マーケの目

マーケティングとは?わかりやすく定義の変遷と一言での意味を解説

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最終更新:2026年10月12日

マーケティングとは、商品やサービスが売れる仕組みをつくることです。もう一歩踏み込んで一言でいえば、相手の頭の中に「これは自分に必要だ」という文脈をつくることだと、ぼくは考えています。定義は時代とともに変わってきました。ピーター・ドラッカーは「販売を不要にすること」と書き、日本マーケティング協会は2024年に34年ぶりに定義を改定して、「顧客や社会と共に価値を創造」する構想とプロセスだと言い直しています。この記事では、代表的な定義の一覧と変遷、販売や広告との違い、そして実務でマーケティングを考えるときの最初の問いまでを、わかりやすく整理していきます。

マーケティングとは?代表的な定義の一覧

マーケティングの定義は一つではなく、誰が、いつ、何のために定めたかで言い回しが変わります。ただ、どの定義も「売る側の都合ではなく、相手にとっての価値から始める」という一点では重なっています。

よく引用される定義を、出どころ別に並べると次のとおりです。

出どころ 定義の要旨 視点の置きどころ
ピーター・ドラッカー(Peter F. Drucker)「マネジメント」1973年 マーケティングの目的は販売を不要にすること。顧客を理解し、製品が顧客に合い、おのずから売れるようにすること 売り込まなくても売れる状態
フィリップ・コトラー(Philip Kotler)「マーケティング・マネジメント」 ニーズに応えて利益を上げること 相手のニーズと事業の両立
日本マーケティング協会(1990年制定・旧定義) 企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動 市場をつくる総合的な活動
アメリカ・マーケティング協会(AMA・現行定義) 顧客、クライアント、パートナー、そして社会全体にとって価値のある提供物を、創造・伝達・提供・交換するための活動、制度、プロセス 価値のやりとりと社会全体
日本マーケティング協会(2024年1月改定・新定義) 顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセス 共につくる価値と関係性

AMAの定義はアメリカ・マーケティング協会の公式ページに掲載されていて、5人の研究者によるパネルが定期的に見直していると書かれています。日本マーケティング協会の新定義には注記があり、主体は企業だけでなく個人や非営利組織もなり得ること、「構想」には戦略・仕組み・活動が含まれることが補足されています。

こうして並べると、定義はどれも長く、少し抽象的です。だからこの記事では、教科書の定義とは別に、ぼくが現場で使ってきた一言を置いておきます。マーケティングとは、売れる仕組みをつくること。もっと言えば、相手の頭の中に「これは自分に必要だ」という文脈をつくることです。

マーケティングの定義はどう変わってきたか──「売る活動」から「共につくる価値」へ

マーケティングの定義の変遷を一行でまとめると、「企業が市場に向けて行う活動」から「顧客や社会と一緒に価値をつくり、関係を育てるプロセス」へと主語が広がってきた歴史です。売る側の動作を説明する言葉から、相手との関係を説明する言葉に変わってきました。

出発点として押さえておきたいのが、ドラッカーの一文です。彼は1973年の著書「マネジメント」で、販売とマーケティングは補い合う関係ではなく、むしろ正反対のものだと書きました。理想は、顧客を深く理解した結果として、製品が勝手に売れていく状態をつくること。押して売るのではなく、相手が自分から選ぶ状態をつくるのがマーケティングの仕事だという考え方です。半世紀以上前の言葉ですが、いまでも定義の議論でいちばん引用される一文だと思います。

コトラーの「ニーズに応えて利益を上げる」は、その考え方を事業の言葉に翻訳したものと読めます。相手のニーズだけを見ていても事業は続かないし、利益だけを見ていても相手は離れていく。その両方を同時に成り立たせる技術として、マーケティングを位置づけています。

日本マーケティング協会の改定は、変化がいちばんはっきり見える例です。1990年の旧定義は「市場創造のための総合的活動」でした。2024年1月の新定義では、「顧客や社会と共に価値を創造」し、「ステークホルダーとの関係性を醸成」する「構想でありプロセス」に変わりました。協会は改定の背景として、デジタル技術の普及で企業と顧客が共に価値をつくる関係に変わったこと、社会の持続可能性への貢献が問われる時代になったことを挙げています。

ぼくが面白いと思うのは、新定義から「販売」や「競争」という言葉が消えていることです。売ることがどうでもよくなったわけではありません。売れるかどうかが、相手との関係のなかで決まるようになった。定義の変化は、その現実の後追いだと思います。

マーケティングと販売・広告・ブランディングの違い

マーケティングは、販売・広告・ブランディングを含む「売れる仕組み全体」の設計です。販売や広告はその仕組みの中の一部分で、マーケティングそのものではありません。ここを混ぜると、「広告を出したからマーケティングをやった」という勘違いが起きます。

言葉 何をするか 答えている問い
マーケティング 誰に、何を、どう届け、どう選ばれ続けるかの仕組み全体をつくる なぜこれが選ばれるのか
販売(営業) 目の前の相手に、いまある商品を買ってもらう どうやってこの人に買ってもらうか
広告・販促 商品やブランドの存在と価値を、多くの人に知らせる どうやって知ってもらうか
ブランディング 思い出してほしい像を、すべての接点で一貫させる 何として覚えていてもらうか

ドラッカーの言う「販売を不要にする」は、営業がいらなくなるという意味ではありません。仕組みのほうで「なぜこれが選ばれるのか」が先に決まっていれば、営業や広告は無理に押さなくてよくなる、という順番の話です。

「なぜ選ばれるのか」を一言にするための道具は、このサイトでも個別に書いています。その商品だけが言える売りを決めるならUSPとは?マーケティングでの意味と作り方を3つの検査で解説、商品の特徴を相手が得るものに言い換えるならベネフィットとメリットの違い(FAB一覧表)が入り口になります。人がどんな状況で商品を「雇う」のかから考えるならジョブ理論(JTBD)の解説も役に立つと思います。どれも、マーケティング全体の中の一つの部品として使うものです。

マーケティングを実務でどう使うか──装置の前に、目の前の一人

マーケティングを実務で考えるときの最初の問いは、「目の前の一人に、これは売れるか」です。広告の配信設計やSNSの運用、顧客管理の仕組みといった装置の話は、その問いに答えが出てからで遅くありません。ぼくが現場でいちばん大事にしてきた順番です。問いへの答えが戦略で、装置は戦術にあたるので、この順番は戦略と戦術の違いとも重なります。

博報堂にいた13年間、テレビCMとWEBを組み合わせた統合キャンペーンに多く関わりました。大きな予算と多くの媒体が動く企画ほど、会議の時間はメディアの組み合わせや露出の量に使われがちです。それ自体は必要な議論です。でも、その途中で「で、この商品を、この一人は買うのか」という問いが抜け落ちると、どれだけ露出を積んでも売れ行きにはつながりにくい。設計図が立派なほど、その一人が見えなくなる危うさがありました。

アクセンチュアでBtoBマーケティングに関わったときも、似た構図を見ました。顧客管理やマーケティングオートメーションの仕組みを入れる話が先に進み、「そもそも誰が、何に困り、この会社を選ぶのか」が言葉になっていない。装置は、売れる理由を増幅することはできても、売れる理由をゼロから生み出すことはできません。

独立してからは、月額のサービスやnoteの有料記事、このブログを自分で運営しています。自分で売る側に立つと、この順番はもっと切実になります。一人に売れないものは、仕組みを足しても売れない。逆に、一人の頭の中に「これは自分に必要だ」という文脈ができたものは、小さな仕組みでもちゃんと動きます。

ぼくが実務で使っている手順は、次の4つです。

  1. 買ってほしい人を、平均ではなく顔の見える一人に絞る
  2. その人がいま何で代わりを済ませているか(競合ではなく、その人の比較対象)を書き出す
  3. その人の頭の中に、どんな文脈ができれば「自分に必要だ」と思うかを一文にする
  4. その一文が届く順番と接点を考え、最後に広告やツールといった装置を選ぶ

3番の一文が書けないうちは、4番に進まないようにしています。ここで止まるのは遠回りに見えますが、装置を動かしてから一文がないことに気づくより、ずっと安くすみます。

2026年時点での注意点──「マーケティングは意味ない」と言われる理由

「マーケティングは意味ない」と感じる人がいるのは、マーケティングを装置の寄せ集めとして見ているからだと思います。広告の手法やツールの名前は数年で入れ替わるので、そこだけ見ていると、追いかけても追いかけても成果が残らない感覚になります。でも、相手の頭の中に文脈をつくるという仕事そのものは、ドラッカーの時代から変わっていません。

2026年のいま、この「頭の中の文脈」はむしろ重みを増していると感じています。AIに質問すれば候補の比較が手元で済む時代になり、生活者が広告や店頭にたどり着く前に、選ぶ候補がかなり絞られるようになりました。そのとき候補に残るのは、すでに誰かの頭の中に「あれは自分に必要だ」という文脈を持っているブランドです。思い出してもらえるかどうかの考え方はメンタルアベイラビリティとCEPの解説に詳しく書いたので、あわせて読むと立体的になると思います。

もう一つ、日本で気をつけたいのは「マーケティング=宣伝部の仕事」という狭い理解です。日本マーケティング協会の新定義が、主体を企業に限らず個人や非営利組織にまで広げたのは象徴的だと思います。商品の値付けも、問い合わせへの返信の一文も、相手の頭の中の文脈をつくる接点です。部署名に関係なく、売れる仕組みに関わる人は全員マーケティングをしています。

マーケティングとはに関するよくある質問

マーケティングとは、簡単に一言でいうと何ですか?

商品やサービスが売れる仕組みをつくることです。もう少し踏み込むと、相手の頭の中に「これは自分に必要だ」という文脈をつくることだと考えています。広告や営業はその仕組みの一部で、マーケティングはそれらをどう組み合わせて選ばれる状態をつくるかの設計全体を指します。

マーケティングの仕事は何をするのですか?

誰に売るかを決め、その人がなぜこれを選ぶのかを言葉にし、それが届く接点と順番を設計して、結果を見て直す仕事です。具体的な作業は調査、商品やサービスの企画、価格の設計、広告やSNSの運用、顧客との関係づくりなど幅広くあります。どの作業も、目の前の一人に売れるかという問いにつながっているかが大事な点です。

コトラーとドラッカーの定義はどう違いますか?

コトラーは「ニーズに応えて利益を上げること」と、相手と事業の両立としてマーケティングを定義しました。ドラッカーは「マネジメント」で、マーケティングの目的を「販売を不要にすること」と書き、売り込まなくても選ばれる状態をゴールに置きました。前者は何を両立させるか、後者はどんな状態をめざすかを語っていると読むと、違いが分かりやすいと思います。

マーケティングと営業の違いは何ですか?

営業は目の前の相手にいまある商品を買ってもらう仕事で、マーケティングは「なぜこれが選ばれるのか」を含む売れる仕組み全体をつくる仕事です。マーケティングが先に選ばれる理由をつくっておくと、営業は無理に押さなくても話が進みやすくなります。対立するものではなく、仕組みと実行の関係にあります。

おわりに──売れないのは、装置が足りないからではない

マーケティングの定義は、これからも時代に合わせて書き換えられていくと思います。AMAの定義が定期的に見直され、日本マーケティング協会が34年ぶりに言葉を改めたように、言い回しは変わり続けます。でも、どの定義を読んでも最後に残るのは、相手の頭の中に何が起きるかという一点です。

新しい手法やツールが出てくるたびに、ぼくも試したくなります。それでも装置の話を始める前に、一度だけ「この一人に売れるか」と自分に聞くようにしています。売れないのは、装置が足りないからではない。一人の頭の中に、まだ文脈がないだけ。マーケティングとは、その文脈をつくる仕事だと思っています。もし使い方で迷うことがあれば、ぼくのXアカウント(@yosooi3)に問いかけてもらえれば、できる範囲で答えようと思います。

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