けます(国税庁 法定調書に関するFAQ Q3-1)
- 屋号だけで書く:支払を受ける人の氏名または名称は契約書等で確認して書き、屋号だけを書かないように、と手引にあります。屋号の位置づけは屋号の記事にまとめました
この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言・税務助言ではありません。最終更新日時点の制度で書いています。個別の契約の判断は弁護士・税理士に、支払調書の要否や申告の数字など個別の税務は税理士か所轄の税務署に確認してください。
支払調書に関するよくある質問
支払調書が届かないのですが、確定申告はできますか?
できます。支払調書は支払う側が税務署に出す書類で、受け取る本人に交付する義務はありません。請求書と入金の記録から、取引先ごとの報酬と源泉徴収税額を自分で集計して申告します。源泉徴収税額が分からなければ、取引先に支払明細を確認します。
支払調書は確定申告書に添付しますか?
添付は求められていません。国税庁の確定申告の手引で、申告書に添付・提示する書類として挙げられているのは本人確認書類や各種控除の証明書などです。手元に届いた支払調書は、自分の集計と突き合わせる資料として保管しておけば足ります。
マイナンバーを提供しないとどうなりますか?
契約先は支払調書にマイナンバーを書くことを法律で義務づけられているので、提供を求め続けることになります。国税庁は、提供を受けられなかった支払者に、求めた経過を記録・保存するよう案内しています。提供するときは、求めているのが契約先かその委託先かを確かめてから出してください。
一人法人に払った報酬にも支払調書は必要ですか?
報酬の種類によっては必要です。法人への支払いは原則として源泉徴収の対象になりませんが、所得税法204条1項各号の報酬にあたり、提出範囲に入れば支払調書を出します。国税庁の質疑応答事例でも、法人への測量費について、源泉徴収の要否に関係なく提出が必要と回答しています。
おわりに──支払調書は税務署のための書類で、自分の申告のための書類ではない
支払調書で決めることは、立場によって1つずつです。払う側なら、相手ごとの1年分を集計して提出範囲に入るかを判定すること。受け取る側なら、届くかどうかに関係なく、自分の帳簿で申告することです。支払調書は税務署が支払いと申告を照らし合わせるための書類で、受け取る側の申告の材料ではありません。
今日やることは1つです。今年の報酬の入金を取引先ごとに並べ、源泉徴収された税額を横に書き出してください。その表があれば、支払調書が届いても届かなくても、確定申告の数字はもう決まっています。