最終更新:2026年10月17日
インサイドセールスとは、電話・メール・オンライン会議などを使い、顧客に会いに行かずに見込み客と話して、商談にしてよい相手を見極めてから営業へ渡す仕事です。テレアポと混同されがちですが、目的はアポの数ではなく「会う理由がある相手」を選ぶことにあります。THE MODELが会社全体の売上の流れを4つの部門で設計する考え方なのに対して、インサイドセールスはその流れの中の一つの持ち場です。この記事では、SDRとBDRの違いの一覧、言葉の出どころ、フィールドセールス・テレアポとの違い、商談化の基準の決め方、そして職種としての仕事内容と向いている人までを書いていきます。
インサイドセールスとは?SDR・BDRの種類と役割の一覧
インサイドセールスは、マーケティングが集めた見込み客と営業の商談のあいだに立ち、話を聞いて温度を確かめ、商談にする相手と育て直す相手を分ける役割です。分け方の代表がSDRとBDRで、違いは「相手から来たか、こちらから行くか」にあります。
セールスフォース・ジャパンのブログでは、インサイドセールスを電話・メール・オンライン会議ツールなどで非対面の営業を行う手法としたうえで、SDR(Sales Development Representative)を問い合わせや資料請求を受けてから動く反響型の組織、BDR(Business Development Representative)を新規顧客の開拓を目的にこちらから働きかけるアウトバウンド型の組織と説明しています(セールスフォース・ジャパン「SDRとBDRの違いとは?」2025年11月27日)。整理すると次のようになります。
| 観点 | SDR(反響型) | BDR(新規開拓型) |
|---|---|---|
| 始まり | 資料請求・問い合わせ・ウェビナー参加など、相手の行動 | 自社で決めた狙いたい企業のリスト |
| 相手の温度 | 関心はあるが、検討の深さはばらばら | 多くはまだ関心がない |
| 主な仕事 | 早く連絡し、状況を聞き、商談にするか育て直すかを決める | 決裁に関わる人を探し、最初の接点をつくる |
| 向いている商材 | 問い合わせが一定数ある、単価が中くらいまでの商材 | 顧客の数が限られる、高単価の大企業向け商材 |
| 見る数字の例 | 初回連絡までの時間、接触率、商談化率 | 狙った企業への接触数、決裁者との接点数、商談化率 |
| 失敗のしかた | 資料を読んだだけの人に商談を迫り、関係を壊す | 相手を調べずに数を当て、テレアポと変わらなくなる |
どちらも「アポを取る係」と見られがちですが、本当の仕事は表の「主な仕事」の行にあります。SDRは来た人を選び、BDRは行く先を選ぶ。選ぶ仕事なので、断る判断も含まれます。今は話さないほうがいい相手を見分け、時期が来るまで育て直しに回すことも、インサイドセールスの大事な成果です。
インサイドセールスの出どころ──「外回り」の対になる言葉と、分業の本
インサイドセールスは、もともと社外を回る営業(アウトサイドセールス)に対して、社内にいながら売る営業を指す言葉です。それが「商談の前を受け持つ専門の役割」という意味で広まったのは、法人向けのクラウドサービスが営業を段階ごとに分け始めてからです。
営業を役割ごとに分ける考え方を広めた本として、よく挙がるのがアーロン・ロス(Aaron Ross)とマリールー・タイラー(Marylou Tyler)の「プレディクタブル・レベニュー(Predictable Revenue)」です。2011年7月にPebblestormから出た本で、書店の紹介文では、セールスフォース・ドットコムで経常収益を1億ドル積み上げた営業の専門分業の仕組みとアウトバウンドの手順を扱う本だと書かれています(米国の書店ポーチライトの書誌ページ)。見込み客を探す人、商談をまとめる人、契約後の顧客を見る人を分ける発想が、いまのSDRやBDRの下敷きになっています。
日本で役割の名前が一気に広まったきっかけは、福田康隆さんの「THE MODEL」(翔泳社・2019年1月・328ページ)です。副題は「マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス」で、目次では第3部「プロセス」の中にマーケティングと並んでインサイドセールスの章が置かれています(紀伊國屋書店の書誌ページ)。この本が扱っているのは会社全体の流れの設計で、インサイドセールスはその中の一つの部門です。全体の設計図と分業の弊害の話は、THE MODELとは?4つの分業の仕組みと批判・弊害で扱いました。
出どころを知っておくと、インサイドセールスが「電話をする部署」ではないことが分かります。生まれた理由は、営業の時間がいちばん高い資源だったからです。会う価値のある相手にだけ営業の時間を使う。そのために、会う前の確かめを専門の人に任せた。役割の中身は、この順番から読むとずれません。
インサイドセールスとフィールドセールス・テレアポの違い
インサイドセールスとフィールドセールスの違いは担当する段階で、テレアポとの違いは目的です。フィールドセールスは商談から契約までをまとめる役割で、テレアポは会う約束を取ること自体を成果にします。インサイドセールスは、その手前で「会う理由があるか」を確かめます。
| 観点 | インサイドセールス | フィールドセールス | テレアポ |
|---|---|---|---|
| 担当する段階 | 見込み客と最初に話し、商談にするかを決めるまで | 商談から提案・見積もり・契約まで | 会う約束を取るまで |
| 成果の数え方 | 営業が受け取った商談のうち、本当に検討が進んだ数 | 受注件数・受注金額 | アポの件数 |
| 話す相手 | 反響のあった人、狙った企業の担当者 | 検討が進んだ企業の担当者と決裁者 | リストにある不特定の相手 |
| 手段 | 電話・メール・オンライン会議・チャット | 訪問・オンライン商談 | 電話が中心 |
| 会話の中身 | 相手の状況・時期・決め方を聞く | 相手の事情に合わせて提案し、条件を詰める | 台本どおりに案内し、日時を決める |
| 断ることがあるか | ある。時期が早い相手は育て直しに回す | ある。合わない案件から手を引く | 少ない。アポが取れれば成果 |
表でいちばん大きな差は「成果の数え方」の行です。テレアポはアポの件数で評価されるので、会っても意味のない約束まで数に入ります。インサイドセールスがアポの件数だけで評価されると、同じことが起きます。名前がインサイドセールスでも、評価がアポの件数なら、中身はテレアポです。
商談になる前の見込み客の集め方はリードジェネレーションとは?手法一覧とナーチャリングとの違いに、まだ商談にしない相手を育てる手法はリードナーチャリングとは?手法一覧とリードジェネレーションとの違いにまとめました。インサイドセールスは、この二つと営業のあいだをつなぐ位置にいます。
実務でどう使うか──商談化の基準を先に決め、2026年の変化に合わせる
インサイドセールスを置くときに最初に決めるのは、人数でも台本でもなく「どんな状態の相手なら営業に渡すか」の基準です。基準がないまま始めると、インサイドセールスは数を渡し、営業は質に文句を言い、どちらの数字も信用されなくなります。
BtoBのマーケティングに関わっていた頃、いちばん揉めるのは受け渡しの瞬間でした。マーケティングは「条件どおりのリードを渡した」と言い、受け取った側は「話してみたら情報収集だけだった」と言う。どちらも嘘はついていません。基準が文章になっていないので、同じ言葉を別の意味で使っていただけです。受け渡しの基準の決め方はMQLとSQLの違いとは?に書きました。渡す前に聞くことは、次の4つに絞ると揃えやすくなります。
- 困りごと:何に困っていて、今のやり方の何が足りないのか
- 時期:いつまでに決めたいのか、決める理由になる出来事があるか
- 決め方:誰が関わり、誰が最後に決めるのか
- 比べている相手:他社のサービスか、社内で続けるか、何もしないか
数字で見るなら、まず商談化率を置きます。商談化率=営業が受け取って商談として進めた件数÷インサイドセールスが対応したリード件数×100、です。数字はすべて架空の例です。
| 段階(例) | 件数(例) | 前の段階からの割合(例) |
|---|---|---|
| マーケティングから渡されたリード | 300件 | ─ |
| 連絡がつき、話を聞けた | 180件 | 60%(接触率) |
| 営業へ渡した | 45件 | 25% |
| 営業が商談として進めた | 30件 | 約67%(営業の受け入れ率) |
この例の商談化率は、30件÷300件×100で10%です。見てほしいのは最後の行で、渡した45件のうち15件は営業が進めていません。ここが大きい会社は、インサイドセールスの基準と営業の感覚がずれています。数を増やす前に、進まなかった15件の理由を一緒に見て基準を書き直すほうが、全体は早く良くなります。出てきた商談がどれだけ受注に変わったかまで追うなら、顧客獲得の費用との関係はCACとは?顧客獲得コストの計算方法とCPAとの違い、LTVとの関係が参考になると思います。
2026年の日本で気をつけたいことは二つあります。一つは、顧客が営業に会う前に調べ終えるようになったことです。THE MODELの書誌ページの内容説明にも「顧客の購買プロセスの半分以上は営業に会う前に終わっている」とあり(紀伊國屋書店)、検索のAI要約や生成AIへの質問でその傾向はいっそう強まっています。資料請求の時点で比較を終えている人に、製品の説明から入るのは遠回りです。最初の電話は説明ではなく、相手がどこまで調べて何に迷っているかを聞く場にするほうが話が進みます。
もう一つは、記録と下書きをAIが手伝うようになったことです。通話の要約やメールの下書きは速くなりました。でも、相手の言い方の温度や、言わなかったことを営業に引き継ぐのは人の仕事のまま残ります。CRMの項目を埋めるだけの引き継ぎは、情報は多くても判断の材料になりません。記録の道具についてはCRMとは?マーケティングでの意味とSFA・MAとの違いを簡単に解説に書きました。
職種としてのインサイドセールス──仕事内容・向いてる人・「きつい」の正体
職種としてのインサイドセールスは、毎日たくさんの相手と短く話し、話した内容を記録し、商談に渡すか育て直すかを決める仕事です。向いているのは、断られても引きずらず、相手の話から状況を組み立てるのが好きな人です。
求人で「インサイドセールス」と書かれていても、会社によって中身はかなり違います。応募する前に確かめたいのは、反響型か新規開拓型か、評価がアポの件数か商談の質か、の二点です。一日の仕事の例を表にしました。
| 仕事 | 中身 | 身につくもの |
|---|---|---|
| 新しいリードへの連絡 | 資料請求や問い合わせにできるだけ早く連絡し、状況を聞く | 短い会話で相手の事情をつかむ力 |
| 育て直し中の相手への連絡 | 以前「まだ早い」と言っていた相手に、時期を見て声をかける | 検討の進み方を読む力 |
| 狙った企業の調査と接触(新規開拓型) | 企業の事情を調べ、関わりそうな人に手紙やメールで接点をつくる | 業界と組織を調べる力 |
| 営業への引き継ぎ | 聞いた内容と温度を記録し、商談の前に営業と共有する | 相手の状況を言葉にまとめる力 |
| 振り返り | 進まなかった商談の理由を営業・マーケティングと見て、基準を直す | 数字から流れの詰まりを見つける力 |
サジェストに「きつい」「やめとけ」「病む」が並ぶのには、はっきりした理由があります。一つ目は、断られる回数が多いことです。新規開拓型では、連絡のほとんどが不在か断りになります。二つ目は、成果が自分の手だけで決まらないことです。渡した商談が受注されるかは営業次第なのに、評価は自分に来ます。三つ目は、評価がアポの件数だけの職場では、意味のない約束を取る仕事に変わり、手応えが消えることです。
逆に言えば、きつさの多くは職種そのものより評価の置き方から来ています。商談の質で評価され、営業と一緒に基準を直せる職場では、同じ仕事が「顧客の言葉をいちばん多く聞ける場所」になります。マーケティングにも営業にもカスタマーサクセスにも進める経験なので、キャリアの入口としても悪くありません。マーケターとしての進み方の全体像はマーケターのキャリアパスを整理してみた【転職・独立まで網羅】に、職場の見極め方を含めた転職の進め方はマーケター転職エージェントおすすめ6選にまとめています。
インサイドセールスに関するよくある質問
インサイドセールスとは、わかりやすく言うとどういう営業ですか?
会いに行かずに電話やメール、オンライン会議で見込み客と話し、商談にしてよい相手を見極めて営業に渡す仕事です。営業が会う前の「確かめ役」と考えると分かりやすいと思います。アポを取ること自体ではなく、会う理由がある相手を選ぶことが目的です。
インサイドセールスとテレアポの違いは何ですか?
目的と成果の数え方が違います。テレアポは会う約束の件数を成果にし、インサイドセールスは営業に渡した商談が本当に進んだかを成果にします。時期が早い相手を育て直しに回すなど、断る判断を含むのもインサイドセールスの特徴です。
SDRとBDRの違いは何ですか?
SDRは資料請求や問い合わせなど相手からの反響を起点に動く反響型で、BDRは自社で決めた狙いたい企業にこちらから働きかける新規開拓型です。問い合わせが一定数ある商材ではSDR、顧客の数が限られる高単価の商材ではBDRを置くことが多くあります。両方を一つのチームで兼ねる会社もあります。
インサイドセールスに向いているのはどんな人ですか?
断られても引きずらず、短い会話から相手の状況を組み立てるのが好きな人です。話すのが得意かどうかより、聞いた内容を整理して営業に渡せるかどうかのほうが効きます。応募する前に、評価がアポの件数か商談の質かを確かめておくと、入ってからのずれを防げます。
おわりに──インサイドセールスは、アポを取る仕事ではない
インサイドセールスの中身を突き詰めると、営業がいちばん高い資源である時間を、会う価値のある相手にだけ使えるようにする仕事に行き着きます。SDRもBDRも、そのための分け方の違いにすぎません。だから評価がアポの件数に寄った瞬間、仕事の意味が裏返ります。
インサイドセールスは、アポを取る仕事ではない。会う理由を先に確かめる仕事。
もし今の職場で手応えが消えかけているなら、自分が何で評価されているかを一度確かめてみてほしいと思います。件数で測られているなら、変えるべきは話し方ではなく、測り方のほうかもしれません。