マーケの目

リテールメディアとは?種類と日本の事例、市場規模をわかりやすく

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最終更新:2026年10月12日

リテールメディアとは、小売企業やECモールが自社の購買データと売り場(アプリ・ECサイト・店頭のサイネージ)を広告枠として、メーカーなどの広告主に提供する広告の仕組みです。テレビや一般のウェブ広告と違うのは、広告が出る場所が「買う直前の面」であることと、出した広告が実際の購買につながったかを、小売側の購買データで確かめられることです。だから刈り取りには強い。ただ、刈り取りに強い道具ほど、育てる側の手を抜いたときの反動も大きくなります。この記事では、リテールメディアの種類を一覧表で整理したうえで、日本の主要なプレイヤーと市場規模、検索広告やオウンドメディアとの違い、実務での使い方の注意まで書いていきます。

リテールメディアとは?意味と種類の一覧

リテールメディアは、広告が出る場所によって、ECサイトやアプリの中に出す「オンサイト」、小売のデータを使って外部のメディアに出す「オフサイト」、実店舗の中に出す「インストア」の3つに分けて整理できます。どれも、小売企業が持つ「誰が、何を、いつ買ったか」というデータが土台になっている点は共通しています。

種類 広告が出る場所 主な例 強み 限界
オンサイト 小売企業のECサイト・アプリの中 商品検索の結果に出るスポンサー商品、商品ページの関連枠、アプリのクーポン面 買う気のある人が、まさに商品を探している瞬間に出せる そのサイトに来た人にしか届かない。もともと買う予定の人にも当たりやすい
オフサイト 小売企業の外のメディア(SNS・動画・ほかのサイト) 購買データで作った配信対象に、外部の広告面で配信する 買い物の履歴をもとに、まだ店に来ていない人にも届けられる 買う直前の面ではなくなるので、普通のデジタル広告に近い効き方になる
インストア 実店舗の中(サイネージ・レジまわり・アプリ連動) レジ上やレジ横のデジタルサイネージ、来店客のアプリへの通知 棚の前、レジの前という、物理的に一番近い場所で出せる 誰が見たかを特定しにくく、効果の測り方が小売ごとにまちまち

三つを並べると、右に行くほど「買う直前」から離れていくのが分かります。オンサイトとインストアは、売り場そのものが広告枠になっている状態です。オフサイトは、売り場のデータを外に持ち出して使う状態です。同じ「リテールメディア」という言葉でも、どれを指しているかで期待できる効き方はかなり違います。

もう一つ押さえておきたいのは、効果の確かめ方です。通常のウェブ広告は、クリックやサイト上の購入までは追えても、スーパーやコンビニの棚で買われたかどうかまでは分かりません。リテールメディアは、会員IDとひもづいた購買データ(ID-POSなどと呼ばれます)があるので、広告を見た人がその後に店で買ったかどうかまで集計できる場合があります。小売企業から見ると、会員との直接の接点で集めたファーストパーティデータを、広告の価値に変えているということでもあります。広告主にとっての一番の魅力はここにあります。

リテールメディアの出どころ──日本の主要プレイヤーと市場規模

「リテールメディア」という言葉を誰が最初に使ったのかは、はっきりしません。特定の論文や一冊の本から生まれた概念ではなく、小売企業が広告事業を育てていく過程で、業界の呼び名として定着していった言葉です。

流れを作ったのは、米国の大手小売とECモールです。アマゾンは、商品の検索結果や商品ページにクリック課金制で出せる「スポンサープロダクト広告」を提供しています(アマゾン広告(Amazon Ads)「スポンサープロダクト広告」)。ウォルマートは2021年1月28日、広告事業を「ウォルマート・コネクト(Walmart Connect)」に改称し、自社のデジタル面・店舗・外部メディアの3方向に広げる方針を発表しました(ウォルマート公式ニュースリリース)。サジェストに「ウォルマート リテールメディア 事例」が出てくるのは、この動きが日本でも参照されてきたからだと思います。

日本で公式に発表されている主な動きを、確かめられた範囲でまとめると次のとおりです。

企業 業態 公式発表の内容 出典
アマゾン ECモール 検索結果や商品ページに出せるクリック課金制のスポンサープロダクト広告 アマゾン広告(Amazon Ads)公式ページ
ファミリーマート コンビニ 2021年8月19日、伊藤忠商事と店頭のデジタルサイネージを使うメディア事業の新会社設立を発表。2020年10月に設立されたデータ・ワンのデータと連携して広告を販売するとした ファミリーマート公式ニュースリリース
セブン‐イレブン・ジャパン コンビニ 2026年6月11日、電通・サイバーエージェントとの合弁会社「セブン‐イレブン・アドコネクト」の設立に合意したと発表。店舗サイネージ・アプリ・POSデータを使い、2026年9月1日から事業を始めるとした サイバーエージェント公式ニュースリリース

ファミリーマートの発表はファミリーマートのニュースリリース(2021年8月19日)、セブン‐イレブンの合弁会社はサイバーエージェントのニュースリリース(2026年6月11日)で確認できます。後者では、約22,000店舗と約2,800万人のアプリ会員(いずれも2026年5月末現在)という基盤が示されています。

市場規模については、CARTA HOLDINGSとデジタルインファクトが2025年1月23日に発表した共同調査があります(CARTA HOLDINGSのプレスリリース)。この調査では、2024年の国内リテールメディア広告市場を4,692億円と推計し、内訳はEC事業者が4,142億円、店舗事業者が550億円でした。2028年には1兆845億円に広がると予測しています。数字を見ると、いまの市場の大半はECモールの広告で、店舗の広告はまだ小さいことが分かります。逆に言えば、コンビニやスーパーの動きは、これから伸びる部分に賭けている段階です。

検索広告・ディスプレイ広告・オウンドメディアとの違い

リテールメディアと他の広告との一番の違いは、広告を出す場所と、効果を確かめるデータの持ち主が、同じ小売企業であることです。検索広告もディスプレイ広告も、購買そのものは広告の外で起きますが、リテールメディアでは広告と購買が同じ店の中で完結します。

項目 リテールメディア 検索広告 ディスプレイ広告 オウンドメディア
枠の持ち主 小売企業・ECモール 検索エンジン ウェブサイト・アプリ・SNS 自社
出る瞬間 買い物の最中、棚やレジの前 調べている最中 別のことをしている最中 自社を訪ねてきたとき
使うデータ 小売が持つ購買データ 検索キーワード 閲覧履歴・属性 自社サイトでの行動
得意なこと 最後のひと押し、購買の確認 今まさに探している人の取り込み まだ探していない人への認知 止めても残る信頼の蓄積

検索広告の仕組みはリスティング広告とは?仕組みと品質スコア、ディスプレイ広告との違いにまとめています。リテールメディアのオンサイト広告は、ECモールの中で動くリスティング広告に近いものです。違いは、検索している人がすでに「買い物の場」にいることです。調べものの途中ではなく、カートに入れる手前にいる人に出せます。

サジェストには「リテールメディア オウンドメディア 違い」も出てきます。小売企業から見れば、自社のアプリやサイトはオウンドメディアです。それを他社の広告枠として売り始めた瞬間、広告主から見ればお金を払って使うペイドメディアになります。同じ画面でも、誰の立場から見るかで呼び名が変わる、ということです。メディアを持ち主で分ける考え方はトリプルメディアとは?意味と古いと言われる理由、PESOとの違いで書いています。

実務での使い方──買う直前の面は、刈り取りに強い

リテールメディアは、欲しい気持ちを作る場所ではなく、すでに生まれた欲しい気持ちを取りこぼさない場所です。実務では、この「刈り取りに強い」という性質を、強みとしても落とし穴としても理解しておく必要があります。

強みとしては、ファネルの一番下を確実に押さえられることです。テレビCMやSNSで興味を持った人が、いざ店に行ったら競合の商品が目立つ棚に並んでいて、そちらを手に取ってしまう。この最後の取りこぼしを防げるのがリテールメディアです。購買までの段階の考え方はパーチェスファネルとは?段階の例とダブルファネルとの違いを解説で整理していますが、リテールメディアが効くのは、その一番下の段です。

落とし穴は、数字が良く見えすぎることです。買う直前の人に広告を出すので、広告を見た人の購入率は高く出ます。でもその中には、広告がなくても買っていた人がかなり含まれます。広告費に対する売上(ROAS)が高いのは、広告が売上を生んだからなのか、もともと買う人に当てていただけなのか。ここを分けずに予算を寄せていくと、刈り取りばかりが増えて、次に刈り取る畑を育てる予算が細っていきます。ROASの読み方はROASとは?読み方・計算式とROI・CPAとの違いを例でわかりやすく解説にまとめています。

広告会社にいた頃、テレビCMを考えるチームと、店頭の販促物を考えるチームは、たいてい別々に動いていました。認知は認知、店頭は店頭。リテールメディアは、この二つが一つの数字でつながって見える道具です。だからこそ、つながって見えた数字の中で「どこが本当に効いたのか」を問い直す役目は、使う側に残ります。

判断の手順は、次の4つで足ります。

  • まず、この商品がファネルのどこで負けているかを決める。知られていないのか、知られているのに店で選ばれていないのか
  • 店で選ばれていないなら、リテールメディアの出番。知られていないなら、先に認知の施策を考える
  • 出稿するときは、広告を出さない比較グループを残せるかを小売側に確認する(広告がなくても買った人との差を見るため)
  • 結果は、新しく買った人と、もともと買っていた人を分けて見る

三つめの比較グループは、小売によって対応できる範囲が違います。でも、この問いを最初に投げるかどうかで、レポートの読み方が変わります。

日本市場・2026年時点での注意点

2026年の日本でリテールメディアを使うときに気をつけたいのは、データの扱い、効果の測り方のばらつき、店舗型がまだ立ち上がりの段階であること、の3つです。

一つめはデータの扱いです。リテールメディアは購買データを使うので、個人情報保護法との関係を避けて通れません。2022年4月1日に全面施行された改正個人情報保護法では、提供先で個人データとして使われることが想定される「個人関連情報」を第三者に渡すときに、本人の同意が得られているかの確認が求められるようになりました(個人情報保護委員会「令和2年改正個人情報保護法について」)。広告主が自社のデータを小売のデータと突き合わせるような使い方をするときは、どの形でデータが渡るのかを、小売側と法務の両方に確かめておく必要があります。

二つめは測り方です。リテールメディアの効果測定は、それぞれの小売企業が自社の基準で行っています。同じ「購買につながった」でも、広告を見てから何日以内の購入を数えるのか、店舗とECを合わせて数えるのかは、小売ごとに違うことがあります。複数の小売に出稿して結果を横に並べるときは、数字の定義をそろえてから比べないと、見かけの差に振り回されます。複数の接点の貢献をどう分けるかはアトリビューションとは?モデルの種類一覧と例、GA4での選び方と同じ問題です。

三つめは、店舗型の立ち上がりです。先ほどのCARTA HOLDINGSの推計でも、2024年時点では市場の大半がEC事業者の広告でした。セブン‐イレブンの合弁会社も、発表された事業開始日は2026年9月1日です。店舗のサイネージやアプリを使うリテールメディアは、仕組みも測り方もまだ固まりきっていない段階だと見ておくのが実態に近いと思います。最初から大きな予算を寄せるより、小さく試して、比較グループのある結果を一つずつ持ち帰るほうが確かです。

リテールメディアに関するよくある質問

リテールメディアとは簡単に言うと何ですか?

お店やECモールが、自分たちの売り場と購買データを、メーカーなどの広告枠として売る仕組みです。ECサイトの検索結果に出るスポンサー商品や、コンビニのレジ上のサイネージ広告がその例です。買う直前の場所に出せることと、実際に買われたかを購買データで確かめられることが特徴です。

リテールメディアの日本の事例にはどんなものがありますか?

公式発表で確かめられるものとして、アマゾンのスポンサープロダクト広告、ファミリーマートの店頭サイネージを使うメディア事業(2021年8月発表)、セブン‐イレブン・ジャパンが電通・サイバーエージェントと設立した「セブン‐イレブン・アドコネクト」(2026年9月1日に事業開始と発表)があります。ECモールが先に広がり、コンビニなどの店舗型が後から本格化している流れです。

リテールメディアの市場規模はどのくらいですか?

CARTA HOLDINGSとデジタルインファクトの共同調査(2025年1月発表)では、2024年の国内リテールメディア広告市場を4,692億円と推計しています。内訳はEC事業者が4,142億円、店舗事業者が550億円で、2028年には1兆845億円になると予測しています。推計の定義は調査によって変わることがあるので、別の調査の数字と並べるときは定義を確認してください。

リテールメディアはどんな商品に向いていますか?

すでにある程度知られていて、店頭やECで競合と並べて選ばれる商品に向いています。食品や日用品のように、棚の前で迷う時間が短い商品ほど、最後のひと押しの効き目が出やすくなります。まだ誰にも知られていない新しいカテゴリーの商品は、リテールメディアだけでは欲しい気持ちそのものが生まれにくいので、認知の施策と組み合わせて考えるほうがいいと思います。

おわりに──刈り取れるのは、育てた分だけ

リテールメディアは、広告の歴史の中でも珍しく、出した広告と買われた商品が一本の線でつながって見える道具です。数字が見えることは強い。でも、見えている数字が「広告が生んだ売上」なのか「広告がなくても生まれていた売上」なのかは、数字自体は教えてくれません。

買う直前の面に立てば、売上はよく見えます。でもその売上は、テレビCMやSNSや口コミが、その人の頭の中に「これが欲しい」をあらかじめ置いてくれていたから生まれたものかもしれません。刈り取りに強い道具を手にしたときほど、畑の手入れを止めていないかを問い直す必要があります。

刈り取れるのは、育てた分だけ。リテールメディアは、その当たり前を、数字で思い出させてくれる売り場だと思います。

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