最終更新:2026年10月18日
うつ病で休職するときの手続きは、①受診して診断書を受け取る、②会社に休職を申し出て診断書を出す、③就業規則で休職の条件を確かめる、④休み始めてから傷病手当金を申請する、の順番で進みます。休職は法律で決まった制度ではなく、会社の就業規則で中身が決まります。厚生労働省のモデル就業規則も、休職の定義や期間、復職については労働基準法に定めがないと明記しています。だから同じ「休職」でも、休める期間や給与の扱いは会社ごとに違います。この記事では、最初の1か月にやることの順番を表にして、診断書、会社とのやりとり、お金と保険、復職までの流れを、公的なページで確認できた範囲で整理します。
うつ病で休職するときの手続きの順番とは?最初の1か月の一覧
うつ病で休職するときの手続きは、医療機関、会社、健康保険の3か所を、受診→申し出→規則の確認→給付の申請の順に回ると迷いません。相手が3つに分かれているので、誰に何を出すのかを先に一枚で見ておくと、つらい時期でも次の一つが分かります。
| 順番 | やること | 相手 | 確かめること |
|---|---|---|---|
| 1 | 精神科・心療内科を受診し、休む必要があるかを医師に判断してもらう | 医療機関 | 休職用の診断書を出してもらえるか、会社指定の書式があるなら持参する |
| 2 | 上司か人事に休職を申し出て、診断書を出す | 会社 | 提出先(上司・人事・産業医)と、原本か写しか |
| 3 | 就業規則の休職の条文を読む | 会社(人事) | 休職に入るまでの欠勤期間、休職期間の上限、休職中の給与、期間満了時の扱い |
| 4 | 休職中の連絡方法を決める | 会社(上司・人事) | 連絡の相手と頻度、書類の受け渡し方法 |
| 5 | 休んだ期間について傷病手当金を申請する | 健康保険(協会けんぽ等) | 申請書の本人・会社・医師の3つの記入欄、申請の区切り |
| 6 | 休職中の社会保険料の払い方を確かめる | 会社(人事) | 本人負担分をどう納めるか |
この順番の骨組みは、厚生労働省の心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(PDF)の第1ステップと同じです。手引きでは、本人から管理監督者に主治医の診断書(病気休業診断書)が出されて休業が始まり、会社は傷病手当金などの経済的な保障や、休業の最長期間などを本人に情報提供する流れになっています。会社の側にも、この流れを支える役目があります。
休職はめずらしいことではありません。厚生労働省の令和7年労働安全衛生調査(実態調査)では、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した労働者がいた事業所は10.8%、労働者に占める割合は0.6%でした。およそ1割の事業所で、この1年のあいだに誰かが通った手続きです。
診断書をもらう──会社に出すものと、オンライン診療で受け取れる範囲
休職の手続きは、医師の診断書から始まります。診断書は医師が診察をしたうえで出すもので、医師法第20条は、医師が自ら診察しないで診断書を交付してはならないと定めています(下のオンライン診療の指針にも条文が引かれています)。だから「書類だけ先にほしい」という頼み方はできず、まず診察を受けることが入口になります。
診断書について、会社に出す前に確かめておきたいのは次の3点です。
- 会社に指定の書式があるか(ないなら医療機関の書式でよいか)
- 休む期間の書き方(「◯月◯日まで」のように区切るのか)
- 原本が必要か、写しやPDFでもよいか
通院の時間がとれない、待合室に座るのがつらい、という段階なら、オンライン診療も選択肢に入ります。厚生労働省のオンライン診療の適切な実施に関する指針(PDF)は、指針が定める最低限遵守すべき事項を守って行うオンライン診療は医師法第20条に抵触しないと整理しています。オンラインで診察を受け、その結果として診断書を受け取ることは、制度の上でもありえます。
ただし、指針は初診を原則として「かかりつけの医師」が行うものとし、オンラインでの診療が適切でないと医師が判断した場合は対面に切り替えることを前提にしています。厚生労働省のオンライン診療についてのページも、オンライン診療は対面診療と適切に組み合わせて行うのが基本だと説明しています。オンラインで受診するかどうかも、診断書を出すかどうかも、最後に決めるのは診察した医師です。
たとえば、オンライン診療のエニキュアは、公式サイトで保険診療であること、診断書の発行に対応していること(発行費用4,400円・郵送またはPDF)、休職用の診断書や傷病手当金の書類、会社規定の書式にも対応していることを案内しています。同じページに、診察なしでの書類発行は行わないこと、医師の判断で診断書を発行できない場合があることも書かれています。PDFで受け取った診断書を会社が受け付けるかどうかは会社の運用次第なので、先に人事に聞いておくと二度手間になりません。
会社への申し出と就業規則──休職は法律ではなく会社のルールで決まる
会社に休職を申し出たら、次に読むのは就業規則の休職の条文です。休職は労働基準法で決まった制度ではないので、何日欠勤したら休職に入るのか、何か月休めるのか、休職中に給与が出るのかは、すべて会社の規則で決まります。
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)は、休職を「業務外での疾病等主に労働者側の個人的事情により相当長期間にわたり就労を期待し得ない場合に、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱い」と説明しています。条文の例は、業務外の傷病による欠勤が一定期間を超えたときに休職とし、休職期間が満了しても就業が難しい場合は満了をもって退職とする形になっています。休職中を無給とするか有給とするかも、各事業場で決めて就業規則に定めるよう書かれています。
| 就業規則で確かめる項目 | なぜ確かめるか | モデル就業規則での扱い |
|---|---|---|
| 休職に入るまでの欠勤期間 | 休職の前に「欠勤」の期間を置く会社があり、その間の給与や有給休暇の使い方が変わる | 欠勤が「◯か月を超え」たときに休職とする例(期間は空欄) |
| 休職期間の上限 | どこまで休めるかで、療養の計画とお金の見通しが変わる | 「◯年以内」と会社が定める例(期間は空欄) |
| 休職中の給与 | 給与が出ると、その分だけ傷病手当金が調整される | 原則として支給しない例。無給か有給かは各事業場で決める |
| 復職の手続き | 主治医の診断書のほかに、産業医面談などを求める会社がある | 休職事由が消滅したら原則として元の職務に復帰させる例 |
| 期間満了時の扱い | 期間内に復職できないときの扱いを、休み始める前に知っておく | 満了しても就業が難しい場合は、満了をもって退職とする例 |
表の右の列はあくまで厚生労働省のひな形で、自分の会社の規則とは違うことがあります。規則が見当たらなければ、人事に「休職の条文を見せてほしい」と頼めば足ります。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使う会社に就業規則を作って届け出ることを義務づけています。
申し出のときに病名や症状をどこまで話すかは、迷うところだと思います。こころの耳の職場復帰支援のページは、メンタルヘルスに関する健康情報は特に慎重な取扱いが必要で、会社が集めるときはあらかじめ本人の同意を得て本人を通して行うことが望まれる、と説明しています。会社が手続きのために必要とするのは、まず「働けないこと」と「休む期間」です。それ以上をどこまで伝えるかは、主治医や産業医と相談しながら決めていい部分です。
締め切りが続く仕事を長くしていると、休むという判断そのものを後回しにする癖がつきやすいと感じます。でも休職の申し出は、仕事を投げ出す話ではなく、引き継ぎや段取りと同じ手続きの一つとして扱っていいものだと思っています。
お金と保険の手続き──傷病手当金と休職中の社会保険料
休職中のお金で最初に押さえたいのは、会社員が入る健康保険の傷病手当金です。全国健康保険協会(協会けんぽ)の病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)によると、業務外の病気やケガで仕事に就けず、連続する3日間を含めて4日以上休み、給与が出ていないときに支給されます。いくらもらえるかの計算と退職後の扱いは、傷病手当金(うつ病)の申請と退職後の扱いに詳しく書きました。
| 項目 | 中身(協会けんぽの案内) |
|---|---|
| 1日あたりの額 | 支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2 |
| 支給の始まり | 連続3日間の待期のあと、4日目から。待期には有給休暇や土日・祝日も含まれる |
| 支給期間 | 支給を開始した日から通算して1年6か月 |
| 給与との関係 | 給与が出ている間は支給されない。給与が傷病手当金より少なければ差額を支給 |
| 申請の区切り | 事業主の証明が必要なため、1か月単位で給与の締切日ごとの申請をすすめている |
| 支払いの時期 | 審査で支払い可能なら、受付日から10営業日以内 |
表の後半を見ると分かるとおり、傷病手当金は休み始めた日にすぐ入るお金ではありません。休んだ期間が終わってから会社に給与の状況を証明してもらい、医師に意見を書いてもらって申請するので、1か月単位で申請するなら、最初の入金は休み始めてから1か月以上先になります。休職に入る前に、その間の生活費を一度だけ見積もっておくと、休んでいる間の不安が一つ減ります。傷病手当金のほかに使える制度は、休職中にお金がないときに使える制度一覧にまとめています。協会けんぽの案内は協会けんぽの加入者向けで、健康保険組合に入っている人は申請書の様式や提出先を組合の案内で確かめてください。
もう一つは社会保険料です。日本年金機構の厚生年金保険の保険料のページによると、保険料は標準報酬月額に保険料率をかけて計算され、事業主と本人が半分ずつ負担します。保険料が免除される仕組みとして同機構が案内しているのは産前産後休業と育児休業で、病気による休職はそこに入っていません。給与が出ない月も本人負担分は発生するので、会社に振り込むのか、復職後にまとめて精算するのかを人事に確かめておくと安心です。
休職から復職までの流れと注意点──判断を急がないために
休職は、休み始めた日から復職のあとまでを一つの流れとして見ると、いま何を考えればよいかが絞れます。職場復帰支援の手引きは、その流れを5つのステップに分けています。受診から復職・転職までを含めた全体の地図は、働く人のメンタル不調と働き方の記事に置いています。
| ステップ | 中身(手引きより) | 本人がしておくこと |
|---|---|---|
| 第1ステップ | 病気休業開始及び休業中のケア | 療養を優先する。会社との連絡方法を決めておく |
| 第2ステップ | 主治医による職場復帰可能の判断 | 復職したい意思を会社に伝え、復職可能と書かれた診断書を主治医に相談する |
| 第3ステップ | 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成 | 産業医面談などで、働き方の配慮を一緒に決める |
| 第4ステップ | 最終的な職場復帰の決定 | 会社が決めた復帰日と、就業上の配慮の中身を確かめる |
| 第5ステップ | 職場復帰後のフォローアップ | 通院を続け、困りごとは早めに産業医や上司に伝える |
手引きには、主治医の診断は日常生活での回復の程度から復職の可能性を判断していることが多く、職場で求められる業務の遂行能力まで回復したという判断とは限らない、という一文があります。主治医が「復職可」と書いても、会社が産業医の意見を聞いて時期や働き方を調整することがあるのはこのためです。行き違いではなく、確かめる段階が二つある、と受け取っておくと気持ちが楽になります。
注意しておきたいのは、休職中に大きな決断を急がないことです。退職や転職を考え始めたときは、まず就業規則の休職期間と傷病手当金の期間を並べて、時間の余裕を確かめてからでも遅くありません。会社と直接やりとりするのがどうしてもつらい場合の選択肢は退職代行を使う前に知っておきたいことに、動く前の準備はマーケターが転職で後悔しないために、動く前にやることにまとめました。
この記事は一般的な情報の整理であり、医療上の判断は主治医に相談してください。就業規則の読み方や会社との交渉は、会社の人事や社会保険労務士、各地の総合労働相談コーナーなどで確かめるのが確実です。つらさが強いときは、厚生労働省のまもろうよ こころに電話やSNSの相談窓口がまとまっています。働く人向けにはこころの耳の相談窓口もあります。
うつ病の休職の手続きに関するよくある質問
うつ病で休職するとき、最初に何をすればいいですか?
最初の一つは、精神科や心療内科を受診して、休む必要があるかを医師に判断してもらうことです。厚生労働省の職場復帰支援の手引きでも、休業は主治医の診断書を会社に出すところから始まる流れになっています。会社に指定の書式があるかを先に人事に聞いておくと、受診のときに書式を持っていけます。
休職の診断書はオンライン診療でももらえますか?
医師がオンラインで診察し、必要と判断すれば受け取れる場合があります。厚生労働省のオンライン診療の指針は、指針を守って行うオンライン診療は、診察せずに診断書を出すことを禁じた医師法第20条に抵触しないと整理しています。ただし発行するかどうかは医師の判断で、対面での診察をすすめられることもあります。PDFの診断書を会社が受け付けるかは会社に確かめてください。
会社に休職を伝えるとき、病名まで話す必要はありますか?
会社が手続きのためにまず必要とするのは、働けないことと休む期間で、それは診断書で伝わります。厚生労働省のこころの耳は、メンタルヘルスに関する健康情報は特に慎重に扱うべきもので、会社が集めるときは本人の同意を得て本人を通して行うことが望まれるとしています。どこまで伝えるかは、主治医や産業医と相談して決めてかまいません。
休職中の傷病手当金はいつもらえますか?
休んだ期間が終わってから申請し、協会けんぽの場合は審査で支払い可能なら受付日から10営業日以内に支払われます。申請には給与の支払い状況について会社の証明が必要なので、協会けんぽは1か月単位で給与の締切日ごとに申請することをすすめています。1か月単位で申請すると最初の入金は休み始めてから1か月以上先になるので、その間の生活費を先に見積もっておくと安心です。
おわりに──全部を今日決めなくていい
休職の手続きは、医療機関と会社と健康保険の3か所にまたがるので、まとめて考えようとすると、それだけで疲れてしまいます。でも順番は決まっています。受診して、申し出て、規則を読んで、休んだあとに申請する。それだけです。
休職の手続きは、一度に全部決めなくていい。次の一つが分かっていれば、それで足りる。
いまの自分にできそうな一つだけを、今日やればいいと思います。受診の予約でも、人事への一通のメールでもかまいません。残りは、休みながら一つずつ片づけていけば大丈夫です。