マーケの目

AIエージェントとは?生成AIとの違いと仕組みをわかりやすく解説

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最終更新:2026年10月17日

AIエージェントとは、目的を受け取り、そのための手順を自分で決め、検索やファイル操作などの道具を使って仕事を進めるAIのことです。質問に答えるAIとの違いは、答えを返して終わるか、結果を見て次の一手を決めながら進むか。CopilotやGemini、Claudeに「エージェント」と名の付く機能が増え、2026年10月時点では製品名のように使われていますが、中身は一つの考え方です。結論から言えば、AIエージェントの成否を分けるのはAIの賢さではなく、人が「何を任せ、どこで止めるか」を先に決めているかどうかです。定義と違い、出典、構成要素、具体例、使い方、リスクまで、非エンジニアのマーケター向けに書いていきます。

AIエージェントとは?「答えるAI」との違いと構成要素の一覧

AIエージェントは、指示を受けて答えるAIではなく、目的を受けて自分で手順を決めて動くAIです。同じ大規模言語モデル(LLM=文章を理解し生成するAIの本体)を使っていても、使い方の構造が違います。

比べる点 指示を受けて答えるAI(チャット型) 目的を受けて自分で動くAI(エージェント)
人が渡すもの 質問や、一回分の指示 目的(ゴール)と、守るべき条件
手順 人が一手ずつ指示する AIが目的を分解して、手順を自分で決める
道具 基本は会話だけ 検索、ファイルの読み書き、アプリの操作などの道具を呼び出す
回数 一往復で終わる 実行して結果を見て、次を決める。終わりの条件まで繰り返す
人の役割 毎回の判断と次の指示 最初に目的と条件を決め、途中の確認点と最後の確認で判断する

部品に分けると、頭脳であるモデルに道具・記憶・指示を与え、終わりの条件まで繰り返すループで動かしたものです。OpenAI・Google・Microsoft・AWS・IBM・Anthropicの説明で共通する部品を、人の仕事に置き換えて並べます。

要素 役割 人の仕事でいえば
モデル(LLM) 目的を理解し、次に何をするかを考える頭脳 担当者の頭
道具(ツール) 検索、ファイルの読み書き、アプリの操作など、外の世界に触る手段 電話、パソコン、社内システムの操作権限
記憶(メモリ) 途中の経過や過去のやりとりを保ち、次の判断に使う メモと引き継ぎ書
指示とガードレール 目的、守る条件、やってはいけないこと 業務マニュアルと禁止事項
計画 目的を手順に分解する 段取り
ループ 実行し、結果を見て、次を決める。終わりの条件まで繰り返す 進捗の確認と軌道修正

計画とループが、答えるAIには無い部分です。OpenAIは繰り返し処理(whileループ)が中核だと説明し、Anthropicは最大反復回数などの停止条件と、途中で人に確認する設計を勧めています。

AIエージェントの出典──開発元と公的文書の定義、1995年の教科書からの流れ

AIエージェントの定義は、開発元と日本の公的文書で言い回しが違いますが、「目標」「自律」「行動」の三語はどれにも入っています。

出典(時点) 定義(要約) 読みどころ
Anthropic「Building effective agents」(2024年12月19日) 「ワークフロー」はLLMと道具があらかじめ決めた経路で動くシステム、「エージェント」はLLMが自分でプロセスと道具の使い方を動的に決めるシステム 経路を人が決めるか、AIが決めるかで線を引く。「できるだけ単純な解から始め、必要なときだけ複雑にする」と勧める
OpenAI「A practical guide to building agents」(PDF) 「エージェントとは、ユーザーに代わって独立してタスクを成し遂げるシステム」。構成はモデル・道具・指示の三つ ワークフローの実行を制御しない単純なチャットボットは「エージェントではない」と明言
Google Cloud「AIエージェントとは」(2026年4月更新) AIを使ってユーザーの代わりに目標を追求し、タスクを完了させるソフトウェアシステム エージェント(自律的に動く)、アシスタント(決めるのは人)、bot(事前に定義されたルールに従う)を分けて比較
総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日) 「AIエージェントとは、特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」 「自律」はある程度の自律性を持つものも含むと注記。この版で定義が新たに置かれた

エージェントという言葉そのものは、AI研究で三十年使われてきました。スチュアート・ラッセル(Stuart Russell)とピーター・ノーヴィグ(Peter Norvig)の教科書「Artificial Intelligence: A Modern Approach」(初版1995年)が、センサーで環境を知覚し、アクチュエーター(動きを生む部品)で環境に働きかけるものをエージェントと呼んだことで知られ、ガイドラインの定義もこの言い方と同じ形です。

いまの「LLMを核にしたエージェント」の形は、数年でできあがりました。2022年10月のReAct論文が言語モデルに「考える」と「行動する」を交互に行わせる方法を示し、2023年6月にリリアン・ウェン(Lilian Weng)氏が「LLM Powered Autonomous Agents」で計画・記憶・道具の使用という三要素を整理しました。2024年10月にAnthropicがcomputer use(AIが画面を見てパソコンを操作する機能)を公開ベータで出したときは、「実験的で、時に扱いにくく誤りやすい」と自ら明記しています。同年11月には、データ源とAIをつなぐ規格のMCPを発表しました。

生成AI・チャットボット・RPA・エージェンティックAIとの違い

AIエージェントの周りには似た言葉が並びます。違いは、「誰が手順を決めるか」と「いくつのAIが動くか」の二つで整理できます。

用語 何か AIエージェントとの関係
生成AI 文章・画像・音声などを作る技術 エージェントの頭脳になる部品。それ自体は手順を決めない
チャットボット 会話で質問に答えるプログラム OpenAIは単純なチャットボットを「エージェントではない」とし、Googleはbotを「事前に定義されたルールに従う」ものと整理
RPA・ワークフロー自動化 決められた手順どおりに操作や処理を自動で行う仕組み 経路を人が決める側。Anthropicの整理では「ワークフロー」。エージェントは経路をAIが決める
エージェンティックAI AI事業者ガイドラインの脚注では「AIエージェントよりも包括的かつ進化的な概念」で、「複数のAIエージェントにより自律的に意思決定を下しアクションを起こす目標主導型のAIシステム」 個々のエージェントより広い枠。複数のエージェントが協力して目標に向かう仕組み全体を指す

マーケターの道具で言えば、マーケティングオートメーション(MA)は、資料請求の三日後にこのメールを送る、と人が決めたシナリオどおりに動く仕組みなので、Anthropicの分け方ではワークフローの側です。エージェントは、「この見込み客に次に何を送るべきか」をAIが都度決めて動く側になります。

注意したいのは、既存のRPAやチャットボットに「エージェント」という名前だけ付け替えて売る動きがあることです。調査会社のGartnerが2025年6月、こうした売り方を「エージェント・ウォッシング」と呼んで指摘したと報じられています。製品名に「エージェント」とあっても、手順をAIが決めているのかは確かめる必要があります。

実務でどう使うか──2026年10月時点の具体例と、ぼくがThreadsで組んだ仕組み

AIエージェントを実務で使う最初の判断は、どのツールを選ぶかではなく、「手順を言葉にできる仕事」を一つ選ぶことです。手順が言えない仕事は、人にも任せられないのと同じで、AIにも任せられません。

具体例は、公式ページで確認できたものだけです(2026年10月時点。提供状況は変わります)。

製品 提供元 何をするか(公式の説明の要約)
Claude Code Anthropic コードを読み、ファイルの編集とコマンドの実行ができるエージェント型のコーディングの道具。ターミナルやデスクトップ、ブラウザで使える
Copilot Studioのエージェント Microsoft 業務の文脈を理解して行動を代行するアシスタントを、自分で作れる仕組み。MCPや他のエージェントの呼び出しに対応
Gemini agent Google Cloud 2026年10月発表。「指示ではなく目的を渡す」とうたい、長時間動き、子のエージェントを作り、MCPで外部の道具につながる。一般提供の日付は発表時点で記載なし
Devin Cognition 2024年3月発表の「AIソフトウェアエンジニア」。シェル・エディタ・ブラウザを備えた隔離環境で、開発の仕事を自分で進める

OpenAIのChatGPTにもエージェント機能があると報じられていますが、公式ページを確認できなかったので表には入れていません。先に実用になっているのは、コードや文書のように結果を機械が確かめられる仕事です。コードの例はバイブコーディング、機械が現実で動く例はフィジカルAIの記事に書きました。

ぼくはThreadsの投稿について、反応の多い投稿のリサーチ、下書きの執筆、文体のレビュー、投稿までを、役割の違う複数のAIに受け持たせる仕組みを自分で作りました。マーケティングの視点でインサイトを出す係までAIで組めたときは、かなり驚きました。ただ、投稿そのものは自動にせず、投稿前に自分で確認してから出す運用にしています。理由はネタの被りで、過去に書いた話を別の言い方で出してくることがあり、それは仕組みの中からは見えにくいからです。被りを見つけるのは、その話を前に書いたことを覚えているぼくの仕事として残しました。この仕組みを作った経緯はマーケターがClaude Codeを使ったら、外注していた作業が半日で終わったに書いています。

この経験から、任せる範囲を決める手順を五つにしています。

  1. 手順を言葉で書ける仕事を一つ選ぶ。調査、下書き、集計のように、結果の良し悪しを自分で判定できるものから始めます
  2. 目的と条件を書く。誰に向けて、何を、何を避けるか。人への発注と同じで、ここで出来が決まります
  3. 道具の権限を最小にする。読むだけでよい仕事に、書き込みや送信の権限を渡さない
  4. 止まる条件と確認点を決める。公開・送信・支払いのような取り消せない操作の前は、人の確認を挟みます
  5. 最初は見ながら回す。結果を全部見て、任せてよい範囲を少しずつ広げます

目的と条件を書くときに、AIを考えを整える相手として使う方法は、AIを「思考の壁打ち相手」にする方法にまとめています。

AIエージェントのリスクと2026年時点の注意点──権限・コスト・暴走

AIエージェントの危うさは、賢くないことではなく、自分で動けることにあります。Anthropicは「自律的であることは、コストの増加と、誤りが複利で積み上がる可能性を意味する」と書いています。開発元が自分で書いている注意を表にします。

リスク 何が起きるか 一次情報にある対策
権限 書き込みや送信の権限を持ったエージェントが、取り消せない操作をする OpenAIはガードレールを「層で守る」とし、認証・認可・アクセス制御と併用。MicrosoftはエージェントごとにIDを持たせ、役割に応じた権限で絞る
コスト 一回の指示で何十回もモデルと道具を呼ぶため、使用料が読めない。IBMは複雑性とコストを難しさに挙げる Anthropicは「できるだけ単純な解から始める」。多くの用途は一回の呼び出しや固定のワークフローで足りる
暴走(止まらない) IBMが挙げる無限フィードバックループ。同じ道具を延々と呼び続ける Anthropicは最大反復回数などの停止条件と、節目で人の確認に戻す設計を勧める
誤り 画面操作や判断を間違える。Anthropicはcomputer useの公開時に「誤りやすい」と明記 低リスクの仕事から始め、隔離された環境で試す
外部からの乗っ取り 読み込んだ文書やWebページに仕込まれた指示(プロンプトインジェクション)に従ってしまう Microsoftはコンテンツフィルターで対策すると説明。読ませる情報の出どころを限る
向かない仕事 Googleは、共感や倫理的な判断が必要な場面、予測できない物理環境、大量の計算資源を使う処理を苦手として挙げる 任せる仕事を選ぶ段階で外す

Gartnerは2025年6月、エージェンティックAIのプロジェクトの多くが、コストの増加、事業価値の不明確さ、リスク管理の不備を理由に2027年末までに中止されるという予測を出したと報じられています。数字は原典を開いて確認できなかったので書きません。日本では、AI事業者ガイドラインが2026年3月の第1.2版でAIエージェントの定義を新たに置き、令和7年版情報通信白書も、富士通がAIエージェントの提供を始めたことなどを取り上げています。言葉の整備が先に進み、使う側のルールづくりはこれから、という段階だと思います。

AIエージェントに関するよくある質問

AIエージェントとは簡単に言うと何ですか?

目的を受け取り、そのための手順を自分で決め、検索やファイル操作などの道具を使って仕事を進めるAIのことです。質問に答えて終わるチャット型のAIとの違いは、結果を見て次の一手を決めながら、終わりの条件まで動き続ける点にあります。

AIエージェントと生成AIの違いは何ですか?

生成AIは文章や画像を作る技術で、エージェントはその生成AIを頭脳として使い、道具と記憶とループを組み合わせて目的に向かう仕組みです。同じモデルでも、人が一手ずつ指示して答えを受け取るなら「答えるAI」として使っていることになり、目的と条件を渡して手順を任せるならエージェントとして使っていることになります。

CopilotやClaudeはAIエージェントですか?

製品そのものがエージェントというより、製品の中にエージェントとして動く機能や、エージェントを作る機能が含まれている形です。MicrosoftのCopilot Studioでは業務を代行するエージェントを作れ、AnthropicのClaude Codeはファイルの編集やコマンドの実行まで自分で進めるエージェント型の道具です。チャット画面で質問して答えを受け取るだけなら、どの製品でもエージェントとしては使っていません。

AIエージェントは非エンジニアでも作れますか?

作れます。Copilot Studioのように画面上で組める仕組みや、Claude Codeのように日本語の指示で仕組みを作らせる道具が、2026年10月時点であります。ただ、作る前に決めるべきことは道具ではなく、任せる仕事、目的と条件、渡す権限、止まる条件、人が確認する場所の五つです。これが決まっていないエージェントは、動いても使われなくなります。

おわりに──AIエージェントは、AIが自分で動く話ではなく、人が「何を任せ、どこで止めるか」を決める話

AIエージェントの解説は、どれもAIがどこまで自分でできるかの話になります。手順を決め、道具を使い、結果を見て直す。でも、仕事の現場で問われるのは別のことです。任せられる仕事は、手順を言葉にできた仕事だけで、止める場所を決められるのは、その仕事の意味を知っている人だけです。

ぼくがThreadsの投稿を出す前に自分で確認し続けているのは、技術が足りないからではなく、そこを自分の仕事だと決めたからです。エージェントが賢くなるほど、この線を引く力の値段は上がっていくと思います。

AIエージェントは、AIが自分で動く話ではなく、人が「何を任せ、どこで止めるか」を決める話。

道具を選ぶ前に、自分の仕事の中で「手順を全部言葉にできる仕事」と「取り消せない操作」を、それぞれ三つ書き出してみてほしいと思います。前者が任せる候補で、後者が人が立つ場所です。

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