転職戦略

20代マーケターの転職戦略|「スキル不足」で迷う人ほど動き方を間違える

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博報堂にいた20代の頃、同期と差がついたのはスキルじゃなかった。「どの案件の近くにいたか」だった。同じ入社年でも、大きく動いているブランドの隣に座っていた人間は、3年で別人みたいに伸びた。ぼくはそれをかなり後になって理解した。20代の市場価値は、実績じゃなくて「伸びしろ×環境選び」で決まる。だから「スキルが足りないから、まだ動けない」は、順番が逆なんだと思う。足りないスキルは、動いた先の環境が勝手に埋めてくれる。

この記事は、第二新卒から20代後半くらいまでの、マーケティング職の人・これから目指す人に向けて書いている。転職を煽るつもりはない。ただ、動くか動かないかを「スキルの多寡」で決めているなら、その物差しは一回捨てたほうがいい。もっと効く判断軸がある。それを包み隠さず書いていく。

20代マーケターのよくある3つの誤解

まず、20代のマーケターがよく握っている「常識」を3つ解体しておきたい。どれも一見まっとうに聞こえるけれど、20代という時期に限っては、たいてい逆に働く。

誤解①:スキルを揃えてから転職する

「今の自分じゃまだ通用しない。デジタル広告も運用できるようになって、分析ツールも一通り触れるようになってから動こう」。これ、すごくわかる。でも、この考え方の落とし穴は、スキルを揃える場所が今の会社だと決めつけているところにある。

採用する側の視点で言うと、20代の中途面接で「今できること」を細かく見ている会社は、実はそんなに多くない。ぼくも博報堂時代、若手の中途をチームに入れるかどうかの場に何度も立ち会ったけれど、見ていたのは「入ってから半年でどこまで伸びそうか」だった。今のスキルは、その伸びしろを推測するための材料でしかない。つまり20代は、完成品として買われるんじゃなくて、伸びる余地として買われる。

だとしたら、スキルを揃えてから動くより、「伸びしろを一番大きく見せられる環境」に動くほうが理にかなっている。スキルは、動いた先で必要に迫られたときが一番速く身につく。今の会社で独学するより、いい案件の隣で必死になったほうが、たぶん3倍速い。

誤解②:とりあえず3年は我慢する

「石の上にも三年」。この言葉、20代のキャリアに関してはほとんど機能していないと思う。3年という区切りに意味があるのは、その3年で何が積み上がるかが見えているときだけ。何も積み上がらない3年を我慢しても、手元に残るのは「3年やった」という事実だけで、それは市場でほとんど値がつかない。

判断軸はシンプルで、「この環境にあと1年いたら、自分の伸びしろは大きくなるか、小さくなるか」。大きくなるなら残ればいい。小さくなっていく感覚があるなら、3年を待つ理由はどこにもない。20代の1年は、30代の1年より重い。伸びが鈍る場所で消費していい時間じゃない。

我慢の3年に意味があるのは、その先に積み上がるものが見えているときだけ。見えないなら、それはただの消耗。

誤解③:大手にいれば安泰

ぼく自身が博報堂という大手にいた人間なので、これは実感を込めて書ける。大手にいることの価値は間違いなくある。仕事の設計思想、大きな予算の回し方、優秀な人との距離。ただ、それは「大手の中で、動いている場所にいられたら」という条件つきだった。

同じ会社の中でも、伸びる部署と、静かに縮んでいく部署がある。看板の大きさと、自分の伸びしろは別物なんだと思う。「大手にいる」という事実そのものは、5年経つと市場でそれほど効かなくなる。効くのは「大手で何の隣にいたか」のほう。安泰という言葉に安心して、伸びない場所に留まるのが、20代にとっては一番もったいない。

20代の市場価値はこう作られる

ここが一番伝えたいところ。20代のマーケターに値段をつけるとき、買い手が見ているのは実績そのものじゃない。ポテンシャルと学習速度だ。「この人は、環境を変えたらどこまで伸びるか」。その一点を推測している。

なぜかというと、20代の実績なんて、良くも悪くもたかが知れているから。3年で回せる案件の数には限りがあるし、大きな成果は本人の力なのかチームの力なのか、外からは判別しにくい。だから買い手は、実績を「学習速度の証拠」として読む。「短期間でここまで動けたなら、うちでも速く立ち上がるだろう」と。見ているのは過去の点じゃなくて、点と点を結んだときの傾きのほうだ。

じゃあ、その学習速度をどう証明するか。材料は3つあると思っている。

① 「何を任され、どこまで自分で決めたか」を語れること

実績の大きさより、裁量の深さのほうが効く。「予算1億の案件にいました」より、「予算は小さいけれど、企画から検証まで自分で回して、途中で方針を変えた判断がこうだった」のほうが、学習速度は伝わる。任された範囲と、自分で下した意思決定。この2つを具体的に語れる人は、20代でかなり強い。

② 数字と、その数字をどう読んだかをセットで持っていること

「CVRが改善しました」で止まる人と、「CVRが動いた理由を、生活者の行動のこの変化だと仮説を立てて、こう検証した」まで言える人。後者は、数字の裏にある思考プロセスを見せられる。マーケティングは結局、生活者の何が動いたかを読む仕事だから、数字を読む姿勢が見えると一気に信頼される。

③ 迷ったときに何を軸に決めたか、を言葉にできること

これが意外と抜ける。成功体験より、判断に迷った場面で「最終的に何を優先して決めたか」を語れる人のほうが、伸びしろが深く見える。正解を選べたかどうかより、自分なりの判断軸を持っているかどうか。軸がある人は、環境が変わっても速く適応する。買い手はそれを見抜く。

この3つに共通するのは、どれも「実績のサイズ」を問うていないこと。小さな案件でも、深く関わって、数字を読んで、自分で決めた経験があれば、材料は揃う。逆に、大きな案件の端っこにいただけだと、材料にならない。だから誤解①に戻るけれど、「大きな実績を揃えてから」より「小さくても深く関われる場所へ」のほうが、20代の市場価値は速く育つ。

転職していい20代・まだ動かないほうがいい20代

ここまで読んで「じゃあ今すぐ動くべきなのか」と思った人へ。全員が動いたほうがいいとは、まったく思っていない。動くべき人と、今は留まったほうがいい人がいる。判断のチェックリストを置いておく。

転職を考えていい20代(いくつか当てはまるなら):

  • 今の環境で、自分の伸びしろが小さくなっていく感覚がある
  • 任される範囲がここ1年ほとんど広がっていない
  • 尊敬できる人・盗みたい判断をする人が、社内にもう見当たらない
  • 「何を任され、どう決めたか」を語れる経験が、1つか2つは手元にある
  • 行きたい方向がぼんやりとでも見えていて、今の会社ではそこに近づけない

まだ動かないほうがいい20代(当てはまるなら、もう少し仕込む時期):

  • 今の環境で、任される範囲がまだ広がっている最中
  • 隣にまだ盗みたい人がいて、その人から学びきれていない
  • 「何を任され、どう決めたか」を語れる経験が、正直まだ何もない
  • 転職理由が「今がしんどいから」だけで、行きたい方向が一切見えていない
  • 環境ではなく、人間関係の一時的なこじれが動機になっている

境目はどこかというと、「逃げ」なのか「伸びしろの取りに行き」なのかだと思う。今がしんどいから逃げる、だけだと、次の環境でも同じ壁にぶつかりやすい。しんどさは動機のきっかけでいい。でも、動く前に一度「次の環境で自分の何を伸ばしにいくのか」を言葉にできるかどうかを確かめてほしい。それが言えるなら、動くタイミングとしては悪くない。

あと、これはよく見る失敗だけれど、伸びしろがまだ残っている環境を、目の前のしんどさだけで手放すのはもったいない。しんどさと伸びしろは、実は同時に存在することが多い。伸びている最中は、たいてい少し苦しい。その苦しさを「もう限界」と読むか「まだ伸びてる証拠」と読むかで、判断は変わる。

20代向けサービスの使い分け

いざ「情報を集める」「相談してみる」となったとき、20代が使えるサービスはけっこう幅がある。ここでは代表的なものを、特徴と向き・不向きで整理する。ぼくが全部を自分で使ったわけではないので、体験談としてではなく、仕組みと設計思想の違いとして読んでほしい。大事なのは「どれが一番いいか」じゃなくて、「今の自分の状況にどれが合うか」だから。

UZUZ(ウズウズ):経歴に自信がない20代前半の立て直し

UZUZは、第二新卒・既卒・フリーターに特化した支援サービス。特徴は、キャリアカウンセラー自身が第二新卒での転職を経験している人が中心という点で、「経歴に自信がない」「一度つまずいた」という状態への解像度が高い設計になっている。

向いているのは、新卒で入った会社を早期に辞めた、あるいはブランクがあって、まず立て直したいという20代前半。書類の通し方や面接の受け答えといった基礎から一緒に組み立てられるので、「そもそも何から手をつければいいかわからない」という段階の人には土台になりやすい。逆に、すでにマーケの実績がある程度あって、上の環境を狙いたい人には、支援の焦点が少しズレるかもしれない。立て直しフェーズ向け、と捉えるのがいいと思う。

相性転職パーソナルファイル:カルチャーフィットで選びたい20代

相性転職パーソナルファイルは、20代に特化して、スキルや条件のマッチングだけでなく「相性・カルチャーフィット」を軸に据えているのが特徴。会社との相性を可視化して、入ってからのミスマッチを減らす方向の設計になっている。

向いているのは、前職で「仕事の中身より、社風や人間関係が合わなくてしんどかった」というタイプの人。マーケティングの仕事は、どんな生活者を相手にどんな価値観で届けるかがチームの文化に強く紐づくから、カルチャーが合わない環境だと実力を出しづらい。そういう意味で、相性から入る発想は理にかなっている。ただ、相性は入ってみないと本当のところはわからない部分も残る。可視化された相性は「参考の一つ」として受け取って、最後は自分の目でも確かめる、くらいの距離感がいいと思う。

ANNA(アンナ):キャリア設計から考えたい20〜30代

ANNAは、20〜30代のグロースキャリア向けで、業界・職種を横断して「そもそもどういうキャリアを描くか」から設計していくタイプのサービス。目先の1社を決めるより、この先5年10年の方向を含めて考えたい人に向いている。

マーケターは特に、キャリアの分岐が多い職種だと思う。事業会社のマーケに行くのか、支援側に回るのか、専門を深めるのか、幅を広げるのか。20代のうちにこの分岐を一度整理しておくと、その後の1社選びの精度が変わる。目の前の転職を「点」で決めるんじゃなくて、キャリア全体の「線」の中に置き直したい人には、ANNAのような設計から入る発想が合う。逆に、方向はもう決まっていて今すぐ動きたいだけ、という人には少し回り道に感じるかもしれない。

POSIWILL CAREER(ポジウィルキャリア):「そもそも何がしたいか」から整理したい人

POSIWILL CAREERは、転職ありきではないキャリアコーチング。求人を紹介するのが主目的ではなく、「そもそも自分は何がしたいのか」「何に迷っているのか」を、対話を通じて整理していくサービスで、無料相談から入れる。

向いているのは、転職すべきかどうか自体が決まっていない人。誤解②で書いた「今がしんどいから、だけが動機」の状態から抜け出せない人には、まずここで頭を整理するのが効くかもしれない。転職エージェントは求人を紹介するのが仕事だから、構造上「動く前提」の会話になりやすい。でもコーチングは、留まるという結論も含めて一緒に考えられる。動くか留まるかの手前で迷っているなら、無料相談で自分の言葉を整理するところから始めるのは、順番として悪くないと思う。

リクルートエージェント:市場の全体像を掴む土台として

リクルートエージェントは総合型の王道。求人数が圧倒的に多く、20代向けの案件も幅広い。ここの使いどころは「一社目の内定を取る」というより、まず市場の全体像を掴む土台として、だと思う。

自分が今、どのくらいの選択肢の中にいるのか。マーケ職の求人がどんな条件で出ているのか。それを俯瞰するには、母数の大きい総合型が一番わかりやすい。専門特化のサービスと併用して、「全体像はリクルートで掴み、狙いを定めた領域は特化サービスで深める」という組み合わせは筋がいい。ただ求人数が多いぶん、担当者との相性や、自分の軸がぼんやりしていると流されやすい面もある。軸を持って使うと強い、というタイプ。

サービス 強み こんな20代に
UZUZ 第二新卒・既卒特化、基礎から支援 経歴に自信がなく、立て直したい
相性転職パーソナルファイル カルチャーフィット重視 社風・人間関係でつまずいた
ANNA キャリア設計から横断的に この先の方向から考えたい
POSIWILL CAREER 転職ありきでないコーチング 動くべきか自体を迷っている
リクルートエージェント 総合王道・求人数最大 まず市場の全体像を掴みたい

使い分けの考え方は、こうだ。「そもそも動くか迷っている」ならコーチング、「立て直しから」ならUZUZ、「相性で選びたい」なら相性転職、「方向から設計したい」ならANNA、「全体像を掴む」ならリクルート。複数を組み合わせても、まったく問題ない。むしろ最初は総合型で全体を見て、方向が定まったら特化に絞る、くらいの動き方が20代には合っていると思う。

自分がどのタイプに近いのか、動く前に一度整理しておきたい人は、マーケターキャリアタイプ診断(無料・10問)で当たりをつけてみてほしい。今のフェーズと、向いているサービスの方向が10問で見えてくる。相談に行く前に自分の軸を言葉にしておくと、対話の質がまるで変わる。

20代のうちに仕込んでおくと効くこと

転職するにしても、まだ留まるにしても、20代のうちに仕込んでおくと後で効くことがいくつかある。これは実際、博報堂の20代の頃のぼくがやっておけばよかったと思っていることでもある。

ポートフォリオ化:やった仕事を「語れる形」で残す

マーケの仕事は、デザイナーみたいに作品が残りにくい。だからこそ、意識して残さないと、3年後に「何をやってきたか」を語れなくなる。大きな成果じゃなくていい。「何を任され、どんな仮説を立てて、どう検証して、結果どうだったか」を、案件ごとに一枚のメモにしておく。これが後で、面接でも、キャリアの棚卸しでも、驚くほど効く。記憶は薄れるけれど、その瞬間に言葉にしておいた判断は残る。

数字で語る癖:感覚を数字に翻訳する習慣

「なんとなくうまくいった」を、「何がどれだけ動いたか」に翻訳する癖。これは20代のうちに体に入れておくと、一生効く。数字で語れる人は、どこの環境に行っても信頼される。逆に、感覚だけで話す人は、20代のうちは許されても、30代で頭打ちになる。難しいことじゃなくて、施策を打つ前に「何が、どれくらい動いたら成功と言えるか」を先に言葉にしておくだけ。これだけで、振り返りの質がまるで変わる。

社外の視点を持つ:一つの評価軸に閉じない

一つの会社にいると、その会社の評価軸が世界の全てに見えてくる。でも、評価される仕事の軸は、組織によって本当に全然違う。ぼくは博報堂とアクセンチュアと独立を通って、それを痛いほど実感した。同じ「いい仕事」でも、代理店で褒められることとコンサルで褒められることは、まるで別物だった。

だから20代のうちに、社外の視点を一つでも持っておくといい。副業でも、勉強会でも、他社のマーケターと話すだけでもいい。自分の会社の評価軸を、外から相対化して見られるようになると、「この環境で伸びているのか、閉じているだけなのか」を自分で判断できるようになる。これが、次に動くべきかどうかの判断を、他人任せにしないための一番の準備になる。

まとめ:20代の転職は「環境選び」が9割

ここまで書いてきたことを、一つに絞るとこうなる。20代の転職は、スキル選びじゃなくて環境選びだ。足りないスキルを気にして立ち止まっているより、伸びしろを一番大きく取りに行ける環境に身を置くほうが、結果的にスキルも市場価値も速く育つ。

博報堂の20代の頃、同期と差がついたのは、繰り返すけれど能力じゃなかった。どの案件の隣にいたか、それだけだった。それは半分は運で、半分は「動いた人が引き寄せた」ものだったと、今は思う。動かなければ、隣にいる場所は選べない。

もちろん、全員が今すぐ動くべきだとは言わない。まだ伸びている環境なら、留まって伸びきったほうがいい。大事なのは、動くか留まるかを「今のスキルの多寡」で決めないこと。「この環境で、自分の伸びしろは大きくなるか、小さくなるか」。その一つの問いで決めてほしい。

迷ったときは、自分がどのタイプで、今どのフェーズにいるのかを、一度言葉にしてみるといい。マーケターキャリアタイプ診断(無料・10問)は、その最初の整理に使えると思う。動く前に自分の軸を持っておくこと。それが、20代の環境選びで失敗しないための、たった一つのいちばん確かな準備だから。

20代の1年は、思っているよりずっと重い。その1年を、伸びる場所で使ってほしい。

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