マーケの目

マーケティングと営業の違いとは?部署・職種の役割と仲が悪い理由

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最終更新:2026年10月17日

マーケティングと営業の違いは、相手にする単位と時間軸にあります。マーケティングは「市場」を相手に、商品が選ばれやすい状態を数か月から数年かけてつくる仕事で、営業は「目の前の顧客」を相手に、今月の契約を結果としてつくる仕事です。ピーター・ドラッカーはマーケティングの理想を「販売を不要にすること」と書きましたが、営業がいらなくなった会社はほとんど見当たりません。結論から言えば、二つは一本の流れの前半と後半で、部署の仲が悪くなるのは仕事が違うからではなく、測っている数字が別々だからです。この記事では、違いの一覧表、それぞれの定義と出典、対立が起きる理由と共通KPIでの直し方、部署の役割分担と職種選びの判断までを書いていきます。

マーケティングと営業の違い一覧

マーケティングとは、誰に何をどう届けるかを設計し、商品が選ばれやすい状態を市場の中につくる仕事です。営業とは、特定の顧客と向き合い、相手の事情に合わせて提案し、契約という形で売上を確定させる仕事です。一文で言えば、マーケティングは「選ばれる理由」を多くの人に先に配り、営業は「この人が買う理由」をその場で一緒に組み立てます。

観点 マーケティング 営業
相手 市場(まだ名前の分からない多くの人) 顧客(名前と顔の分かる一社・一人)
時間軸 数か月〜数年。仕組みが効くまで時間がかかる 今月・今期。商談ごとに結果が出る
主な指標 認知・リード数・商談化率・顧客獲得単価 受注件数・受注金額・成約率・売上
一人称(主語) 「お客さまは」と複数形で考える 「この人は」「この会社は」と単数形で考える
成果物 選ばれる理由、届け方、見込み客の流れ 提案、見積もり、契約
失敗のしかた 見込み客は集まるのに、買う人がいない 目の前の一件は取れるのに、毎月ゼロから探し直す

表の中でいちばん差が出るのは「一人称」の行だと思っています。マーケティングの人は「お客さまはこう考える」と複数形で話し、営業の人は「あの会社の部長はこう言っていた」と単数形で話します。どちらも正しい。でも、複数形の話は営業から見ると現場を知らない一般論に聞こえ、単数形の話はマーケティングから見ると一社の声を全体に広げすぎに聞こえます。部署のすれ違いの多くは、この主語の違いから始まります。

マーケティングとは/営業とは──ドラッカーの「販売を不要にする」

マーケティングには協会や研究者が定めた定義がありますが、営業には公式の定義と呼べるものが見当たりません。だから二つを比べるときは、定義の言葉より「どの段階を担当しているか」で比べるほうが正確です。

マーケティングと営業の関係を語るときに必ず引かれるのが、ピーター・ドラッカー(Peter F. Drucker)の一文です。ドラッカーは原著1973年の「マネジメント──課題、責任、実践」で、マーケティングの理想は販売を不要にすることだと書きました。日本語では、要点をまとめたダイヤモンド社の「マネジメント【エッセンシャル版】」(2001年12月発行・上田惇生編訳)で読めます。ここで言う販売は、押して売る行為のことです。顧客を深く理解し、製品が相手に合っていれば、おのずから売れていく。押す必要がなくなる状態をつくることが、マーケティングの理想です。AMAやコトラーの定義と並べた変遷はマーケティングとは?わかりやすく定義の変遷と一言での意味を解説にまとめました。

営業のほうは、セールスや販売とも呼ばれ、法人向けの会社では、訪問やオンライン商談で契約までを担うフィールドセールスと、電話やメールで見込み客と最初に話すインサイドセールスに分かれていることも多くあります。公式の定義がないぶん、会社によって範囲がばらばらです。ある会社では営業が市場の情報集めから価格交渉までを担い、別の会社では商談と契約だけを担います。求人や組織図で「営業」と書かれていても、中身は会社ごとに確かめる必要があります。

ドラッカーの「販売を不要にする」は、営業をなくせという意味ではないと思っています。押して売らなくても話が進む状態を先につくれ、と順番を説いた言葉です。マーケティングが選ばれる理由を先に配っておけば、営業は商品の説明から入らずに、相手の事情から入れます。営業の仕事が消えるのではなく、営業の仕事の中身が変わる。そう読むと、二つの関係がすっきりします。

混同されやすい理由と、間違えると起きること──仲が悪くなる構造

マーケティングと営業が混同され、しかも仲が悪くなりやすいのは、同じ売上を目指しているのに、途中の数字が別々に評価されているからです。マーケティングがリードの数で、営業が受注で評価されると、二つの部署は同じ顧客を見ながら違うゲームをすることになります。

この対立は日本だけの話ではありません。フィリップ・コトラー(Philip Kotler)とニール・ラッカム(Neil Rackham)らは、2006年のハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)7・8月号に、営業とマーケティングの対立を終わらせるための論文「Ending the War Between Sales and Marketing」を寄せています。論文の冒頭では、二つの部署が互いの貢献を低く見積もりがちだとしたうえで、営業は「マーケティングは価格を高くしすぎ、営業に回すべき予算を使っている」と言い、マーケティングは「営業は目の前の取引先しか見ておらず、市場全体を見ていない」と言う構図が描かれています(ハーバード・ビジネス・レビューの論文ページ)。実務でよく起きる揉め方を表にすると、次のようになります。

揉める場面 マーケティング側の言い分 営業側の言い分 放っておくと起きること
リードの質 目標どおりの数を渡している 買う気のない名簿ばかりで使えない 営業がリードに連絡しなくなり、マーケティングは数をもっと増やす
価格と値引き 値引きは商品の価値を下げる 値引きしないと今月の数字に届かない 値引きが当たり前になり、定価で売れなくなる
予算 知ってもらうための広告が必要 その予算で営業を一人増やしたい どちらの言い分も半分ずつ通り、両方が中途半端になる
顧客の声 調査ではこういう結果が出ている 昨日の商談ではそう言っていなかった 調査と現場の声のどちらも信用されなくなる

BtoBのマーケティングに関わっていた頃、いちばん多く見たのが一つ目の揉め方でした。マーケティングが渡した見込み客のリストに営業が連絡しない。マーケティングはそれを「営業が動かない」と言い、営業は「リストの質が悪い」と言う。どちらの言い分も、自分の部署の数字から見れば筋が通っています。だからこの対立は、話し合いだけでは終わりません。数字の置き方を変えるしかありません。

直し方の基本は、共通のKPIを置くことです。手順は次の4つです。

  1. 最終の目標を一つにする。受注や売上を、両部署に共通のKGIとして置きます。マーケティングだけの目標、営業だけの目標から先に決めないようにします
  2. 「商談にしてよいリード」の条件を文章にする。業種、会社の規模、検討の時期、決裁に関わる人かどうかなど、営業が会いに行く価値のある条件を両部署で書き出して合意します
  3. 評価の数字をつなげる。マーケティングは条件を満たしたリードの数と商談になった数で、営業は受け取ったリードへの対応の速さと商談からの受注で評価します。お互いの数字が、相手の数字の入り口になる形です
  4. 月に一度、失注と見送りの理由を一緒に見る。なぜ買われなかったかを両部署で確かめ、2の条件を書き直します。条件は一度決めて終わりではなく、毎月育てるものです

KGIとKPIの関係はKPIとKGIの違いとは?KAI・OKRも含めて1枚の比較表でわかりやすく解説に、商談になる前の見込み客の育て方はリードナーチャリングとは?手法一覧とリードジェネレーションとの違いに書きました。二つの部署が同じ数字の上下で喜んだり困ったりする状態をつくると、表にあった言い分の多くは自然に消えていきます。

どちらを重くするか──部署の役割分担と職種選びの判断

会社としてどちらに力を入れるかは、商品が「説明しないと売れない」のか「見つかれば売れる」のかで決まります。個人として職種を選ぶなら、一人の相手の判断を動かすのが好きか、多くの人の判断の傾向を動かすのが好きかで考えると、向き不向きが見えやすくなります。

場面 重心 理由
高額で検討期間が長い法人向けの商材 営業(マーケティングは商談の前を担う) 相手ごとに事情が違い、最後は人が説明して決まる
低単価で多くの人が買う商品 マーケティング 一人ずつ会って売る費用が、商品の利益に見合わない
新しい市場で、まだ誰が買うか分からない 営業が先 最初の顧客の言葉を直接聞くことが、マーケティングのいちばん確かな材料になる
紹介と既存顧客だけで売上が立っている マーケティングで次の紹介を仕組みにする 担当者頼みの売れ方を、再現できる流れに変える時期

三つ目の行は意外に思われるかもしれません。でも、まだ誰が買うか分からない段階では、営業が最初の数社に会い、その相手が何に困り、何と比べ、なぜ買ったのかを持ち帰ることが、どんな調査よりも確かな手がかりになります。マーケティングと営業の順番は、会社の成長の段階によって入れ替わります。見込み客を集める側の手法はリードジェネレーションとは?手法一覧とナーチャリングとの違いで整理しています。

職種として比べると、二つの違いはもっとはっきりします。

観点 営業職 マーケティング職
向いている人 目の前の相手の反応を見て、話し方を変えられる人 「なぜ売れたか」を数字と言葉の両方で説明したい人
評価の分かりやすさ 受注で明確に出る 何が効いたかを説明する必要がある
身につくもの 相手の判断を動かす力、交渉する力 市場の傾向を読む力、仕組みを設計する力
移るときに活きる経験 顧客の生の言葉、失注の理由を聞いた経験 見込み客の流れを設計した経験、数字を分解した経験

営業からマーケティング職に移るとき、営業の経験は回り道ではありません。顧客の生の言葉と失注の理由を知っていることは、机の上で市場を考える人にはない強みになります。マーケターとしての進み方の全体像はマーケターのキャリアパスを整理してみた【転職・独立まで網羅】に、転職先の探し方はマーケター転職エージェントおすすめ6選にまとめています。

日本市場・2026年時点での注意点

2026年の日本でマーケティングと営業の関係を考えるときに押さえておきたいのは、法人向けの分業の型が広まったことと、顧客が営業に会う前に比較を終えるようになったことの二つです。

法人向けの分業の型を日本で広めた本に、福田康隆さんの「THE MODEL」(翔泳社・2019年1月)があります。マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスの4つの部門が、分業ではなく「共業」として一つの流れをつくる考え方で、SFAやMAの運用、部門ごとに見る指標、商談の段階を判定する基準までを扱っています(紀伊國屋書店の書誌ページ)。ここで気をつけたいのは、分ける部分だけを取り入れることです。部門を四つに分けると、指標も四つできます。それぞれが自分の数字だけを見るようになると、対立の数が一つから三つに増えるだけです。本の副題にある「共業」のほうが本題で、分けた部門をつなぐ共通の数字がないまま型だけ入れても、流れはつながりません。仕組みの道具についてはMAとは?マーケティングオートメーションの機能一覧と導入の失敗とCRMとは?マーケティングでの意味とSFA・MAとの違いに書きました。

もう一つは、顧客が比べる場所の変化です。検索のAI要約や比較サイト、生成AIへの質問で、顧客は営業に会う前に候補を絞るようになりました。法人の購買でも、最初の問い合わせの時点で比較の大半が終わっていることは珍しくありません。そうなると、マーケティングが先に配った「選ばれる理由」が、候補に残れるかどうかを左右します。営業は商品の説明役から、相手の社内の事情に合わせて判断を後押しする役へ、重心が移ります。「営業はいらなくなる」という声も見かけますが、いらなくなるのは説明だけの営業で、相手の事情を組み立て直す営業の仕事は残ると思います。

日本の中小企業では、マーケティング部がなく、営業がマーケティングを兼ねている会社も少なくありません。ぼくも独立してからは、マーケティングも営業も一人でやっています。一人でやると、二つの境界は部署ではなく、一週間の時間の配分になります。発信や記事に時間を使う週は商談が減り、商談に時間を使う週は次の見込み客への種まきが止まる。兼任している人ほど、どちらの時間をいつ取るかを先に決めておくと、どちらかだけが止まる状態を避けやすくなります。

マーケティングと営業の違いに関するよくある質問

マーケティングと営業は、結局同じ仕事ではないですか?

売上を目指す点は同じですが、相手にする単位と時間軸が違います。マーケティングは市場全体に選ばれる理由を配り、営業は一人の顧客と契約をつくります。同じ目標を持つ別の役割なので、評価の数字を分けたままにすると対立が起き、共通の数字でつなぐと一つの流れになります。

マーケティングと営業企画の違いは何ですか?

営業企画は、営業部門の目標や販売計画を立て、営業がうまく動くための仕組みや資料を整える仕事です。マーケティングは営業より前の段階で、市場の中で誰に何を届けるかを決め、見込み客を生み出す仕事です。会社によって範囲が重なることも多いので、求人を見るときは職種名より担当業務の中身で比べるほうが確かです。

マーケティング部と営業部の仲が悪いのはなぜですか?

同じ売上を目指しているのに、途中の数字が別々に評価されているからです。マーケティングはリードの数、営業は受注で測られると、同じ顧客を見ながら違うゲームをすることになります。受注を共通の目標にし、商談にしてよいリードの条件を両部署で合意すると、対立の多くは減っていきます。

営業からマーケティング職に転職できますか?

できます。顧客の生の言葉や失注の理由を知っていることは、マーケティングの仕事で強みになります。その経験を「なぜ売れたか、なぜ売れなかったか」を数字と言葉で説明できる形にまとめておくと、面接でも伝わりやすくなります。

おわりに──営業が要らなくなる状態をつくるのがマーケ、でも営業なしでそこに着く会社はない

マーケティングと営業の違いを突き詰めると、相手が市場か一人か、時間が数年か今月か、の違いに行き着きます。でも、違いを並べるほど、二つが同じ一本の流れの前半と後半であることもはっきりしてきます。マーケティングは営業の材料を市場から集め、営業はマーケティングの仮説を一件ずつ確かめています。

営業が要らなくなる状態をつくるのがマーケティング。でも、営業なしでそこにたどり着いた会社はない。

部署の仲が悪いと感じたら、どちらが正しいかを決める前に、二つの部署が同じ数字で喜べるかを確かめてみてほしいと思います。同じ数字で喜べるようになったとき、二つの違いは対立ではなく、役割分担に変わります。

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