転職を考え始めると、必ず出てくる疑問があります。いつ動くのがいちばん得なのか。結論から書きます。求人がいちばん増えるのは2〜3月と8〜9月ですが、受かりやすいのは同じ月ではありません。求人が増える時期は、応募する人も同じだけ増えるからです。数だけを見て動くと、いちばん混んでいる時期に飛び込むことになります。
ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働き、40歳で独立しました。その間、採用する側にも立っています。企業の中で採用枠がどう決まるかを見てきたので、その視点から書きます。
転職市場が動く時期は、企業の予算サイクルで決まる
まず前提を押さえます。求人が増えるタイミングは、景気や気分で決まっているわけではありません。企業の期の区切りに連動しています。
日本企業の多くは3月決算です。そこから逆算すると、動きはこうなります。
| 時期 | 企業側で起きていること | 求人の量 |
|---|---|---|
| 1〜3月 | 次年度の組織と予算が固まる。4月入社に向けた採用 | いちばん多い |
| 4〜5月 | 新体制が動き出す。欠員が見えてくる | 少なめ |
| 6〜7月 | 上期の進捗を見て、下期の枠を検討 | 中くらい |
| 8〜9月 | 10月入社に向けた下期採用が本格化 | 多い |
| 10〜12月 | 年内の充足を目指す。年明けの計画も始まる | 中くらい |
つまり、山は1〜3月と8〜9月の年2回です。4月入社と10月入社という節目に向けて、その手前で採用が動きます。ここまでは、多くの記事に書いてあるとおりです。
ここからが本題。求人が多い月は、ライバルも多い
問題は、この情報の使い方です。求人が増える時期は、転職者も同じ時期に動きます。だから、選択肢が増えるのと同時に、競争率も上がります。
なぜ同じ時期に集中するのか。理由は明確で、転職者側にも共通のきっかけがあるからです。
- 賞与の後:夏は7月、冬は12月。もらってから動く人が多い
- 期の区切り:3月末や9月末で区切りをつけたい心理
- 人事異動の後:4月と10月の配属に納得できず動き出す
採用する側にいて実感したのは、応募が集中する時期は、書類を見る時間が一人あたり短くなるということでした。同じ職務経歴書でも、数十件しか来ていない月と、数百件来ている月では、読まれ方が違います。
これは能力の問題ではありません。単純に、人事の処理能力の問題です。混んでいる時期は、目立つ経歴以外は流されやすくなる。ここが、求人数のグラフだけを見ていると見落とす部分です。
では、いつ動くのが得なのか
ぼくの結論はこうです。求人のピークの少し手前に動く。具体的には、ピークの1〜2ヶ月前です。
| ピーク期に動く | ピークの1〜2ヶ月前に動く | |
|---|---|---|
| 求人数 | 最多 | やや少ない |
| 競合の数 | 最多 | 少ない |
| 1件あたりの選考の丁寧さ | 粗くなりやすい | じっくり見てもらえる |
| 企業側の状態 | 枠を埋めるのに必死 | 良い人がいれば取りたい |
つまり、4月入社を狙うなら11〜12月、10月入社を狙うなら6〜7月に動き始めるのが、いちばん条件が良くなります。この時期は求人がゼロなわけではありません。むしろ、早く動いている企業ほど採用に本気です。
そして、忘れられがちな事実があります。転職活動には、通常2〜3ヶ月かかります。応募して、面接を数回受けて、内定が出て、現職を引き継いで退職する。この期間を計算に入れると、「入社したい月」から逆算して動き始める必要があります。4月入社を考えているなら、1月に動き出すのでは間に合いません。
実は、月より重要なものがある
ここまで時期の話をしてきましたが、正直に書きます。市場の月より、自分側の状態のほうが結果への影響は大きいです。
ぼくが採用する側で見ていて、通る人と通らない人を分けていたのは、応募した月ではありませんでした。自分の実績を、相手に伝わる言葉で説明できているかどうかです。準備ができている人は閑散期でも通り、できていない人は繁忙期でも落ちます。
だから、順番としてはこうなります。
- まず:自分の経歴を棚卸しして、言葉にする
- 次に:市場でどう評価されるかを確かめる
- 最後に:良い時期を選んで本格的に動く
準備が終わっていないのに時期だけ合わせても、意味がありません。逆に、準備ができていれば、多少時期が悪くても決まります。棚卸しのやり方は、転職で後悔しないために動く前にやることにまとめました。
準備期間にやっておくと、あとが楽になること
ピークの手前に動くと決めたなら、その前の数ヶ月が準備期間になります。ここで何をしておくかで、本番の通過率が変わります。
いちばん効くのは、実際の求人と自分を突き合わせておくことです。頭の中で考えているだけだと、自分の市場価値は分かりません。エージェントに登録して求人を見せてもらうと、いまの自分にどのレンジの求人が来るのかが分かります。ここで足りないものが見えれば、動く前に埋められます。
まず母数を最大にして相場を掴むなら、求人数の多いリクルートエージェントが基本になります。
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年齢によって、時期の意味は変わる
もうひとつ、触れておきたいことがあります。20代と40代では、時期の重要度が違います。
- 20代:求人の母数が多いので、時期の影響を受けにくい。いつ動いても選択肢はある
- 30代:ポジションが絞られてくる。良い枠が出たときに動けるよう、準備を先にしておく
- 40代以降:枠そのものが少ない。時期を選ぶより、出会えたら動くという構えのほうが現実的
年齢が上がるほど、求人は「いつでもある」ものではなくなります。だから40代は、月を待つより、常に情報が入る状態にしておくほうが合理的です。選べる立場のうちは時期を選び、選べなくなったら機会を選ぶ。この切り替えが要ります。
よくある質問
転職に有利な時期は何月ですか
求人がいちばん増えるのは1〜3月と8〜9月です。4月入社と10月入社に向けた採用が動くためです。ただし同じ時期は応募者も集中するため、競争率が上がります。じっくり見てもらいたいなら、ピークの1〜2ヶ月前にあたる11〜12月や6〜7月に動き始めるほうが条件は良くなります。
転職活動はどれくらいの期間がかかりますか
一般的に2〜3ヶ月です。応募から面接、内定、退職の引き継ぎまでを含めた期間になります。入社したい月から逆算すると、4月入社なら年内、10月入社なら6〜7月には動き出しておく必要があります。
ボーナスをもらってから辞めるべきですか
金額次第です。ただし、賞与の直後は転職者が集中する時期でもあります。受け取ってから動くなら、その分だけ競争が激しくなることは想定しておいたほうがいいです。準備だけ先に進めておいて、支給後すぐ応募できる状態にしておくのが現実的です。
閑散期に転職するのは不利ですか
不利とは限りません。求人数は減りますが、応募者も減るため、一人あたりの選考は丁寧になります。閑散期に出ている求人は、急ぎで人を必要としている枠であることも多く、決まりやすい場合があります。
結局、いつ動くのがいいのですか
準備が終わった時点です。市場の月より、自分の準備状態のほうが結果への影響は大きくなります。経歴の棚卸しが済んでいれば閑散期でも通り、済んでいなければ繁忙期でも落ちます。時期はあくまで補正要因だと考えてください。
まとめ
転職市場の山は、1〜3月と8〜9月の年2回です。ただし求人が増える月は、ライバルも増える月です。数だけを見て動くと、いちばん混んだ時期に飛び込むことになります。
おすすめは、ピークの1〜2ヶ月前に動き始めることです。求人はやや少なくても、丁寧に見てもらえます。そして活動には2〜3ヶ月かかるので、逆算するとちょうど良いタイミングになります。
ただ、いちばん大事なのは月ではありません。準備ができている人は閑散期でも通り、できていない人は繁忙期でも落ちます。時期を調べる前に、自分の棚卸しを終わらせるほうが、結果は確実に良くなります。