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損益計算書の見方|5つの利益と読む順番を一人法人の例でわかりやすく

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最終更新:2026年10月19日

損益計算書の見方は、上から順に「売上高から何を引くと、どの利益が残るか」を5段階で追うことです。5つの利益は売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益で、この区分と引き算の順番は会社計算規則88条〜94条で決まっています。初心者がまず見るべきなのは、本業のもうけを示す営業利益と、その売上高に対する割合です。この記事では、会社計算規則と国税庁・財務省の公式資料で確認できた範囲だけを使い、架空の一人法人の損益計算書を例に、マーケティング施策がどの段の利益に効くのかまで整理します。内容は最終更新日時点の制度にもとづいています。

損益計算書の見方とは?結論から

損益計算書は、1つの事業年度に入ってきた収益と出ていった費用を並べ、利益がどの段階でいくら残ったかを示す書類です。会社計算規則88条は、損益計算書を売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失の7項目に区分するよう定め、89条〜94条がそこから5つの利益を出す順番を決めています。

5つの利益 計算 読み取れること 根拠
売上総利益 売上高 − 売上原価 商品やサービスそのものの稼ぐ力(一般的には「粗利」と呼ばれる) 会社計算規則89条
営業利益 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 広告費や人件費を払ったあとの本業のもうけ 同90条
経常利益 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 利息など本業以外のお金の出入りを含めた、毎期くり返す活動のもうけ 同91条
税引前当期純利益 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 その期だけの臨時の損益まで含めた利益 同92条
当期純利益 税引前当期純利益 − 法人税等 税金を払ったあと、最終的に会社に残る利益 同93条・94条

それぞれの利益がマイナスになったときは「営業損失」「経常損失」のように損失として表示します(89条〜94条の各2項)。見方の順番は、売上高の増減を見る、売上総利益で稼ぐ力を見る、販売費及び一般管理費の中身を見る、営業利益の売上高に対する割合を見る、の4つが基本です。

制度・ルール──損益計算書を作る人と、決まっていること

損益計算書は、株式会社にも合同会社にも作成義務があり、法人税の確定申告書にも添付します。個人事業主は会社法の計算書類を作りませんが、青色申告の決算書の中に損益計算書があります。法人と個人事業主で分けて表にします。

論点 法人(株式会社・合同会社) 個人事業主(青色申告)
作る根拠 株式会社は会社法435条2項、合同会社は会社法617条2項と会社計算規則71条1項2号 青色申告決算書(一般用)の1ページ目が損益計算書
税務署への提出 確定申告書に貸借対照表・損益計算書を添付(法人税法74条3項・法人税法施行規則35条1号) 55万円・65万円の青色申告特別控除は貸借対照表と損益計算書の添付が要件。10万円控除でも損益計算書の添付は必要(国税庁 令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方)
形 売上総利益から当期純利益までの5段階(会社計算規則89条〜94条) 売上(収入)金額から売上原価と経費を差し引き、青色申告特別控除前の所得金額を出す形。営業利益や経常利益の段はない
保存 作成から10年(会社法435条4項・617条4項) 帳簿書類の保存は所得税法の定めによる(この記事では扱いません)

勘定科目の名前は、法令で一つに決まっているわけではありません。会社計算規則88条7項は、各項目に「適当な名称」を付けるよう求めているだけです。同じ広告の支出でも、会社によって「広告宣伝費」「販売促進費」と呼び方が違うことがあるので、毎期同じ科目を使い続けることが比べやすさの前提になります。科目の一覧は別記事で扱います。

読み方の手順──架空の一人法人で前年と比べる

損益計算書は、1期分だけを見るより、前年と並べて「売上高に対する割合」と「前年比」の2つで読むと変化が見えます。以下は架空の一人法人「合同会社あおば企画」の例です。会社名も数字もすべて説明のための例で、実在の会社の数字ではありません。

区分(例) 前期 当期 当期の売上高比 前年比
売上高 8,000,000円 9,600,000円 100.0% +20.0%
売上原価(外注費) 1,600,000円 2,400,000円 25.0% +50.0%
売上総利益 6,400,000円 7,200,000円 75.0% +12.5%
販売費及び一般管理費 6,000,000円 6,800,000円 70.8% +13.3%
営業利益 400,000円 400,000円 4.2% ±0%
営業外収益 10,000円 20,000円 0.2% ―
営業外費用(支払利息) 30,000円 30,000円 0.3% ―
経常利益 380,000円 390,000円 4.1% +2.6%
特別損失(固定資産除却損) 0円 50,000円 0.5% ―
税引前当期純利益 380,000円 340,000円 3.5% −10.5%
法人税等(例の数字) 130,000円 120,000円 1.3% ―
当期純利益 250,000円 220,000円 2.3% −12.0%

検算します。当期は9,600,000円−2,400,000円=7,200,000円、7,200,000円−6,800,000円=400,000円、400,000円+20,000円−30,000円=390,000円、390,000円−50,000円=340,000円、340,000円−120,000円=220,000円です。前期も8,000,000円−1,600,000円=6,400,000円から同じ順に引いて250,000円になります。法人税等は段の位置を示すための例の数字で、税額の出し方は法人税の計算に任せます。販売費及び一般管理費の内訳は次のとおりです。

販売費及び一般管理費の内訳(例) 前期 当期 増減
役員報酬 4,200,000円 4,800,000円 +600,000円
法定福利費(社会保険料の会社負担) 620,000円 700,000円 +80,000円
広告宣伝費 100,000円 300,000円 +200,000円
支払報酬 360,000円 360,000円 0円
通信費 240,000円 240,000円 0円
旅費交通費 200,000円 120,000円 −80,000円
その他 280,000円 280,000円 0円
合計 6,000,000円 6,800,000円 +800,000円

この例を手順に沿って読むと、次のようになります。

  1. 売上高の前年比を見る:160万円(+20.0%)増えています
  2. 売上総利益率を見る:80.0%から75.0%に下がりました。外注費が80万円増え、売上の伸びより原価の伸びが大きかったからです
  3. 販売費及び一般管理費の増減を見る:役員報酬の増額と広告宣伝費の20万円増で、合計80万円増えています
  4. 営業利益と営業利益率を見る:金額は40万円で横ばい、売上高比は5.0%から4.2%に下がりました。売上の増加分160万円が、外注費80万円と販管費80万円でちょうど消えた形です
  5. 経常利益から下は臨時の要因を見る:当期純利益が減ったのは、本業ではなく固定資産除却損5万円の影響です

比べる物差しとして、財務省財務総合政策研究所の「法人企業統計からみえる企業の財務指標」は、2024年度の売上高営業利益率を全産業・全規模で5.0%、売上高経常利益率を6.8%としています。大企業を含む全規模の平均なので、一人法人の合格ラインとして使うものではありません。

一人法人・マーケターの読みどころ

一人法人の損益計算書は、自分の役員報酬が販売費及び一般管理費の中に入っているので、営業利益が小さくても失敗とは限りません。報酬を多く取れば営業利益は減り、少なくすれば増えます。役員報酬は期首から3か月以内に決めて原則1年同額で払う仕組みなので、金額の考え方は役員報酬の決め方で確認してから損益計算書を読むと、数字の意味を取り違えません。

ぼくは独立してから、会計ソフトの月次レポートで損益を見て、翌月にどれだけ案件を受けるかを判断しています。バックオフィスの作業は苦手で、帳簿付けも独立前の想像より手間がかかりましたが、毎月の損益を見る習慣は会計ソフトが教えてくれた経営感覚でした。その経緯はfreeeとマネーフォワードの比較に書きました。年に一度の決算書を待つより、月ごとの売上総利益と販管費の動きを見るほうが、手を打つのに間に合います。

マーケターが取引先や転職先の損益計算書を読むときは、マーケティング施策がどの段に効くかを先に押さえておくと、数字の意味が読めます。表の「置かれる段」は一般的な扱いで、会社によって科目の選び方が違う場合があります。

施策 一般的に置かれる段 影響する利益
値引き・クーポン 売上高から差し引く 売上総利益から下のすべて
値上げ・単価アップ 売上高 売上総利益から下のすべて
案件ごとの制作外注・成果報酬 売上原価に置く会社と、販管費に置く会社がある 置き場所で売上総利益が変わる
広告宣伝費・販促費 販売費及び一般管理費 営業利益から下
広告費をまかなう借入の利息 営業外費用 経常利益から下

損益計算書は費用を「原価」と「販管費」で分けていて、マーケティングの判断に使う「変動費」と「固定費」の分け方とは一致しません。広告1本の成否を見るなら、損益計算書の数字を変動費と固定費に組み替えて、貢献利益と限界利益や損益分岐点で読み直す必要があります。広告への投資が利益で回収できたかはROIの計算で確かめます。例のあおば企画も、広告宣伝費を3倍にした年に売上は伸びましたが、営業利益は1円も増えていません。売上高の伸びと営業利益の伸びを並べて見るだけで、施策の評価はかなり変わります。

よくある間違いと注意点

損益計算書でいちばん多い読み違いは、利益が出ていることと、お金が手元にあることを同じだと思うことです。売上は一般的にはサービスを提供した時点で計上されるので、入金がまだでも利益になります。手元のお金の動きは貸借対照表と資金繰りで見る必要があります。ほかの注意点も並べます。

  • 売上高だけで判断する:例のように売上が20%伸びても営業利益は増えないことがあります。売上高比と前年比を必ずセットで見ます。
  • 税引前当期純利益と税金の「所得」を同じだと思う:法人税は決算書の利益に税務上の加算・減算をした所得に掛かります。法人税の計算で順番を確認してください。
  • 特別損益まで本業の実力だと読む:固定資産の売却や災害の損失は特別利益・特別損失に入ります(会社計算規則88条2項・3項)。本業の比較は営業利益で行います。
  • 赤字なら税金がかからないと思う:法人は赤字でも住民税の均等割がかかります。詳しくは法人が赤字のときの税金にまとめています。
  • 他社と科目名で比べる:科目名は会社ごとに選べるので、同じ名前でも中身が違うことがあります。比べるのは段ごとの合計からにします。

この記事は、最終更新日時点の制度で、e-Gov法令検索の会社法・会社計算規則・法人税法と、国税庁・財務省の公式資料で確認できた内容だけを書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。相談先を探すならいい税理士とは何かに探し方を書いています。

損益計算書の見方に関するよくある質問

損益計算書について、検索で一緒に調べられている「初心者」「利益」「左右」「赤字」の疑問に答えます。条文と数字は、最終更新日時点で公式ページとe-Gov法令検索で確認できたものだけです。

初心者は損益計算書のどこから見ればいいですか?

売上高、売上総利益、営業利益の3行から見ます。売上高の前年比で規模の変化を、売上総利益率で稼ぐ力を、営業利益率で本業のもうけを確かめます。経常利益から下は、利息や臨時の損益の影響を確かめる段です。

5つの利益の違いは何ですか?

引く費用の範囲が違います。売上総利益は原価だけ、営業利益は販売費及び一般管理費まで、経常利益は利息などの営業外損益まで、税引前当期純利益は臨時の特別損益まで、当期純利益は法人税等まで引いた利益です。区分と順番は会社計算規則88条〜94条で決まっています。

損益計算書に左右(借方・貸方)はありますか?

一般的には、上から下へ順に引き算していく報告式で作られることが多く、その場合は左右がありません。左右に並べる勘定式では、一般的に左(借方)に費用、右(貸方)に収益を置き、差額が利益になります。どちらの形でも5つの利益の順番は同じです。

損益計算書が赤字のときはどこを見ればいいですか?

どの段で赤字になったかを見ます。売上総利益が赤字なら値付けや原価の問題、営業利益で赤字なら販管費の問題、経常利益から下だけ赤字なら利息や臨時の損失の問題です。一人法人なら、役員報酬の水準が営業損失の原因になっていないかも確かめます。

おわりに──損益計算書は「いくら売れたか」ではなく「どこで削られたか」を読む書類

損益計算書の5つの段は、売上高が上から順に削られていく記録です。売上の大きさは一行目で終わり、残りの行はすべて、その売上がどこで何に使われたかを教えてくれます。マーケターが自分の施策を語るなら、売上を何円増やしたかではなく、どの段の利益をいくら残したかで語れるようになると、決算書が施策の成績表に変わります。

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