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みなし法人とは|個人事業主・法人との違いと廃止されたみなし法人課税

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最終更新:2026年10月20日

みなし法人とは、税の用語としては、青色申告をしている個人事業主が「法人のように」課税される方法を選べた、旧「みなし法人課税制度」のことです。この記事で扱うのはこの税の用語で、携帯電話や光回線の契約で個人事業主を法人に近い区分として扱う「みなし法人」(たとえばソフトバンクのサポートページにある「個人事業主(みなし法人)」という契約の区分)の話ではありません。旧制度は1973年(昭和48年度の税制改正)に始まり、1992年(平成4年度の税制改正)に廃止されました。いまの個人事業主に「法人のように課税される」選択肢はなく、法人として扱われたいなら法人を作るしかありません。この記事では、一人で独立した人に向けて、旧制度の仕組みと廃止の経緯を財務省・国税庁の資料で確認できた範囲で整理し、個人事業主・法人との違い、いま使われている「みなし」の言葉との区別をまとめます。内容は最終更新日(2026年10月20日)時点の制度で書いています。

みなし法人とは?結論から

みなし法人という言葉は、使われる場所によって3つの意味に分かれます。税の話で出てくるなら、それは30年以上前に廃止された制度の名前です。

使われる場面 意味 いまもあるか
税の用語(この記事の対象) 旧「みなし法人課税制度」。青色申告の個人事業主が、事業の所得を「事業主報酬」と「法人の所得とみなす部分」に分けて課税を受けられた 平成4年度の税制改正で廃止
携帯電話・回線の契約など 個人事業主の契約を、法人契約に近い区分で扱う呼び方 各社の契約上の区分で、税金とは関係しない
法令の「法人とみなす」 法人ではない団体を、税法の適用では法人として扱うこと。人格のない社団等は法人とみなして法人税法・所得税法を適用する 現行(法人税法3条・所得税法4条)

3つ目は町内会やPTAのような団体の話で、個人事業主は含まれません。個人事業主は法人ではないので、法人番号も指定されません。国税庁の法人番号公表サイトの資料「法人番号の指定対象」でも、個人事業者は指定の対象外に挙がっています。法人番号の仕組みは「法人番号とは」に書きました。

旧みなし法人課税制度の仕組みと廃止(公式で確認できた範囲)

旧みなし法人課税制度は、個人事業主の所得を「自分への給料」と「会社の利益に当たる部分」に分け、それぞれ給与所得・法人並みの税率・配当所得として課税した制度です。仕組みと経緯は、財務省財務総合政策研究所の「平成財政史―平成元〜12年度」第4巻(租税)第2章と、国税庁税務大学校の税大論叢9号に収められた相原安夫「みなし法人課税選択制度をめぐる諸問題」で確認しました。

項目 確認できた内容 出典
創設 昭和48年度の税制改正。租税特別措置法の改正で生まれ、当初は1973年7月1日から1978年12月31日までの5年6か月の特別措置。期限のたびに延長された 税大論叢9号・平成財政史
使えた人 事業所得または不動産所得を生ずべき事業を営む居住者で、青色申告の承認を受けている人。医師・弁護士・芸能人・農業経営者でもよい 税大論叢9号
手続き 適用を受ける年の前年末までに、事業主報酬の額などを書いた選択届出書を税務署長に出す。取りやめの届出を出すと再選択はできない 税大論叢9号
計算の流れ ①事業所得等から事業主報酬を分け、給与所得控除を適用して給与所得にする ②残りを「みなし法人所得」とし、法人税と同じ税率(地方税を含む)で法人税相当額を出す ③みなし法人所得から法人税相当額を引いた残りを配当所得とし、給与所得と合算して所得税・住民税を計算し、配当控除を適用する 平成財政史
見直し 昭和62年度の改正で、事業主報酬がその年の前々年以前3年内の事業所得等の年平均額の80%を超える部分は、過大報酬に準じて扱うことになった 平成財政史
選択した人の数 昭和62年分の約30万人(青色申告者の7.5%)が最多で、平成2年分は約17万人(4.0%)まで減った(原典は税制調査会「税制調査会関係資料集」平成4年3月) 平成財政史 表2-3-12
廃止 平成4年度の税制改正で廃止。あわせて青色申告控除が青色申告特別控除に改組・拡充された。政府税制調査会も「平成4年度の税制改正に関する答申」で廃止を勧告していた 平成財政史

出典のページは、財務省の「平成財政史」第4巻第2章(PDF)の310〜317ページと、国税庁の税大論叢9号の論文ページです。「平成財政史」は当時の解説を引いて、制度のねらいを、事業主報酬の支払いを認めて「店」と「奥」の区分経理を明確にし、個人事業の経営の近代化に役立てることだったと書いています。家計と事業のお金を分けることが目的でした。

廃止の理由として「平成財政史」が挙げるのは次の点です。事業所得を計算するときに必要経費をすでに引いているのに、さらに給与所得控除を引くのは二重の控除になるとの批判が当初からあったこと。昭和62年度の制限で低い所得の人には得がほとんどなくなり、一部の高い所得の人が節税に使い続けたといわれたこと。そして税収が急に減った時期で、租税特別措置の見直しの一環になったことです。制度の適用期限の1年前に当たる平成4年度の改正で、廃止が決まりました。

確認できなかったこともあります。「平成財政史」の沿革の表には廃止後の経過措置の欄がありますが、何年分までどの範囲で旧制度の計算が残ったのか、その細部は、確認できた資料から読み取れませんでした。この記事では「平成4年度の税制改正で廃止」までを書き、それ以上は書きません。

いま使われる「みなし」との違い──比べ方

税金や会社の手続きで「みなし」と付く言葉はいくつもありますが、どれも旧みなし法人課税制度とは別物です。共通するのは「本当は違うものを、法律の上では同じものとして扱う」仕組みだけです。

言葉 何を何とみなすか 根拠
みなし法人課税(廃止) 個人事業主の所得の一部を、法人の所得のように課税した 旧租税特別措置法(平成4年度改正で廃止)
みなし役員 取締役などの肩書がなくても、経営に従事している人や、同族会社で一定の持株割合を持ち経営に従事している使用人を、法人税では役員として扱う 国税庁 No.5200 役員の範囲(法法2・法令7)
みなし解散 最後の登記から12年たった株式会社が、官報公告から2か月以内に届出をしないと解散したものとみなされる 会社法472条
みなし配当 法人から株主に交付された金銭などのうち一定の部分を、配当として扱う 所得税法25条(配当等とみなす金額)
法人とみなす 人格のない社団等を、法人税法・所得税法の適用では法人として扱う 法人税法3条・所得税法4条

一人法人に関わりが深いのは、みなし役員とみなし解散です。家族を従業員として雇っている会社は、「役員ではないから役員報酬のルールは関係ない」と思い込みやすいのですが、みなし役員に当たれば法人税では役員として扱われます。役員報酬のルールは「定期同額給与とは」に書いています。みなし解散は株式会社だけの話で、合同会社には12年のルールがありません。

個人事業主・一人法人の判断ポイント

旧制度が廃止されたいま、個人事業主が選べるのは「個人のまま事業所得で課税される」か「法人を作って会社の利益と役員報酬に分ける」かの2つだけです。みなし法人の発想を知りたくて検索した人は、実はこの2択の判断をしようとしていることが多いはずです。

比べる点 個人事業主(いま) 旧みなし法人課税(廃止) 一人法人(いま)
法人格 ない ない(個人のまま) ある
自分への報酬 給与として分ける仕組みはない。事業所得として課税 事業主報酬を分けて給与所得にできた 役員報酬を払い、給与所得控除が使える
報酬以外の利益 事業所得として累進税率 みなし法人所得として法人並みの税率、残りは配当所得 会社の所得として法人税
主な条件 開業届・青色申告承認申請書など 青色申告の承認と選択届出書 設立登記・法人の届出・社会保険の加入
法人番号 指定されない 個人なので、いまの法人番号の仕組みでも対象外 指定される

ぼくは40歳で、一人で合同会社を作りました。「一人で法人を作るということ」に書いたとおり、法人で稼いだお金は会社の売上で、ぼくはそこから役員報酬を受け取ります。この構造の違いが、税金・信用・責任の範囲に効いてきます。旧制度が個人のまま擬似的に作ろうとしたのは、まさにこの「会社の財布」と「自分の財布」の分離でした。

同じ記事に、法人化してから大変だったこととして、社会保険の手続きと毎月の支払い、税理士がほぼ必須なこと(ぼくの顧問料は月2万円)、赤字でも均等割がかかることを書いています。旧制度は個人のまま法人に近い課税だけを選べましたが、いまはそうはいきません。法人の課税を選ぶことは、法人の手間と固定費も一緒に引き受けることです。

判断の順番は3つです。

  1. 所得の見込みを先に置く:所得税の累進税率と法人税の税率の差は、所得が増えるほど効いてきます。架空の数字での試算は「法人成りのタイミング」に任せます
  2. 法人の固定費と手間を足す:均等割、税理士の費用、社会保険料、決算と申告の手間です。税率の差がこれを上回るかで見ます
  3. 個人のまま使える特典を確かめる:青色申告特別控除は、旧制度の廃止と同じ平成4年度の改正で生まれた制度です。いまの要件と控除額は「青色申告65万円控除の条件」で確認してください

個人事業と小さな法人を併用する形は「マイクロ法人とは」で、節税スキームとして勧めない立場で整理しています。

みなし法人でよくある間違いと注意点

みなし法人でいちばん多い間違いは、いまも個人事業主が届け出れば法人のように課税してもらえると思うことです。その制度は平成4年度の改正で廃止されていて、いま同じ効果を求めるなら法人を作るしかありません。

  • 古い解説を現行の制度として読む:事業主報酬や選択届出書の話が出てくる解説は、廃止前の制度の説明です。日付と「廃止」の記載を確かめます
  • 携帯電話の契約区分と税の制度を混同する:通信会社の「みなし法人」は契約上の区分で、税金の計算や法人格とは関係しません
  • みなし役員を家族経営と無関係だと思う:肩書が使用人でも、経営に従事していれば法人税では役員として扱われることがあります。役員報酬のルールが及ぶので、家族を雇う一人法人は国税庁 No.5200の要件を確認します
  • みなし解散を合同会社にも当てはめる:会社法472条は株式会社の規定です
  • 給与所得控除だけを見て法人化を決める:旧制度が廃止された理由の1つは、必要経費と給与所得控除を二重に引くことへの批判でした。法人の役員報酬にも給与所得控除は使えますが、会社の側には社会保険料などの負担が別に出ます。数字は控除の大きさではなく、手取りと固定費の合計で比べます

この記事は最終更新日時点の制度で書いています。旧制度の細部は当時の法令と資料に基づくので、廃止前の取引や申告を確かめる必要があるときは、当時の資料で確認してください。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。相談先の選び方は「いい税理士とは何か」に書いています。

みなし法人に関するよくある質問

みなし法人について、検索で一緒に調べられている「個人事業主との違い」「法人との違い」「みなし法人課税」「法人番号」の疑問に、公式の資料で確認できた範囲で答えます。

みなし法人と個人事業主の違いは何ですか?

旧みなし法人課税制度を選んだ個人事業主は、事業の所得を事業主報酬とみなし法人所得に分け、報酬には給与所得控除を、残りには法人並みの税率を適用できました。普通の個人事業主は、事業の所得全体が事業所得として累進税率で課税されます。ただし、この制度は平成4年度の税制改正で廃止されていて、いまはこの違いはありません。

みなし法人と法人の違いは何ですか?

みなし法人は、課税の計算だけを法人に近づけた個人事業主で、法人格はありませんでした。法人は設立の登記で法人格を持ち、会社の所得には法人税がかかり、代表者は役員報酬を受け取ります。いまはみなし法人の制度がないので、法人として扱われたいなら法人を作ることになります。

みなし法人課税はいつ廃止されましたか?

財務省財務総合政策研究所の「平成財政史」によると、昭和48年度の税制改正で創設され、平成4年度の税制改正で廃止されました。同じ改正で青色申告控除が青色申告特別控除に改組・拡充されています。廃止後の経過措置の細部は、確認できた資料からは読み取れませんでした。

みなし法人に法人番号はありますか?

ありません。旧制度を選んだ人も法人格のない個人事業主でした。いまの法人番号の仕組みでも、国税庁の法人番号公表サイトの資料で個人事業者は指定対象外とされています。携帯電話などの契約で「みなし法人」の区分を使う場合も、法人番号が付くわけではありません。

おわりに──法人のように扱われる個人は、もういない

みなし法人は、個人のまま会社の財布を持たせようとした制度でした。それが廃止されて30年以上たったいま、選べる道は2つしかありません。個人のまま事業所得で払うか、法人を作って会社の財布を本当に持つかです。

決めることは1つです。今年の所得の見込みと、法人を持ったときの固定費を同じ表に並べること。みなし法人を調べていた時間は、その表を作る時間に回してください。

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