最終更新:2026年10月18日
Webマーケターとは、検索、広告、SNS、自社サイトといったウェブ上の接点を使って人を集め、申し込みや購入までの数字を伸ばす職種です。広告を出す人、記事を書く人、データを見る人と思われがちですが、どれか一つを担当する仕事ではありません。結論から言うと、Webマーケターの価値を決めるのは使えるツールの数ではなく、画面の中の数字を「事業として次に何をやるか」に訳せるかどうかです。この記事では、仕事内容と1日の流れ、扱う指標、なる人の経歴、デジタルマーケターや広告運用者との違い、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)と求人サービスの公開統計で確かめた年収、未経験からの入り方まで書いていきます。
Webマーケターとは?仕事内容と役割の一覧
Webマーケターの仕事は、ウェブで人を集める施策と、集まった人を申し込みや購入に変える施策を、数字を見ながら回し続けることです。厚生労働省のjob tagでも、Webを利用した市場調査や広告出稿、サイト訪問者のニーズの分析を行う仕事として説明され、主な活動にSNS広告などでの集客と、CVRを上げるためのアクセス解析と改善が挙げられています(job tag「Webマーケティング(ネット広告・販売促進)」)。
事業会社のWebマーケターを想定して、仕事の中身を一枚にまとめました。会社の規模や商材によって比重は変わります。
| 観点 | 中身 |
|---|---|
| 1日の仕事 | 朝に前日の広告とサイトの数字を確認し、異常があれば配信や予算を調整する。日中は改善案の企画、記事やランディングページの修正指示、ABテストの設計、制作会社や広告代理店との打ち合わせ。週次・月次で数字をまとめて報告する |
| 扱う指標 | セッション数、CTR(クリック率)、CVR(転換率)、CPA(獲得単価)、ROAS(広告費用対効果)、検索順位、申し込み数や売上 |
| 使う道具 | GA4などのアクセス解析、検索広告やSNS広告の管理画面、Googleサーチコンソール、表計算ソフト、MA(マーケティングオートメーション)、ヒートマップなどのサイト分析ツール |
| 関わる部署 | 営業、商品企画、カスタマーサポート、制作(デザイナー・エンジニア・ライター)、経営企画、社外の広告代理店や制作会社 |
表の「扱う指標」は、どれも途中の数字です。CTRが上がっても申し込みが増えなければ意味がなく、CPAが下がっても売上が落ちていれば失敗です。それぞれの指標の計算と読み方はCPC・CPM・CPAの違いと計算方法やCVRの計算方法と改善の考え方に書きました。Webマーケターの仕事は、これらの途中の数字を、最後の売上までつながった一本の線として見ることにあります。
独立してから、自分でブログとnoteを運営し、記事を書き、検索の数字を見て、直す作業を一人でやっています。そうすると、集客と改善が別の仕事ではないことがよく分かります。人を集める施策を考えている最中に、集まった人がどこで帰っているかが気になり、そこを直すと次に集めるべき人の像が変わる。Webマーケターの仕事が「横断」と言われるのは、この行き来が一日の中で何度も起きるからだと思います。
Webマーケターになる人の経歴とスキル
Webマーケターになる経路は一つに決まっておらず、新卒で入る人もいれば、営業、制作、広告代理店から移ってくる人も多い職種です。job tagでも、入職に特別な学歴や資格は必要とされないこと、Webデザイナーなどの経験を積んだ人が転職する場合もあること、自分で仕事を回せるようになるまで1年程度は必要とされることが書かれています(job tag)。
| 入口 | よくある最初の担当 | 持ち込める強み | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 新卒 | 広告運用の補助、記事やSNSの更新、数字の集計 | 新しいツールへの抵抗のなさ | 事業全体の数字とのつながりが見えにくい |
| 営業から | リード獲得の施策、問い合わせ後の導線改善 | 顧客が買う理由と迷う理由を知っている | アクセス解析や広告の管理画面に慣れるまで時間がかかる |
| 制作から(デザイナー・ライター・エンジニア) | ランディングページやサイトの改善、SEO記事の企画 | 改善案をすぐ形にできる | 見た目や文章の良し悪しで判断し、数字で判断しにくい |
| 広告代理店から | 広告の戦略と運用、代理店の管理 | 複数の業種の広告運用の相場観 | 広告の外(商品、価格、営業の流れ)に手を出しにくい |
| 未経験 | 広告運用やSEOの担当者、アシスタント | 前職の業界知識 | ツールの操作を覚えることが目的になる |
必要なスキルは、最初から全部そろえる必要はありません。入口で必要なものと、伸びていく人が持っているものを分けると次のようになります。
| 区分 | スキル |
|---|---|
| 必須 | 表計算ソフトで数字を集計し比べられること/アクセス解析の基本の指標が読めること/施策と結果を短い文章で報告できること/社内外の人に依頼して動いてもらえること |
| あると強い | 検索広告・SNS広告の運用経験/SEOの実務/ABテストの設計と結果の読み方/SQLなどでのデータの抽出/商品や価格、営業の流れまで含めて改善案を出せること/生成AIを使った制作と分析の効率化 |
「あると強い」の中でいちばん差がつくのは、広告やサイトの外まで改善案を出せるかどうかです。ABテストの手順はABテストのやり方と有意差の考え方で書いています。
Webマーケターと似た職種との違い
Webマーケターと似た職種との違いは、扱う範囲の広さと、成果として背負う数字にあります。デジタルマーケターは範囲がウェブの外まで広く、広告運用者は広告に深く、Webディレクターはサイトをつくる進行に責任を持ちます。
| 職種 | 守備範囲 | 主に背負う数字 | Webマーケターとの関係 |
|---|---|---|---|
| Webマーケター | 検索、広告、SNS、サイトなどウェブ上の接点を横断 | 申し込み数、CPA、サイト経由の売上 | ― |
| デジタルマーケター | ウェブに加え、アプリ、会員データ、店頭のデジタル接点まで | LTV、継続率、チャネルをまたいだ購買 | Webマーケターの範囲を外側に広げた職種。求人では同じ意味で使われることも多い |
| 広告運用者 | 検索・SNS・動画広告の設定、入札、配信の改善 | CPA、ROAS、広告経由の獲得数 | Webマーケターの仕事のうち、広告の部分を深く受け持つ |
| Webディレクター | サイトやページの制作の企画と進行管理 | 納期、品質、制作物の成果 | job tagでも類似する職業として挙がる。つくる側の責任が中心 |
求人票で「Webマーケター」と「デジタルマーケター」の区別がついていないことはよくあります。範囲の違いと、求人票で中身を確かめる3つの軸(扱うデータ・関わる部署・評価の指標)はデジタルマーケティングとWebマーケティングの違いで詳しく書いたので、ここでは職種としての違いだけ押さえておきます。
見分けるときにいちばん確かなのは、評価される数字です。CPAで評価されるなら広告運用者に近く、申し込み数や売上で評価されるならWebマーケター、LTVや継続率まで背負うならデジタルマーケターに近い仕事だと考えると、求人の中身が読みやすくなります。記事で集めた読者を売上までつなぐ役割が中心なら、コンテンツマーケターに近い仕事です。
Webマーケターの年収と市場価値
Webマーケターの年収は、公的統計と求人サービスの統計で数字が大きく違います。どちらも「Webマーケターだけ」を数えた数字ではないので、目安として読むのが安全です。
確認できた公開データを並べました(2026年10月18日に各ページで確認)。
| データ | 数字 | 何を数えた数字か |
|---|---|---|
| job tag「Webマーケティング(ネット広告・販売促進)」の賃金(年収) | 736.8万円(全国) | 令和7年賃金構造基本統計調査を加工した数字。この職業が属する職業分類「企画・調査事務員」等の統計で、Webマーケターだけの数字ではない |
| 同ページのハローワーク有効求人倍率 | 0.47(令和7年度・全国) | ハローワークに出された求人だけの数字。民間の求人サイトの求人は入らない |
| 同ページのハローワーク求人賃金(月額) | 27.3万円(令和7年度・全国) | 同上 |
| doda「Webマーケティング」の平均年収 | 471万円(20代414万円・30代514万円・40代652万円・50代〜667万円) | 2024年9月〜2025年8月にdodaに登録した20〜65歳の申告年収(有効回答約60万件の集計) |
| doda「マーケティング」の平均年収 | 550万円 | 同上 |
出典:厚生労働省 job tag「Webマーケティング(ネット広告・販売促進)」/doda「平均年収ランキング(職種・職業別)」
job tagの736.8万円は、企画や調査の仕事をまとめた分類の数字なので、Webマーケターの実勢よりかなり広い母集団を映しています。dodaの数字は転職サービスの登録者の申告です。比べる数字ではなく、別々のものさしとして読んでください。統計ごとの違いはマーケティング職の年収データ(公的統計と求人統計の整理)でまとめています。
dodaの表で目を引くのは、「Webマーケティング」が471万円で、「マーケティング」の550万円より79万円低いことです。ぼくはこの差を、肩書きの差というより任される範囲の差だと読んでいます。ウェブの施策の担当者に留まると伸びが鈍く、商品や価格、事業の数字まで口を出せるようになると「マーケティング」の側に入っていく。Webマーケターの市場価値は、ウェブの外にどれだけ手が届くかで上がると思います。
Webマーケターに向いている人・向いていない人、キャリアの次の一手
Webマーケターに向いているのは、数字が動いた理由を考えるのが好きで、小さな改善を何十回も繰り返すことに飽きない人です。反対に、一つの大きな企画を時間をかけて仕上げたい人には、細切れの仕事が続く毎日がきつく感じられるかもしれません。
| 向いている人 | きつく感じやすい人 |
|---|---|
| 数字の上下を見て「なぜ」を考えるのが苦にならない | 数字で評価されること自体がしんどい |
| 小さく試して、だめならすぐやめられる | 一度決めた施策を変えるのが苦手 |
| 営業や制作など、他の部署の人に頼みごとができる | 自分の手の届く範囲だけで完結させたい |
| 仕様が変わる広告やツールを追いかけるのを楽しめる | 覚えたやり方を長く使い続けたい |
BtoBのマーケ組織で採用面接に入っていた頃、Webマーケター職の候補者には、改善した数字を語れる人がたくさんいました。差がつくのは、その数字を追った理由を事業の言葉で説明できるかどうかです。CVRを上げた話より、なぜCVRを追うべきだと判断したのかを話せる人のほうが、入ってからの伸び方を想像しやすかった記憶があります。
経験を積んだ後の次の一手は、大きく4つに分かれます。広告運用やSEOの専門家として深める道、事業会社のマーケティング責任者として範囲を広げる道、会員データやアプリまで扱うデジタルマーケティングへ進む道、そしてフリーランスとして独立する道です。job tagの就業形態の調査(その職業で働く人に、多いと感じる就業形態を聞いたもの)では、正規の職員・従業員の61.1%に次いで、自営・フリーランスが37.0%でした(job tag)。成果が数字で見えやすい職種なので、独立しやすい側面があります。
道ごとの全体像はマーケターのキャリアパスの整理に、転職のときのエージェントの組み合わせ方はマーケター向け転職エージェントの使い分けにまとめています。どの道を選ぶにしても、ウェブの外の数字を一つ持っておくと、次の職場で話せることが増えます。
Webマーケターに関するよくある質問
Webマーケターは未経験からでもなれますか?
なれます。job tagでも入職に特別な学歴や資格は必要とされないとされ、中途採用も多い分野だと書かれています。最初は広告運用やSEO、SNSの更新など一つの担当から入り、1年ほどで自分で仕事を回せるようになるのが一般的な流れです。前職の業界知識や顧客理解を、数字の改善の話に結びつけて語れると選考で伝わりやすくなります。
Webマーケターに必要な資格はありますか?
必須の資格はありません。job tagの関連資格の欄も「関連する資格はありません」となっています。広告媒体やアクセス解析ツールの各社が出している認定資格は、学ぶ順番を決める教材としては役に立ちますが、採用で見られるのは資格よりも、どの数字をどう動かしたかの説明です。
Webマーケターとデジタルマーケターの違いは何ですか?
範囲の広さが違います。Webマーケターは検索や広告、自社サイトなどウェブ上の接点が中心で、デジタルマーケターはそこからアプリや会員データ、店頭のデジタル接点まで広げて扱います。ただ求人では同じ意味で使われることも多いので、扱うデータと評価の指標で中身を確かめるのが確実です。
Webマーケターはオワコン(将来性がない)と言われるのはなぜですか?
広告の入札や配信、記事の下書きなど、手を動かす作業が自動化やAIで減っているからだと思います。でも、何を目標の数字にするか、どの施策をやめるかを決める仕事は自動化されにくく、むしろ判断の比重が上がっています。管理画面の操作だけを仕事にしていると先細りしますが、事業の数字に責任を持つ方向に寄せれば、仕事はなくなりません。
おわりに──施策を回せる人は多い。数字を事業の言葉に訳せる人がWebマーケター
Webマーケターの毎日は、細かい数字の確認と、小さな修正の積み重ねです。管理画面を開けばやることはいくらでもあって、忙しく手を動かしているだけで一日が終わります。
でも、その忙しさは仕事をしている証拠にはなりません。CTRが上がった、CPAが下がった、と報告を受けた側が知りたいのは、それで事業がどうなったかです。そこまで訳して伝えられたとき、施策の担当者は初めてマーケターとして扱われます。
施策を回せる人は多い。数字を事業の言葉に訳せる人が、Webマーケターと呼ばれる。
これからWebマーケターを目指すなら、いま自分が見ている数字を一つ選んで、それが動くと会社の売上がどう変わるのかを一行で書けるか試してみてほしいと思います。書けたなら、その一行がもう職務経歴書の最初の一文になります。