マーケの目

AARRRモデルとは?海賊指標の5段階ごとの指標・施策を一覧表で解説

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最終更新:2026年10月17日

AARRRモデルとは、生活者が製品に出会ってからお金を払い、ほかの人に勧めるまでを、獲得(Acquisition)・活性化(Activation)・継続(Retention)・紹介(Referral)・収益(Revenue)の5段階に分け、段階ごとに数字を一つずつ置いて、成長を止めている穴を見つけるための指標のフレームワークです。2007年に投資家のデイブ・マクルーア(Dave McClure)が示したもので、5つの頭文字を続けて読むと海賊の掛け声のように聞こえることから「海賊指標」とも呼ばれます。結論を先に書くと、AARRRの価値は5つの数字を並べることではなく、いま直す段を一つに決めることにあります。同じ成長の話でもフライホイールが段階どうしの因果を描く設計図なのに対し、AARRRはその各段階に当てる物差しです。グロースハックとは?AARRRモデルの5段階と実験の回し方ではAARRRを1節で紹介しましたが、この記事はその深掘り版として、段階ごとの指標と施策、段階の定義の仕方、使うときの失敗に絞って書きます。

AARRRモデルとは?5段階ごとの指標と施策の一覧表

AARRRモデルは、成長を「人が次の段階に進んだかどうか」の連なりとして見る枠組みです。5つの段階にはそれぞれ「この段で何が起きれば合格か」という問いがあり、その問いに答える数字を一つ選んで追いかけます。

段階 この段の問い 代表的な指標 施策の例 よくある罠
獲得(Acquisition) どの経路から、どれだけの人が来たか 経路ごとの訪問数、獲得単価 検索で読まれる記事、広告の訴求の軸、紹介元との提携 人数だけ見て、その後に残る人かどうかを見ない
活性化(Activation) 最初の体験で、製品の良さを感じたか 初回の価値体験に届いた人の割合 登録の項目を減らす、最初の画面で一番の便益を先に見せる 「会員登録が済んだ」を活性化と数えてしまう
継続(Retention) また戻ってきて、くり返し使っているか 7日後・30日後の継続率、解約率 使い忘れを防ぐ通知、2回目につながる案内 全期間の平均だけ見て、始めた時期ごとの差を見ない
紹介(Referral) 人に勧めたくなるほど気に入ったか 紹介経由の新規数、共有された回数 勧めたくなる瞬間に共有の入口を置く、紹介の特典 特典で紹介を買い、気に入っていない人まで勧めさせる
収益(Revenue) お金を払う行動をとったか 有料への転換率、客単価、顧客生涯価値 料金プランの見せ方、有料に切り替える時期の見直し 継続が弱いまま値上げや有料化を急ぐ

表の指標は例で、どの数字を選ぶかは製品ごとに変わります。とくに活性化と継続は、定義を自社の言葉で書き直さないと使えません。家計簿のアプリなら「銀行口座をつないで、1週間分の支出を見た」が活性化かもしれないし、料理の動画サービスなら「1本目のレシピを最後まで見た」かもしれない。生活者が「これは良い」と感じる瞬間を一つの行動で言えたとき、AARRRは初めて動き出します。

AARRRの出典──デイブ・マクルーアの「海賊のためのスタートアップ指標」

AARRRの出典は、デイブ・マクルーアが2007年に行った講演「Startup Metrics for Pirates」です。彼は2007年9月6日付の自身のブログに、前の月にシアトルのイベント「Ignite」で話した講演の動画とスライドを載せ、「この講演は自由に盗んで広めてかまわない」と書いています。

公開されているスライド(Startup Metrics for Pirates・スライド)で、マクルーアは5つの段階をそれぞれ一行で定義しています。日本語にすると、獲得は「さまざまな経路からサイトに来る」、活性化は「最初の訪問を楽しみ、満足した体験をする」、継続は「戻ってきて、何度も訪れる」、紹介は「人に勧めるほど製品を気に入る」、収益は「何らかのお金を払う行動をとる」です。並び順は獲得・活性化・継続・紹介・収益で、紹介が収益より先に来ています。

スライドには、段階ごとの転換率と、1人の行動にどれくらいの価値があるかの見積もりも並んでいます。ただしマクルーア自身が、それらは実際の数字ではなく例だと断っています。AARRRは「この割合なら合格」という基準を配る道具ではなく、自分の製品の数字を同じ形に並べるための枠でした。

マクルーアはその後、2010年にクリスティン・ツァイ(Christine Tsai)らとシード投資のファンド「500 Startups」(現在の500 Global)を立ち上げた人物です。同じ2010年にショーン・エリス(Sean Ellis)が「グロースハッカー」という言葉を使い始め、AARRRはその考え方と組み合わさって、いまでは成長の段階を語るときの共通語のようになっています。日本語の「海賊指標」という呼び名は、頭文字の響きに由来する愛称で、海賊そのものに意味があるわけではありません。

AARRRとパーチェスファネル・KPIツリー・グロースハックの違い

AARRRは、パーチェスファネルと同じく段階で人の流れを見る型ですが、購入のあとの継続と紹介に段を割いているところが違います。KPIツリーが数字を式で割る図、グロースハックが実験を回す考え方だとすれば、AARRRは「どこを割り、どこで実験するか」を選ぶための見取り図にあたります。

言葉 何を表すか 形 向いている使い道
AARRRモデル 出会いから紹介・収益までの5段階と、段ごとの指標 段階の並び(買ったあとまで含む) 成長を止めている段を一つ見つける
パーチェスファネル 認知から購入までの段階ごとの人数 上から下へ減っていく漏斗 買うまでのどこで人が抜けるかを見る
KPIツリー 最終目標の数字を、掛け算と足し算で分けた構造 上から下へ枝分かれする木 どの枝を動かすと目標がいくら動くかを比べる
グロースハック 小さな実験をくり返して成長の急所を探す考え方 実験の回し方(手順) 選んだ段で、効く打ち手を試して確かめる

購入までの段階の型はパーチェスファネルとは?段階の例とダブルファネルとの違いで整理しました。AARRRで見つけた段を数字の式で割って担当者の行動まで落とすなら、KPIツリーとは?作り方5つの手順と業種別の例の手順がそのまま使えます。AARRRで「どの段か」を決め、KPIツリーで「その段の何を動かすか」を決め、グロースハックの実験で「本当に効くか」を確かめる。3つは競合する道具ではなく、使う順番が違うだけです。5段階の上に、顧客が受け取る価値の数字を一つ置くのがノーススターメトリックです。

AARRRの使い方──段階を定義し、直す段を一つ選ぶ5つの手順

AARRRの使い方は、段階を自社の言葉で定義し、各段に指標を一つずつ置き、同じ時期に来た人たちで通過率を並べ、直す段を一つ選び、一か所ずつ試して記録する、の5つの手順です。手順4の「一つ選ぶ」を飛ばすと、5つの段を同時に少しずつ触って、どれも動かない状態になります。

手順1:段階を自社の言葉で定義する。とくに活性化は「最初に価値を感じた瞬間の行動」、継続は「何日後に、何をしていれば続いているとみなすか」を一文で決めます。ここが曖昧なままだと、あとの数字が全部ぶれます。

手順2:各段に指標を一つずつ置く。段ごとに見たい数字はいくつも浮かびますが、追いかけるのは一つに絞ります。残りは、その一つが動いた理由を調べるときの補助として持っておきます。

手順3:同じ時期に来た人たちで通過率を並べる。全期間の平均では、最近の変化が見えません。登録した月ごとに人を分け、それぞれが次の段に何割進んだかを並べます。この読み方はコホート分析とは?意味とコホート表の見方に書きました。

手順4:直す段を一つ選ぶ。架空の家計簿アプリで考えてみます。以下はすべて説明のための例で、実在のサービスや数字ではありません。

段階 定義(例) 通過率(例) 人数(例)
獲得 アプリの紹介ページに来た ― 10,000人
活性化 口座をつないで、1週間分の支出を見た 20% 2,000人
継続 30日後も週1回以上開いている 30% 600人
紹介 家族や友人に招待を送った 5% 30人
収益 有料プランに切り替えた 8% 48人

この例で、獲得・活性化・継続のどれかを1割良くすると、有料の人数はどれも約4.8人増えます。掛け算でつながった段は、同じ割合だけ良くすれば効きは同じになるからです。だから直す段を選ぶ基準は、「どの段の数字が大きいか小さいか」ではなく、「どの段がいちばん少ない手間で何割良くできるか」と「良くした効きが翌月以降も残るか」の2つになります。この例なら、活性化の20%は伸びしろが大きく、口座をつなぐ手順の改善は一度直せば毎月効きます。獲得を1割増やすには、毎月その分の広告費がかかり続けます。

手順5:一か所ずつ試して、結果を記録する。選んだ段で打ち手を一つ試し、効いたかどうかを確かめてから次に進みます。一度に変えるのは一か所という決まりはABテストとは?やり方の手順と有意差の考え方で書いたとおりです。

よく見る失敗の型は4つあります。

  • 活性化を「登録完了」で数える。登録は入口に立っただけで、価値を感じたかどうかは分かりません。登録数が伸びているのに継続が落ちるなら、まずここを疑います
  • 獲得から直そうとする。継続に穴が空いたまま獲得を増やすと、入れた人がそのまま抜けていきます。広告会社にいた頃も、キャンペーンの成果は獲得の数字で語られることがほとんどでした。抜けていく人の割合はチャーンレートとは?解約率の計算方法と目安で、1人を連れてくるのにかかる費用はCACとは?顧客獲得コストの計算方法で確かめられます
  • 率だけ見て人数を見ない。紹介率が倍になっても、元の人数が30人なら増えるのは30人です。率の改善がどれだけの人数になるかを、必ず掛け算で確かめます
  • 5段すべてに複数の指標を置く。数字が15個も並ぶと、毎週どれかが上がり、どれかが下がり、会議が数字の読み上げで終わります

AARRRは古い?2026年時点での注意点

AARRRは2007年のウェブのスタートアップを前提に作られた枠組みですが、「段階に分けて、直す段を一つ選ぶ」という骨組みは古くなっていません。古くなったのは並び順と、段階の中身の一部です。

一つめは、並び順です。継続が弱いまま獲得を増やしても伸びないことから、継続を先頭に置いて並べ直した「RARRA」という型も使われています。2017年ごろにモバイルアプリの成長に携わっていたトーマス・プティ(Thomas Petit)とガボール・パップ(Gabor Papp)が広めたと紹介されることが多いのですが、二人自身が書いた一次資料にはたどりつけませんでした。並び順は違っても、5つの段は同じです。どの段から直すかは、並び順ではなく手順4の数字で決めます。

二つめは、BtoBへの当てはめ方です。法人向けの製品では、獲得をリード、活性化を商談や試用、継続を契約の更新、紹介を導入事例への協力、収益を追加契約と読み替えると使えます。ただし買う人と使う人が違うことが多いので、活性化と継続は「使う人が価値を感じたか」で定義し直す必要があります。

三つめは、獲得の経路が見えにくくなったことです。AIの回答や検索結果の画面で製品を知り、あとから製品名で検索して来る人は、計測の上では「検索」や「直接の訪問」に紛れます。経路ごとの数字が以前ほど正確に分からなくなった今は、獲得の段を細かく割りすぎず、活性化から先の段を自社でしっかり測るほうが確実です。紹介の段で特典を出すなら、紹介の投稿が広告として扱われうることにも気をつけておきます。

AARRRモデルに関するよくある質問

AARRRの読み方は何ですか?

決まった読み方はありません。海賊の掛け声をまねて「アー」と読む人もいれば、「エー・エー・アール・アール・アール」と一文字ずつ読む人もいます。海賊指標という呼び名も、この頭文字の響きから生まれた愛称です。

AARRRの各段階の指標には何を使えばいいですか?

代表的なのは、獲得なら経路ごとの訪問数、活性化なら初回の価値体験に届いた人の割合、継続なら30日後の継続率、紹介なら紹介経由の新規数、収益なら有料への転換率です。ただし活性化と継続は製品ごとに定義が違うので、生活者が価値を感じる瞬間の行動を一文で決めてから指標を選びます。各段で追いかける指標は一つに絞ります。

BtoBでもAARRRモデルは使えますか?

使えます。獲得をリード、活性化を商談や試用、継続を契約の更新、紹介を導入事例への協力、収益を追加契約と読み替えるのが一般的です。法人向けでは買う人と使う人が違うことが多いので、活性化と継続は実際に使う人が価値を感じたかどうかで定義します。

AARRRとパーチェスファネルの違いは何ですか?

どちらも段階で人の流れを見る型ですが、パーチェスファネルが認知から購入までを中心に見るのに対し、AARRRは購入のあとの継続と紹介にも段を割いています。そのため、買ったあとに使い続けてもらうことが成長を左右する月額サービスやアプリでは、AARRRのほうが穴を見つけやすくなります。

おわりに──指標が足りないのではない、直す段を決めていないだけ

AARRRの表を作ると、5つの段に数字が埋まり、仕事が進んだような気持ちになります。でも、数字を並べただけでは何も動きません。動き出すのは、5つのうち一つを指さして「今期はここだけを直す」と決めたときです。

指標が足りないのではない。直す段を決めていないだけ。

次に数字を見るときは、5つの段のうち、いちばん少ない手間で何割良くできる段はどこかを考えてみてほしいと思います。その一つを決めるところから、AARRRは物差しから道具に変わります。

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