転職戦略

夏のボーナスをもらってから辞めるのは正解か|8月に動く損得計算

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夏のボーナスが振り込まれた口座を見て、辞めようと思った。この夏、そう考えている人は相当多いと思います。

結論から書きます。もらってから辞めるのは正しいです。ただ、「もらってから」の定義を1日間違えると、100万円が消えます。

2026年夏、経団連の第1回集計では、大手企業の平均妥結額が100万8706円でした。1981年の調査開始以降、初めて100万円を超えています。帝国データバンクの調査では、企業規模を問わない正社員一人あたりの平均は47.7万円。どちらの数字も、退職日の書き方ひとつで手元から消えることがあります。

ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働き、40歳で独立しました。その間、中途採用で面接する側にもいました。入社日の交渉を何度も見てきた立場から、8月に動く人の損得を書きます。

ボーナスは「働いた分」ではなく「支給日にいた人」に払われる

賞与は、査定期間に働いた対価ではなく、支給日に在籍している人に払われます。多くの会社の就業規則にある、支給日在籍要件という条項です。

つまり、対象期間をまるまる働いていても、支給日に在籍していなければ、原則として払われません。

「働いた分の対価なのだから、おかしいのでは」と思うところですが、この要件は裁判で争われていて、有効とされています。大和銀行事件の最高裁判決(昭和57年10月7日)で、就業規則に定めることの合理性が認められました。

ただし、無条件に何でも通るわけではありません。会社側の都合で支給日が例年より大幅に遅れた場合や、整理解雇のケースでは、この要件を適用するのは妥当でないとされた例があります。あくまで、自分の意思で退職日を選べる自己都合退職のときに効いてくる条項です。

退職日は、支給日の翌日以降に置く

やることは単純です。退職日を、賞与の支給日より後にする。

ここで効いてくるのが有給休暇です。有給を消化している間も、会社に在籍している扱いになります。退職日は、有給の最終日です。だから、実際に出社する最終日が支給日より前でも、有給を挟んで退職日を後ろにずらせば、支給日をまたげます。

もうひとつ、見落とされやすい条項があります。支給後すぐに退職する社員の賞与を減額する、という規定を置いている会社があります。「支給日から◯ヶ月以内に退職した場合は返還または減額」といった書き方です。これがあるかないかで、動ける日程が変わります。

就業規則の賞与の項を開けば、どちらも数分で確認できます。人事に聞く必要はありません。

8月に動く人が見落とす、4つ目の損

辞めるときに損得を計算すべき項目は4つあります。夏の賞与、有給の残日数、退職金、そして転職先の初年度賞与です。最後のひとつが、ほぼ必ず見落とされます。

項目 いくら動くか 確認する場所
夏の賞与 数十万〜100万円超 就業規則の賞与条項(支給日在籍要件)
有給の残日数 日給×残日数 給与明細・勤怠システムの残日数
退職金 勤続年数の区切りで段差 退職金規程の支給率表(自己都合の欄)
転職先の初年度賞与 初回は寸志〜按分 内定時に人事へ直接確認

自己都合退職は会社都合より支給率が下がりますし、勤続年数の区切りをまたぐ直前だと退職金に段差が出ます。ここまでは、辞める前に多くの人が調べます。

問題は4つ目です。

多くの会社は、賞与の算定期間に在籍していた月数で按分します。10月入社なら、冬の賞与の算定期間はほとんど在籍していないことになる。寸志で終わるか、按分で数万円というのはよくある話です。

その結果、こういうことが起きます。提示された年収は上がったのに、入社1年目の手取りは前職より下がる。年収は下がっていないのに、生活が一時的に苦しくなる。転職して半年で「失敗したかもしれない」と感じる人の何割かは、実力でも人間関係でもなく、この初年度のへこみを見誤っただけです。

年収交渉のときは、提示年収とは別に、初年度の賞与がどう計算されるかを必ず聞いておく。ここは遠慮する場面ではありません。

では、8月に動くのは得なのか

求人が増えるのは1〜3月と8〜9月です。10月入社に向けた下期採用が、ちょうど今動いています。

つまり8月は、山のど真ん中です。選択肢はいちばん多い。でも、応募する側も同じ時期に集中します。賞与をもらってから動く人が多いのは、まさにこの理由です。求人が増える月と受かりやすい月は違います。この話は転職に有利な時期の記事にまとめました。

ただ、賞与を取り終えた人には、混雑を上回る強みがひとつあります。金銭的な引き止めが効かなくなることです。

会社に残るか迷っている状態で選考を受けている人は、面接の受け答えが必ずどこかで曖昧になります。企業側から見ると、この曖昧さはすぐ伝わります。もらうものをもらい終えて、退路の計算が済んでいる人は、話す内容が具体的になる。選考で効くのは、書類の完成度より、この迷いのなさのほうです。

採用する側で見ていたこと

中途採用で内定を出すと、ほぼ必ず入社日の交渉になります。

そこで遠慮する人が、想像よりずっと多い。企業に合わせて、無理な日程を飲もうとする。でも、採用する側から見ると、入社日が1ヶ月や2ヶ月ずれることは、内定を取り消す理由になりません。ポジションを空けて待っている状態で、いまさら選考をやり直すコストのほうが大きいからです。

むしろ印象が良かったのは、事情をそのまま話す人でした。賞与の支給日まで在籍したいので、入社は10月にしたい。そう言われて悪く思ったことは一度もありません。自分の条件を計算できる人は、入社後も条件の話ができる人です。黙って損を飲む人のほうが、あとで揉めます。

言いにくいのはわかります。でも、ここで言えなかった数十万円を、あとから取り返す方法はありません。

今週やること

ひとつだけです。就業規則を開いて、賞与の条項に「支給日に在籍する者」という一文があるかを確認する。

それだけで、辞めるべき日が決まります。転職するかどうかを決めるのは、そのあとで構いません。

もし、すでに動くと決めているなら、8月中に面談だけ入れておくと10月入社に間に合います。エージェントの選び方と使い分けはマーケター転職エージェントの比較記事にまとめました。コンサルやハイクラス方面も見るつもりなら、MyVisionのような特化型を1社だけ足しておくと、比較の軸ができます。

よくある質問

Q. ボーナスをもらってすぐ辞めるのは、法律的に問題ありますか?

問題ありません。退職は労働者の権利です。ただし、就業規則に「支給日から一定期間内に退職した場合は減額・返還」という規定がある場合は、その規定が適用されることがあります。まず就業規則を確認してください。

Q. 支給日の直前に退職を申し出たら、減額されますか?

申し出た時点ではなく、退職日が支給日より前かどうかで判断されるのが一般的です。申し出のあとで支給日をまたいで在籍していれば、支給対象になります。ただし査定に影響する可能性はあるため、支給後に伝える人が多いです。

Q. 有給を全部消化してから辞めても、賞与はもらえますか?

有給消化中も在籍扱いなので、退職日が支給日より後であれば対象になります。実際、有給を挟んで退職日を支給日の後ろにずらすのは、よく使われる方法です。

Q. 転職先の初年度は、賞与がどれくらい減りますか?

会社によりますが、賞与の算定期間の在籍月数で按分するのが一般的です。算定期間の途中で入社した場合、初回は寸志のみという会社も珍しくありません。金額は提示年収に含めず、別に確認しておくのが安全です。

(この記事の情報は2026年8月3日時点のものです。賞与の扱いは会社の就業規則によって異なります)

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