マーケの目

CMO・マーケティングディレクターとは?役職の違いと仕事内容・年収

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最終更新:2026年10月18日

CMO(Chief Marketing Officer)とは、会社のマーケティング全体に責任を持つ役員のことで、日本語では最高マーケティング責任者と訳されます。医薬品業界でいう「CMO」(製造を請け負う医薬品製造受託機関)や、医療の責任者を指すチーフ・メディカル・オフィサーとは別の言葉で、この記事はマーケティングの役職としてのCMOだけを扱います。マーケティングディレクターはその一段下で、部門の数字と予算と人を預かる責任者です。結論から言うと、CMO・マーケティングディレクター・マーケティングマネージャーを分けているのは仕事の量ではなく、見る数字の単位です。

CMO・マーケティングディレクターとは?仕事内容と役割の一覧

CMOは会社の売上の伸びにマーケティングの側から責任を持つ経営陣の一人で、マーケティングディレクターは部門の年間の数字と予算と組織を預かる責任者、マーケティングマネージャーは個々の施策とチームを回す責任者です。呼び名は会社によってまちまちですが、責任の単位で並べると違いがはっきりします。

典型的な分け方を表にしました。境目の引き方は会社の規模や業種で変わります。

観点 CMO マーケティングディレクター マーケティングマネージャー
立ち位置 役員・経営陣 部長・本部長クラス 課長・チームリーダークラス
責任範囲 ブランドと事業成長の方針、マーケティング投資の配分 部門の年間計画・予算・組織 担当領域の施策とその数字、メンバー
1日の仕事 経営会議、事業部との予算の議論、採用と組織の設計、社外との対話 計画の進み具合の確認、施策の優先順位づけ、他部署や代理店との調整、メンバーの評価 施策の企画と進行、数字の確認、制作物のチェック、メンバーへの指示
見る指標 売上成長率、市場シェア、ブランドの指標、マーケティング投資の回収(ROI) 部門のKGI、獲得件数と獲得単価、営業に渡す商談の数、予算の消化 施策ごとのKPI、CTR・CVR・CPA、配信や制作の進み具合
使う道具 経営ダッシュボード、中期経営計画、予算表 BIツール、年間計画表、MAやCRMのレポート 広告の管理画面、GA4などの解析ツール、進行表
関わる部署 経営陣、事業部、財務、人事、広報 営業、事業部、財務、代理店 営業、制作、代理店、システム担当
報告先 CEO・取締役会 CMOまたは事業部長 マーケティングディレクター

表でいちばん大事なのは「見る指標」の行です。下の階層ほど施策の数字を見て、上の階層ほど事業の数字を見ます。BtoBの会社でマーケ組織の管理職をしていた頃、同じ施策について自分の上と下で聞かれることがまるで違いました。チームの担当者が気にしているのはクリック率や配信の進み具合で、役員が知りたいのは、その施策が今期の売上の見込みをどれだけ動かすかでした。どちらも正しい問いです。ただ、上に行くほど数字の単位が大きくなり、一つの施策の良し悪しは、事業の数字に翻訳されない限り話題にのぼらなくなります。

階層ごとに見る数字をつなぐ考え方はKPIとKGIの違いとKAI・OKRの比較表で、何をやらないかを決める上の階層の仕事は戦略と戦術の違いで書いています。

CMO・マーケティングディレクターになる人の経歴とスキル

CMOやマーケティングディレクターは新卒でいきなり就く職ではなく、マーケティングの担当者やマネージャーとして数字と人の両方を預かった経験の先にある役職です。入口はいくつかありますが、どの経路でも最後に問われるのは、マーケティングの成果を経営の言葉で説明できるかどうかです。

入口 よくある道筋 持ち込める強み 越えるべき壁
新卒(事業会社のマーケ部門) 担当者→マネージャー→ディレクター→CMO 自社の商品と顧客への深い理解 社外のやり方を知らないまま上がってしまう
営業から 営業→営業企画やマーケ→責任者 顧客の声と売上への感覚 ブランドのような長期の投資を説明する言葉
制作から デザイナーやコピーライター→ブランドの責任者 表現の質を見極める目 予算と数字で語ること
代理店から 代理店の営業やプランナー→事業会社のマーケ責任者 多くの業種と施策を見てきた引き出し 自社の損益を背負う感覚
未経験(他職種から) 経営企画・コンサルタント・事業責任者→CMO 事業の数字と経営の議論に慣れている マーケティングの現場の手触り

代理店から事業会社の責任者を目指す道は人気がありますが、提案する側と損益を背負う側では、同じ数字の重さが違います。その差は広告代理店から事業会社への転職で後悔しないためにで詳しく書きました。

必要なスキルは、必須とあると強いものに分けられます。

区分 スキル なぜ要るか
必須 マーケティング投資を売上や利益の言葉で説明する力 予算は財務や経営陣との議論で決まるから
必須 採用・評価・配置で組織を育てる力 成果を出すのが自分ではなくチームになるから
必須 優先順位を決めて、やらないことを決める判断 予算と人は、やりたいことの数より必ず少ないから
必須 営業・事業部・財務と同じ数字で話す力 マーケティングだけで売上は完結しないから
あると強い デジタル広告とデータ計測の基礎知識 部下や代理店の提案の良し悪しを見抜くため
あると強い ブランドの長期の指標を読む力 短期の獲得の数字だけで予算を守れなくなるため
あると強い 広報やIRとの接点、英語 社外への説明や海外拠点との議論が増えるため

技術的な知識は、上に行くほど自分で手を動かすためのものではなく、提案を見抜くためのものに変わります。マーケターがどの順番で役割を広げていくかはマーケターのキャリアパスの整理にまとめています。

CMOと似た職種・役職との違い

CMOと紛らわしいのは、会社のトップであるCEO、成長全体を受け持つCGO、そして日本の広告・制作の現場でいう「ディレクター」です。同じ言葉でも、業界によって指している高さが違います。

役職・職種 主な責任 CMOとの違い
CEO(最高経営責任者) 会社全体の経営 CMOはCEOに報告し、マーケティングの側から事業の成長を支える
CGO(最高成長責任者) 売上の成長全体。営業や商品まで含むこともある マーケティングに限らず、成長に関わる機能をまとめて持つ
CDO(最高デジタル責任者) 全社のデジタル化 顧客との接点のデジタル化で重なるが、対象は業務全体
広報の責任者 会社の評判と報道への対応 CMOが「選ばれる」側、広報が「信頼される」側を受け持つ。兼務も多い
広告業の「ディレクター」 制作チームのとりまとめ 役職の高さではなく、制作の中での役割の名前

いちばん混乱しやすいのが最後の行です。外資系企業の「マーケティングディレクター」は部長級の役職を指すことが多いのに対し、日本の広告の現場で「ディレクター」と言えば、制作のとりまとめ役のことがほとんどです。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)でも、「広告ディレクター」は別名をクリエイティブディレクター(広告業)とし、デザイナーやコピーライターなどの制作メンバーをまとめて広告を制作する職業と説明されています。求人票を読むときは、肩書きの名前ではなく、予算と人事の権限がどこまであるかを見たほうが確かです。

肩書きそのものも揺れています。人材コンサルティング会社のスペンサー・スチュアート(Spencer Stuart)が2025年3月に公表した調査では、2024年時点でフォーチュン500企業のうちマーケティングの責任者を経営陣に置いていたのは329社(66%)でした。その肩書きが「チーフ・マーケティング・オフィサー」だったのは40%で、16%は広報など別の機能との兼務、11%は肩書きに「マーケティング」の語が入っていませんでした(スペンサー・スチュアートのCMO在任期間調査(2025年))。日本の研究でも、米国の消費財企業でCMOに代わってCGOを置く動きが2010年代に目立ったと報告されています(後述の田中洋ほか、2019年)。

BtoBとBtoCでは、責任者が見る数字の重心も変わります。BtoBでは営業に渡す商談の数、BtoCではブランドの指標と売上の伸びが中心になりやすく、その違いはBtoBとBtoCマーケティングの違いで比較しています。

CMO・マーケティングディレクターの年収と市場価値

CMOやマーケティングディレクターに絞った公的な職種別の年収統計は見当たりません。job tagで近い職業の「会社経営者」(職業分類は会社役員)を見ても、賃金の欄は「データはありません」となっています。

そのうえで、開いて確認できた数字を並べます。出どころも数え方も違うので、横に並べて比べる数字ではありません。

データ 数字 何の数字か 出典
部長級の賃金 月635.8千円 全職種の部長級。6月分の所定内給与額(残業代と賞与を含まない) 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」役職別にみた賃金
課長級の賃金 月529.2千円 同上の課長級
非役職者の賃金 月310.5千円 同上の非役職者
CMOの平均決定年収 約1,730万円前後 転職エージェント1社の決定実績。母数と期間の記載はなく、同じページの見出しは約1,750万円 JACリクルートメント「CMO(最高マーケティング責任者)の転職事情」(2026年9月28日更新)

賃金構造基本統計調査の数字は、雇用期間の定めのない一般労働者を役職で分けたもので、マーケティング職だけの数字ではありません。それでも、非役職者を100としたときに部長級が204.8、課長級が170.4という差は、ディレクター級に上がることの重さを示しています。マーケティング職全体の年収の統計とその読み方はマーケティング職の年収データにまとめました。

市場価値を考えるときに見落とせないのは、日本ではCMOの席そのものが少ないことです。中央大学の田中洋名誉教授らの研究では、日本の上場企業でCMOを置いている企業は約8〜11%で、CMOを置いている企業は2年間の売上伸長率に4.7%の増収効果があったと報告されています(田中洋ほか「日本型CMOの現状と展望」マーケティング・ジャーナル39巻1号、2019年)。内訳は、役員レベルに限った狭義で7.9%、マーケティング担当役員や部長・本部長まで含めた広義で11.3%で、米国フォーチュン500企業の66%とは大きな差があります(日経BOOKプラス「CMO不要論に田中洋氏の見解」)。

任期の短さも、この職の性格を表しています。スペンサー・スチュアートの同じ調査では、フォーチュン500企業のCMOの平均在任期間は4.3年で、経営陣全体の平均4.9年を下回っていました。席が少なく、任期は短く、そのぶん報酬は高い。CMOの市場価値は、数年のうちに事業の数字で成果を示せるかどうかで決まります。

向いている人・向いていない人、キャリアの次の一手

CMOやマーケティングディレクターに向いているのは、自分の手で成果を出す喜びよりも、人と予算の配分で成果を出す面白さを感じられる人です。現場のエースだった人ほど、ここで一度つまずくことがあります。

向いている人 きつく感じやすい人
自分が作るより、人に任せて結果を待てる 企画や制作を自分の手で仕上げたい
施策の数字を、売上や利益の言葉に言い換えられる マーケティングの指標の中で話を完結させたい
やらないことを決めて、反対されても説明できる 全部の施策に少しずつ予算を配りたくなる
営業や財務と利害がぶつかる議論を面白がれる 社内の調整より社外の生活者のことだけを考えていたい

きつく感じやすい側に当てはまっても、それは能力の問題ではなく、好きな仕事の種類の問題です。手を動かす専門職として上がっていく道もあります。

責任者を目指すなら、次の一手は役職名より「予算を持つ経験」を取りにいくことだと思います。採用する側で候補者と話していると、マネージャーからディレクターへ上がれる人とそうでない人の差は、施策の実績の大きさより、その施策で事業の何が変わったかを一言で言えるかに出ると感じてきました。40代で責任者の側に回るときの考え方は40代マーケターが「旬」を保つキャリア戦略に、転職でポジションを探すときのエージェントの使い分けはマーケター向け転職エージェントの選び方に書いています。ブランド一つの損益から上がる道はブランドマネージャーとは?で、製品の市場投入から上がる道はプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)とは?で書きました。

CMO・マーケティングディレクターに関するよくある質問

CMOは何の略ですか?医薬品のCMOとは違いますか?

マーケティングの文脈のCMOは、最高マーケティング責任者を指す英語(Chief Marketing Officer)の頭文字です。医薬品業界のCMOは、製造を請け負う医薬品製造受託機関(Contract Manufacturing Organization)のことで、まったく別の言葉です。医療や製薬の会社では、医療の責任者であるチーフ・メディカル・オフィサーをCMOと呼ぶこともあります。

マーケティングの経験がなくてもCMOになれますか?

新卒や未経験からいきなりCMOになるのは難しいですが、経営企画や事業責任者、コンサルタントから就く例はあります。その場合も、マーケティングの現場の知識は後から補う必要があります。マーケティング職の未経験者なら、まず担当者やマネージャーとして、数字と人を預かる経験を積むのが近道です。

CMOとマーケティングディレクターの違いは何ですか?

CMOは経営陣の一人として、会社の成長に対するマーケティングの方針と投資の配分に責任を持ちます。マーケティングディレクターは部長級として、部門の年間計画と予算と組織に責任を持ちます。見る数字が、事業全体か、部門の目標かで分かれます。

日本企業にCMOが少ないのはなぜですか?

2019年に発表された研究では、日本の上場企業でCMOを置く企業は約8〜11%でした。ぼくは、日本企業ではマーケティングの機能が宣伝・販促・営業企画・商品企画などの部署に分かれてきたことが、一人の責任者に集めにくい理由の一つだと思っています。役職がなくても、誰がマーケティングの投資を最終的に決めているかを確かめると、その会社の実質的なCMOが見えてきます。

おわりに──CMOは、どの答えに会社のお金を賭けるかを決める人

マーケティングの担当者やマネージャーは、施策で答えを出す仕事です。広告の数字を上げる、記事を当てる、キャンペーンを成功させる。答えはいくつも出せますし、どれも正しい答えです。

でも、会社の予算は答えの数より少なく、どれに賭けるかを誰かが決めなければいけません。その判断を、売上や利益の言葉で説明して引き受けるのが、CMOとマーケティングディレクターの仕事です。

マーケターは、施策で答えを出す。CMOは、どの答えに会社のお金を賭けるかを決める。

いつか責任者の側に回りたいなら、まず今の自分の仕事を、一つ上の階層が見ている数字で一行説明できるか、試してみてほしいと思います。そこで言葉に詰まる場所が、次に身につける場所です。

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