最終更新:2026年10月18日
広報・PR担当の仕事内容は、会社の情報を記者や社員、社会に届け、会社とまわりの人々のあいだに信頼関係をつくって保つことです。具体的には、プレスリリースの作成と配信、記者からの取材への対応、社内報づくり、公式SNSの運用、不祥事が起きたときの危機対応までを受け持ちます。結論から言うと、広報の成績を決めるのは発信した量ではなく、会社の言葉がどれだけ信じてもらえる状態にあるかです。この記事では、社外広報・社内広報・SNS広報の分類、広報になる人の経歴とスキル、宣伝やマーケティングとの違い、年収の公開データまでを整理します。
広報・PR担当とは?仕事内容と役割の一覧
広報・PR担当とは、会社と、会社を取り巻く人々(顧客、取引先、株主、社員、地域、報道機関)とのあいだに、双方向のやりとりで信頼関係をつくる担当者です。情報を出すだけでなく、外の声を聞いて社内に返すところまでが仕事に含まれます。調査で聞く専門職はマーケティングリサーチャーです。
定義のよりどころとして、日本広報学会は2023年6月に発表した定義で、広報を「組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。」としています(日本広報学会「広報の定義」)。同じページでは、広報、パブリック・リレーションズ、コーポレート・コミュニケーションを同じ意味の言葉として扱っています。日本パブリックリレーションズ協会も倫理綱領で、パブリックリレーションズを「ステークホルダーおよび社会との間で健全な価値観を形成し、継続的に信頼関係を築くための活動」と定めています(日本パブリックリレーションズ協会「PR(パブリックリレーションズ)とは」)。
職種としての中身を、四つの観点で並べました。
| 観点 | 広報・PR担当の場合 |
|---|---|
| 1日の仕事 | 朝に自社や競合の報道とSNSでの言及を確認する/記者からの問い合わせや取材の日程を調整する/プレスリリースや発表資料を書く/社内の各部署を回ってネタを集める/社内報や社内向けの発信を編集する |
| 扱う指標 | 報道に載った件数と媒体、記事の論調(好意的・中立・批判的)、伝えたいメッセージが記事に入ったか、会社名の指名検索やSNSでの言及の量と中身、社内向け発信の閲読や従業員調査の結果 |
| 使う道具 | 文書作成・表計算・プレゼンの各ソフト、プレスリリースの配信サービス、掲載記事を集めるクリッピングサービス、SNSの管理・分析ツール、記者と媒体のリスト |
| 関わる部署 | 経営者・役員、事業部門と商品開発、マーケティング・宣伝、人事(社内広報・採用広報)、法務・総務(危機対応)、IR(上場企業の場合) |
載った記事を広告に置き換えて何円分かを示す換算もありますが、記事が好意的か批判的かを区別できません。件数と論調を分けて見るほうが、広報の働きを正しく映します。
広報の仕事は、誰に向けて話すかで大きく分かれます。日本パブリックリレーションズ協会は、広報・PRの機能を、外部情報の受信(広聴)、外部情報の経営者・従業員への発信、社内情報の受信、社内広報、対外広報の五つに整理しています。現場の担当の分け方に置き直すと、次のようになります。
| 分類 | 主な相手 | 主な仕事 | つまずきやすいところ |
|---|---|---|---|
| 社外広報(メディア広報) | 記者、編集者、番組の制作者 | リリースの作成と配信、取材対応、記者会見、記者との関係づくり | 会社が出したい情報と、記者が記事にしたい情報を取り違える |
| 社内広報 | 社員、グループ会社 | 社内報、経営方針の説明会、社内SNSやイントラネットの運営 | 経営からの連絡板になり、社員の声が上に届かなくなる |
| SNS広報(デジタル広報) | SNSの利用者、ファン、生活者全般 | 公式アカウントの投稿と返信、オウンドメディア、ネット上の評判の確認 | 反応の数を追ううちに、会社の言葉としての一貫性が崩れる |
| 危機管理広報 | 報道機関、影響を受けた人、社会全体 | 事故や不祥事の事実確認、発表文と会見の準備、平時のマニュアルと訓練 | 事実が固まる前に話す、または黙りすぎる |
| IR(投資家向け広報) | 株主、投資家、アナリスト | 決算の説明、開示資料の作成、投資家との面談 | 広報と別の部署で動き、言っていることがずれる |
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)も、近年は不祥事などの際の危機管理としての広報と、Webを使った迅速な広報の重みが増していると書いています(job tag「広報・PR担当」)。詳しくは、記者との関係づくりをメディアリレーションのやり方と記者が欲しがるネタ、リリースの書き方をプレスリリースの書き方と例文テンプレート、炎上の初動を企業のSNS炎上対策と初動24時間のチェックリストで書いたので、ここでは職種としての全体像に絞ります。
広報・PR担当になる人の経歴とスキル
広報・PR担当は、新卒ですぐに配属されるより、ほかの部署で会社を知った人が異動して就くことの多い仕事です。job tagは、学歴や資格は特に必要とされず、採用と同時に広報部門に配属されるケースは多くなく、他部門からの異動が一般的だと説明しています。
| 入口 | よくある経路 | 持ち込める強み | 最初につまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 新卒 | 広報職を募集する会社やPR会社に入る、総合職から配属される | 吸収の速さ、SNSへの慣れ | 自社の事業を記者に説明できるだけの社内の知識がまだない |
| 営業から | 社内公募や異動で広報へ移る | 顧客と現場の言葉を知っている、社内に顔が利く | 「売る言葉」と「報道される言葉」の違いに慣れるまで時間がかかる |
| 制作から(記者・編集者・ライター) | 新聞社や出版社、制作会社から事業会社へ転職する | 記者が何を記事にしたいかが分かる、文章が速い | 社内の合意を取る手順と、経営の論理 |
| 代理店から(広告会社・PR会社) | 事業会社の広報部門へ転職する | 複数の業界の事例、メディアとの接点 | 一社の中で、年単位で関係を育てる時間の流れへの切り替え |
| 未経験(他職種から) | 中小企業やスタートアップの兼任広報から始める | 事業の当事者としての熱量 | 手本になる先輩がいないので、自己流になりやすい |
必要なスキルは、最初から欠かせないものと、あると一段強くなるものに分かれます。
| 必須 | あると強い |
|---|---|
| リリースや発表文、社内報を書いて直せる文章力 | 記者や媒体についての知識と、顔の見える関係 |
| 自社の事業と業界の動きを、外の人に説明できる理解 | SNSの運用と、炎上の兆しを早めに見つける目 |
| 経営、現場、記者のあいだに立って調整する力 | 報道の効果を数字で説明する力 |
| 事実と意見を分けて話す冷静さ(危機対応で効く) | IRや法務の基礎知識、英語での発信 |
| 未公表の情報を外に漏らさない規律 | デザイナーや映像の制作者に意図を伝えるディレクション |
job tagは、問題が起きたときにどう情報を公表するかを冷静に判断する力や、クリエイターに指示を出せるだけの調整力と説得力も挙げています。資格は必須ではなく、job tagの関連資格の欄も「関連する資格はありません」となっています。体系的に学ぶ手段としては、日本パブリックリレーションズ協会が2007年に設けたPRプランナー資格認定制度があり、1次から3次までの試験に応じて「PRプランナー補」「准PRプランナー」「PRプランナー」の三段階で認定しています(日本パブリックリレーションズ協会「PRプランナー資格認定制度について」)。
広報・PR担当と似た職種との違い──宣伝・マーケティング・IR
広報・PR担当と宣伝やマーケティングの担当を分けるいちばんの違いは、情報が世に出るかどうかを最後に決めるのが誰か、です。宣伝は自社がお金を払って枠を買うので自社が決め、広報が働きかける報道は記者や編集者が決めます。
| 観点 | 広報・PR担当 | 宣伝(広告)担当 | マーケティング担当 | IR担当 |
|---|---|---|---|---|
| 主な相手 | 報道機関、社員、社会全体 | 広告に触れる生活者 | 顧客と見込み客 | 株主、投資家 |
| 世に出るかを決める人 | 記者や編集者(報道の場合) | 自社(枠を買う) | 自社(施策による) | 自社(決算や開示のルールに沿う) |
| 媒体へのお金 | 払わない(報道の場合) | 広告費を払う | 施策ごとに予算を配る | 開示は費用ではなく義務 |
| 主な成果 | 信頼、評判、報道の中身 | 認知と好意 | 売上と顧客の数 | 投資家の理解と適正な評価 |
| 時間軸 | 長い(評判は年単位で動く) | キャンペーン単位 | 四半期から年度 | 決算の周期 |
広報とマーケティングの関係や、兼任するときの分け方はマーケティングと広報の違いと兼任のコツで、広告と比べた費用や信頼の違いは広告とPRの違いの比較表で書きました。報道として取り上げてもらうこと自体の意味はパブリシティの意味と広告・PRとの違いにまとめています。
広告会社にいた頃、キャンペーンの企画にクライアントの広報の担当者が加わる場面を見てきました。広告の側は、出稿の量と表現を決めれば、決めたとおりに世に出ます。広報の側はそうはいかず、どれだけ準備しても、記者が書く理由を見つけなければ一行も載りません。だから広報の人は、同じ企画書を見ていても「これはニュースになるか」「誰が、なぜ書くか」から読んでいました。この問いの違いが、職種の違いそのものだと思います。
一つ気をつけたいのは、お金を払って書いてもらった記事を、報道のように見せることです。消費者庁のステマ規制(2023年10月施行)の対象になり得るので、広告と報道の線引きは広報担当がいちばん敏感でいたいところです。線引きの具体例はステマ規制の対象と違反事例、PR表記の書き方で整理しています。
広報・PR担当の年収と市場価値
広報・PR担当の年収は、厚生労働省のjob tagで見ると全国で525.2万円です。ただしこの数字は広報だけを数えたものではなく、広報・PR担当が属する「総務事務員」などの職業分類の統計を、令和7年賃金構造基本統計調査から加工したものです。
開いて確認できた公開データを並べました。数字の性格が違うので、横に並べて優劣はつけられません。
| 出典 | 数字 | 何の数字か |
|---|---|---|
| job tag「広報・PR担当」 | 賃金(年収)525.2万円、平均年齢44.9歳 | 令和7年賃金構造基本統計調査を加工。「総務事務員」等の分類に対応する統計で、広報だけの数字ではない |
| 同上(ハローワーク求人統計) | 有効求人倍率1.14、求人賃金(月額)23.7万円 | 令和7年度。ハローワークに出た求人だけの数字 |
| doda「平均年収ランキング(職種・職業別)」 | 広報/IR 506万円(20代392万円、30代508万円、40代650万円、50代〜759万円) | 2024年9月〜2025年8月末にdodaに登録した20〜65歳の正社員、有効回答約60万件。本人の申告による支給額 |
| 同上 | マーケティング550万円、販売促進/広告宣伝519万円 | 同じ集計での比較用 |
dodaの数字で目を引くのは、20代の392万円から40代の650万円へ、年代で大きく開くところです。広報は、社内の人脈と記者との関係、危機を一度でもくぐった経験がものを言う仕事なので、年数を重ねた人に価値が集まりやすいのだと思います。
市場価値の面では、広報の専任者を置かずに兼任で回している会社も多いと、job tagは書いています。だからこそ、一人で社外広報から危機対応までを回した経験は、転職の場面で具体的に話せる強みになります。公的統計の読み方や、職種ごとの年収の差がどこから生まれるかはマーケティング職の年収データ(公的統計と有価証券報告書)で詳しく書いています。PR会社の平均年収や、広報の専任者数の全国統計は、公開ページで確かめられなかったので書いていません。
向いている人・向いていない人、キャリアの次の一手
広報・PR担当に向いているのは、自分が目立つことより、会社の言葉が正しく伝わることに喜びを感じられる人です。成果が記者の判断や世の中の空気に左右されるので、思いどおりにならない時間に耐えられるかどうかも分かれ目になります。
| 向いている人 | きつく感じやすい人 |
|---|---|
| 社内のいろいろな部署に顔を出し、話を聞くのが苦にならない | 決まった範囲の仕事を、自分のペースで進めたい |
| 悪い知らせほど早く、正確に伝えようと思える | 不都合なことは、なるべく表に出したくない |
| 記者や読者の立場に立って、自社を外から眺められる | 自社の良いところを、言いたいだけ言いたい |
| 成果がすぐ出なくても、関係を年単位で育てられる | 手を動かした分だけ、すぐに数字で返ってきてほしい |
働き方の面では、社内外からの不定期な対応があり、他部門と比べると残業が多くなっていると、job tagも書いています。危機対応の当番を誰が持つかは、入社前に確かめておきたいところです。
次の一手は、大きく三つの方向に分かれます。一つは広報の責任者や、経営に近いコミュニケーション部門の長へ上がる道。二つめは、IRやブランド、マーケティングへ横に広げる道。三つめは、PR会社や独立した広報支援の側に回る道です。どれを選ぶにしても、「何を発信したか」より「どんな関係をどう変えたか」を語れる人が強いと思います。マーケティング職の中で広報がどこに位置するかはマーケターのキャリアパスの整理に、転職エージェントの選び方はマーケター向け転職エージェントの使い分けにまとめています。
広報・PR担当に関するよくある質問
広報・PR担当は未経験からでもなれますか?
なれます。job tagも、採用と同時に広報へ配属されるより、他部門から異動してくるのが一般的だと説明しています。社内異動のほか、中小企業やスタートアップの兼任広報から入る道もあり、面接では今の仕事で書いた資料や社内向けの発信を具体的に見せると伝わりやすくなります。
広報とPRの違いは何ですか?
中身は同じです。日本広報学会は、広報、パブリック・リレーションズ、コーポレート・コミュニケーションを同じ意味の概念として扱っています。ただ、日本では「PR」が宣伝や自己アピールの意味で使われることもあるので、求人票では仕事の中身を見て判断するのが確実です。
SNS広報の仕事内容は具体的に何ですか?
公式アカウントの投稿の企画と作成、コメントや言及への返信、ネット上の評判の確認、炎上の兆しを早く見つけて社内に知らせることが中心です。会社によってはオウンドメディアの運営も含みます。フォロワーの数より、会社の言葉として一貫しているかを守ることが、SNS広報の本来の役目です。
広報に役立つ資格はありますか?
就くために必須の資格はありません。体系的に学びたい人には、日本パブリックリレーションズ協会のPRプランナー資格認定制度があり、試験の段階に応じてPRプランナー補、准PRプランナー、PRプランナーの三つの資格があります。
おわりに──広告は枠を買える。広報は、信用を積むしかない
広報の仕事は、うまくいっているときほど外から見えません。記事が出た日は目立っても、その手前で記者と交わしたやりとりや、社内で止めた不用意な一言は、誰の目にも触れません。
広告なら、予算を積めば同じ枠をもう一度買えます。でも、一度失った信用は、どれだけお金を払っても買い戻せません。
広告は、枠を買う仕事。広報は、買えない信用を預かる仕事。
広報に興味があるなら、まず自分の会社の最近の出来事を一つ選んで、記者ならどんな見出しをつけるかを一行で書いてみてほしいと思います。その一行が書けたとき、広報の仕事の入口に立っています。