転職戦略

マーケターに英語は必要か|転職で本当に効くのは、英語そのものではない

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先に結論を書きます。英語だけでは、値段はつきません。英語は、すでに値段がついている専門性に掛けたときだけ、レンジの天井を押し上げます。だから「英語ができれば転職で有利になりますか」という問いには、そのままでは答えられません。何に掛けるのかが決まっていないからです。

ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働き、40歳でtiny合同会社を設立しました。TOEICは880点です。そして、その点数を持ったままアクセンチュアの英語会議に入って、ほとんど聞き取れませんでした。その話も含めて整理します。

英語ができると、転職で有利になるのか

条件つきで有利になります。正確に言うと、英語は単体では市場価値になりませんが、専門性と組み合わさると希少性になります。英語ができる人は世の中にたくさんいます。マーケティングができる人もたくさんいます。両方できる人は、急に少なくなります。値段がつくのはこの重なりの部分です。

採用する側の視点で考えると分かりやすいです。企業が英語人材を採りたいのは、英語を話してほしいからではありません。英語圏の情報を取ってきてほしい、海外の本社や拠点と直接やり取りしてほしい、外国人のメンバーと仕事を回してほしいからです。つまり英語は目的ではなく、業務を成立させるための条件です。条件だけ満たしていても、肝心の業務ができなければ採用理由になりません。

英語は、掛け算のレバーでしかない

ぼくはマーケターの年収レンジ診断という道具を作っていて、そこでは年収を動かす要素を4つのレバーとして扱っています。マネジメント経験、英語・グローバル、実績の言語化、社外からの見え方の4つです。

この診断の中で、英語に割り当てている加点は、マネジメント経験の半分以下です。これは英語を軽く見ているからではありません。採用側と応募側の両方を見てきた実感として、そのくらいの差があるからです。人を動かした経験は、どの会社でも、どの職種でも値段がつきます。英語は、英語を使う仕事に就いたときにだけ値段がつきます。効く場面が限定されるぶん、期待値としては下がります。

逆に言えば、効く場面に当たったときの伸び方は、英語のほうが急です。外資系やグローバル案件では、英語ができるかどうかで候補者の母数が一気に絞られます。母数が絞られた市場では、価格は上がります。これが天井を押し上げるという意味です。

だから判断は単純です。英語を使う場所に行きたいなら、英語は最優先のレバーになります。行くつもりがないなら、後回しでかまいません。英語をやるかどうかの前に、どこで働くつもりかを決めるほうが先です。

TOEIC880のぼくが、アクセンチュアで聞き取れなかった話

アクセンチュアに入って、グローバル案件の会議に出るようになりました。TOEICは880点です。履歴書に書けば、英語は問題ないと判断される点数です。

実際は、最初の数回、何を話しているのかほとんど分かりませんでした。

理由ははっきりしています。TOEICは整った音声を聞き取るテストで、実際の会議はそうではないからです。インド英語、シンガポール英語、オーストラリア英語が同時に飛び交い、全員が早口で、資料は事前に共有されず、話は途中で割り込まれます。教材の英語と、実務の英語は別物でした。

ではどうなったかというと、半年ほどで慣れました。上達したというより、耳が環境に適応したという感覚です。逃げ場のない場所に週に何度も置かれると、点数と関係なく聞けるようになります。結局のところ効いたのは、勉強量ではなく、英語に触れた総量でした。この話は英会話コーチングは効果あるかという記事に詳しく書きました。

ここから引き出せる実務的な結論はふたつあります。ひとつは、点数は入場券にはなるが実力の証明にはならないということ。もうひとつは、実務で使う予定があるなら、点数を上げるより先に触れる量を増やしたほうが早いということです。

TOEICは何点あればいいのか

目的別に整理します。あくまで実務での目安です。

  • 600点台:履歴書に書いても評価対象になりにくい水準です。英語を要件にしない求人であれば、特に問題にはなりません
  • 700点台:多くの日系企業で「英語ができる人」として扱われはじめる水準です。ただし実務で英語を使う部署に配属されると、最初はかなり苦しいはずです
  • 800点以上:外資系やグローバル案件で、書類の足切りを通過する目安になります。ぼくの880点も、この足切りを通るためには機能しました
  • 900点以上:点数としては十分です。ここから先は、点数を伸ばすより、話す機会を増やすほうが市場価値に直結します

注意してほしいのは、これは足切りの話であって、採用の決め手の話ではないということです。点数で落とされることはありますが、点数で通ることはありません。面接で問われるのは、英語で何をしてきたかです。

英語が本当に効くのは、この3つの場合

英語が年収に直結しやすいのは、次のようなケースです。

ひとつめは、外資系の日本法人で働く場合です。本社への報告や、海外チームとの連携が業務に組み込まれています。英語は必須要件なので、できないと候補にすら入りません。逆にできれば、日系企業より高いレンジが視野に入ります。

ふたつめは、日系企業の海外事業やグローバルブランドを担当する場合です。社内で英語を使える人が限られているため、社内での希少性がそのまま評価になります。マーケターとして特に狙いやすいのはここだと思います。海外の消費者調査やグローバルキャンペーンの現場では、翻訳を介すると議論の精度が落ちるからです。

みっつめは、外資系コンサルティングファームです。ぼくがいたアクセンチュアもここに入ります。グローバル案件に入れるかどうかで、任される範囲が変わります。案件の規模が大きくなるほど、報酬もついてきます。

逆に、国内市場だけを相手にする事業会社のマーケティング職では、英語を持っていても加点されにくいです。使う場面がないものに、企業はお金を払いません。ここを取り違えて英語に時間を投じると、いちばんもったいない使い方になります。

英語をつけてから動くか、いまの英語力で動くか

よく聞かれる質問です。ぼくの答えは、原則としていまの英語力で動いたほうがいい、です。

理由は3つあります。第一に、実務で使わない英語は伸びが遅いからです。先ほど書いたとおり、効くのは触れた総量です。英語を使う環境に入るのが、いちばん効率のいい学習方法になります。

第二に、英語力は転職市場で最も後から補正しやすい要素だからです。年齢や職歴は変えられませんが、英語は入社後にも伸ばせます。企業もそれを分かっているので、ポテンシャルとして扱ってくれることがあります。

第三に、準備が終わる日は来ないからです。もう少し点数が上がったら、と考えているうちに1年が過ぎます。その1年で年齢は上がります。転職に適した時期の記事にも書きましたが、条件が完璧に揃う瞬間は来ません。

ただし例外があります。いま英語をまったく使っておらず、次の職場でいきなり英語会議に放り込まれることが確実な場合は、先に助走をつけたほうがいいです。入社直後に何も言えない状態が続くと、実力とは別のところで評価が固定されてしまうことがあります。ここは正直に見積もったほうがいいところです。

英語を仕事で使えるところまで持っていく

手段の話をします。前提として、独学で伸ばせる人はそのままで問題ありません。ここから先は、続かなかった人向けです。

ぼくが独学とカフェ英会話で失敗したのは、強制力がなかったからでした。アクセンチュアの会議で耳が育ったのは、逃げられない場所に置かれたからです。つまり必要なのは教材ではなく、逃げ場のない仕組みでした。

その仕組みを外から買うのが英語コーチングです。プログリットは学習時間の管理まで踏み込む設計で、毎日の進捗を報告する前提になっています。費用は安くありませんが、意志の弱さを費用で埋める道具だと考えると、判断しやすくなります。比較を含めた詳細は英会話コーチングの記事にまとめています。

英語を活かせる求人を、どこで探すか

英語を条件にした求人は、一般的な転職サイトでは埋もれます。母数が少ないので、扱っている場所を選んだほうが早いです。

外資系やグローバル案件を狙うなら、JACリクルートメントが定番です。外資系企業とのつながりが厚く、英語を使うポジションの取り扱いが多いのが特徴です。ぼくがコンサル転職を考えていたときにも使いました。

より外資・ハイクラスに寄せるならSamurai Jobという選択肢もあります。グローバル・外資系のハイクラス求人に絞ったサービスです。

留学経験や海外駐在の経験がある人なら、海外経験者専門の転職エージェントという切り口もあります。海外経験は、日系企業では説明が必要な経歴になりがちですが、専門のエージェントなら前提が共有されているぶん話が早いです。

自分の現在地を先に把握しておきたいなら、年収レンジ診断で、英語以外のレバーがどうなっているかも見ておくと判断しやすくなります。英語より先に埋めるべき穴が見つかることは、よくあります。

よくある質問

マーケターに英語は必要ですか

国内市場だけを担当するなら必須ではありません。外資系、日系企業の海外事業、グローバルブランド、外資系コンサルティングファームを目指すなら必要です。英語そのものより、英語を使う場所で働くつもりがあるかどうかが先に決まります。

転職でTOEICは何点あれば有利ですか

外資系やグローバル案件の書類選考を通過する目安は800点以上です。ただし点数は足切りを通るためのもので、採用の決め手にはなりません。面接で問われるのは、英語で何をしてきたかです。

TOEICの点数が高ければ、英語の会議についていけますか

別物です。TOEICは整った音声を聞き取るテストですが、実際の会議は多様な訛りが混ざり、早口で、割り込みも起きます。ぼくは880点を持った状態でアクセンチュアの英語会議に入り、最初はほとんど聞き取れませんでした。慣れるまでに半年かかっています。

英語を身につけてから転職すべきですか

原則として、いまの英語力で動くほうをすすめます。英語は実務で使うのがいちばん伸びますし、転職市場で後から補正しやすい要素でもあります。ただし入社直後から英語会議に入ることが確実で、いまほとんど使えていない場合は、先に助走をつけたほうが安全です。

英語ができると年収はどのくらい上がりますか

金額を一律で示すことはできません。英語は単体で加算されるものではなく、専門性に掛かって初めて効くからです。同じ英語力でも、国内専業の事業会社では加点されず、外資系やグローバル案件では候補者の母数が絞られるぶん大きく効きます。

英会話スクールとコーチング、どちらがいいですか

話す機会を増やしたいならスクール、学習が続かないことが課題ならコーチングです。コーチングは学習時間の管理まで踏み込むため、意志の弱さを補う仕組みとして機能します。自分が何でつまずいているかを先に見極めると、選択を間違えません。

まとめ

英語ができれば転職で有利になるか、という問いの立て方そのものを変えたほうが早いです。英語は掛け算のレバーなので、何に掛けるかが決まっていないと、効くかどうかも決まりません。

マーケターであれば、掛ける先はすでに手元にあります。生活者を理解して、売れる仕組みを作ってきた経験です。そこに英語が乗ったとき、日本市場だけを見ていたときには届かなかったレンジが見えてきます。

そして、点数を待つ必要はありません。ぼくは880点を持ったまま会議で聞き取れず、それでも半年で慣れました。足りない状態で入って、必要に迫られて埋めるほうが、結局は早いです。

キャリア全体の中で英語をどこに置くかは、マーケターのキャリアパスを整理した記事もあわせて読んでもらえたらと思います。

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