最終更新:2026年10月19日
法人が赤字のときの税金は、「利益にかかる税金は払わない、利益と関係なくかかる税金は払う」で分かれます。法人税・地方法人税・防衛特別法人税・法人住民税の法人税割・法人事業税の所得割は、所得がなければかかりません。一方で、法人住民税の均等割・消費税・役員報酬などから預かった源泉所得税・償却資産の固定資産税・印紙税は、赤字でもかかります。東京都23区の資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の会社なら、均等割だけで年7万円です。この記事では、一人で会社を作った人に向けて、赤字の年に払うもの・払わないものの一覧と、赤字を翌期以降に生かす欠損金の繰越と繰戻し還付を、公式の資料で確かめながら整理します。内容は最終更新日(2026年10月19日)時点の制度で書いています。
法人が赤字のときの税金とは?結論から
法人が赤字の年でも税金がゼロになるわけではなく、所得に連動する税金だけが止まります。払うものと払わないものを、まず1枚の表で分けます。
| 税金 | 赤字の年 | 理由 |
|---|---|---|
| 法人税 | 払わない | 所得に税率を掛けるので、所得がなければ0円 |
| 地方法人税 | 払わない | 法人税額をもとに計算する国税 |
| 防衛特別法人税(2026年4月1日以後に開始する事業年度から) | 払わない(申告書は出す) | 法人税額から年500万円を引いた額に4%を掛ける。0円でも申告が必要 |
| 法人住民税の法人税割 | 払わない | 法人税額に税率を掛ける部分 |
| 法人事業税の所得割・特別法人事業税 | 払わない | 所得に税率を掛ける部分と、それをもとに計算する部分 |
| 法人住民税の均等割 | 払う | 資本金等の額と従業者の数で決まる定額 |
| 消費税・地方消費税 | 払う(課税事業者なら) | 売上の消費税から仕入れの消費税を引いて計算し、利益とは連動しない |
| 源泉所得税 | 納める | 役員報酬などを払うときに差し引いて預かった所得税を国に納める |
| 固定資産税(償却資産) | 払う(課税標準額150万円以上なら) | 1月1日時点で持っている事業用の資産にかかる |
| 印紙税 | 払う(課税文書を作れば) | 契約書などの文書を作ることにかかる |
ここでいう「赤字」は、法人税の計算上の所得がマイナス(欠損)になることです。法人税の所得は益金から損金を引いて計算するので(法人税法22条)、決算書の赤字と税務上の欠損は一致しないことがあります。払わない税金があっても、申告そのものは毎年必要です。
赤字でも払う税金・払わない税金(公式で確認した表)
赤字でも払う税金は、どれも「所得」以外のものに税額が結びついています。一人法人で実際に出てきやすいものを中心に、2026年10月19日に公式ページを開いて確認した内容をまとめます。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 法人都民税(赤字の年) | 都内に事務所がある法人は、赤字決算でも申告と納付が必要。法人税割は、使途秘匿金などがある場合を除き、法人税が欠損ならかからない。均等割は決算の状況にかかわらずかかる | 東京都主税局 法人事業税・法人都民税Q&A 法人都民税Q4 |
| 均等割の額(東京都23区) | 23区のみに事務所があり、資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円。事業年度が1年未満なら月割 | 東京都主税局 均等割の税率表・地方税法52条・312条 |
| 防衛特別法人税 | 2026年4月1日以後に開始する事業年度から。法人税額から年500万円を控除した額に4%。欠損で基準法人税額が0の場合も、税額0として申告書の提出が必要 | 国税庁「防衛特別法人税が創設されました」(令和8年6月改訂) |
| 地方法人税 | 2019年10月1日以後に開始する課税事業年度は、課税標準法人税額×10.3% | 国税庁 地方法人税の税率の改正のお知らせ |
| 法人事業税・特別法人事業税 | 資本金1億円以下の一般的な法人は所得割だけで、所得がなければかからない。特別法人事業税は所得割額をもとに計算する。資本金1億円超などの外形標準課税の対象法人は、付加価値割・資本割が赤字でもかかる | 東京都主税局 外形標準課税の概要・特別法人事業税の概要 |
| 消費税 | 課税売上げに係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を控除して納める。法人は課税期間の末日の翌日から2か月以内に申告・納付 | 国税庁 No.6101 |
| 源泉所得税 | 給与や税理士などへの報酬から差し引いた所得税と復興特別所得税を、原則として支払った月の翌月10日までに納める | 国税庁 No.2502 |
| 固定資産税(償却資産) | 1月1日現在の償却資産を1月31日までに申告。税率1.4%、課税標準額が150万円未満なら課税されない(東京都23区) | 東京都主税局 固定資産税(償却資産) |
| 印紙税 | 課税文書の種類と記載金額で税額が決まる | 国税庁 No.7140 |
赤字の年に一人法人が払う最低限は、たいてい均等割です。東京都23区の最小区分なら1年まるごとの事業年度で7万円、設立初年度は月割で少なくなります。均等割の区分や月割の計算は別記事で詳しく扱います。
消費税は、免税事業者なら納めません。免税かどうかは今年の利益ではなく基準期間の売上やインボイス登録で決まるので、「免税事業者とは」で判定の仕方を確認してください。課税事業者なら、赤字でも売上に消費税が乗っている限り納付が出ます。
源泉所得税は、会社が負担する税金ではなく、役員報酬などから預かった本人の所得税を会社が代わりに納めるものです。赤字の年でも役員報酬を払っていれば、その分の納付は続きます。印紙税は、契約書を紙で作るかどうかで変わるので「印紙税と契約書」に任せます。
赤字を次に生かす比べ方──欠損金の繰越と繰戻し還付
赤字の年の欠損金は、捨てずに「翌期以降の黒字から差し引く(繰越控除)」か「前期に払った法人税を取り戻す(繰戻し還付)」に使えます。どちらも青色申告が前提で、使える条件と効き方が違います。
| 比べる点 | 欠損金の繰越控除 | 欠損金の繰戻し還付 |
|---|---|---|
| 何が起きるか | 翌期以降の所得から欠損金を差し引き、その期の法人税を減らす | 欠損事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度の法人税の還付を請求する |
| 期間・範囲 | 2018年4月1日以後に開始した事業年度の欠損金は10年 | 前1年以内に開始した事業年度に繰り戻す |
| 中小法人の扱い | 資本金1億円以下などの中小法人等は、所得の全額まで控除できる | 資本金1億円以下などの中小企業者等は使える(それ以外の法人は、2028年3月31日までに終了する事業年度の欠損金に原則使えない) |
| 主な要件 | 欠損の年に青色申告書の確定申告書を出し、その後も連続して確定申告書を出し、帳簿書類を保存する | 還付を受ける年から連続して青色申告書を出し、欠損の年の青色申告書を期限内に出し、同時に還付請求書を出す |
| 地方税 | 法人事業税も10年の繰越控除。法人税割は法人税額が減る分だけ減る | 地方税に繰戻し還付はない。還付を受けた法人税額は、その後10年間、法人税割の課税標準から控除する |
| 出典 | 国税庁 No.5762 | 国税庁 No.5763・法人税法80条 |
地方税の欄は東京都主税局Q&Aの「その他」Q1・Q4・Q5で確認しました。設立1期目の赤字は、繰り戻す先の事業年度がないので、使えるのは繰越控除のほうです。繰越控除の仕組みと複数期の計算は別記事で詳しく扱うので、ここでは2つの違いが見える例を1つだけ置きます。以下はすべて架空の会社の例です。
| 前提(例) | 内容 |
|---|---|
| 会社 | 資本金300万円の合同会社(中小企業者等・中小法人等に当たる)。設立時から青色申告書を期限内に出している |
| 1期目 | 2025年6月1日〜2026年3月31日。所得400万円、法人税額60万円(400万円×15%。税額控除はないものとする) |
| 2期目 | 2026年4月1日〜2027年3月31日。欠損金200万円 |
| 3期目 | 2027年4月1日〜2028年3月31日。欠損金を引く前の所得300万円 |
1期目の税率15%は、資本金1億円以下の法人の年800万円以下の所得に使われる軽減税率です(国税庁 No.5759)。1期目は10か月なので、800万円の線は800万円÷12×10=約667万円になり(法人税法66条4項)、所得400万円は全額がその内側に入ります。
- 繰戻し還付を選んだ場合:2期目の確定申告書と同時に還付請求書を出します。還付額は、1期目の法人税額×2期目の欠損金額÷1期目の所得金額=60万円×200万円÷400万円=30万円です。使った200万円の欠損金は、3期目以降に繰り越せません
- 繰越控除を選んだ場合:2期目の還付はありません。3期目に欠損金200万円を差し引き、3期目の所得は300万円−200万円=100万円になります
検算します。繰戻し還付の30万円は、200万円に1期目の税率15%を掛けた額と一致します。繰越控除のほうは、3期目に法人税の計算の対象から200万円が外れます。3期目は2027年4月1日に始まる事業年度で、法人税法の特例である中小法人の軽減税率は「2027年3月31日までに開始する事業年度」まで(租税特別措置法42条の3の2)と定められているため、この記事では3期目の税額までは計算せず、所得の差だけを示しました。どちらが得かは、翌期以降の見込みと手元の資金で変わります。今すぐ現金が戻るのは繰戻し還付、将来の税を減らすのは繰越控除です。
もう1つの「還付」は中間納付です。前期の実績で法人税を中間納付していて、当期の確定額のほうが小さければ、確定申告で中間納付額の差額が還付されます(法人税法79条)。中間申告の要否や計算は別記事で扱います。
一人法人の判断ポイント
一人法人が赤字の年に判断することは、税額を減らす工夫より先に「申告を期限内に出し、青色申告を途切れさせない」ことです。赤字の価値は、期限内に出した申告書があって初めて翌期以降に残ります。
ぼくは「一人で法人を作るということ」に、法人はたとえ赤字でも法人住民税の均等割が毎年かかり、東京都なら最低でも年7万円だと書きました。同じ記事で、法人の決算申告は法人税・消費税・地方税を別々に申告する必要があり、税理士はほぼ必須だとも書いています。赤字の年は税額が小さく見えるぶん、申告の数が減るわけではないことを忘れやすくなります。
もう1つ、ぼくが実際にやってしまったのは、最初の期の途中まで自分で帳簿をつけて、決算の直前に慌てて税理士を探したことです。そのとき言われたのが「もう少し早く来ていれば、選べた選択肢がありました」でした(「税理士ドットコムとは」)。繰越控除も繰戻し還付も、青色申告の承認を受けていることが入口で、承認の申請には設立直後の期限があります。期限は「会社設立後の届出一覧」にまとめています。
| 比べる点 | 一人法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 赤字でもかかる住民税の定額部分 | 法人住民税の均等割(東京都23区の最小区分で年7万円) | 法人住民税はない |
| 赤字の使い道 | 欠損金の繰越控除(10年)・中小企業者等の繰戻し還付 | この記事の対象外(所得税の制度で別に決まっている) |
| 赤字の年の申告 | 法人税・地方税(防衛特別法人税を含む)の申告書を期限内に出す | この記事の対象外 |
判断の順番は3つです。
- 赤字でも出ていく額を先に数える:均等割、課税事業者なら消費税、役員報酬を払うなら源泉所得税と社会保険料(税金ではありませんが毎月出ていきます。「社会保険の新規適用届」参照)。赤字の年の資金繰りはこの合計で決まります
- 青色申告の承認と期限内の申告を守る:繰越控除は欠損の年に青色の確定申告書を出していることが条件で、繰戻し還付は期限内の提出と還付請求書の同時提出が条件です
- 繰戻しか繰越かを税理士と決める:前期に法人税を払っていて、今すぐ資金が要るなら繰戻し還付が候補になります。決め手は翌期以降の見込みなので、数字を持って相談します
法人が赤字のときによくある間違いと注意点
法人が赤字のときにいちばん多い間違いは、「税金がかからないなら申告しなくていい」と考えて申告書を出さないことです。欠損金を翌期以降に使う条件そのものが、申告書を期限内に、連続して出していることです。
- 赤字なので申告しない:法人税法は、所得の金額または欠損金額を記載した確定申告書を、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に出すよう定めています(法人税法74条)。法人都民税も赤字決算で申告と納付が必要です
- 防衛特別法人税の申告書を付け忘れる:2026年4月1日以後に開始する事業年度からは、欠損で税額が0円でも防衛特別法人税の申告書を出します。国税庁は、法人税の申告書と一体の様式でも別葉になるので提出を忘れないよう注意を促しています
- 決算書の赤字と税務上の欠損を同じだと思う:損金にならない支出があると、決算書が赤字でも税務上は所得が出ることがあります
- 消費税も赤字なら0円だと思う:課税事業者の消費税は利益と連動しません。赤字の年に納付額が出て資金繰りが苦しくなることがあります
- 繰戻し還付を後から請求しようとする:青色申告書による繰戻し還付は、欠損の年の確定申告書と同時に還付請求書を出すのが要件です
- 住民税・事業税も還付されると思う:地方税に繰戻し還付の制度はありません。法人事業税は繰越控除、法人税割は還付を受けた法人税額を後の年に控除する形で調整します
この記事は最終更新日時点の制度で書いています。税率や期限、適用期間は税制改正で変わることがあるので、申告の前に出典のページで最新の内容を確認してください。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。相談先の選び方は「いい税理士とは何か」に書いています。
法人が赤字のときの税金に関するよくある質問
法人が赤字のときの税金について、検索で一緒に調べられている「いくら」「還付」「払う税金」などの疑問に、公式の資料で確認できた範囲で答えます。
法人が赤字でも払う税金はいくらですか?
会社の規模と所在地で変わりますが、東京都23区のみに事務所があり資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下なら、法人住民税の均等割が年7万円です。設立初年度で事業年度が1年未満なら月割になります。課税事業者の消費税、役員報酬から預かる源泉所得税、課税標準額150万円以上の償却資産の固定資産税は、これとは別にかかります。
法人が赤字なら確定申告はしなくていいですか?
必要です。法人税法は所得の金額または欠損金額を記載した確定申告書の提出を求めていて、法人都民税も赤字決算で申告と納付が必要です。欠損金を翌期以降に繰り越すにも、欠損の年に青色申告書を出し、その後も連続して確定申告書を出していることが条件になります。
法人が赤字になると税金は還付されますか?
資本金1億円以下などの中小企業者等は、欠損金を前1年以内に開始した事業年度に繰り戻して法人税の還付を請求できます。還付額は前期の法人税額に、前期の所得に占める欠損金の割合を掛けた額です。地方税に繰戻し還付はありません。また、法人税を中間納付していて確定額のほうが小さければ、確定申告で差額が還付されます。
法人が赤字でも消費税は払いますか?
課税事業者なら払います。消費税は売上に係る消費税額から仕入れ等に係る消費税額を差し引いて計算するので、会社の利益とは連動しません。免税事業者であれば納める必要はありません。
おわりに──赤字の年の申告は、税金を払う手続きではなく権利を残す手続き
赤字の年に払う税金は少なくなります。でも、出す書類は減りません。赤字の年の申告書は、払う額を決めるためより、欠損金を「将来の税を減らす権利」として残すために出すものです。
期限内に出して青色申告を途切れさせなければ、赤字は10年先まで会社を助けます。今日やることは1つだけです。次の決算日から2か月後の日付をカレンダーに入れ、その日までに法人税・地方税の申告書をそろえる段取りを、税理士と決めてください。