最終更新:2026年10月20日
合同会社の解散とは、会社の事業をやめると決めて、清算(財産の整理)に入る手続きです。会社はそこで消えるのではなく、清算が終わるまで清算の目的の範囲でだけ残り、最後に清算結了の登記をして登記記録が閉じられます。流れは「解散と清算人の登記」「官報で2か月以上の債権者への公告」「清算結了の登記」の3段で、登録免許税は解散3万円・清算人9,000円・清算結了2,000円の合計4万1,000円です。これに官報の掲載料と、解散後の税務申告がつきます。この記事は、e-Gov法令検索の会社法・登録免許税法・法人税法と、法務局・国税庁・国立印刷局・日本年金機構の公式ページで確認できた内容だけで、一人で合同会社を持つ人が「閉じるときに何をいつまでにやるか」を判断できるように整理しました。最終更新日時点の制度で書いています。
合同会社の解散とは?結論から
合同会社の解散は「やめると決める日」で、清算結了は「本当に終わる日」です。この2つの間に、債権者への公告と最低2か月の待ち時間が必ず入るので、解散を決めた翌日に会社が消えることはありません。全体像を表にしました。
| 段階 | やること | 期限・期間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1. 解散 | 総社員の同意などで解散する。清算人が決まる | 解散の日から2週間以内に解散と清算人の登記 | 会社法641条・647条・926条・928条 |
| 2. 債権者への公告 | 官報に「債権を申し出てください」と公告し、知れている債権者には個別に催告する | 申出の期間は2か月を下回れない | 会社法660条 |
| 3. 清算 | 取引を終わらせ、売掛金を回収し、借金を返し、残った財産を社員に分ける | 公告の期間中は原則として借金を返せない | 会社法649条・661条・664条 |
| 4. 清算結了 | 清算の計算をして社員が承認する | 承認の日から2週間以内に清算結了の登記 | 会社法667条・929条 |
| 5. 保存 | 帳簿と事業・清算の重要な資料を保存する | 清算結了の登記から10年間 | 会社法672条 |
条文はすべてe-Gov法令検索 会社法で確認しました。清算中の会社は「清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす」と定められています(会社法645条)。
合同会社の解散の制度・要件・費用
合同会社の解散にかかるお金は、登記の登録免許税4万1,000円と官報の掲載料が中心で、ここに税理士や司法書士に頼む場合の報酬が加わります。報酬は事務所と依頼の範囲で変わるので、この記事では金額を書きません。まず、解散の理由になる事由から確認します。
解散の事由(会社法641条)
| 事由 | 一人の合同会社で起きる場面 |
|---|---|
| 定款で定めた存続期間の満了 | 定款に存続期間を書いていた場合 |
| 定款で定めた解散の事由の発生 | 定款に解散の事由を書いていた場合 |
| 総社員の同意 | 社員が自分一人なら、自分の同意で決まる。いちばん多い形 |
| 社員が欠けたこと | ただ一人の社員が亡くなった場合など(相続人が持分を承継する定めが定款にあれば別。会社法608条) |
| 合併・破産手続開始の決定・解散を命ずる裁判 | 合併や破産の場合は、ここで説明する通常の清算とは別の手続きになる |
合名会社と合資会社には、清算の手続きを省いて財産の処分方法を決める「任意清算」がありますが、会社法668条は対象を合名会社と合資会社に限っています。合同会社は必ず官報公告を含む法定の清算を通ります。
登録免許税と官報の掲載料
| 費用 | 金額 | 確認した公式 |
|---|---|---|
| 解散の登記 | 1件につき3万円 | 登録免許税法 別表第一 24号(一)レ |
| 清算人の登記 | 1件につき9,000円 | 同 24号(三)イ |
| 清算結了の登記 | 1件につき2,000円 | 同 24号(三)ハ |
| 解散と清算人を1枚の申請書で出す場合 | 3万9,000円(法務局の記載例) | 法務局 合同会社解散及び清算人選任登記申請書 |
| 官報の解散公告 | 1行(22字)3,589円×行数+消費税(令和7年4月1日現在) | 国立印刷局「会社法 法定公告について」 |
| (参考)継続の登記 | 1件につき3万円 | 同 24号(一)ソ |
登録免許税はe-Gov法令検索 登録免許税法の別表第一で確認しました。申請書の書き方は、法務局の商業・法人登記の申請書様式にある「合同会社解散及び清算人選任登記申請書」(登録免許税3万9,000円の記載例)と「合同会社清算結了登記申請書」(同2,000円)に記載例があります。官報の料金は、国立印刷局の官報の書面・公告のお申込みに置かれたパンフレットの記載で、解散公告の掲載例には「合同会社の場合は株主総会の決議を総社員の同意に置き換える」旨の注記があります。
解散したあとの税務申告
税務では、事業年度の途中で解散すると、その事業年度は解散の日で終わります(法人税法14条1項1号)。続く清算中の事業年度の途中で残余財産が確定すると、その日で事業年度が終わります(同5号)。申告の期限は次のとおりです。
| 申告 | 対象の期間 | 期限 |
|---|---|---|
| 解散事業年度の確定申告 | 事業年度の開始の日から解散の日まで | 終了の日の翌日から2か月以内(法人税法74条1項) |
| 清算中の事業年度の確定申告 | 解散の日の翌日から、定款で定めた事業年度の終わりまで | 終了の日の翌日から2か月以内 |
| 残余財産の確定の日の属する事業年度の確定申告 | その事業年度の開始の日から残余財産の確定の日まで | 翌日から1か月以内。その間に残余財産の最後の分配をするなら、分配の日の前日まで(法人税法74条2項)。申告期限の延長の特例は使えない(75条の2) |
条文はe-Gov法令検索 法人税法で確認しました。株式会社は清算中の事業年度が解散の日の翌日から1年ごとの「清算事務年度」になりますが、国税庁の法人税基本通達1-2-9が対象にしているのは株式会社と一般社団法人・一般財団法人で、合同会社は含まれていません。税務署には、解散と清算結了のそれぞれで異動届出書を「異動等後速やかに」出します(国税庁 C1-8 異動事項に関する届出)。都道府県税事務所と市区町村への届出・申告もあり、様式と期限は各自治体の案内で確認してください。
合同会社の解散手続きの流れ(日程と費用の例)
合同会社の解散は、解散の決定から清算結了の登記まで、官報公告の2か月を挟んで最短でも数か月かかります。架空の一人の合同会社で日程を引きます。日付と金額はすべて例です。
- 解散を決める:社員が自分一人なら、総社員の同意を書面(解散決定書)にします。法務局の記載例に書式の例があります
- 清算人を確かめる:定款や社員の同意で別の人を決めていなければ、業務を執行する社員がそのまま清算人になります(会社法647条1項1号)。一人の合同会社なら自分です
- 2週間以内に登記する:解散と清算人の登記を本店の所在地の法務局に申請します(926条・928条2項)
- 官報に公告し、知れている債権者に催告する:申出の期間は2か月以上で、期間内に申し出なければ清算から除かれる旨を付記します(660条)
- 財産目録と貸借対照表を作る:清算人に就いたあと遅滞なく作り、社員に通知します(658条)
- 現務を終え、債権を回収し、債務を返し、残余財産を分ける:公告の期間中は原則として債務を返せません(661条)。債務を返す前に社員へ分けることもできません(664条)
- 清算の計算を承認し、2週間以内に清算結了の登記をする(667条・929条3号)
| 日付(例) | できごと | 期限の数え方 |
|---|---|---|
| 2027年9月30日 | 事業年度が4月1日〜3月31日の合同会社が、総社員の同意で解散 | ― |
| 2027年10月14日まで | 解散と清算人の登記 | 解散の日の翌日から2週間 |
| 2027年10月20日 | 官報に解散公告を掲載。申出の期限は2027年12月24日とする | 掲載から2か月以上あける |
| 2027年11月30日まで | 解散事業年度(4月1日〜9月30日)の確定申告 | 翌日から2か月以内 |
| 2027年12月24日の後 | 申出のあった債権者と知れている債権者に弁済 | 公告の期間が過ぎてから |
| 2028年1月14日 | 残余財産が確定(清算中の事業年度は2027年10月1日〜2028年1月14日) | ― |
| 2028年2月14日まで | 残余財産の確定の日の属する事業年度の確定申告(最後の分配は2月18日の予定) | 翌日から1か月以内 |
| 2028年2月21日 | 社員(自分)が清算の計算を承認 | ― |
| 2028年3月6日まで | 清算結了の登記 | 承認の日の翌日から2週間 |
公式に確定する費用だけを足します。官報の行数は原稿の長さで変わるので、ここでは10行と仮定します。
| 費用(例) | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 解散と清算人の登記 | 3万円+9,000円 | 39,000円 |
| 官報の解散公告(10行と仮定) | 3,589円×10行=35,890円、消費税10%を足す | 39,479円 |
| 清算結了の登記 | 1件 | 2,000円 |
| 合計 | 39,000円+39,479円+2,000円 | 80,479円 |
検算します。35,890円×1.1=39,479円で、39,000+39,479+2,000=80,479円です。登記事項証明書の取得手数料、税理士・司法書士の報酬、解散した年の法人住民税の均等割などは含めていません。均等割の考え方は法人住民税の均等割に、官報の掲載料の数え方は決算公告とはにまとめています。
個人事業主・一人法人の判断ポイント
事業をやめるときの手間は、個人事業主と一人法人で大きく違います。個人事業主は税務署への届出と最後の確定申告で終わりますが、一人法人は会社法の清算を通るので、登記・官報・2か月の待ち時間がついてきます。違いを表にしました。
| 論点 | 個人事業主 | 一人の合同会社 |
|---|---|---|
| やめる手続き | 個人事業の開業・廃業等届出書を税務署へ。期限は廃止した年分の確定申告期限まで(国税庁 A1-5) | 解散と清算人の登記、官報公告、清算結了の登記 |
| 登記と公告の費用 | なし | 登録免許税4万1,000円+官報の掲載料 |
| 最短の期間 | 届出と確定申告で完了 | 官報公告の2か月以上を挟む |
| 税の申告 | 廃業した年分の所得税・消費税の確定申告 | 解散事業年度・清算中の事業年度・残余財産確定事業年度の法人税等の申告 |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金のまま | 健康保険・厚生年金の適用事業所全喪届を事実発生から5日以内に出す。その後の自分の加入先を決め直す |
| 書類の保存 | 所得税法などで定める期間 | 清算結了の登記から10年間(会社法672条) |
全喪届の期限と添付書類(解散登記の記載がある登記事項証明書の写しなど)は、日本年金機構の適用事業所が廃止等により適用事業所に該当しなくなったときの手続きで確認しました。会社の社会保険を抜けたあとの自分の健康保険と年金は、独立時の健康保険の選び方と国民年金の切り替えと免除の考え方がそのまま使えます。
ぼくは2019年の秋に、tiny合同会社を一人で作りました。合同会社を選んだ理由は、設立コストが安く機動力があるからで、比べた項目の一つは決算公告の有無でした(一人で法人を作るということ)。作るときは入口の費用に目が行きますが、閉じるときにも登記と官報がついてきます。一人法人が判断するときは、次の3つを先に確かめると迷いにくくなります。
- やめるのか、休むのか:解散は清算の結了で終わる手続きです。再開の可能性があるなら、解散の前に休眠という選択肢と比べます。総社員の同意で解散した場合は、清算結了までなら社員の同意で会社を継続でき(会社法642条)、継続の登記の登録免許税は3万円です
- 債務と売掛金が残っていないか:公告の期間中は原則として借金を返せず、返し終わるまで社員に財産を分けられません。取引を締めてから解散日を決めるほうが、清算の期間が読みやすくなります
- 自分が亡くなったら会社はどうなるか:社員が自分一人の合同会社は、社員が欠けると解散事由になります(641条4号)。家族に持分を引き継がせたいなら、定款に相続人の承継の定め(608条)があるかを今のうちに見ておきます
合同会社の解散でよくある間違いと注意点
合同会社の解散でいちばん多い誤解は、「解散の登記をすれば会社が終わる」と考えることです。解散の登記は清算の始まりで、清算結了の登記をするまで会社は清算の範囲で残り、申告と届出の義務も続きます。
- 官報公告を省く:合同会社の債権者への公告は官報で出すと会社法660条で決まっていて、定款の公告方法が電子公告でも官報が必要です。公告を怠ると、清算人は100万円以下の過料の対象になります(会社法976条2号)
- 2週間の登記期限を過ぎる:解散・清算人・清算結了の登記はいずれも2週間以内です。登記を怠った場合も100万円以下の過料の対象です(976条1号)
- 2か月が過ぎる前に清算結了の日を決める:公告の申出期間は2か月を下回れず、その間は原則として債務を返せません。清算結了は公告の期間が終わったあとになります
- 最後の申告の期限を2か月と思い込む:残余財産の確定の日の属する事業年度だけは、翌日から1か月以内です。最後の分配をその前にするなら、分配の日の前日が期限になります
- 清算人の登記を忘れる:一人の合同会社では自分がそのまま清算人になりますが、それでも清算人の登記は要ります(928条2項)
- 帳簿を清算結了と同時に捨てる:帳簿と事業・清算の重要な資料は、清算結了の登記から10年間保存します(672条)
この記事は、最終更新日時点のe-Gov法令検索・法務局・国税庁・国立印刷局・日本年金機構で確認できた制度で書いています。期限切れの欠損金の扱いなど、清算中の税金の細かい計算はこの記事では扱っていません。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。
合同会社の解散に関するよくある質問
合同会社の解散にかかる費用はいくらですか?
登録免許税は、解散の登記3万円・清算人の登記9,000円・清算結了の登記2,000円で、合計4万1,000円です。これに官報の解散公告の掲載料(1行22字3,589円×行数+消費税・令和7年4月1日現在)がかかります。税理士・司法書士に頼む場合の報酬は事務所ごとに違います。
合同会社の解散で官報公告をしないとどうなりますか?
合同会社は、解散後遅滞なく、債権者に2か月以上の期間を定めて債権を申し出るよう官報に公告し、知れている債権者には個別に催告すると会社法660条で決まっています。公告を怠ると、清算人は100万円以下の過料の対象になります。公告の期間が終わらないと、清算を結了できません。
合同会社が解散すると事業年度はどうなりますか?
事業年度の途中で解散すると、その事業年度は解散の日で終わり、翌日から清算中の事業年度が始まります(法人税法14条)。株式会社のような1年ごとの清算事務年度を定めた法人税基本通達1-2-9は合同会社を対象にしていないので、清算中の事業年度は定款の事業年度の区切りに沿います。残余財産が確定すると、その日で事業年度が終わります。
合同会社の解散から清算結了まで、どれくらいかかりますか?
最短でも、官報公告の申出期間の2か月以上はかかります。その間は原則として債務を返せず、債務を返し終わってから残余財産を分け、清算の計算を社員が承認してから2週間以内に清算結了の登記をします。売掛金の回収や資産の処分が残っていれば、その分だけ長くなります。
おわりに──合同会社の解散は、やめる日を決める手続きではなく、2か月かけて借りを返し切る手続き
合同会社は作るときに定款の認証が要らず、決算公告もありません。軽く作れる会社ですが、閉じるときだけは官報で債権者に呼びかけ、2か月待ってから借りを返し切る手順を省けません。解散で先に決めるべきことは解散の日付ではなく、清算結了の日までに何を返し、何を回収し、誰に何を残すかです。