最終更新:2026年10月19日
少額減価償却資産と一括償却資産の違いは、経費にするスピードと使える人の範囲です。取得価額20万円未満の一括償却資産は、誰でも3年で均等に経費にできます。少額減価償却資産の特例は、青色申告の中小企業者等だけが、取得価額40万円未満の資産を使い始めた年に全額経費にできる制度です。上限は令和8年4月1日以後に取得した資産から30万円未満→40万円未満に引き上げられ、適用期限は令和11年3月31日、年間の合計は300万円までです。この記事では、国税庁のタックスアンサーと租税特別措置法で確認できた内容だけを使って、10万円・20万円・40万円の3段の違い、償却資産税(固定資産税)の申告との関係、架空の計算例を整理します。内容は最終更新日時点の制度にもとづいています。
少額減価償却資産と一括償却資産の違いとは?結論から
10万円以上の物を買ったときの選択肢は、金額によって3段に分かれます。10万円未満はその年に全額経費、20万円未満は3年で均等に経費、40万円未満は青色申告の中小企業者等だけがその年に全額経費、という並びです。一覧にします。
| 区分 | 取得価額 | 経費にする方法 | 使える人 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 少額の減価償却資産 | 10万円未満(または使用可能期間1年未満) | 使い始めた年(事業年度)に全額 | 法人・個人事業主とも | 国税庁 No.5403/No.2100 |
| 一括償却資産 | 20万円未満 | まとめた合計額を3年で均等に | 法人・個人事業主とも(青色申告でなくてよい) | 法人税法施行令133条の2/所得税法施行令139条 |
| 中小企業者等の少額減価償却資産の特例 | 10万円以上40万円未満(令和8年3月31日までの取得分は30万円未満) | 使い始めた年(事業年度)に全額。年間の合計300万円まで | 青色申告の中小企業者等(法人)・中小事業者(個人)だけ | 国税庁 No.5408/租税特別措置法67条の5・28条の2 |
| 通常の減価償却 | 金額の上限なし | 法定耐用年数に分けて | 法人・個人事業主とも | No.2100 |
名前が似ていますが、「少額の減価償却資産」(10万円未満)と「少額減価償却資産」(特例の40万円未満)は別の制度です。一括償却資産は誰でも使える代わりに3年かかり、少額減価償却資産の特例は1年で済む代わりに使える人と期限が限られている、と覚えると混ざりません。
40万円はいつから?特例の上限額・期限・年間合計を公式で確認
少額減価償却資産の特例の上限は、令和8年4月1日以後に取得などをした資産から40万円未満です。令和8年3月31日までに取得した資産は、従来どおり30万円未満で判定します。国税庁のNo.5408(令和8年4月1日現在法令等)と、e-Gov法令検索に載っている現行の租税特別措置法で確認した内容を表にします。
| 項目 | 法人(措置法67条の5) | 個人事業主(措置法28条の2) |
|---|---|---|
| 取得価額の上限 | 40万円未満(令和8年4月1日以後に取得などをしたもの)。改正前は30万円未満 | |
| 取得の期間 | 平成18年4月1日から令和11年3月31日まで | |
| 年間の合計の上限 | 事業年度ごとに300万円(事業年度が1年未満なら300万円×月数÷12) | 年分ごとに300万円(業務を始めた年・やめた年は300万円×業務を営んでいた月数÷12) |
| 使える人 | 青色申告の中小企業者(基本は資本金1億円以下)等で、常時使用する従業員の数が400人以下(特定法人は300人以下)。令和8年4月1日以後の取得分から、改正前の500人以下から引き下げ | 青色申告の中小事業者で、常時使用する従業員の数が400人以下(租税特別措置法施行令18条の5) |
| 対象外の資産 | 貸付け(主要な事業・業務として行うものを除く)に使う資産、10万円未満のもの、一括償却資産を選んだもの、特別償却などを受けるもの | |
| 手続き | 損金経理をし、確定申告書等に明細書(別表16(7))を添付 | 確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付 |
個人事業主については、国税庁のNo.2100 減価償却のあらましも「令和11年3月31日までに取得した取得価額10万円以上40万円未満(令和8年3月31日までに取得した場合は10万円以上30万円未満)」と書いています。つまり「40万円 いつから」の答えは、令和8年4月1日以後に取得した資産からです。令和8年3月に買って4月に使い始めた物は、取得日で判定するので30万円未満の基準になります。
No.5408は、特例の対象に器具備品や機械装置だけでなく、ソフトウエアなどの無形の資産や中古の資産も入ると書いています。ただし、措置法上の特別償却・税額控除・圧縮記帳とは重ねて使えません。
償却資産税との関係と、3つの方法の計算例
経費にするスピードだけで選ぶと、固定資産税(償却資産)の申告で差が出ます。10万円未満で一度に経費にした物と、20万円未満で一括償却資産にした物は償却資産税の申告対象から外れますが、少額減価償却資産の特例で経費にした物は申告対象です。東京都主税局の固定資産税(償却資産)のページで確認した内容を、3段の表に重ねます。
| 方法 | 法人税・所得税での扱い | 償却資産税の申告 |
|---|---|---|
| 10万円未満を一度に経費 | 使い始めた年に全額 | 対象外 |
| 20万円未満を一括償却 | 3年で均等 | 対象外 |
| 少額減価償却資産の特例 | 使い始めた年に全額 | 対象(国税の特例は固定資産税には適用されない) |
| 通常の減価償却(20万円未満でも個別に償却した物を含む) | 耐用年数で分ける | 対象 |
東京都23区では、償却資産は毎年1月1日に持っている物を1月31日までに都税事務所へ申告し、税率は1.4%、課税標準額が150万円未満なら課税されない(免税点)と案内されています。23区以外の扱いは、資産のある市町村の案内で確認してください。
ここから計算例です。数字はすべて架空の例で、1年を通して事業年度が12か月ある青色申告の一人法人(中小企業者等に当たる)が、令和8年4月1日以後に買った物を、事業年度の初めの月から使い始めた前提です。
| 買った物(例) | 選べる方法 | 1年目の経費 | 2年目 | 3年目 |
|---|---|---|---|---|
| 事務いす 18万円 | 一括償却資産 | 60,000円 | 60,000円 | 60,000円 |
| 少額減価償却資産の特例 | 180,000円 | 0円 | 0円 | |
| パソコン 35万円 | 少額減価償却資産の特例 | 350,000円 | 0円 | 0円 |
| 通常の減価償却(定率法・耐用年数4年) | 175,000円 | 87,500円 | 43,750円 |
検算します。一括償却資産は、法人なら一括償却対象額×その事業年度の月数÷36なので、18万円×12÷36=6万円が3年続き、合計18万円です。パソコンの定率法は、耐用年数4年の償却率0.500(国税庁 償却率等表)を使い、1年目が35万円×0.500=17万5,000円、2年目が残り17万5,000円×0.500=8万7,500円、3年目が残り8万7,500円×0.500=4万3,750円です。3年目の額は償却保証額(35万円×0.12499=43,746.5円)を上回るので、まだ通常の計算のままです。4年目に残りの43,750円から1円を引いた43,749円を経費にして終わります。
18万円の事務いすを一括償却資産にすれば償却資産税の申告対象から外れ、特例を使えば1年目に全額経費になる代わりに申告対象になります。35万円のパソコンは20万円以上なので一括償却資産は選べず、特例か通常の減価償却かの二択です。
年間300万円の上限は、設立1期目のように事業年度が1年に満たないときに効いてきます。例えば1期目が7か月なら、上限は300万円×7÷12=175万円です(例)。決算月によって1期目の長さが変わる点は決算月の決め方にまとめました。
一人法人・個人事業主の判断ポイント
一人で仕事をする人にとってこの3段は、「早く経費にしたいか」と「償却資産税の申告を増やしたくないか」の2つで選ぶものです。法人と個人事業主では細かいルールが違うので、表で分けます。
| 論点 | 一人法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 10万円未満の物 | 使い始めた事業年度に損金経理すれば損金(資産に計上することもできる) | 使い始めた年に全額が必要経費(個別に減価償却しない) |
| 一括償却資産の計算 | 一括償却対象額×その事業年度の月数÷36 | 一括償却対象額÷3を3年間(年の途中から使っても3分の1) |
| 少額減価償却資産の特例を使う条件 | 青色申告・中小企業者等・従業員400人以下(特定法人は300人以下) | 青色申告・従業員400人以下。白色申告では使えない |
| 年間300万円の上限の按分 | 事業年度が1年未満なら月数で按分 | 業務を始めた年・やめた年は月数で按分 |
| 取得価額に消費税を含めるか | 経理方式で決まる。税込経理なら税込、税抜経理なら税抜。免税事業者は税込経理(国税庁 No.5403の質疑・No.2100) | |
個人事業主の10万円未満の扱いは東京都主税局のページ、一括償却資産の計算は各施行令の条文で確認しました。法人の中小企業者の判定は資本金の額が基本になるので、資本金をこれから決める段階なら資本金はいくらにするかも合わせて読んでみてください。
ぼくは確定申告の記事で、数字は得意なほうではないので、なるべく考えずに済む形にしていると書きました。独立時に事業用の口座とクレジットカードを作り、事業の支払いは全部そこを通しています。この3段の判定も、どの物をいくらで、いつ買って、いつから使ったかが明細に残っていれば、あとから慌てずに済みます。買った日と使い始めた日を記録しておくことが、どの方法を選ぶにしても土台になります。
よくある間違いと注意点
いちばん多い間違いは、少額減価償却資産の特例を「30万円未満の物は全部その年に経費にできる制度」と覚えたままにしていることです。上限は令和8年4月1日以後の取得分から40万円未満になり、使えるのは青色申告の中小企業者等だけで、年間の合計にも上限があります。ほかの注意点も並べます。
- あとから一度に経費にする:国税庁No.5403は、いったん資産に計上したものを、その後の事業年度で一度に損金経理しても損金にならないとしています。使い始めた事業年度で処理します。
- 1組の単位を間違える:10万円未満かどうかは、通常1単位として取引される単位ごとに判定します。応接セットはテーブルといすの1組、カーテンは部屋ごとの合計です(No.5403)。
- 貸し出す物に使う:令和4年4月1日以後に取得して貸付け(主要な事業として行うものを除く)に使う物は、10万円未満の即時経費・一括償却資産・特例のどれも使えません。
- 償却資産税の申告を忘れる:特例で経費にした物は、法人税・所得税では資産から消えても、償却資産税の申告対象に残ります。
- 期限を見ない:特例は令和11年3月31日までに取得した資産が対象の期限付きの制度です。それ以後の扱いは、その時点の税制改正で確認します。
この記事は、最終更新日時点の制度で、国税庁・e-Gov法令検索・東京都主税局のページで確認できた内容だけを書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。相談先の選び方はいい税理士とは何かに書きました。
少額減価償却資産と一括償却資産に関するよくある質問
少額減価償却資産と一括償却資産について、検索で一緒に調べられている「30万円」「20万円」「40万円 いつから」「10万円」の疑問に答えます。内容は、最終更新日時点で公式ページと法令で確認できたものだけです。
少額減価償却資産の特例は30万円ですか、40万円ですか?
令和8年4月1日以後に取得などをした資産は40万円未満、令和8年3月31日までに取得した資産は30万円未満です。令和8年度の税制改正で引き上げられ、適用期限は令和11年3月31日に延びました。年間の合計300万円の上限は変わっていません。
20万円未満の物は、一括償却と少額減価償却のどちらがいいですか?
経費にするスピードなら、使い始めた年に全額を経費にできる少額減価償却資産の特例が早いです。ただし特例を使った物は償却資産税の申告対象になり、一括償却資産にした物は対象外です。特例は青色申告の中小企業者等しか使えず、年間300万円の上限もあります。
10万円未満の物も償却資産税の申告が必要ですか?
10万円未満で使い始めた年に一度に経費にした物は、償却資産税の申告対象外です。ただし、少額でも個別に減価償却することを選んだ物は申告対象になります。東京都23区の案内で確認した内容で、ほかの市町村は各自治体の案内を確認してください。
40万円未満の特例は個人事業主も使えますか?
青色申告をしていて、常時使用する従業員の数が400人以下の個人事業主なら使えます。根拠は租税特別措置法28条の2で、上限額・期限・年間300万円の上限は法人と同じです。白色申告の個人事業主は使えないので、10万円未満の即時経費か一括償却資産、通常の減価償却から選びます。
おわりに──3段の線は、税金の速さと申告の手間の交換表
10万円・20万円・40万円の線は、どれだけ早く経費にできるかの段差に見えます。でも実際は、早く経費にするほど使える人が絞られ、償却資産税の申告が増える、という交換の表です。物を買う前に、その年に経費を寄せたいのか、申告の手間を増やしたくないのかを一度だけ決めてください。それが決まっていれば、どの段を選ぶかで迷うことはほとんどありません。