働き方とメンタル

傷病手当金(うつ病)の申請と退職後の扱い|いくら・診断書・注意点

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最終更新:2026年10月18日

傷病手当金は、うつ病などで仕事に就けず給与が出ないときに、健康保険から1日あたり標準報酬日額(標準報酬月額の平均の30分の1)の3分の2が支給される制度です。病名で決まるのではなく、業務外の病気で「仕事に就くことができない」と医師の意見などから判断されるかどうかで決まるので、うつ病や適応障害で休む場合も対象になりえます。全国健康保険協会(協会けんぽ)の案内では、連続3日間の待期のあと4日目から、支給開始日から通算して1年6か月まで受け取れます。退職後も、退職日までに1年以上加入していたなどの条件を満たせば受け取り続けられます。この記事では、いくらもらえるかの計算、申請書の医師記入欄、退職後の扱い、不正受給の決まりまでを、協会けんぽと法令のページで確認できた範囲で整理します。

うつ病でも傷病手当金はもらえる?支給の条件4つの一覧

うつ病でも、次の4つの条件をすべて満たせば傷病手当金は支給されます。条件は協会けんぽの病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)に並んでいるもので、病名の種類による区別はありません。

条件 中身(協会けんぽの案内) うつ病で休むときに確かめること
(1) 業務外の病気やケガの療養のための休業 自宅療養の期間も対象。仕事が原因の病気(労災の対象)は除く 仕事の負荷が原因と考えられる場合は、労災の相談先も確かめる
(2) 仕事に就くことができない 療養担当者(医師)の意見等を基に、本人の仕事の内容を考慮して判断する 主治医に、いまの仕事の中身を具体的に伝えておく
(3) 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けない 連続3日間の待期のあと、4日目から支給。待期には有給休暇や土日・祝日も含む 休み始めた日を記録しておく。2日休んで出勤すると待期は成立しない
(4) 休業期間に給与の支払いがない 給与が出ていれば支給しない。傷病手当金より少なければ差額を支給 有給休暇を使った日は給与ありの扱いになる

(1)の注意は、仕事が原因と考えられる病気は労災保険の対象になり、傷病手当金の対象から外れることです。協会けんぽのよくある質問でも、業務上や通勤途中での病気やケガは労働基準監督署に相談するよう案内しています。どちらにあたるか自分で決めきれないときは、両方の窓口に聞いて構いません。

(2)の「仕事に就くことができない」は、寝込んで動けない状態だけを指すわけではありません。協会けんぽのよくある質問は、労務不能を「被保険者が今まで従事している業務ができない状態」と説明しています。基準はあくまで、いまの仕事ができるかどうかです。

傷病手当金はいくら?計算式と月額の目安

傷病手当金の1日あたりの額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2をかけた額です。根拠は健康保険法第99条で、協会けんぽも同じ式を案内しています。

標準報酬月額は、残業手当や通勤手当なども含めた毎月の給与を一定の幅の等級に当てはめた額で、社会保険料の計算に使われています(日本年金機構の説明)。12か月とも同じ等級だった場合の目安を、協会けんぽの端数処理(30分の1は10円未満を四捨五入、1日額は1円未満を四捨五入)で計算すると次のようになります。

標準報酬月額(例) 30分の1 1日あたりの支給額 30日分の目安
20万円 6,670円 4,447円 約13万3千円
30万円 10,000円 6,667円 約20万円
40万円 13,330円 8,887円 約26万7千円

表は式に当てはめた例で、実際の額は等級の変化や給与の支払い状況で変わります。協会けんぽのページには、標準報酬月額16万円が6か月と18万円が6か月の場合に1日3,780円になる計算例も載っています。加入期間が12か月に満たない人は、加入してからの平均と、全被保険者の平均(支給開始日が令和7年4月1日以降なら32万円)のいずれか低いほうで計算されます。

支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。厚生労働省の令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されますによると、2022年1月の改正で、途中で出勤して支給されない期間があれば、その分を後ろに繰り越せるようになりました。同じ病気で休職と復職をくり返す場合でも、受け取れる日数の合計は1年6か月分あります。

申請の流れと申請書の医師記入欄──会社に出す診断書との違い

傷病手当金の申請には、会社に出す休職用の診断書とは別に、申請書そのものに医師の意見を書いてもらう欄があります。協会けんぽの健康保険傷病手当金支給申請書は、本人・会社・医師の3者がそれぞれ記入する形です。会社に出す診断書の受け取り方と休職の順番は、うつ病で休職するときの手続きと順番に書きました。

ページ 書く人 主な中身
1〜2ページ 本人(被保険者) 申請する期間、傷病名、振込先、給与の有無、障害年金・老齢年金・労災の受給の有無
3ページ 会社(事業主) 申請期間の出勤状況と給与の支払い状況の証明
4ページ 医師(療養担当者) 労務不能と認めた期間、傷病名、初診日、症状および経過、その期間に診療した日の有無

4ページの医師の欄で中心になるのは「労務不能と認めた期間」です。協会けんぽの記入例(PDF)は、この期間を「勤務先での従前の労務に服することができない期間」と定義し、医師に対して、治療期間ではなく療養のため就労できなかったと認められる期間を書くよう案内しています。主治医には、休んでいる日付と、もともとの仕事の内容を伝えておくと書いてもらいやすくなります。

申請の区切りについて、協会けんぽは、会社の証明が必要なため1か月単位で給与の締切日ごとに申請することをすすめています。会社の証明は申請期間が過ぎてからの日付で書く決まりなので、申請はいつも休んだ期間のあとになります。審査で支払い可能なら、受付日から10営業日以内に振り込まれます。申請しないまま時間がたった場合も、受け取る権利は労務不能だった日ごとに翌日から2年で時効になるので、2年以内なら申請できます。

医師の欄は、診察した医師が書くものです。通院の負担が大きい時期は、オンライン診療で診察を受け、書類の対応を相談する方法もあります。たとえばエニキュアは、公式サイトで保険診療であること、傷病手当金の意見書や休職用の診断書、会社規定の書式などに対応していることを案内しています。同じページに、診察なしでの書類発行は行わないこと、医師の判断で発行できない場合があることも書かれています。

エニキュアで書類発行の条件を確かめる保険診療・オンライン・傷病手当金の書類にも対応(発行は医師の判断)

退職後も傷病手当金はもらえる?継続給付の条件と健康保険の切り替え

傷病手当金は、条件を満たせば退職したあとも残りの期間を受け取り続けられます。協会けんぽの案内とよくある質問では、資格喪失後の継続給付の条件は次のとおりです。

条件・注意 中身(協会けんぽの案内)
加入期間 退職日までに、継続して1年以上の被保険者期間がある(任意継続・共済組合・国民健康保険の期間は除く)
退職日の状態 退職日に傷病手当金を受けているか、受ける条件(支給条件の(1)〜(3))を満たしている
退職日の出勤 退職日に出勤すると、継続給付の条件を満たさず、退職日の翌日以降は支給されない
一度働ける状態になったら その後また働けなくなっても、継続給付は支給されない
老齢年金との関係 継続給付中に老齢厚生年金などを受けるようになると支給されない。年金額の360分の1が日額より低ければ差額を支給

いちばん見落としやすいのは、退職日の出勤です。最終日に挨拶や引き継ぎのために出社すると、それだけで退職後の分が受け取れなくなります。退職日を有給休暇や欠勤の扱いにできるか、退職の手続きを始める前に会社と確認しておくと安心です。受診・休職・お金・復職の順番の全体は、働く人のメンタル不調と働き方の記事で一枚にまとめています。

退職すると健康保険の加入先も変わります。協会けんぽの任意継続のページでは、退職後の選択肢は任意継続・国民健康保険・家族の健康保険の3つで、任意継続は退職日の翌日から20日以内に手続きし、加入できるのは2年間、保険料は事業主が負担していた分も自分で払うため原則として在職時の2倍(上限あり)と案内されています。任意継続の期間中に新しく発生した病気は傷病手当金の対象外です。在職中から受けている傷病手当金は、健康保険法第104条により、退職前と同じ保険者から継続して受ける形になります。

雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)は、すぐに働ける人のための給付なので、病気ですぐに就職できない間は受けられません。ハローワークの案内によると、病気などで引き続き30日以上働けないときは、その日数だけ受給期間を延長でき、延長できるのは最長3年間です。療養を終えてから基本手当を受ける順番にできるので、延長の申請ができることも覚えておくと安心です。傷病手当金だけで足りないときに使える制度は、休職中にお金がないときに使える制度一覧に並べています。退職の進め方そのものは退職代行を使う前に知っておきたいことに、次の仕事を探すときの準備はマーケターが転職で後悔しないために、動く前にやることに書きました。

「嘘」と言われないか不安な人へ──不正受給の決まりと注意点

傷病手当金の不正受給は、偽りその他不正の行為で給付を受けることで、健康保険法には返還と支給停止の決まりがあります。医師の意見と会社の証明に沿って、実際に働けなかった期間を申請することは、制度が想定しているそのままの使い方です。

条文(健康保険法) 中身
第58条第1項 偽りその他不正の行為で保険給付を受けた者から、保険者は給付の価額の全部または一部を徴収できる
第58条第2項 事業主の虚偽の証明や、医師の診断書の虚偽の記載で給付が行われたときは、事業主や医師にも連帯して納付を命じられる
第120条 偽りその他不正の行為で給付を受けた、または受けようとした者に、6か月以内の期間を定めて傷病手当金の全部または一部を支給しない決定ができる

条文はe-Gov法令検索の健康保険法で読めます。申請書は本人・会社・医師の3者が記入し、医師と会社の欄にはそれぞれ「上記のとおり相違ないことを証明します」という一文があるので、一人の申告だけで支給が決まる仕組みではありません。

「本当につらいのに、怠けていると思われないか」と不安になる人もいると思います。でも判断の基準は、見た目の元気さではなく、医師の意見といまの仕事の内容です。休職中に別の仕事で収入を得る、退職日に出勤する、労災の給付と重なるといった、条件にかかわる事情があるときは、自己判断せず先に協会けんぽの支部へ聞いておくと、あとで返還を求められる心配がなくなります。協会けんぽの申請書の記入例にも、労災の休業補償給付と期間が重なった場合は、支給した傷病手当金を返納してもらうと書かれています。

この記事の数字と手続きは、協会けんぽの加入者向けの案内に沿っています。健康保険組合に入っている人は、法律上の基本は同じ健康保険法ですが、申請書の様式や提出先は組合の案内で確かめてください。この記事は一般的な情報の整理であり、医療上の判断は主治医に相談してください。つらさが強いときは、厚生労働省のまもろうよ こころに電話やSNSの相談窓口がまとまっています。働く人向けにはこころの耳の相談窓口もあります。

うつ病の傷病手当金に関するよくある質問

うつ病で休むと傷病手当金はいくらもらえますか?

1日あたり、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割り、3分の2をかけた額です。標準報酬月額が12か月とも30万円なら1日6,667円で、30日分の目安は約20万円になります。給与が一部出ている場合は、その分が差し引かれます。

退職後も傷病手当金はもらえますか?

退職日までに継続して1年以上健康保険に加入していて、退職日に傷病手当金を受けているか受ける条件を満たしていれば、退職後も残りの期間を受け取れます。協会けんぽは、退職日に出勤すると継続給付の条件を満たさないと案内しています。一度働ける状態になったあとは、また働けなくなっても継続給付は支給されません。

傷病手当金の申請には診断書が別に必要ですか?

協会けんぽの申請書には、医師が労務不能と認めた期間や症状の経過を書く欄があり、この欄が医師の意見になります。会社に出す休職用の診断書とは別のものなので、会社用の診断書とは別に、申請書の4ページ目を主治医に書いてもらいます。申請は1か月単位で給与の締切日ごとに出すことがすすめられています。

傷病手当金を嘘で受け取るとどうなりますか?

健康保険法では、偽りその他不正の行為で受け取った給付は全部または一部を徴収でき、6か月以内の期間を定めて傷病手当金を支給しない決定もできます。虚偽の証明をした会社や医師にも連帯して納付を命じられる決まりがあります。実際に働けなかった期間を、医師の意見と会社の証明に沿って申請するのは、制度が想定している使い方です。

おわりに──働けない期間を、働けないまま過ごしていい

傷病手当金の条件や計算式を並べていくと、制度が見ているものはずっと同じだと分かります。いまの仕事ができるかどうか。そして、その期間に給与が出ていないかどうか。気持ちの強さや、がんばりの量は、どこにも書かれていません。

休んだから受け取るのではない。受け取れるから、休める。

だから受け取ることに引け目を感じなくていいと思います。申請書の3つの欄を一つずつ埋めたら、あとは療養に時間を使えば十分です。働けない期間を、働けないまま過ごしていい。そのためにある制度です。

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