最終更新:2026年10月18日
「仕事に行きたくない」が10日から2週間ほど続き、眠れない、食欲が変わった、朝に涙が出るといった体と心のサインが重なっているなら、それは心療内科や精神科に相談してよい目安です。厚生労働省の働く人向けサイト「こころの耳」も、うつ病のサインの一つひとつは誰にでもあるものだとしたうえで、それが10日から2週間以上続く場合は注意が必要だと書いています。気持ちの弱さを測る話ではなく、サインの重なりと続いている長さを見る話です。この記事では、公的なページに載っているサインをチェック表にまとめ、受診するかどうかの判断と、相談先の選び方を順番に書いていきます。
「仕事に行きたくない」が続くときの受診の目安とは?心身のサインのチェック表
受診の目安は、下の表のサインがいくつか重なっていて、それが10日から2週間以上続き、仕事や生活に支障が出ているかどうかです。表の中身は、厚生労働省の「こころの耳」と、同じく厚生労働省の「こころもメンテしよう」に載っている項目を、働く人の目線で並べ直したものです。
| 見る場所 | 具体的なサイン | 出典 |
|---|---|---|
| 続いている長さ | 下のサインが10日から2週間以上続いている | こころの耳「ご家族の方へ」 |
| 睡眠 | 寝つきに30分以上かかる、夜中に何度も目が覚める、朝いつもより早く目が覚めて悪い考えごとをする、熟睡感がない。逆に眠りすぎることもある | こころの耳「うつ病の主な症状と原因」/こころもメンテしよう「うつ病」 |
| 食欲・体重 | 食欲がない、食べてもおいしくない。食欲が急に増えた。体重が減った、または増えた | こころの耳「うつ病を防ぐ」 |
| 疲れ | 朝からぐったりしている。いくら寝ても疲れが抜けない | こころの耳「うつ病を防ぐ」 |
| 気分 | 憂うつな気分が続く。好きだったことを楽しめない。良いことがあっても気分が晴れない | こころの耳「うつ病の主な症状と原因」 |
| 朝の調子と涙 | 朝がいちばんつらく、午後から夕方にかけて少し楽になる。毎日泣いてばかりいる | こころもメンテしよう「うつ病」/同「気分が落ち込む」 |
| 体 | 体の病気が見つからないのに、頭の重さ、頭痛、めまい、吐き気、下痢や便秘などが続く | こころの耳「うつ病を防ぐ」 |
| 仕事での行動 | 遅刻や欠勤が増えた。会社に行きたがらない。頭が回らず、これまでできていたことが進まない、決められない | こころの耳「ご家族の方へ」「うつ病を防ぐ」 |
| すぐに相談したいサイン | 死にたい、消えてしまいたい、いなければよかったと思う | こころもメンテしよう「うつ病」 |
表の「仕事での行動」の行に、会社に行きたがらない、という項目があります。「仕事に行きたくない」は、公的なページでもサインの一つとして扱われている言葉です。ただ、その一行だけで何かが決まるわけではありません。見てほしいのは、睡眠や食欲や朝の調子といった別の行と重なっているか、そしてそれが2週間ほど続いているかです。
いちばん下の行だけは、期間を待たなくていいサインです。そう思う日があるなら、2週間を数えずに、この記事の後半に書いた窓口か医療機関にその日のうちに連絡してほしいと思います。
表に当てはまるものが複数あって迷っているなら、迷っている時点で一度相談してかまいません。受診は「病気だと確定してから行く場所」ではなく、「いまの状態をいっしょに整理してもらう場所」として使えます。仕事を休んで通院する時間が取れない人には、スマートフォンで診察を受けられるオンライン診療という選択肢もあります。
自分の状態をもう少し落ち着いて確かめたいときは、こころの耳の「5分でできる職場のストレスセルフチェック」も使えます。仕事のこと、最近1か月の心と体の状態、周りの人の支え、満足度の4つのステップで57問に答える形で、厚生労働省の「職業性ストレス簡易調査票」がもとになっています。
「甘えでは」と迷うときは、心身のサインとして見る
「行きたくない」が続くことを、気持ちの問題として片づけなくていい理由は、公的なページがうつ病を「怠け」や「気の持ちよう」ではないと明言しているからです。厚生労働省の「こころもメンテしよう」には、うつ病は決して怠けているわけでも、気の持ちようで何とかなるものでもない、と書かれています。
こころの耳の「うつ病とは」では、うつ病を脳のエネルギーが欠乏した状態と説明しています。ふだんの憂うつや食欲の落ち込みは、時間がたてば自然に戻っていくのが通常で、時間がたっても改善しない、あるいは悪化していく場合に「病気」としてとらえると整理されています。この考え方を使うと、ふつうの「行きたくない」とサインとしての「行きたくない」の違いが見えやすくなります。
| 比べるところ | よくある「行きたくない」 | サインとして見たい「行きたくない」 |
|---|---|---|
| 休んだあと | 週末や休みの日をはさむと、気持ちが少し戻る | 休んでも戻らない。月曜でなくても朝がつらい |
| 良いこと | 好きなことをすると気分が晴れる | 良いことがあっても気分が晴れない |
| 体 | 眠れて、食べられている | 睡眠や食欲が変わり、疲れが抜けない |
| 長さ | 数日で波が引く | 10日から2週間以上続いている |
| 仕事 | 気は重いが、手を動かせば進む | 頭が回らない、決められない、遅刻や欠勤が増えた |
同じページには、義務感が強い、仕事熱心、完璧主義、几帳面といった性格の人ほど、エネルギーの放出も多いと書かれています。頑張れる人ほど、エネルギーが尽きるまで頑張ってしまうことがある、という読み方ができます。だから「まだ頑張れるかどうか」は、受診するかどうかの物差しにはなりにくいと思います。
仕事のつらさを感じていること自体は、少数派の話でもありません。厚生労働省の「令和7(2025)年 労働安全衛生調査(実態調査)」(2026年8月7日公表)では、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある労働者の割合は67.5%でした。その内容は「仕事の量」と「仕事の失敗、責任の発生等」がともに39.5%で最も多く、次が「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」の32.9%です。
つらいのは自分だけ、とは考えなくていい数字です。ただ、多くの人が感じているからといって、我慢していい理由にはなりません。同じ調査で、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した労働者か退職した労働者がいた事業所は13.5%ありました。
朝がいちばんつらい・毎日泣いてしまうときの見方
朝がいちばんつらく、昼すぎから少し動けるようになる波は、公的なページにも書かれている典型的なサインです。「こころもメンテしよう」には、うつ病の症状は朝の調子がいちばん悪く、午後から夕方にかけて改善してくることがよくあり、周りからはサボっているように見えるかもしれない、と書かれています。
この波があると、朝は起き上がれなかったのに、夕方には「やっぱり行けたのでは」と自分を責めてしまいがちです。でも、夕方に少し楽になること自体が、表に並べたサインの一部です。夕方の自分を基準にして、朝の自分を責めなくていいと思います。
涙についても同じです。「こころもメンテしよう」の「気分が落ち込む」のページには、毎日泣いてばかり、眠れない、頭が重い、食べられない、人と話すのが面倒、という状態が何週間も続くなら、だれかの助けが必要だと書かれています。出勤前に涙が出る日が続くなら、それはがまんの量を増やす合図ではなく、相談先を探す合図として受け取っていいはずです。
朝に涙が出て、どうしても家を出られない日は、まず休みの連絡を入れて体を休めることを先にしていいと思います。そのうえで、受診に向けて次の4つだけを毎日メモしておくと役に立ちます。
- 何時に寝て、何時に目が覚めたか(夜中や早朝に目が覚めたか)
- 食事が取れたか、おいしいと感じたか
- 朝と夕方で、気分や体の重さがどう違ったか
- 出勤できたか、仕事のどこで手が止まったか
2週間分のメモがあれば、診察で「いつから、どのくらい」を自分の言葉で説明しやすくなります。こころの耳の「うつ病を防ぐ」には、相談の前に内容をきちんと整理しなくてもよく、今の状態をそのまま受け止めてもらうくらいの気持ちでいい、とも書かれています。メモは整理するためではなく、思い出す負担を減らすためのものです。
広告の仕事を長くしてきて思うのは、締め切りが続く職場ほど、こうしたサインを「いまは繁忙期だから」と季節のせいにしやすいことです。繁忙期が終われば戻る、と考えているうちに、次の締め切りが来てしまう。期間で見る公的なページの考え方は、忙しさの波に流されないための物差しにもなります。
受診のハードルを下げる選択肢──どこに、どう相談するか
受診先は、精神科や心療内科だけではありません。体の症状が先に出ているならかかりつけ医、会社に産業医や保健師がいるならその人、まず話を聴いてほしいなら電話やSNSの公的な相談窓口と、いまの自分が動きやすい入口から始めればいいと思います。
| 相談先 | 向いているとき | 探し方・窓口 |
|---|---|---|
| 精神科・心療内科 | チェック表のサインが重なって続いている | こころの耳「全国医療機関検索」 |
| オンライン診療 | 通院の時間が取れない、外に出るのがしんどい | オンライン診療に対応している精神科・心療内科 |
| かかりつけ医 | 頭痛や胃腸の不調など、体の症状が先に目立つ | ふだん通っている医療機関 |
| 産業医・保健師など | 勤務先に産業保健のスタッフがいる | 勤務先の人事・総務、健康管理の窓口 |
| こころの耳電話相談 | まず誰かに話を聴いてほしい | 0120-565-455(平日17時〜22時、土日10時〜16時。祝日・年末年始を除く) |
| こころの耳SNS・メール相談 | 電話で話すのが負担 | SNS相談/メール相談 |
| こころの健康相談統一ダイヤル | 住んでいる地域の公的な相談機関につながりたい | 0570-064-556(ナビダイヤル。通話料がかかる) |
産業医や保健師に相談するのが不安な人もいると思います。こころの耳の「うつ病を防ぐ」には、医療職は守秘義務を負っていて、相談内容を上司や人事に伝える必要があるときも、本人に伝えて了解を得てから進めるのが一般的だと書かれています。気になるなら、相談した内容がどう扱われるかを最初に聞いてかまいません。
こころの耳電話相談は、2026年1月から発信者番号を通知しない電話を受け付けていません。非通知の設定にしている場合は、番号の前に「186」をつけてかける必要があります。病名の診断や治療方法の提示はできない窓口なので、話を整理する場所として使い、受診の判断は医療機関でつけるのが順番です。
医療機関に行く前に、まず誰かに話を聴いてもらう場所がほしい人もいます。医療とは別の選択肢としてのカウンセリングについては、マーケターがメンタルを整えることを後回しにしない理由に書きました。眠れない日が続く人は、睡眠から始める体のメンテナンスの話も手がかりになるかもしれません。ただ、チェック表のサインが続いているなら、セルフケアより先に受診を置いてほしいと思います。
注意点──セルフチェックは診断ではなく、急ぐ日は待たなくていい
この記事は一般的な情報の整理であり、医療上の判断は主治医に相談してください。つらさが強いときは、厚生労働省の「まもろうよ こころ」に載っている電話やSNSの相談窓口へ連絡してください。
チェック表もセルフチェックも、あくまで受診するかどうかを考える材料です。こころの耳の「うつ病を防ぐ」は、簡単な質問に答えて点数が出るようなチェックは「可能性」を示すもので「診断」ではなく、質問紙だけでは正確な診断名は得られない、と注意しています。当てはまる数が少なくても、つらさが強いなら相談していいし、多くても自分で病名を決める必要はありません。
こころの耳の「うつ病とは」には、うつ状態だけが続くうつ病と、うつ状態と躁状態をくり返す双極性障害は治療法が異なるので、専門家による判断が必要だとも書かれています。
「死にたい」「消えたい」という気持ちがあるときは、期間を数えずに相談してください。まもろうよ こころには、24時間つながる窓口として「#いのちSOS」(0120-061-338)と「よりそいホットライン」(0120-279-338)が載っています。
もう一つ、つらさの最中に退職のような大きな決断を一人で決めてしまわないことも、ぼくは大事だと思っています。辞めることが悪いのではありません。ただ、眠れず食べられない状態で選んだ答えは、あとで自分でも理由を説明しにくくなります。休む場合の順番は働く人のメンタル不調と働き方にまとめました。それでも今の職場から離れる必要があるときの選択肢は、退職代行を使う前に知っておきたいことにまとめています。
「仕事に行きたくない」と受診に関するよくある質問
仕事に行きたくないのは甘えですか?
厚生労働省の「こころもメンテしよう」は、うつ病は怠けているわけでも、気の持ちようで何とかなるものでもないと書いています。こころの耳でも、会社に行きたがらないことはうつ病のサインの一つに挙げられています。睡眠や食欲の変化が重なって10日から2週間以上続いているなら、気持ちの問題として片づけず、医療機関に相談していい目安です。
心療内科に行く目安は、何日くらい続いたらですか?
こころの耳は、うつ病のサインが10日から2週間以上続く場合は注意が必要だとしています。眠れない、食欲が変わった、朝がいちばんつらいといったサインが重なっているかもあわせて見てください。死にたい気持ちがあるときは、日数を待たずにすぐ相談してください。
朝に涙が出て動けない日は、休んでもいいですか?
休みの扱いは勤務先の決まりによりますが、まず休みの連絡を入れて体を休めることを先にしていいと思います。毎日泣いてばかりの状態が続くことは、厚生労働省のページでもだれかの助けが必要なサインとして書かれています。そうした日が続くなら、睡眠や食事のメモを持って受診を考えてください。
受診したら、すぐに休職することになりますか?
受診したからといって、すぐに休職が決まるわけではありません。働きながら通院するのか、仕事の量を調整するのか、休むのかは、医師の判断と、勤務先の就業規則に書かれた休職制度で決まります。まずは今の状態を医師に伝えることが先で、休むかどうかはそのあとに考えれば十分です。
おわりに──「行きたくない」は、がまんで消さなくていい
「仕事に行きたくない」と検索するとき、多くの人が本当に知りたいのは、自分が弱いのかどうかだと思います。でも、公的なページに書かれているのは、弱さの測り方ではなく、サインの重なりと長さの見方でした。眠れているか、食べられているか、朝と夕方でどう違うか、それが何日続いているか。見るのはそこだけで足ります。
行きたくない気持ちを、無理に消そうとしなくていい。2週間分のメモにして、医師に渡せばいい。
受診の予約を取ることは、何かを決めることではありません。今の状態を、自分以外の誰かといっしょに見てもらう準備です。そこから始めればいいと思います。