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マーケティング職の年収データ|職種別・年代別・広告代理店大手の平均年収を公的統計で整理【2026年版】

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マーケティング職の平均年収は、どの統計を見るかで400万円台にも1,300万円台にもなります。数字がぶれる理由は単純です。公的統計の「賃金」は残業代も賞与も含まない月額、国税庁の「平均給与」は年額、有価証券報告書の「平均年間給与」は社員100人前後の持株会社の数字だからです。結論を先に置きます。マーケターの年収を決めているのは職種ではなく、所属先の収益構造です。

この記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査、国税庁の民間給与実態統計調査、各社の有価証券報告書、求人サービスの公開統計を、すべて一次出典のURLつきで並べます。出典が確認できなかった数字は書いていません。書かなかったものも、記事の最後に理由つきで並べます。

まず「平均年収」の中に4つの別物が混ざっている

年収の記事を読んで混乱するとしたら、それは読み手のせいではありません。世の中に流通している「マーケティング職の平均年収は〇〇万円」という数字は、集計対象も定義も違う4種類のデータが、同じ「平均年収」の顔をして並んでいるからです。

統計 何を測った数字か 対象 最新版
賃金構造基本統計調査(厚生労働省) 6月分の所定内給与額(月額)。残業代・賞与を含まない 常用労働者10人以上の事業所の一般労働者 令和7(2025)年・2026年3月24日公表
民間給与実態統計調査(国税庁) 1年を通じて勤務した人の年間給与(賞与込み) 民間事業所の給与所得者 令和6(2024)年分・2025年9月公表
有価証券報告書の「平均年間給与」 提出会社(単体)の年間給与。賞与・基準外賃金を含む その1社の従業員のみ。連結子会社は含まない 各社の直近事業年度
求人サービスの平均年収(dodaなど) 登録者が申告した年収(支給額) そのサービスに登録した人だけ 2024年9月〜2025年8月登録分

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2026年3月24日公表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html/国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」(2025年9月)https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2024.htm/doda「平均年収ランキング」https://doda.jp/guide/heikin/

いちばん誤解されているのが1行目です。賃金構造基本統計調査で「マーケティング関連職の賃金は月43万円」と書かれていても、それは月給43万円ではなく、残業代も賞与も抜いた基本給まわりの金額です[1]。ここに12を掛けて「年収516万円」と書いている記事は、その人の賞与を丸ごと消しています。

比較の起点になる全体の数字だけ、先に置いておきます。1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円、正社員に限ると545万円でした(令和6年分・国税庁)[3]。4年連続の増加で、前年比3.9%増は平成3年分の調査以来の伸び幅です。マーケティング職の数字を見るときは、この478万円と545万円を頭に置いておくと迷いません。

職種別の平均年収:公的統計に「マーケター」という職種は存在しない

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査には、集計対象の職種を並べた「集計職種区分一覧表」があります。そこに載っている職種を全部見ても、「マーケター」も「マーケティング」も「広告」も、職種名としては1つもありません[2]。あるのは「企画事務員」「営業・販売事務従事者」「その他の営業職業従事者」「システムコンサルタント・設計者」「デザイナー」といった名前です。

つまり日本の公的統計は、マーケターを独立した職業として数えていません。だから「マーケティング職の公的な平均年収」は、厳密には存在しない数字です。存在しないものを「〇〇万円」と言い切っている記事があれば、それは求人サイトの数字を公的統計のように見せているか、近い職種を勝手に代表させています。

そのうえで、マーケターの仕事に近い職種の数字を、一次データから並べます。年収の欄は公表値そのものではなく、所定内給与額×12+年間賞与その他特別給与額でぼくが計算した推計値です。残業代は含みません。実際の年収はこれより上に出ます。

職種(賃金構造基本統計調査の区分) 所定内給与額(月・千円) 年間賞与ほか(千円) 推計年収(万円) 労働者数(十人)
管理的職業従事者 591.0 2,471.2 956.3 175,830
システムコンサルタント・設計者 506.8 2,385.2 846.7 17,414
企画事務員 430.5 1,794.1 696.0 49,293
その他の営業職業従事者 399.0 1,493.8 628.2 90,741
著述家、記者、編集者 400.4 1,332.7 613.7 4,377
ソフトウェア作成者 356.8 1,095.1 537.7 81,786
デザイナー 353.4 888.6 512.9 9,145
庶務・人事事務員 326.1 1,061.8 497.5 78,791
営業・販売事務従事者 327.8 1,017.8 495.1 93,100

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種第10表(職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額・産業計・企業規模計10人以上・男女計)e-Stat https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040421125&fileKind=4/職種の一覧は同調査「集計役職区分及び集計職種区分一覧表」https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040028728&fileKind=2(推計年収は所定内給与額×12+年間賞与で筆者算出)

この表で目を引くのは、企画事務員(696.0万円)とデザイナー(512.9万円)の183万円差です。両方とも「作る側」の仕事なのに、企画の側に振られている職種のほうが年間賞与が2倍あります。賞与は会社の利益から出ます。同じ制作物に関わっていても、利益に近い場所に座っている職種のほうが、賞与の分だけ先に伸びる構造になっています。

求人サービスの数字も並べておく

公的統計に職種がない以上、「マーケティング職」でくくった数字は民間の求人サービスから取るしかありません。dodaが公開している職種別の平均年収は、2024年9月から2025年8月末までに登録した20〜65歳の正社員、約60万件の有効回答をもとにした集計です[4]。公的統計とは母集団が違うので、そのまま比べる数字ではありません。転職を考えている人の申告値が中心になるぶん、実勢より高めに出る性質があります。

職種(dodaの区分) 全体 20代 30代 40代 50代〜
経営企画/事業企画 703万円 470万円 684万円 827万円 928万円
専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人) 619万円 515万円 698万円 724万円 765万円
マーケティング 550万円 417万円 562万円 742万円 856万円
商品企画/開発 538万円 419万円 552万円 690万円 788万円
販売促進/広告宣伝 519万円 409万円 546万円 672万円 792万円
広報/IR 506万円 392万円 508万円 650万円 759万円
営業(インターネット/広告/メディア) 452万円 388万円 492万円 573万円 618万円
ビジネスパーソン全体 429万円 365万円 454万円 517万円 601万円

出典:doda「平均年収ランキング(職種・職業別の平均年収/生涯賃金)」https://doda.jp/guide/heikin/syokusyu/、doda「平均年収ランキング(年齢別・年代別の年収情報)」https://doda.jp/guide/heikin/age/(対象期間2024年9月〜2025年8月、有効回答約60万件)

マーケティングが550万円、販売促進/広告宣伝が519万円、広告・メディア営業が452万円[4]。この3つはよく「広告まわりの仕事」とまとめて語られますが、全体で98万円の差がついています。同じ広告費を動かしていても、企画側に座っているか、売る側に座っているかで違う。ぼくが博報堂とアクセンチュアで見てきた景色も、だいたいこの順番でした。

年代別の平均年収:30代前半で分かれ道が来る

年代別を見るときは、月額の公的統計と年収の民間統計を分けて置いたほうが誤読しません。まず公的統計から。所定内給与額(月額・男女計)を、全産業と、広告業が含まれる「学術研究、専門・技術サービス業」、それにデジタル系の受け皿である「情報通信業」で並べます。広告業が学術研究、専門・技術サービス業に分類されることは、日本標準産業分類で確認できます。

年齢階級 産業計(千円) 学術研究、専門・技術サービス業(千円) 情報通信業(千円) 企画事務員の推計年収(万円)
20〜24歳 242.8 280.1 262.2 369.9
25〜29歳 279.4 335.8 308.7 485.4
30〜34歳 312.3 406.6 363.4 595.0
35〜39歳 340.6 440.5 410.1 665.3
40〜44歳 364.3 484.8 456.8 700.7
45〜49歳 377.9 525.6 491.7 749.7
50〜54歳 388.8 489.2 491.3 879.2
年齢計 340.6 440.3 406.0 696.0

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第2表・第5-1表https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/14.pdf/企画事務員は同調査 職種第10表(e-Stat)より筆者算出/広告業の産業分類は総務省「日本標準産業分類」大分類L 中分類73https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/10/03/73

学術研究、専門・技術サービス業の年齢計は440.3千円で、16大産業のなかで電気・ガス・熱供給・水道業(444.0千円)に次ぐ2位です[1]。前年比9.6%増で、伸び率は全産業でいちばん大きい。広告業を含むこの産業が、いま賃金の上がっている側にいることは、数字としてはっきり出ています。

分かれ道は30代前半にあります。20〜24歳では産業計との差が37.3千円しかないのに、30〜34歳で94.3千円、45〜49歳では147.7千円まで開きます[1]。月額15万円近い差は、賞与を含めれば年間200万円を超えます。20代は業界を変えても年収がほとんど動かないのに、30代に入った途端に効いてくる。

年代別で見るときに、平均値がいちばん嘘をつく

年代別の数字には、もう1つ落とし穴があります。管理職に上がった人と上がらなかった人が、同じ「40代の平均」に混ざっていることです。役職別に見ると、部長級635.8千円、課長級529.2千円、係長級399.2千円、非役職310.5千円[1]。課長級と非役職の差は月額218.7千円で、格差でいえば非役職を100として170.4です。

40代の平均年収が517万円[5]と言われても、その中には課長級の人と非役職の人が両方入っています。40代で「平均より下だ」と落ち込む必要も、「平均より上だ」と安心する必要もありません。見るべきは平均との距離ではなく、自分が役職と職種のどのマスにいるかです。

広告代理店大手の平均年収一覧(各社の有価証券報告書)

ここからは推計のいらない領域です。上場企業は有価証券報告書で「平均年間給与」を開示する義務があり、賞与と基準外賃金を含んだ実額が載っています。ただし、この数字には巨大な落とし穴があります。開示されているのは「提出会社」つまり単体の数字だけで、多くの広告会社は持株会社が提出会社になっていることです。

会社(提出会社の性格) 従業員数 平均年齢 平均年間給与 対象事業年度
電通グループ(持株会社単体) 135名 45.0歳 1,595.9万円 2025年12月期
博報堂DYホールディングス(持株会社単体) 144名 42.5歳 1,168.3万円 2026年3月期
博報堂(事業会社・グループ最大人員会社) 4,580名 40.1歳 1,099.0万円 2026年3月期
Hakuhodo DY ONE(事業会社) 2,690名 32.4歳 582.9万円 2026年3月期
サイバーエージェント(事業会社) 2,588名 33.8歳 913.8万円 2025年9月期
アドウェイズ(事業会社) 416名 34歳10か月 638.2万円 2025年12月期
バリューコマース(事業会社) 381名 38.0歳 588.7万円 2025年12月期

出典:株式会社電通グループ「有価証券報告書 第177期(2025年1月1日〜2025年12月31日)」https://www.group.dentsu.com/jp/ir/common/pdf/yuho177.pdf/株式会社博報堂DYホールディングス「有価証券報告書 第23期(2025年4月1日〜2026年3月31日)」https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YHXU.pdf(博報堂・Hakuhodo DY ONEの数値は同報告書「最大人員会社の状況」)/株式会社サイバーエージェント「有価証券報告書 第28期(2024年10月1日〜2025年9月30日)」https://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/hvir/mYMG/gNNf.pdf/株式会社アドウェイズ「有価証券報告書 第26期(2025年1月1日〜2025年12月31日)」https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XSXU.pdf/バリューコマース株式会社「有価証券報告書 第30期(2025年1月1日〜2025年12月31日)」https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XU5J.pdf

「電通の平均年収1,596万円」を、そのまま信じてはいけない理由

電通グループの平均年間給与は15,959,402円です。これは事実で、有価証券報告書にそう書いてあります。ただし同じページに、その135名が何者かも書いてあります。従業員数135名、平均年齢45.0歳、平均勤続年数14.3年。連結従業員数は67,454名です。つまり6万7千人のうちの135人、持株会社の経営管理部門だけの数字です。

株式会社電通(事業会社)の平均年収は、電通グループの有価証券報告書には記載がありません。だからこの記事にも書きません。「電通の年収は1,596万円」と書いてある記事は、6万7千分の135を全体の代表にしています。

博報堂DYホールディングス側は、2026年3月期からこの状況が変わりました。有価証券報告書に「最大人員会社の状況」の開示が加わり、事業会社である株式会社博報堂の数字が出ています。従業員4,580名、平均年齢40.1歳、平均年間給与1,099.0万円、前年比3.2%増。持株会社144名の1,168.3万円との差は69万円しかなく、この会社に関しては持株会社の数字が事業会社から大きく離れていないことも分かります。

同じ開示で、デジタル領域の中核であるHakuhodo DY ONEが2,690名・平均年齢32.4歳・582.9万円だと分かります。同じグループの中で、博報堂とHakuhodo DY ONEの差は516万円。平均年齢の差が7.7歳あるので単純比較はできませんが、それでも「グループの平均年収」がどれだけ大雑把な言い方かは伝わると思います。

もう1つ書いておきます。ADK(ADKホールディングス)は2018年3月提出分を最後に有価証券報告書を提出していません。非上場化したためです。だからこの表に入れていません。「広告代理店 年収 ランキング」でADKの数字を載せている記事は、7年以上前の数字か、出典のない推定値を使っています。

代理店・コンサル・事業会社を並べると、収益構造の違いがそのまま出る

同じ「マーケティングの仕事」でも、所属先の収益モデルが違えば人件費に回せる原資が違います。比較のために、コンサルティングファームと事業会社の数字も同じ基準(有価証券報告書の提出会社単体)で並べます。

会社 業態 従業員数 平均年齢 平均年間給与 対象事業年度
野村総合研究所 コンサル/IT 7,982名 39.7歳 1,332.6万円 2026年3月期
ベイカレント コンサル 866名 31.3歳 1,331.1万円 2026年2月期
博報堂 総合広告会社 4,580名 40.1歳 1,099.0万円 2026年3月期
サイバーエージェント ネット広告/メディア 2,588名 33.8歳 913.8万円 2025年9月期
花王 事業会社(消費財) 7,761名 40.6歳 865.4万円 2025年12月期
資生堂 事業会社(消費財) 3,850名 39.3歳 708.0万円 2025年12月期

出典:株式会社野村総合研究所「有価証券報告書 第61期(2025年4月1日〜2026年3月31日)」https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBM8.pdf/株式会社ベイカレント「有価証券報告書 第12期(2025年3月1日〜2026年2月28日)」https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69G.pdf/花王株式会社「有価証券報告書 第120期(2025年1月1日〜2025年12月31日)」https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XT6G.pdf/株式会社資生堂「有価証券報告書 第126期(2025年1月1日〜2025年12月31日)」https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XSCU.pdf/博報堂・サイバーエージェントは前掲

この6社でいちばん目を引くのは、ベイカレントの平均年齢31.3歳で1,331.1万円です。平均勤続年数は3.8年。40.6歳・勤続16.7年の花王が865.4万円ですから、年齢では9.3歳若く、給与では466万円高い。ここに業態の違いが凝縮されています。

3つの業態で、お金の出どころが違う

  • コンサルティングファーム:単価×時間で売上が立ちます。人が商品なので、単価がそのまま年収に跳ね返ります。そのかわり、稼働できなくなった瞬間に売上がゼロになる。ベイカレントの平均勤続3.8年は、その回転の速さそのものです。
  • 広告会社:売上から媒体費や外注費を引いた粗利で人件費をまかないます。取り扱いが大きくても手元に残る比率は限られ、粗利の伸びが人件費の天井になる。代理店の年収は、担当した予算の大きさではなく会社全体の粗利成長率に連動します。
  • 事業会社:マーケティング部門は原則コストセンターです。人件費は販管費から出るので、年収は自分の成果より会社の給与テーブルで決まる。花王と資生堂に157万円の差があるのは、マーケターの実力差ではなく会社の体力差です。

企業規模別の数字も、この見立てを裏づけます。所定内給与額は大企業385.1千円、中企業326.2千円、小企業305.6千円[1]。大企業を100としたとき、中企業は84.7、小企業は79.4です。同じ職種、同じ年齢、同じ実力でも、どのサイズの会社にいるかで2割違う。ぼくが以前の記事で「マーケターの年収はどこで働いているかで大きく変わる」と書いたのは、この構造のことでした。

年収を上げる現実的な動き方

ここまでのデータから言えることを、実際に動かせる順番で並べます。精神論は入れません。

  • まず自分の数字を3つの座標で置き直す。年齢階級(表4)、職種(表2・表3)、会社の規模と業態(表6・表7)。この3つのうち、いちばんズレが大きいものが、いちばん動かす価値のある変数です。全部が平均並みなら、動かすべきは会社の業態です。
  • 職種そのものを変えるより、職種の「立ち位置」を変える。営業・販売事務従事者(495.1万円)から企画事務員(696.0万円)への移動は、業界を変えずに社内で起こせることがあります[2]。転職より先に、社内で利益に近い側へ寄れないかを見たほうが速い場合があります。
  • 30代前半までに業態を選び切る。20代前半では産業間の差が月37.3千円しかないのに、30代前半で94.3千円に開きます[1]。20代の転職で年収が上がらなかったとしても、それは失敗ではなく、差が出るのがこの先だからです。
  • 役職を1段上げる価値を、転職と同じ天秤に載せる。非役職310.5千円に対して係長級399.2千円、課長級529.2千円[1]。課長級に上がることは、月額で21.9万円、年間で260万円以上の差になります。転職して2割上げるより、社内で1段上がるほうが金額が大きい局面はあります。
  • 数字を出すときは、定義もセットで出す。年収交渉で「業界平均は〇〇万円です」と言うなら、それが所定内給与額なのか年間給与なのかまで言えたほうが通ります。定義まで持っている人は、そこで一段信用されます。
  • 求人票のレンジは、統計より先に現在地を教えてくれる。自分の職種と年齢のレンジが求人票でいくらになっているかは、どの統計よりも直近の相場です。応募するかは別として、レンジだけは定期的に見ておく価値があります。

転職以外の道がないわけではありません。ただ、社内昇給が年に数万円単位で積み上がるのに対して、転職と交渉は一度に数十万円から百万円単位で動きます。この非対称性は、ぼくが自分の転職で実際に体験したことでもあります。金額の話は別の記事に書いたので、そちらを見てもらえればと思います。

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よくある質問

マーケティング職の平均年収はいくらですか?

公的統計には「マーケティング」という職種区分そのものが存在しないため、公的な平均年収は存在しません。求人サービスの集計では、dodaの職種別ランキングでマーケティングが550万円、販売促進/広告宣伝が519万円、商品企画/開発が538万円です(2024年9月〜2025年8月登録の約60万件)。近い公的データを探すなら、賃金構造基本統計調査の「企画事務員」が所定内給与額430.5千円・年間賞与1,794.1千円で、年収換算696.0万円になります。母集団も定義も違うので、どちらか一方を「正解」として扱わないほうが安全です。

広告代理店の年収は本当に高いのですか?

会社によります。有価証券報告書ベースでは、博報堂(事業会社)が1,099.0万円、サイバーエージェントが913.8万円である一方、Hakuhodo DY ONEは582.9万円、バリューコマースは588.7万円です。よく引用される電通グループの1,595.9万円は、従業員135名の持株会社単体の数字で、連結67,454名の代表値ではありません。産業全体で見ると、広告業を含む「学術研究、専門・技術サービス業」の所定内給与額は440.3千円で16大産業の2位、前年比9.6%増と伸び率は最大です。業界としては高い側にいて、社内の格差も大きい、というのが実態に近い読み方です。

20代・30代・40代でどれくらい差がつきますか?

所定内給与額(産業計・男女計)は20〜24歳242.8千円、30〜34歳312.3千円、40〜44歳364.3千円です。20〜24歳を100とすると40〜44歳は150.0で、20年で1.5倍にしかなりません。年収ベースのdodaの集計では、全体で20代365万円、30代454万円、40代517万円。マーケティング職に限ると20代417万円、30代562万円、40代742万円で、40代で全体との差が225万円まで開きます。差が広がるのは30代に入ってからで、20代のうちはどの職種でも大きくは変わりません。

年収を上げるには転職しかないのですか?

転職だけではありません。役職別に見ると、非役職310.5千円に対して課長級529.2千円と、月額で218.7千円の差があります。年間では260万円以上です。同じ会社にいたまま1段上がるほうが、転職して1〜2割上げるより金額が大きくなる場面はあります。ただし昇進の枠は自分では決められず、待っている間の年数も戻ってきません。社内で上がる道と、外に出る道の両方を同時に見ておくのが現実的です。

まとめ

マーケティング職の年収を調べていて数字がばらばらに見えるのは、統計が間違っているからではありません。月額と年額、単体と連結、公的統計と求人サービスの申告値が、同じ「平均年収」の一語で並べられているからです。定義を揃えて並べ直すと、景色は驚くほどはっきりします。

そして揃えたあとに残るのは、職種の差ではありません。広告業を含む産業は所定内給与額440.3千円で全産業2位、企業規模で2割の差、役職で7割の差、同じグループ内の事業会社どうしでも516万円の差。年収を決めているのは、自分が何をしているかより、自分がどの収益構造の中に座っているかでした。

ぼくは博報堂に13年、アクセンチュアを経て独立しましたが、年収が動いた瞬間はいつも、仕事の中身が変わったときではなく、座る場所が変わったときでした。だから、いま数字に納得がいっていないなら、努力の量ではなく座標を疑ってみてほしいと思っています。

関連記事

この記事で使ったデータの出典

この記事で「書かなかった数字」

  • 株式会社電通(事業会社)の平均年収。電通グループの有価証券報告書は提出会社(持株会社135名)のみの開示で、最大人員会社の記載がないため確認できませんでした。
  • ADK(ADKホールディングス)の平均年収。非上場化により2018年3月提出分を最後に有価証券報告書の提出がありません。
  • アクセンチュア日本法人の平均年収。有価証券報告書の提出義務がなく、一次出典が存在しません。
  • 独立・フリーランスマーケターの平均年収。母集団の定義された一次統計が確認できませんでした。
  • 「マーケター」という職種の公的平均年収。賃金構造基本統計調査の集計職種区分に、その職種自体が存在しません。
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