最終更新:2026年10月19日
償却資産の固定資産税(償却資産税)とは、パソコンや机、テナントが取り付けた内装のような事業用の資産にかかる固定資産税で、毎年1月1日に持っている資産を1月31日までに申告します。東京都23区の場合、税率は1.4%で、区ごとの課税標準額が150万円未満なら課税されません(免税点)。ただし、課税されない場合でも、資産を持っていれば申告は必要です。この記事では、東京都主税局・国税庁・e-Gov法令検索で確認できた内容だけを使い、パソコン1台から始める一人法人が「申告が要るか」「税金がかかるか」を自分で判定できるように整理します。内容は最終更新日時点の制度にもとづいています。
償却資産の固定資産税(償却資産税)とは?結論から
償却資産税は、土地と家屋以外で事業に使える資産のうち、法人税や所得税で減価償却の対象になる物にかかる固定資産税です(地方税法341条4号)。東京都主税局の固定資産税(償却資産)のページで確認した要点を表にします。
| 項目 | 東京都23区の内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| かかる人 | 毎年1月1日(賦課期日)現在の償却資産の所有者。赤字でも申告は必要 | 地方税法343条・主税局Q&A 5-1 |
| 申告期限 | 1月1日現在の資産を、その年の1月31日までに申告 | 地方税法383条 |
| 申告先 | 資産がある区の都税事務所の償却資産班(法人事業税の都税事務所と違う場合がある) | 主税局「償却資産の申告先」 |
| 税率 | 1.4% | 地方税法350条・東京都都税条例122条 |
| 免税点 | 区ごとの課税標準額の合計が150万円未満なら課税されない | 地方税法351条・東京都都税条例123条 |
| 納期 | 通常4回。令和8年度は6月30日・9月30日・12月28日・令和9年3月1日 | 主税局Q&A 2-1 |
23区の固定資産税は、特例で区ではなく都が課税しています。23区以外に資産がある場合、申告先・税率・免税点の扱いは資産のある市町村が決めるので、各市町村の案内で確認してください。地方税法351条ただし書は、財政上の特別の必要があれば条例で150万円未満でも課税できるとしているので、免税点も「どこでも同じ」とは言い切れません。
制度・要件・税額──申告の対象になる物・ならない物
申告の対象かどうかは、「1月1日に事業に使える有形の資産か」と「国税でどう経費にしたか」の2つで決まります。東京都主税局の令和8年度 固定資産税(償却資産)申告の手引きとQ&Aで確認した内容を、一人法人が持ちそうな物に当てはめて表にします。
| 資産・経費のしかた | 申告 | 主税局の説明 |
|---|---|---|
| パソコン・コピー機・応接セット・ルームエアコン・LAN設備 | 対象 | 業種共通の申告対象の例 |
| テナントとして借りた事務所に自分で取り付けた内装・造作 | 対象 | Q&A 1-3 |
| 中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額を経費にした物 | 対象 | 国税の特例は固定資産税には適用されない |
| 10万円未満・20万円未満でも、個別に減価償却している物 | 対象 | 手引き「申告の対象となる資産」 |
| 償却済みの物、使っていないが使える状態の物 | 対象 | Q&A 1-5・1-6 |
| 10万円未満で一度に経費にした物 | 対象外 | 地方税法施行令49条 |
| 20万円未満で一括償却資産(3年均等)にした物 | 対象外 | 地方税法施行令49条 |
| ソフトウエアなどの無形固定資産、創立費などの繰延資産 | 対象外 | Q&A 1-8 |
| 自動車税・軽自動車税の対象になる車 | 対象外 | 地方税法341条4号ただし書 |
少額減価償却資産の特例は、国税庁のNo.5408(令和8年4月1日現在法令等)によると、青色申告の中小企業者等が取得価額40万円未満の資産を平成18年4月1日から令和11年3月31日までに取得などして事業に使った場合に、全額を損金にできる制度です。上限の40万円未満は令和8年4月1日以後の取得分からで、それより前の取得分は30万円未満でした。年間の合計は300万円までです。10万円・20万円・40万円の3段の違いは、少額減価償却資産と一括償却資産の違いで詳しく比べています。
国税の減価償却と償却資産税の評価は、同じ資産でも計算のルールが違います。主税局Q&A 6-2の比較を表にします。
| 項目 | 国税(法人税・所得税) | 償却資産税の評価額 |
|---|---|---|
| 計算の基準日 | 事業年度(決算期) | 1月1日(賦課期日) |
| 前年中に取得した資産 | 月割で償却 | 取得月にかかわらず半年分を償却 |
| 償却の方法 | 定率法・定額法などから選ぶ | 原則として旧定率法(固定資産評価基準の減価率) |
| 評価額の下限 | 備忘価額1円 | 取得価額の5% |
| 少額減価償却資産の特例・即時償却 | 認められる | 認められない |
計算の手順と計算例
償却資産税は、資産1点ごとの評価額を出し、区ごとに合計して150万円の線と比べる、という順番で計算します。手順を番号で並べます。
- 1月1日に持っている資産を固定資産台帳から抜き出す:法人は固定資産台帳や法人税申告書の別表16を、個人は減価償却の明細をもとにします
- 対象外の物を外す:10万円未満の一時損金・20万円未満の一括償却・ソフトウエア・自動車税の対象の車
- 1点ごとに評価額を出す:前年中に取得した物は取得価額×(1−減価率÷2)、前年より前の物は前年度の評価額×(1−減価率)。耐用年数4年のパソコン(サーバー用を除く。国税庁 耐用年数表)なら、減価率0.438、前年中取得の残存率0.781、前年前取得の残存率0.562です(手引きの減価残存率表)
- 区ごとに合計する:合計(1,000円未満切り捨て)が課税標準額です
- 150万円以上なら税額を出す:課税標準額×1.4%(100円未満切り捨て)
架空の一人法人で計算します。以下はすべて例で、社名・金額は実在しません。どちらも東京都23区に資産があり、令和9年度(令和9年1月1日現在)の申告を想定しています。
| 例 | 1月1日に持っている資産 | 申告 | 令和9年度の評価額 | 税額 |
|---|---|---|---|---|
| 例A 合同会社こもれび(デザインの一人法人) | 令和8年6月取得のパソコン35万円(少額減価償却資産の特例で全額損金) | 対象 | 273,350円 | 0円(150万円未満)。申告は必要 |
| 令和8年7月取得のモニター8万円(一時に損金) | 対象外 | ― | ||
| 令和8年9月取得の事務いす18万円(一括償却資産) | 対象外 | ― | ||
| 例B 株式会社みなも(動画編集の一人法人) | 令和7年5月取得のパソコン60万円×2台(通常の減価償却) | 対象 | 526,706円 | 21,500円 |
| 令和8年中に取得したパソコン65万円×2台(通常の減価償却) | 対象 | 1,015,300円 |
検算します。例Aのパソコンは前年中の取得なので、350,000円×0.781=273,350円です。150万円に届かないので課税されませんが、償却資産を持っているので申告は出します。例Bの令和7年取得分は、令和8年度が1,200,000円×0.781=937,200円、令和9年度が937,200円×0.562=526,706.4円で、円未満を切り捨てて526,706円です。令和8年取得分は1,300,000円×0.781=1,015,300円です。合計1,542,006円の1,000円未満を切り捨てた1,542,000円が課税標準額で、1,542,000円×0.014=21,588円、100円未満を切り捨てて21,500円になります。主税局の計算例も、評価額を円未満で切り捨てて合計しています。
申告期限は1月31日ですが、期限が土日祝日などにあたるときは翌日が期限になります(地方税法20条の5第2項)。令和8年度は1月31日が土曜日だったので、主税局の手引きの提出期限は令和8年2月2日(月)でした。令和9年1月31日は日曜日なので、同じ考え方なら2月1日(月)になる計算です。正式な期限は令和9年度の手引きで確認してください。
一人法人の判断ポイント
一人法人で償却資産の申告が要るかは、「10万円以上の物を、一括償却以外の方法で経費にしたことがあるか」でほぼ決まります。パソコンを少額減価償却資産の特例で落としていれば、税金がかからない金額でも申告の対象です。法人と個人事業主で扱いが違う点だけを表に分けます。
| 論点 | 一人法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 10万円未満の物 | 一時に損金にすれば対象外。個別に減価償却を選べば対象 | 平成10年4月1日以後開始の年に取得した物はすべて必要経費になり、対象外(所得税法施行令138条1項・貸付け用の一部を除く) |
| 少額減価償却資産の特例 | 租税特別措置法67条の5。使った物は申告対象 | 租税特別措置法28条の2。使った物は申告対象 |
| 申告書に書く番号 | 13桁の法人番号(本人確認書類は不要) | 12桁の個人番号(本人確認書類が必要) |
| 仕事と私用で使う物 | 事業専用割合での按分は認められず、当初の取得価額で申告する(主税局Q&A 1-11) | |
| 基準日 | 事業年度や決算月に関係なく1月1日 | 1月1日 |
法人の場合、決算月がいつでも償却資産の基準日は1月1日です。3月決算の会社でも、12月決算の会社でも、毎年1月に同じ申告が来ます。決算月と申告の時期の関係は決算月の決め方に、パソコンの減価償却そのものは減価償却とはにまとめています。
ぼくは経理や書類整理のようなバックオフィス作業がかなり苦手で、会社を作ったときも、判断が必要な税務は税理士に頼る形にしました。いい税理士とは何かにも書いたとおり、独立して分かったのは、税務の失敗の多くが期限の見落としだということです。償却資産の申告は、法人税の決算とは時期も提出先も別で、1月の年始に1回だけ来ます。申告の義務は地方税法383条で資産の所有者にかかっているので、申告書が届くのを待つより、1月の予定に固定で入れておくのがいちばん確実だと思います。
よくある間違いと注意点
償却資産税でいちばん多い間違いは、「150万円未満なら申告しなくていい」と考えることです。免税点は課税するかどうかの線で、申告するかどうかの線ではありません。主税局は、1月1日に償却資産を持っている人は1月31日までに申告する必要があると案内しています。ほかの注意点も並べます。
- 少額減価償却資産の特例で落とした物を申告から外す:法人税・所得税では資産から消えても、償却資産税では申告対象です。主税局Q&A 6-2も、少額減価償却資産の特例は「金額にかかわらず、認められません」としています。
- 特例の期限を古い資料で判断する:主税局のQ&Aと手引きには、特例を適用できる期間を令和8年3月31日までとする改正前の記載が残っています。国税の特例そのものの期間・上限は、国税庁 No.5408 の「令和11年3月31日まで・40万円未満(令和8年4月1日以後の取得分)」で確認してください。どちらの期間に取得した物でも、特例を使った物が申告対象であることに変わりはありません。
- 申告先を法人事業税の都税事務所と同じだと思う:償却資産の申告先は資産がある区の都税事務所で、法人事業税の所管とは異なる場合があります。電子申告(eLTAX)でも、申告先の都税事務所を追加する必要があります(主税局Q&A 5-6)。
- 申告しないままにする:正当な理由なく申告しなかった場合は地方税法386条と東京都都税条例137条により過料を科されることがあり、虚偽の申告は地方税法385条で1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。申告もれが分かった場合は、最大5年度分(不正があれば7年度分)さかのぼって課税されます(地方税法17条の5)。
- 年の途中で資産を手放したら税額が減ると思う:1月1日に持っていた資産でその年度の税額が決まるので、年の途中で売っても廃業しても、その年度の税額は変わりません(主税局Q&A 6-4)。
この記事は、最終更新日時点の制度で、東京都主税局(23区)・国税庁・e-Gov法令検索で確認できた内容だけを書いています。23区以外の申告先・税率・免税点は、各市町村の案内で確認してください。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。
償却資産税に関するよくある質問
償却資産の固定資産税について、検索で一緒に調べられている「申告」「免税点150万円」「パソコン」「一人法人」の疑問に答えます。金額と期限は、最終更新日時点で東京都主税局と国税庁のページで確認できたものだけです。
償却資産の申告はいつまでに、どこに出しますか?
1月1日現在に持っている資産を、その年の1月31日までに申告します(地方税法383条)。東京都23区なら資産がある区の都税事務所の償却資産班、23区以外なら資産のある市町村です。期限が土日祝日にあたるときは翌日が期限になります。
免税点の150万円未満なら申告しなくていいですか?
申告は必要です。150万円未満は課税されない線で、申告が要らない線ではありません。東京都23区では、区ごとの課税標準額の合計が150万円未満なら納税通知書が届かず、税金はかかりません。
パソコンは償却資産の申告対象ですか?
取得価額と経費のしかたで決まります。10万円未満で一度に経費にした物と、20万円未満で一括償却資産にした物は対象外です。少額減価償却資産の特例で全額を経費にした物や、通常どおり減価償却している物は対象です。
パソコン1台だけの一人法人でも申告は必要ですか?
そのパソコンが申告対象の経費のしかたなら必要です。例として35万円のパソコン1台なら、翌年度の評価額は273,350円で150万円に届かず税金はかかりませんが、申告は出します。持っている資産がすべて対象外なら、申告書が届いた場合に「該当資産なし」と書いて出すよう主税局は案内しています。
おわりに──償却資産税は、決算ではなく1月1日に持っている物で決まる
償却資産税は、利益が出たかどうかでも、決算月がいつかでもなく、1月1日に机の上と事務所にある物で決まります。150万円は税金がかかるかどうかの線で、申告するかどうかの線ではありません。一人法人なら、年末に固定資産台帳を一度だけ見て、少額減価償却資産の特例で落とした物が残っていないかを確かめてください。それだけで1月の申告は、ほとんど迷わずに出せます。