冬のボーナスをもらってから辞めたいなら、動き出すのは10月です。1月入社を目標にすると、10月に面談、11月に内定、11月上旬から中旬に上司へ報告、12月の支給日を在籍したまま越えて、12月31日に退職。この順番がいちばん取りこぼしが少ないと思います。
逆に、ボーナスが振り込まれてから転職活動を始めると、入社は早くても3月か4月になります。その間に春の賞与査定が始まり、また「次のボーナスまで」と先延ばしする理由が生まれます。
ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働き、40歳で独立しました。その間、中途採用で面接する側にもいました。夏のボーナスについては夏のボーナスをもらってから辞めるときの損得計算に書いたので、この記事では冬にしかない落とし穴を中心に書きます(2026年10月時点の情報です)。
冬のボーナスをもらって辞めるなら、10月に動き始める
冬の賞与を受け取ってから1月に入社するなら、10月中にエージェント面談を済ませておく必要があります。中途採用は、応募から内定まで1〜2か月かかるのが普通だからです。
ここで効いてくるのは、金額の大きさです。厚生労働省の毎月勤労統計調査では、2025年の年末賞与は一人平均42万4,889円(事業所規模5人以上、前年比2.8%増)でした。民間主要企業に限ると95万7,184円です(出典:労働政策研究・研修機構 主要労働統計指標「賞与」)。
数十万円から100万円近いお金が、退職日を数日ずらすだけで動きます。それなのに、多くの人は「もらってから考える」で動き出しが遅れます。もらう前から段取りを組んでおくのが、冬のボーナスを取りこぼさないいちばん確実な方法です。
1月入社から逆算した、10月〜12月のスケジュール
1月入社を前提にすると、やることは月ごとにほぼ決まります。
| 時期 | やること | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 10月上旬〜中旬 | 就業規則の賞与・退職の項を読む/エージェント面談 | 支給日在籍要件・減額規定・退職の申し出期限 |
| 10月下旬〜11月上旬 | 応募・面接 | 入社可能日を「1月」で統一して伝える |
| 11月上旬〜中旬 | 内定・オファー面談・内定承諾 | 転職先の初年度賞与の計算方法 |
| 11月中旬 | 上司に退職を報告 | 就業規則の「1か月前」に間に合っているか |
| 12月上旬〜中旬 | 賞与支給・引き継ぎ・有給消化 | 支給日の時点で在籍しているか |
| 12月31日 | 退職日 | 12月分の給与を受け取ってからの退職か |
ポイントは、面接の段階から入社可能日を「1月」で揃えておくことです。途中で「やっぱり2月で」と動かすと、内定先の人事に余計な調整をさせることになります。
上司に伝える日の決め方は転職を上司に伝えるタイミングの記事で、入社日から逆算する手順として詳しく書きました。
支給日前に伝えると、減額されることがある
退職を申し出るのが支給日より前だと、冬の賞与が減らされる可能性があります。違法とは言い切れないので、先に知っておいたほうがいい落とし穴です。
賞与には「過去の働きへの対価」と「これからも頑張ってほしいという期待」の両方が含まれている、と考えられています。辞めることが分かっている人には、後者の期待部分を払わなくていいのではないか。この考え方が、実際に裁判で争われました。
ベネッセコーポレーション事件(東京地裁 平成8年6月28日判決)では、年内に退職する予定の社員の冬季賞与を約8割減らした会社の扱いが問題になりました。判決は8割の減額は認めませんでしたが、将来への期待部分として2割の減額は認めています(出典:労働新聞社 労働判例)。
つまり、退職予定者の賞与を一定の範囲で減らす規定は、置いてもいいと判断されたわけです。就業規則に「支給日時点で退職が予定されている者は減額する」といった一文があるかどうかで、上司に伝える日の最適解が変わります。
減額規定がある会社なら、報告は支給日の後にする。その場合、申し出から退職日までが短くなるので、就業規則の申し出期限と有給の残日数を先に確認しておきます。規定がない会社なら、引き継ぎを優先して11月中に伝えて問題ありません。
12月31日に辞めるか、30日に辞めるか
1月1日以降に転職先へ入社するなら、退職日は12月31日にするのが基本です。社会保険の空白ができず、手続きがいちばん少なく済みます。
社会保険の資格は、退職日の翌日に失われます。12月31日に辞めれば喪失日は1月1日なので、12月分までは会社の健康保険と厚生年金に入ったまま、1月からは転職先の保険に切り替わります。
一方で、「月末の前日に辞めると社会保険料が1か月分浮く」という話を聞いたことがある人もいると思います。12月30日に辞めると喪失日は12月31日になり、その月の保険料は会社では引かれません。資格を失う月に支給された賞与にも、社会保険料はかかりません。
ただ、その場合は12月の1か月分、自分で国民健康保険と国民年金に入る必要があります。会社と折半だった保険料を全額自分で払うことになるので、手取りで得をするとは限りません。転職先への入社が1月1日以降と決まっているなら、12月31日退職で素直に揃えておくほうが安全です。
退職後に空白期間ができる場合の年金の扱いは、退職後の国民年金保険料を免除する方法にまとめています。
年末に辞めると、年末調整はどちらでやるのか
12月分の給与を受け取ってから退職すれば、年末調整は前の会社でやってもらえます。国税庁は、年の途中で退職した人のうち「12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人」を年末調整の対象としています(出典:国税庁 No.2665 年末調整の対象となる人)。
12月の給与日より前に辞めてしまうと、前の会社では年末調整されません。年内に転職先へ入社していなければ、翌年2月から3月に自分で確定申告をすることになります。
退職日を12月31日にしておけば、賞与も、12月分の給与も、年末調整も、すべて前の会社で片づきます。1月に入社する人にとって、年末退職はかなり手間の少ない辞め方です。
冬のボーナスより先に確認したい、転職先の初年度賞与
冬のボーナスを守っても、転職先の初年度賞与が想像より少なくて、1年目の手取りが下がることがあります。ここは内定の時点で必ず確認しておきます。
多くの会社は、賞与の算定期間に在籍した月数で金額を按分します。1月に入社すると、夏の賞与の算定期間(前年10月〜3月ごろ)の半分以上は在籍していないので、初回は寸志か按分になることが多いです。
提示年収に賞与が含まれているなら、「初年度の賞与はどう計算されますか」と人事に聞いておく。聞きにくければ、エージェントに確認してもらえば十分です。オファー面談で確認すべきことはオファー面談とは|聞くべきこと・年収交渉のタイミングで整理しています。
採用する側から見た「1月入社」
中途採用で面接する側にいたころ、1月入社は珍しい希望ではありませんでした。年末の区切りで辞めたいという事情は、採用する側も十分わかっています。
採用する側にとって気になるのは、入社日そのものではなく、決めた日付が守られるかどうかです。面接の最初から「1月入社を希望しています。冬の賞与の支給日まで在籍したいからです」と言える人は、自分の条件を整理できている人に見えました。
逆に、内定が出てから入社日を何度も動かす人には、小さな不安が残ります。冬のボーナスを理由にすることを、遠慮する必要はないと思います。遠慮するべきなのは、理由を言わずに日程だけを動かすことのほうです。
よくある質問
冬のボーナスをもらってすぐ辞めるのは、印象が悪くありませんか?
退職は労働者の権利で、賞与の支給日まで在籍してから辞めること自体に問題はありません。ただし、支給日前に退職を申し出ると、就業規則の規定によっては将来への期待部分が減額されることがあります。報告のタイミングは就業規則を確認してから決めてください。
12月に内定が出た場合でも、冬のボーナスは間に合いますか?
支給日に在籍していれば対象になるので、ボーナス自体は間に合います。ただ、12月に内定が出ると1月入社には引き継ぎと有給消化の期間が足りなくなり、入社は2月以降にずれることが多いです。1月入社を狙うなら、11月中に内定承諾まで済ませておくのが現実的です。
退職日を12月30日にしたほうが、社会保険料は得になりますか?
12月分の会社の社会保険料は引かれなくなりますが、その1か月は自分で国民健康保険と国民年金に入る必要があり、保険料は全額自己負担になります。1月1日以降に転職先へ入社するなら、12月31日退職のほうが手続きも少なく、損をしにくい選び方です。
冬のボーナスをもらう前に転職活動を始めても、会社にばれませんか?
転職サイトやエージェントの登録で、今の会社に情報が伝わることは基本的にありません。スカウト型サービスでは、現職の企業をブロックする設定があるので、登録したときに確認しておくと安心です。
まとめ:冬のボーナスは、10月の段取りで決まる
冬のボーナスを受け取ってから1月に入社するなら、10月に面談、11月に内定承諾と上司への報告、12月31日に退職、という順番で動きます。動き出しがボーナスの支給後になると、入社は春までずれ込みます。
今週やることはひとつだけです。就業規則を開いて、賞与の項に「支給日に在籍する者」と「退職予定者の減額」の2つの規定があるかを確認する。それで、上司に伝える日がほぼ決まります。
すでに辞めると決めているなら、10月のうちに面談だけ入れておくと、1月入社に間に合います。求人の数を見ておくだけでも、逆算の起点が手に入ります。
エージェントの選び方と使い分けはマーケター転職エージェントの比較記事にまとめました。
(この記事の情報は2026年10月時点のものです。賞与・退職の扱いは会社の就業規則によって異なります)