マーケの目

相関と因果の違いとは?疑似相関の例とマーケティングでの見分け方

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最終更新:2026年10月17日

相関と因果の違いは、相関が「二つの数字が一緒に動くこと」、因果が「片方を動かすと、もう片方が動くこと」にあります。相関はデータを眺めれば見つかりますが、因果は眺めるだけでは確かめられません。マーケティングでいちばん多い誤読は、広告費と売上が一緒に伸びたグラフを見て「広告が効いた」と結論づけることです。気温や季節、もともと買う気のあった人の多さといった第三の要因が両方を押し上げているだけなら、それは疑似相関です。この記事では、相関・因果・疑似相関・交絡の違いを1枚の表にまとめ、架空の広告データで誤読と正しい読み方を並べ、「効いた気がする」を分解する手順まで書きます。

相関と因果の違い一覧──一緒に動くことと、動かすと動くこと

相関は「XとYが一緒に増えたり減ったりする」という観察の記録で、因果は「Xを変えたらYが変わる」という仕組みの主張です。疑似相関は因果がないのに相関が見えている状態、交絡はそれを生む原因になる第三の要因の働きを指します。

4つの言葉を、意味・問い・データから言えること・確かめ方・マーケティングでの例の5つの軸で並べました。

軸 相関 因果 疑似相関 交絡
意味 二つの変数が一緒に動く関係 片方が原因で、もう片方が結果になる関係 因果がないのに、相関だけが現れている状態 XとYの両方に影響する第三の要因が、関係をゆがめて見せる働き
問い 一緒に動いているか 動かしたら動くか 一緒に動く理由は別にないか 両方を動かしている要因は何か
データから言えること 観察データだけで計算できる 観察データだけでは原則として言い切れない 相関の数値そのものは正しく計算されている 要因を特定できれば、分けて比べ直せる
確かめ方 散布図・相関係数 ランダムに分けた比較実験、止める・増やす検証 第三の要因を入れて比べ直す 層別に分ける・条件をそろえる・ランダムに割り付ける
マーケの例 広告費が多い月ほど売上が多い 広告を止めた地域だけ売上が下がった 夏に広告費を積んだので、気温のせいで売上と広告費がそろって伸びた 気温・季節・販促・もともとの購買意欲

表の右二列は、左二列のすき間で起きる出来事です。相関があるのに因果がないとき、その理由の多くは交絡にあります。だから「相関があるか」の次に必ず聞くべきなのは、「一緒に動かしている第三の要因はないか」になります。

相関とは/因果とは──相関係数の定義と、因果を判断する手がかり

相関とは、二つの変数の間で一方が大きいともう一方も大きい(または小さい)傾向があることで、その強さを−1から1の数字で表したものが相関係数です。因果とは、原因を変えたときに結果が変わる関係のことで、相関係数をいくら眺めても、この「変えたときに」の部分は出てきません。

ふつう相関係数と呼ぶのはピアソンの積率相関係数で、二つの変数の共分散を、それぞれの標準偏差の積で割って求めます。式にすると「r=(XとYの共分散)÷(Xの標準偏差×Yの標準偏差)」です。1に近いほど右上がりの直線的な関係が強く、−1に近いほど右下がりの関係が強く、0に近いほど直線的な関係が弱いことを示します。エクセルならCORREL関数で計算できます。

相関係数には、知っておきたい限界が3つあります。福井県未来創造部統計調査課の解説資料「FUKUSTAT 統計調査課通信 2023年11月号」でも、外れ値に影響されやすいこと、直線以外の関係は正しく判定できないこと、相関関係は因果関係ではないことが注意点として挙げられています。同じ資料には、福井市の世帯の「ビールの支出額」と「アイスの支出額」に相関が見られるものの、両方に影響する気温という交絡因子を疑う必要がある、との例が載っています。

よく例に挙がる「アイスクリームの売上と水難事故の件数」も同じ構造で、暑い日にはアイスも売れ、泳ぐ人も増えるので、二つが一緒に増えます。ただ、この例を最初に誰が使ったのかは、ぼくが調べた範囲では一次出典が見当たりませんでした。統計の教科書や講義で広く使われている定番の例、と受け取っておくのが正確だと思います。

「疑似相関(見せかけの相関)」という言葉は英語のspurious correlationの訳で、19世紀末に統計学者カール・ピアソン(Karl Pearson)が、比率どうしの相関に生じる見かけの関係を論じた論文で使ったのが早い例として知られています。いまの日本語では、因果がないのに交絡因子や偶然によって現れる相関を広く指して使われています。差が偶然で説明できるかを判定する考え方は有意差とは?に書きました。

では、観察データから因果を判断する手がかりはないのか。疫学者オースティン・ブラッドフォード・ヒル(Austin Bradford Hill)は1965年の講演録「The Environment and Disease: Association or Causation?」(Proceedings of the Royal Society of Medicine)で、関連の強さ・一貫性・特異性・時間的な前後関係・量と反応の関係・もっともらしさ・整合性・実験・類似性の9つの視点を示しました。ヒル自身は、どの視点も因果を疑いなく証明するものではなく、どれも絶対の条件ではないと断っています。ただ一つ、原因が結果より先に起きていることだけは、外せない前提として扱われることが多い視点です。

混同されやすい理由と、間違えると起きること──架空の広告データで読む

相関と因果が混同されやすいのは、管理画面やレポートに並ぶ数字のほとんどが「一緒に動いた」記録なのに、見る側は「動かした結果」を知りたがっているからです。知りたい答えと手元の数字の形が違うので、手元の数字を答えの形に読み替えてしまいます。

広告会社にいた頃、キャンペーンの振り返りで「広告を出した期間に売上が伸びた」というグラフはよく見ました。ぼく自身、そのグラフを見て効いたと書きかけたことがあります。でも、同じ時期に店頭の販促も値下げも重なっていれば、伸びた理由を広告だけに背負わせることはできません。

典型的な誤読を、架空の例で計算します。以下は説明のための例で、実在の企業やサービスの数字ではありません。ある通販が、過去にサイトを訪れた人を追いかけるリターゲティング広告を出し、その期間に「広告を見た人」と「見なかった人」の購入率を比べたとします。

例:区分 広告を見た人 広告を見なかった人
全体の人数と購入 2万人中600件(3.0%) 8万人中800件(1.0%)
うち過去30日にサイト訪問あり 1万8,000人中576件(3.2%) 2,000人中60件(3.0%)
うち過去30日にサイト訪問なし 2,000人中24件(1.2%) 7万8,000人中740件(約0.95%)

全体の行だけを見ると、広告を見た人は見なかった人の3倍買っています。誤読は「この広告は購入率を3倍にした」です。正しい読み方は、「広告を見た人の9割は、もともと買う気の高いサイト訪問者だった」です。訪問歴が同じ人どうしで比べ直すと、差は3.2%と3.0%、1.2%と約0.95%まで縮みます。分けて比べると優劣が逆転することもあり、その仕組みはシンプソンのパラドックスで書きました。購入率を押し上げていたのは広告より、訪問歴という交絡のほうでした。リターゲティング広告は仕組み上、買う気の高い人に多く表示されるので、この誤読がとくに起きやすい広告です。

この例のほかにも、誤読には決まった型があります。型ごとに、誤読と正しい読み方を対にしました。

誤読の型 誤読 正しい読み方
交絡(第三の要因) 夏に広告を増やしたら売上が伸びたので、広告が効いた 気温が売上を伸ばし、担当者が夏に広告を積んだ。広告の効きは別に確かめる
逆の因果 SNSのフォロワーが多い店ほど売れているので、フォロワーを増やせば売れる 売れている店だからフォロワーが集まった可能性がある。矢印の向きを両方疑う
選択(対象の偏り) メルマガ読者は非読者より購入額が高いので、メルマガが購入額を上げた もともと熱心な人ほどメルマガに登録している。比べる二つの群が最初から違う
時系列のトレンド この2年、広告費と会員数がともに右肩上がりで、相関係数は0.9を超える 増え続ける二つの数字は、無関係でも高い相関が出やすい。月ごとの増減で比べ直す
偶然と探しすぎ 50個の指標を総当たりしたら、売上と強く相関する指標が見つかった たくさん調べれば、偶然の相関はいくつか必ず出る。事前に仮説を立てた指標で確かめる

時系列のトレンドの型は、統計学者ジョージ・ユール(George Udny Yule)が1926年に英国王立統計学会誌に発表した論文で「ナンセンスな相関」として論じた古い問題です。無関係な二つの時系列が驚くほど一緒に動く例を集めた、タイラー・ヴィゲン(Tyler Vigen)のサイト「Spurious Correlations」を眺めると、この型の危うさがよく分かります。

間違えると起きることは、ほとんどがお金の配分の失敗です。効いていない広告に予算を積み増し、本当に効いていた店頭や口コミの手当てを削る。相関を因果と読んだ判断は、もっともらしいぶん、失敗に気づくまでに時間がかかります。

相関で足りる場面と因果が要る場面──「効いた気がする」を分解する手順

相関で足りるのは「予測」や「当たりをつける」場面で、因果が要るのは「予算を動かす」「施策を続けるか止めるか決める」場面です。同じデータでも、何を決めたいかで求められる確かさが変わります。

たとえば、雨の日に宅配の注文が増えるなら、理由が分からなくても在庫と配送の手配には使えます。これは相関で足ります。でも、雨の日に広告費を上げるべきかを決めるには、「雨の日に広告を増やしたら、増やさなかった場合より注文が増えるか」の因果の問いに答える必要があります。

広告の「効いた気がする」は、次の5つの問いに分解すると因果の問いに置き換えられます。

手順 問い 具体的に見るもの
1. 時系列を並べる 原因は結果より先に起きているか 広告の開始日と、売上や問い合わせが動き始めた日を日次で並べる
2. 比較対象を置く 広告がなかったら、どうなっていたか 配信していない地域・期間・層、前年の同じ時期
3. 交絡を洗い出す 同じ時期に、ほかに動いたものはないか 季節・気温・値下げ・店頭販促・競合の動き・報道・指名検索の増減
4. 量と反応を見る 増やせば増え、減らせば減るか 出稿量を変えた週や地域ごとの反応の差
5. 実験で確かめる ランダムに分けても差は残るか ABテスト、配信を止める地域と続ける地域を分けた比較

手順1から4は、観察データのまま因果の疑わしさを減らしていく作業で、ヒルの9つの視点のうち時間的な前後関係や量と反応の関係を、広告の言葉に置き換えたものです。手順5だけが、交絡をまとめて打ち消す方法になります。ランダムに分けると、季節も購買意欲も両方の群に均等に入るからです。ランダムに分けて比べる考え方と判定の仕方はABテストとは?やり方の手順と有意差の考え方に、広告を止めた群との差で効果を測るやり方はインクリメンタリティとは?A/Bテストとの違いとジオテストのやり方にまとめました。

実験ができない場面でも、手順3の交絡の洗い出しだけは省かないほうがいいと思います。会議で「広告が効いた」という報告が出たら、同じ期間に動いたものを全員で3つ挙げてみる。それだけで、結論の確かさはかなり変わります。

日本市場・2026年時点での注意点──管理画面の数字は「関わった」記録

2026年時点で気をつけたいのは、広告の管理画面やアクセス解析に並ぶ成果の数字が、ほとんど「広告が関わった」記録であって、「広告が生んだ」記録ではないことです。数字が細かく取れるようになったぶん、相関を因果と読む機会はむしろ増えています。

一つめは、アトリビューションの数字の読み方です。購入までに触れた広告や記事に手柄を配分するアトリビューションは、経路の記録を整理する方法で、その接点がなかったら購入が減ったのかという因果は示しません。モデルの種類と使い分けはアトリビューションとは?モデルの種類一覧と例、GA4での選び方で書いています。

二つめは、統計モデルの結果も因果の答えとは限らないことです。過去の広告費と売上から媒体ごとの効きを推定するMMM(マーケティングミックスモデリング)は、オープンソースの道具が公開され、扱える会社が増えました。それでも、モデルに入れていない交絡があれば推定はゆがみます。仕組みと注意点はMMMとは?マーケティングミックスモデリングの意味にまとめていて、実験の結果でモデルを較正する考え方もそちらで触れています。

三つめは、生成AIでの分析です。データを渡せば、相関の強い組み合わせは一瞬で並べてくれます。でも、表の「偶然と探しすぎ」の型は、調べる数が増えるほど起きやすくなります。見つかった相関は答えではなく、確かめるべき仮説の候補として扱うのが安全です。

相関と因果に関するよくある質問

相関が強ければ、因果があると考えてよいのでは?

強い相関でも、因果の証拠にはなりません。気温のような交絡因子が両方を強く動かしていれば、相関係数は高く出ます。強さは因果を疑う理由の一つにはなりますが、時間の前後関係や比較対象との差を確かめて初めて、因果に近づけます。

疑似相関と交絡の違いは何ですか?

疑似相関は「因果がないのに相関が見えている状態」、交絡は「第三の要因が関係をゆがめて見せる働き」です。交絡は疑似相関を生む代表的な原因で、偶然やトレンドの重なりも疑似相関を生みます。交絡は、本当にある因果を大きく見せたり小さく見せたりすることもあります。

相関係数がいくつ以上なら「相関がある」と言えますか?

決まった基準はありません。自治体の統計解説などでは、絶対値0.7以上を強い、0.3未満をほぼ無関係とする目安が示されることもありますが、分野やデータの数で受け止め方は変わります。散布図を描き、外れ値や曲線の関係がないかを目で確かめてから、数字を読むのが確実です。

実験ができない小さな会社は、どう因果を確かめればいいですか?

広告を一定期間だけ止める、地域や曜日で出し分けるといった、小さな比較から始められます。厳密な実験でなくても、時系列を日次で並べ、同じ時期に動いた要因を書き出すだけで、誤読の多くは防げます。結果は参考値として読み、条件を変えて繰り返すと確かさが上がります。

おわりに──相関は見つけるもの、因果は確かめるもの

相関は、データの中から見つかります。眺めて、並べて、計算すれば出てきます。因果は、データの中からは見つかりません。動かしてみて、比べてみて、初めて分かります。

相関は見つけるもの、因果は確かめるもの。

広告の成果報告で「一緒に伸びました」という一枚が出てきたら、それを結論ではなく問いの始まりとして受け取ってほしいと思います。「止めたら減るか」と一度だけ聞いてみる。その一言が、予算の使い道を変えていきます。

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