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フリーランスの単価の決め方|時給換算の式と相場・値上げの伝え方

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最終更新:2026年10月20日

フリーランスの単価は、「必要な売上を、請求できる時間で割った下限」を先に出し、その上に相手が受け取る価値と市場の水準を重ねて決めます。決め方は時間単価・価値基準・相場の3つで、どれか1つに頼るより、時間単価で底を決めてから価値と相場で上を探るほうが安定します。マーケターのような職種別のフリーランス単価は、公的統計では見当たりませんでした。

この記事では、3つの決め方の比べ方、時給換算の逆算式(架空の数字の例)、値上げの伝え方と時期を、公的な調査とフリーランス法・取適法・公正取引委員会の指針で確認できた範囲で整理しました。価格そのものの理論はバリューベースプライシングの記事と価格戦略の記事に任せ、ここでは受託の単価の決め方に絞ります。2026年10月20日時点の制度で書いています。

フリーランスの単価の決め方とは?結論から

単価の決め方は「時間単価で下限を出す」「価値で上限を考える」「相場で位置を確かめる」の3つを組み合わせるのが基本です。それぞれ得意な場面と落とし穴が違います。

決め方 出発点 向いている仕事 落とし穴
時間単価(積み上げ) 自分に必要な売上と、請求できる時間 運用代行・常駐に近い支援・作業量が読める仕事 早く終わるほど売上が減る。相手の得る価値が大きくても上がらない
価値基準 相手がその仕事で得るもの、代わりの手段にかかる費用 戦略・コンサル・成果が売上に直結する施策 価値を言葉と数字で示せないと、ただの高い見積もりに見える
相場 同じような仕事に市場で払われている水準 制作物の単価が比べられやすい仕事・初めての取引先 公的な相場データがなく、出どころの違う数字に引っ張られやすい

3つは対立するものではありません。時間単価は「これより下では続かない」という自分側の線、価値基準は「相手が払っても得をする」という相手側の線、相場は「ほかと比べられたときの位置」です。見積もりは、下限と上限のあいだのどこに置くかを決める作業になります。価値基準の測り方はバリューベースプライシングの記事で、架空の例を使って説明しています。

相場と制度:公的な調査と法律で確認できること

公的な調査で確認できたのは、フリーランスの年間の所得の分布と、報酬が時間で計算されている割合までです。職種別の単価の相場は、公的統計では確認できませんでした。

内閣官房・公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁の令和4年度フリーランス実態調査結果(2022年8月・インターネット調査・2,119人)は、直近1年間の収入を、売上から経費を引いた所得(税と社会保険料を引く前)で聞いています。

直近1年間の所得 割合
100万円未満 14.1%
100万〜300万円未満 25.3%(12.6%+12.7%)
300万〜500万円未満 22.1%(12.6%+9.5%)
500万〜1,000万円未満 18.5%(6.9%+4.2%+3.3%+2.0%+2.1%)
1,000万円以上 3.4%
わからない・答えたくない 16.4%

この調査は本業と副業の両方を含み、回答者は50代(37.5%)と60代(31.6%)が多く、職種別の集計もありません。単価の相場として読むのではなく、「所得の幅がかなり広い」ことを知る材料として見るのが妥当です。もう1つ、内閣官房のフリーランス実態調査結果(令和2年5月)では、事業者から業務委託を受けるフリーランス(3,234人)のうち、「報酬が作業に要した時間数に基づき計算されている」と答えた人は12.9%でした。時間単価は自分の中の計算に使い、請求は成果物や月額で出している人のほうが多いと読めます。

単価を決める場面に関わる法律は、次の3つです。

ルール 単価に関わる内容 出典
フリーランス法3条(取引条件の明示) 発注者は、業務を委託したら直ちに、給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面かメールなどで明示する。口頭だけでは足りない e-Gov フリーランス法(2024年11月1日施行)
フリーランス法5条1項4号(買いたたき) 従業員がいるなどの発注者が1か月以上の業務を委託した場合、同種の給付に通常支払われる対価より著しく低い報酬を不当に定めることは禁止。公取委は、一方的に「◯%減」のように単価を引き下げて決めることも該当すると説明している 公正取引委員会 フリーランス法特設ページ
取適法5条2項4号(一方的な代金決定) 費用の変動などで受注側が代金の協議を求めたのに、協議に応じなかったり必要な説明をしなかったりして、一方的に代金を決めることは禁止 e-Gov 取適法、公取委 取適法のページ(2026年1月1日施行)

受注側の権利として押さえておきたいのは、発注者が一方的に単価を決めてよいわけではない、という一点です。どの法律が当てはまるかは、発注者の規模や取引の種類で変わります。

時給換算の逆算の手順(架空の数字の例)

時間単価は「必要な年間売上 ÷ 1年で請求できる時間」で出します。ポイントは、働ける時間ではなく、請求できる時間で割ることです。

  1. 目標の所得を決める:経費を引いたあとに残したい金額です。生活費・税・社会保険料・貯蓄をまかなえる額にします
  2. 年間の経費を足す:通信・ソフト・家賃の事業分・税理士の顧問料など、売上がなくても出ていくお金です
  3. 働ける時間を出す:年間の稼働日 × 1日の稼働時間
  4. 請求できる割合を掛ける:営業・見積もり・請求などの事務・学習の時間は請求できません
  5. 割る:(目標の所得+経費)÷ 請求できる時間=時間単価の下限

架空の数字で計算した例です(例であり、目安や推奨の金額ではありません)。

項目 例の数字 計算
目標の所得 600万円 ―
年間の経費 240万円 月20万円×12か月
必要な年間売上 840万円 600万円+240万円
働ける時間 1,920時間 240日(週5日×48週)×8時間
請求できる時間 1,152時間 1,920時間×60%
時間単価の下限 約7,292円 840万円÷1,152時間
1日(8時間)の下限 約58,333円 840万円÷144日(240日×60%)

検算すると、7,291.67円×1,152時間=約840万円、58,333円×144日=約840万円で一致します。同じ条件で、働ける1,920時間で割ってしまうと4,375円になります。請求できない時間を入れ忘れると、単価は6割の水準まで下がるわけです。

この下限は、見積もりの出発点にすぎません。成果物で出す仕事なら「見込みの時間×時間単価」で原価を確かめ、月額の支援なら「月の稼働見込み×時間単価」で底を確かめます。そのうえで、相手が得る価値が大きい仕事ほど、下限から上に置きます。

一人法人の場合は、目標の所得の代わりに「役員報酬+会社が負担する社会保険料」を入れ、法人の固定費も経費に足します。ぼくの会社では、税理士の顧問料が月2万円、法人住民税の均等割が年7万円かかっていて、どちらも売上がない月でも出ていきます(一人法人の設立記に書いた数字)。社会保険料の考え方は役員報酬と社会保険料の記事にまとめています。

フリーランス・一人法人の判断ポイント

受注側でも発注側でも、単価は「金額」と「支払条件」と「見直しのルール」の3点セットで決めると揉めにくくなります。金額だけを決めて、あとは成り行きにするのがいちばん危険です。

受注側(フリーランス・一人法人として受ける)では、単価と同じくらい入金の条件が手取りを左右します。ぼくは独立2年目に、納品と請求を済ませた案件の入金が3週間止まりました。固定費は毎月出ていくので、手元の現金が尽きかけました。最初の契約書には支払い遅延の条項を入れておらず、今は全ての契約書に入れています(入金が止まったときのファクタリングの記事)。時間単価を計算するときは、支払期日と遅延したときの扱いまで一緒に決めておくものです。

相場をつかむ手段としては、公的統計よりも市場に直接聞くほうが早いと感じています。独立前後に案件紹介サービスのAnycrewに登録し、何件か面談を受けました。案件は受けませんでしたが、自分の経験がどれくらい求められるのかを外から確かめられました(一人で合同会社を設立した記事)。

値上げは、公正取引委員会と内閣官房の労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(2023年11月29日策定・2026年1月1日改正)が、受注者の動き方の参考になります。労務費の話ですが、自分の時間を売るフリーランスには、そのまま当てはまる部分が多い指針です。

指針にある受注者の行動 フリーランスの値上げに置き換えると
根拠には最低賃金の上昇率・春季労使交渉の妥結額などの公表資料を使う 自分のコストの内訳をすべて開示しなくても、公表資料で上げ幅を説明できる
発注者の会計年度(予算を作る前)、定期の価格改定や契約更新、最低賃金の引上げ幅が分かった後などに交渉する 契約更新の前と、相手の予算が固まる前が伝えどき
発注者から価格を示される前に、自分から希望する価格を出す 「いくらなら大丈夫ですか」と聞かず、新しい単価と適用開始時期を先に書く
価格交渉の記録を作り、発注者と受注者の双方で保管する(共通の行動) やり取りはメールで残し、合意した単価は契約書や発注書に反映する

指針は、発注者に毎年3月と9月の価格交渉促進月間を利用して受注者と定期的にコミュニケーションをとることも求めています。伝えるときは、新しい単価・適用する時期・理由・範囲を減らして金額を据え置く選択肢の4点をそろえると、相手が社内で稟議を回しやすくなります。

発注側(一人法人がフリーランスに外注する)では、立場が逆になります。フリーランス法3条の取引条件の明示は、従業員がいない一人法人が発注する場合にも求められます。一方、5条の買いたたきなどの禁止は「特定業務委託事業者」(従業員を使う個人、または役員が2人以上か従業員を使う法人)が対象です。対象外であっても、外注先から単価の相談を受けたら協議に応じ、記録を残しておくほうが関係は長続きします。副業で最初の1件を取るときの単価の考え方は、副業で最初の1件を取る方法にまとめています。

よくある間違いと注意点

いちばん多い間違いは、会社員時代の月給を時間で割った数字を、そのまま時間単価にすることです。経費と、請求できない時間が抜け落ちます。

  • 働ける時間で割る:営業・事務・学習の時間を入れないと、単価が下限を割ります
  • 出どころの分からない相場に合わせる:公的統計に職種別の単価はありません。調査の対象・時期・集計の仕方が分からない数字は、比べる材料にとどめます
  • 値上げを口頭だけで済ませる:合意した単価は書面かメールで残し、次の発注書に反映されたかを確認します
  • 一方的な減額を黙って受け入れる:令和4年度の調査では、発注者から「報酬の8割しか払えない」と言われたときに「受け入れない(全額払ってもらえるまで交渉する)」と答えた人は38.8%でした。あらかじめ定めた報酬の減額は、フリーランス法5条1項2号で禁止されている行為の1つです
  • 支払条件を決めずに単価だけ決める:支払期日・遅延したときの扱い・立替費用の精算方法まで契約に書きます

困ったときの相談先は、厚生労働省の委託で第二東京弁護士会が運営するフリーランス・トラブル110番(弁護士に無料で相談できる)です。フリーランス法違反の事実があれば、公正取引委員会・中小企業庁に申し出ることもできます(フリーランス法6条)。

この記事は一般的な情報の整理であり、個別の契約の判断は弁護士・税理士に確認してください。この記事は最終更新日時点の制度で書いています。

フリーランスの単価に関するよくある質問

フリーランスの単価の相場はいくらですか?

職種別のフリーランス単価の相場は、公的統計では確認できませんでした。令和4年度フリーランス実態調査で分かるのは年間の所得の分布で、100万円未満が14.1%、1,000万円以上が3.4%と幅があります。相場は、案件紹介サービスの面談や取引先との見積もりのやり取りで、自分の仕事について確かめるのが確実です。

時給換算はどう計算しますか?

(目標の所得+年間の経費)÷ 1年で請求できる時間、で計算します。架空の例では、840万円÷1,152時間で約7,292円でした。働ける時間ではなく、営業や事務を除いた請求できる時間で割るのがポイントです。

値上げはいつ、どう伝えればいいですか?

契約更新の前や、相手が予算を作る前が伝えやすい時期です。公正取引委員会と内閣官房の指針は、受注者から先に希望の価格を示すこと、根拠に最低賃金の上昇率などの公表資料を使うこと、交渉の記録を残すことを挙げています。新しい単価と適用開始時期は書面かメールで伝えます。

マーケターの単価は時間と成果、どちらで決めるべきですか?

運用や作業量が読める仕事は時間単価、戦略や売上に直結する施策は価値基準が向いています。どちらの場合も、時間単価で下限を確かめてから見積もると、安すぎる受注を防げます。成果に連動させるなら、成果の定義と計測方法を契約で先に決めておきます。

おわりに──単価は働いた時間の値段ではなく、請求できない時間まで背負った値段

単価を決めるとき、最初に見るべきは相場ではなく自分の数字です。必要な売上を請求できる時間で割れば、これより下では続かない線が出ます。その線の上で、相手が得る価値と市場の位置を見て金額を置く。値上げも、その線が動いたときに根拠を添えて先に伝えるだけです。

今日やることは1つです。去年1年で、実際に請求できた時間を数えてください。

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